
建築図面一式の並び|表紙・図面目録から設備図まで
建物を建てるための図面は、どんな順番で並んでいるのでしょうか。
国の建物では、最初に表紙と図面の一覧(図面目録)などの書類が来ます。
そのあと、土地の図面、建物の図面、門や塀など建物のまわりの図面、建物の骨組み(構造)の図面の順に、全部で32種が並びます(建築工事設計図書作成基準 4.2)。
括弧の中は出典で、「4.2」などは、その基準の中の項目の番号です。
「同」は、すぐ前の出典と同じものを指します。
この並びは、国土交通省の「建築工事設計図書作成基準」が決めています。
図面の書き方をそろえて、仕事を効率よく進めるための決まりです(同 1.1)。
この基準は、国の建物の工事のために国土交通省が決めたものです(同 1.2)。
ふつうの家の図面一式が、この基準と同じ並びとは限りません。
電気や空調、水まわりなどの設備の図面は、この32種には入りません。
設備の図面には「建築設備工事設計図書作成基準」という別の基準があり、設備の工事ごとに別にまとめます(建築設備工事設計図書作成基準 4.1・4.2)。
建築図面一式とは何か
建築図面一式は、1つの工事のために作った図面と書類を、ひとまとめにしたものです。
「一式」は、ひとそろいという意味です(デジタル大辞泉「一式」)。
1つの建物を建てるには、図面が何枚も要ります。
建物の形・大きさ・材料を、1枚では表しきれないので、表すものごとに図面を分けて描くからです。
建築図面とは何か、なぜ要るのかは、「建築図面とは何か|なぜ必要か・誰が使うか」の記事で解説しています。
下の絵は、図面一式を1つの束にしたイメージです。

上の絵のような図面一式は、設計をする人(設計者)が作ります。
設計は、設計者が自分の責任で設計図書を作ることです(建築士法 第2条第6項)。
設計図書は、工事のために必要な図面と仕様書をいいます(同)。
仕様書は、工事の内容や手順を説明した書面です(デジタル大辞泉「仕様書」)。
図面と仕様書の分担は、「設計図書とは|図面と仕様書」の記事で解説しています。
この記事では、国土交通省の「建築工事設計図書作成基準」を「作成基準」と呼ぶことにしましょう。
作成基準には、32種の図面の名前を、並べる順に1行ずつ書いた表があります(作成基準 4.2)。
国の建物の工事では、新しく建てる工事や建て増す工事に共通して使う仕様書を、「標準仕様書」にまとめています(公共建築工事標準仕様書 1.1.1(1))。
標準仕様書に書いてあることは、図面には書きません(作成基準 2.1(2))。
特記仕様書は、その工事だけの決まりを文章で書いた書類です。
標準仕様書に無い材料や工事のしかたを使うときなどに、そのことを書きます(作成基準 2.1(2))。
作成基準の中では、図面と特記仕様書を合わせて「図面等」と呼びます(作成基準 1.1)。
32種の表の名前も「図面等の順序、名称等」で、標準仕様書はこの表に入っていません(作成基準 4.2)。
この記事の図面一式は、この図面等をまとめたものです。
設計図書のうち、図面と特記仕様書が図面一式に入ります。
図面一式には、線で描いた図だけが入っていると思うかもしれません。
ところが国の工事の基準である作成基準の32種には、特記仕様書のような「書」や、仕上表のような「表」も入っています(作成基準 4.2)。
仕上表は、床や壁などの表面の材料をまとめた表です。
32種を並べると、下の説明図のようになります。
左の列の上の表紙から始まり、列を左から右へ、列の中は上から下へ読みます。
最後は、右の列のいちばん下の32です。
下の横長の枠は、32種に入らない設備の図面を表しています。

上の図の5つのまとまりは、編集部が付けた分け方です。
作成基準の32種の表そのものには、区切りがありません。
作成基準には、図面に書く事項や書き方の例をまとめた「建築工事設計図書作成基準の資料」が付いています。
この記事では、この資料を「作成基準の資料」と呼ぶことにしましょう。
4つ目のまとまりには、門や塀、植える木などの図面と、工事のあいだだけ置く囲いや出入口の図面が入ります(作成基準の資料 資料2(17)〜(19))。
作成基準の図面は、コンピューターで作り、図面1枚を1つのデータのファイルにする決まりです(作成基準 2.2(1))。
作成基準の資料の資料4は、そのファイルに付ける名前の例です。
ファイルの名前に入れる分類として、32種が3つに分けられています(作成基準の資料 資料4)。
1〜2が「共通」、3〜23が「意匠」、24〜32が「構造」です。
この3つは、ファイルの名前を付けるための分け方で、この記事の5つのまとまりとは別のものです。
この記事で並びを追うときは、5つのまとまりを使います。
意匠は、物の形・色・模様・配置などに加える見た目の工夫で、デザインのことです(デジタル大辞泉「意匠」)。
ただし資料4の「意匠」には、見た目を表す図面のほかに、特記仕様書や工事区分表、敷地の図面も入っています(作成基準の資料 資料4)。
構造は、建物の重さや、雪・風・地震などの力を支える骨組みのことです(建築基準法施行令 第1条第三号)。
意匠と構造の図面と、32種の外にある設備の図面が、それぞれ何を表すかは、「建築図面の3つの種類|意匠図・構造図・設備図」の記事で解説しています。
建築図面の並び順は、なぜ決まっているのか
国の工事の基準が図面の並びまで決めているのは、図面の書き方をそろえ、仕事を効率よく進めるためです(作成基準 1.1・4.2)。
そのため、別の工事の図面一式でも、図面は同じ順番で並ぶのです。
作成基準がそろえる書き方には、並びのほかに、用紙の大きさ、文字、線、記号などがあります(作成基準 第3章)。
並びは、一式の2番目に来る図面目録にも表れます。
図面目録は、図面の番号と名前を書いた、図面の順番と名前の一覧です(作成基準の資料 資料2(2))。
作成基準の表の「尺度」「組み合わせる」「代える」は、何を言っているのか
「尺度」は、実物を何分の1の大きさで描くかを表します。
「組み合わせる」はほかの図面と1枚の用紙に描いてよい、「代える」はほかの図面や書類に書いて済ませてよい、という意味です。
どちらも、表の「備考」という欄に出てくる言葉です。
この先の表は、作成基準 4.2 の32種の表をもとにしているので、読む前に表の言葉を確かめておきましょう。
原寸は、実物と同じ寸法のことで(デジタル大辞泉「原寸」)、図面では1/1と書きます(作成基準 3.4)。
縮尺は、実物より縮めて描くときの割合です(デジタル大辞泉「縮尺」)。
1/100なら実物の100分の1、1/30なら30分の1の大きさで描きます。
作成基準は、原寸と縮尺をまとめて「尺度」と呼びます(作成基準 3.4)。
表の「尺度」の欄に書くのも、この値です(作成基準 4.2)。
同じ物を描くなら、分母が小さいほど、図は大きく細かくなります。
縮尺が図面ごとに違う理由は、「建築図面の縮尺|1/100・1/50など、図面ごとに違う理由」の記事で解説しています。
「詳細図」は、ほかの図では表せない部分の、材料・形・寸法などを表す図です(作成基準の資料 資料2(12))。
表の中では、「構造詳細図」などの名前で出てきます。
「備考」の欄には、その図面を作るときの条件が書いてあります。
よく出るのは、「組み合わせることができる」と「代えることができる」の2つです。
「組み合わせることができる」は、ほかの図面と1枚の用紙にいっしょに描いてよい、ということを表します。
1枚の用紙には、2つ以上の違う図を描いてよいことになっているからです(作成基準 4.2(1))。
「代えることができる」は、その図面を別に作らず、ほかの図面や書類に書くことで済ませてよい、という意味です。
備考では「特記仕様書、構造関係共通事項等、その他の図面等への記載をもって代えることができる」のように書かれています(作成基準 4.2)。
構造関係共通事項は、構造の図面に共通する記号や決まりをまとめたものです(作成基準の資料 資料2(20))。
32種の24番目で、上の説明図では右の列のいちばん上にあります。
以下の表の「何を表すか」の列は、図面の名前の意味を編集部が短く書いたものです。
図面目録など、一式の最初には何が並ぶのか
国の工事の基準では、図面一式の最初に、表紙・図面目録・特記仕様書・工事区分表の4つが並びます(作成基準 4.2)。
4つとも、一式の中身と工事の決まりを示す、文字や表でできた書類です。
| 順序 | 名前 | 何を表すか | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1 | 表紙 | 工事の名前や図面の枚数を書いた、一式の最初の1枚 | (なし) |
| 2 | 図面目録 | 図面の順番と名前の一覧 | 図面の枚数が少ない場合は表紙と組み合わせることができる |
| 3 | 特記仕様書 | その工事だけの決まり | 書く中身(工事の名前・工事の概要・工事の仕様)は作成基準 4.3 で決まっている |
| 4 | 工事区分表 | 工事の分担の表 | 別々の契約で頼んだ2つ以上の工事が、同じ部分の工事をする場合に作る |
上の表の1の表紙には、工事の名前・契約の年月・担当する役所の部署の名前・図面の枚数を書きます(作成基準の資料 資料2(1))。
契約は、工事を頼む側と引き受ける側が、合意して結ぶ約束です(デジタル大辞泉「契約」)。
図面目録には、図面の番号と名前を、並びの順に書きます(作成基準の資料 資料2(2))。
そのため、最初の2枚を見れば、何の工事の図面が何枚あり、どんな順に並んでいるかが分かります。
32種は図面の種類の数で、1種が1枚とは限りません。
平面図は各階を表す図で(作成基準の資料 資料2(8))、資料4には、平面図のファイルの名前に階の数を入れる例があります(作成基準の資料 資料4)。
そのため、図面目録の番号は、32種の順序の数と同じになるとは限りません。
図面目録は、たとえば次のような一覧です。

上の見本に並ぶ図面のうち、一式の3番目の特記仕様書は、その工事だけの決まりを書いた書類です。
中身の読み方は、「特記仕様書の読み方|工事概要・適用する仕様」の記事で解説しています。
国の建物の工事では、電気や機械の設備の工事は、建物をつくる建築工事とは別の種類の工事です(作成基準 4.3(3)、建築設備工事設計図書作成基準 1.2)。
設備の工事を建築工事に含めて頼むこともあり、その場合も設備の特記仕様書をそれぞれ使います(作成基準 4.3(3))。
1つの建物の工事が別々の契約に分かれ、同じ部分に2つ以上の工事がかかるときに作るのが、工事区分表です(作成基準 4.2)。
表の備考では、別々の契約で頼んだ工事を「契約工事」と呼んでいます。
工事区分表は、それぞれの工事の範囲が重ならないように、はっきり分けて表すための表です(作成基準の資料 資料2(3))。
書類の次には何が並ぶのか
国の工事の基準では、書類の次に、5〜9の敷地の図面が並びます(作成基準 4.2)。
敷地は、建物のある、ひとまとまりの土地のことです(建築基準法施行令 第1条第一号)。
5〜8は土地の場所・広さ・今の状態と建物の位置を、9は建物の面積を表します(作成基準 4.2、作成基準の資料 資料2(4)〜(6))。
特定行政庁は、建物の決まりを受け持つ市町村長や都道府県知事のことです(建築基準法 第2条第三十五号)。
求積は、面積や体積を求めることをいいます(デジタル大辞泉「求積」)。
方位は、東西南北などの向きのことです(デジタル大辞泉「方位」)。
敷地の形は、建物の置き方に合わせて、工事で変えることがあります(作成基準 4.2)。
手を加えて、ある形につくることを、造成といいます(デジタル大辞泉「造成」)。
| 順序 | 名前 | 何を表すか | 尺度・備考 |
|---|---|---|---|
| 5 | 敷地案内図 | 敷地の場所 | 尺度は、特定行政庁が定めている場合はそれによる |
| 6 | 敷地求積図 | 敷地の面積の計算 | (なし) |
| 7 | 敷地現況図 | 計画する前の敷地の状態 | 今の敷地と、建物の置き方を決めたあとの敷地の形が大きく違う場合などに作る。尺度と方位は配置図に合わせる |
| 8 | 配置図 | 敷地の中での建物の位置 | 1/100又は1/200。1/300、1/500又は1/600も使える |
| 9 | 面積表及び求積図 | 建物の面積と、その計算 | (なし) |
上の表の5の敷地案内図は、工事の場所までの道案内と、周りの様子を表す図です(作成基準の資料 資料2(4))。
8の配置図は、新しく建てる建物と、今ある建物などの位置の関係を表します(同 資料2(5))。
下の画像は、作成基準 4.2 の表の1〜9行を、そのまま切り出したものです。
この記事の表で省いた「基本設計」「実施設計」の2つの列が、表の中ほどにあります。
2つの列の○は、それぞれの設計の段階で作る図面の印です(作成基準 4.2(1))。
基本設計は建物の全体を決める段階、実施設計は工事ができるところまで細かく決める段階です(令和6年国土交通省告示第8号 別添一)。
告示は、国や地方公共団体が、ある事柄を公式に広く知らせることをいいます(デジタル大辞泉「告示」)。
この告示は、設計の事務所が仕事で請求できる報酬の基準で、国土交通大臣が定めました(令和6年国土交通省告示第8号)。

上の表の5〜9の図面の読み方は、次の記事で解説しています。
- 敷地案内図:「案内図の読み方|敷地の場所」
- 敷地求積図・求積図:「求積図・求積表の読み方|三角形などに分けた面積の計算」
- 敷地現況図:「敷地現況図の読み方|計画前の敷地の状態」
- 配置図:「配置図の読み方|敷地と建物の位置関係」
- 面積表:「建築図面の面積の種類|敷地面積・建築面積・延べ面積」
建物そのものの図面は、どんな順に並ぶのか
国の工事の基準では、10〜19の建物の図面の最初は、仕上表です(作成基準 4.2)。
そのあと、11〜13の建物全体の図、14〜16の一部を大きく描いた図、17の天井の図、18〜19の戸や窓の図の順に並びます。
| 順序 | 名前 | 何を表すか | 尺度・備考 |
|---|---|---|---|
| 10 | 仕上表 | 床・壁・天井などの表面の材料の一覧 | (なし) |
| 11 | 平面図 | 各階を水平に切って上から見た図 | 1/100又は1/200 |
| 12 | 立面図 | 建物の外側を横から見た図 | 1/100又は1/200 |
| 13 | 断面図 | 建物を縦に切った図 | 1/100又は1/200 |
| 14 | 矩計図(かなばかりず) | 外壁の部分を縦に切って、高さと材料の重なりを詳しく描いた図 | 1/30又は1/50 |
| 15 | 平面・断面・部分詳細図 | 建物の一部を平面や断面で詳しく描いた図 | 1/30又は1/50。1/2、1/3、1/5、1/10又は1/20も使える |
| 16 | 展開図 | 部屋の中の壁を1面ずつ見た図 | 1/30又は1/50。詳細図と組み合わせることができる |
| 17 | 天井伏図(てんじょうぶせず) | 天井の仕上げや、照明・換気口などの位置を、見上げた形で描いた図 | 1/100又は1/200 |
| 18 | 建具位置図 | 戸や窓(建具)の位置 | 1/100又は1/200。平面図と組み合わせることができる |
| 19 | 建具表 | 建具の一覧 | 1/50又は1/100 |
上の表の10の仕上表には、仕上げに使う材料(仕上げ材)が並びます。
仕上げ材は、床・壁・天井などを覆う、直接目に触れる表面の材料です(LIFULL HOME’S「不動産用語集」「仕上げ材」)。
18・19の建具は、戸・障子・襖(ふすま)など、建物の外と中や部屋どうしを仕切る、開け閉めできるものです(デジタル大辞泉「建具」)。
作成基準の資料の略号の一覧では、「建具等」の欄に、戸のほか窓やシャッターも入っています(作成基準の資料 資料1)。
15の平面・断面・部分詳細図は、平面・断面・部分の詳細図をまとめた、表の1つの行です(作成基準 4.2)。
伏図(ふせず)は、上から見た形に描いた図面のことです(精選版 日本国語大辞典「伏図」)。
ただし天井伏図は、名前に伏図と付きますが、天井を下から見上げた形で描きます(作成基準の資料 資料2(14))。
天井伏図には、天井の仕上げや高さのほか、照明器具を埋め込む穴、換気口、点検口などの位置を描きます(同)。
尺度の欄を上から見ると、11〜13の平面図・立面図・断面図は1/100又は1/200です。
14〜16の矩計図・詳細図・展開図は、1/30又は1/50になります。
11〜13のあとに14〜16が並び、尺度が1/100・1/200から1/30・1/50に変わります。
17〜18の天井伏図と建具位置図は、また1/100又は1/200です。
尺度の欄の数字が変わるところを、表の切り出しで確かめてみてください。

上の表の10〜19の図面の読み方は、次の記事で解説しています。
- 仕上表:「仕上表の読み方|内部・外部」
- 平面図:「建築図面の平面図とは|水平に切った間取りの図面」
- 立面図:「立面図の読み方と考え方|建築図面で何を見るかを整理」
- 断面図:「断面図の読み方と作図前提|建築図面で高さ関係を迷わず判断するための基礎」
- 矩計図:「矩計図とは何か|断面図との違いと建築図面の読み方・作図前提を整理」
- 詳細図:「詳細図の読み方と作図の考え方|建築図面を成立させる確認観点」
- 平面の詳細図:「平面詳細図の読み方|壁の構成・仕上げ・細かい寸法」
- 建具位置図:「建具位置図(建具キープラン)とは|平面図の建具符号との関係」
- 建具表:「建具表の読み方|形・寸法・材質・ガラス・金物・防火の別」
展開図と天井伏図は、「建築図面の展開図と天井伏図とは|室内の壁と天井の図面」の記事で解説する予定です(準備中)。
建物の図面のあとには何が並ぶのか
国の工事の基準では、20〜23に、建物のまわりの図面と、工事のあいだだけ使うものの図面が並びます(作成基準 4.2)。
| 順序 | 名前 | 何を表すか | 備考 |
|---|---|---|---|
| 20 | 工作物等詳細図 | 工作物などの詳細 | 配置図と組み合わせることができる |
| 21 | 外構詳細図 | 門・塀・擁壁・舗装・排水設備などの詳細 | 配置図と組み合わせることができる |
| 22 | 植栽図 | 植える木や芝の位置と範囲 | 配置図と組み合わせることができる |
| 23 | 仮設計画図 | 工事のあいだだけ置く囲いや出入口など | 囲いの範囲や出入口の位置などを、図面で決めて示す場合に作る |
上の表の20の名前にある工作物は、法律の言葉では、地上や地中に設けたもののことです(デジタル大辞泉「工作物」)。
作成基準では、工事で作るものを、建物・工作物・立木竹(木や竹)の順に分けて書きます(作成基準 4.3(2))。
そのため作成基準の工作物は、建物とは別のものです。
工作物等詳細図と外構詳細図の違いは、下に挙げた「工作物等詳細図の読み方」の記事で解説しています。
外構は、家や屋敷の門・垣(かき)・塀など、また、その配置のことです(精選版 日本国語大辞典「外構」)。
垣は、家や庭の区切りに設ける囲いです(デジタル大辞泉「垣」)。
外構詳細図には、門・塀・擁壁・舗装・排水設備などを描きます(作成基準の資料 資料2(17))。
擁壁(ようへき)は、盛り土や土を切り取った所がくずれないように作る壁です(精選版 日本国語大辞典「擁壁」)。
ここでの排水設備は、建物のまわりの、屋外の排水設備です(作成基準の資料 資料2(17)・資料3)。
仮設は、必要な期間だけ、仮に建てたり設けたりすることをいいます(精選版 日本国語大辞典「仮設」)。
仮設計画図は、工事のあいだの囲いの範囲や、工事用の出入口の位置などを、図面で決めて示すときに作ります(作成基準の資料 資料2(19))。
20〜22の備考は、どれも「配置図と組み合わせることができる」です。
敷地の中の位置を表す配置図に、いっしょに描いてよいということです。
それぞれの図面の読み方は、次の記事で解説しています。
- 工作物等詳細図:「工作物等詳細図の読み方|外構詳細図との違い」
- 外構詳細図:「外構詳細図の読み方|門・塀・擁壁・舗装・排水設備」
- 植栽図:「植栽図の読み方|樹木と植栽の配置」
一式の最後には何が並ぶのか
国の工事の基準では、最後の24〜32に、構造の図面が並びます(作成基準 4.2)。
構造の図面は建物の骨組みを表す図面で、その骨組みの部分が、基礎・柱・梁(はり)・床などです。
基礎は、建物の重さを受けて地盤に伝える、いちばん下の部分をいいます(デジタル大辞泉「基礎」)。
地盤は、建物などを据える土台になる土地のことです(デジタル大辞泉「地盤」)。
梁は、上からの重さを支えるためや、柱をつなぐために架け渡す水平の材をいいます(デジタル大辞泉「梁」)。
部材は、柱や梁のように、組み立てた物をつくっている1つ1つの部分です(デジタル大辞泉「部材」)。
24〜32は、構造の図面に共通の決まり、基礎、各階の床、1つ1つの部材の順に並びます。
| 順序 | 名前 | 何を表すか | 尺度・備考 |
|---|---|---|---|
| 24 | 構造関係共通事項 | 構造の図面に共通する記号や決まり | (なし) |
| 25 | 基礎伏図 | 基礎の配置を上から見た図 | 1/100又は1/200。1/10、1/20、1/30又は1/50も使える |
| 26 | 各階床伏図 | 各階の柱・梁・床などの配置を上から見た図 | 同上。小屋伏図を含む |
| 27 | 軸組図 | 柱や梁の組み方を横から見た図 | 同上 |
| 28 | 部材断面リスト図 | 柱や梁の断面の一覧 | 1/30又は1/50。1/2、1/3、1/5、1/10又は1/20も使える |
| 29 | 構造詳細図 | 骨組みの部分の詳細 | 同上。標準的な仕様は、特記仕様書や構造関係共通事項などへの記載で代えることができる |
| 30 | 使用構造材料一覧表 | 骨組みに使う材料の一覧 | 標準的な仕様は、特記仕様書や構造関係共通事項などへの記載で代えることができる |
| 31 | 基礎・地盤説明書 | 基礎と地盤の説明 | 基礎伏図や各階床伏図などへの記載で代えることができる |
| 32 | 施工方法等計画書 | 骨組みの施工の方法などの計画 | 特記仕様書や構造関係共通事項などへの記載で代えることができる |
上の表の25の基礎伏図と26の各階床伏図は、基礎や、柱・梁・床などの配置を表す伏図です(作成基準の資料 資料2(21)(22))。
小屋伏図は、屋根を支える屋根裏の骨組み(小屋組)を上から見た図で、26の各階床伏図に含めます(作成基準 4.2、デジタル大辞泉「小屋組」)。
施工は、工事を行うことです(デジタル大辞泉「施工」)。
32の施工方法等計画書は、骨組みの工事をどう行うかなどの計画を書いた書類です。
29〜32には、ほかの図面や書類への記載で代えてよい、という備考が付いています。
表の切り出しで、備考の欄に「代えることができる」が続くところを見てください。

上の表の構造の図面に出てくる骨組みの部分の名前は、「建物の骨組みの部位名|基礎・柱・梁・床」の記事で確かめてください。
構造図の読み方は、「建築図面の構造図とは|骨組みを表す図面」の記事で解説します(準備中)。
設備の図面は、32種のどこにあるのか
電気・空調・給排水などの設備の図面は、32種には入りません。
給排水は、給水と排水のことです(デジタル大辞泉「給排水」)。
国の工事の基準では、設備の図面を32種の後ろに続けず、設備の工事ごとに別の図面一式にまとめます(建築設備工事設計図書作成基準 4.1(4))。
作成基準が当てはまるのは、国の役所の建物を建てたり直したりする工事(営繕工事)のうちの、建築工事の図面です(作成基準 1.2)。
電気や機械の設備の工事は、この建築工事には入りません(作成基準 4.3(3)、建築設備工事設計図書作成基準 1.2)。
設備の工事の図面の書き方を決めているのは、別の基準「建築設備工事設計図書作成基準」です(建築設備工事設計図書作成基準 1.2)。
この記事では、この基準を「設備の作成基準」と呼びます。
設備の図面は、工事の発注の区分(工事区分)ごとにまとめ、ほかの工事との区分をはっきり示します(設備の作成基準 4.1(4))。
発注は、注文を出すことです(デジタル大辞泉「発注」)。
工事区分は、工事をどう分けて頼むかの分け方です。
同じ部分にかかる工事どうしの工事区分を表にすると、一式の4番目の工事区分表になります(作成基準の資料 資料2(3)、設備の作成基準 第5章)。
たとえば電気の設備の工事と機械の設備の工事を別々に頼めば、図面一式も別々になります(設備の作成基準 4.1(4))。
どの一式も、始まりは表紙・図面目録・特記仕様書などの共通図面です(設備の作成基準 4.2)。
設備の図面は、次の3つに分かれます(設備の作成基準 4.2)。
- 共通図面:表紙・図面目録・特記仕様書・案内図・配置図・建築断面図
- 電気設備図面:配線図・平面図・詳細図・系統図・機器仕様
- 機械設備図面:機器表・器具表・系統図・配線図・平面図・詳細図
電気設備に入るのは、照明やコンセント、発電機、情報の通信、火災の報知などの設備です(設備の作成基準 6.1)。
機械設備には、空気調和・換気・給水・排水・給湯・消火・ガス・エレベーターなどの設備が入ります(設備の作成基準 7.1)。
空気調和は、建物の中の空気の温度・湿度やきれいさを整えて、快適に保つことで(デジタル大辞泉「エアコンディショニング」)、略して空調とも呼びます。
系統図は、設備をつながりの筋(系統)ごとに描いた図面です(東建コーポレーション「土地活用・建築・宅建用語辞書」「系統図」)。
位置の関係や配管の順序が分かるように描きます(同)。
配線図は、建物の中の配線を示す図です(デジタル大辞泉「配線図」)。
機器表と器具表は、使う設備の機器や器具を一覧にした表をいいます。
機器は機械や器具をまとめた呼び方で、器具は簡単な器機や道具のことです(デジタル大辞泉「機器」「器具」)。
共通図面には、建物の側の図面も入ります。
設備の配置図には、敷地の外から建物までの、配線や配管の経路を書きます(設備の作成基準 第5章)。
建築断面図は、建物の断面の形や、建物と地盤の高さの関係、階の高さや天井の高さなどを表す図です(設備の作成基準 第5章)。
必要に応じて、立面図もいっしょに描き入れます(設備の作成基準 4.2)。
図面目録は、図面が20枚程度(表紙を含まない)の場合は省いてかまいません(設備の作成基準 4.2)。
基準の文も「20枚程度」で、何枚までかは書かれていません。
共通図面・電気設備図面・機械設備図面の3つの種類は、表の切り出しで確かめられます。

設備図の読み方は、次の記事で解説します(準備中)。
- 「建築図面の空調・換気設備図とは|空気を扱う設備の図面」
- 「建築図面の給排水衛生設備図とは|水とガスの設備の図面」
図面一式には、いつも32種が全部そろうのか
全部そろうとは限りません。
国の工事の基準でも、工事の中身や設計の段階によって、作らない図面があります。
図面一式には、いつも32種が全部入っていると思うかもしれません。
ところが、作成基準 4.2 の表の前には、次の2つの決まりがあります(作成基準 4.2(1))。
- 改修工事の図面と、設計を変えたときの図面は、工事の対象の部分に限ることができる
- 1枚の用紙に、2つ以上の違う図を描き入れることができる
改修工事は、道路や建物などの悪い部分を直す工事のことです(デジタル大辞泉「改修」)。
表の備考にも、全部そろわない理由になる書き方が3つあります(作成基準 4.2)。
- ほかの図面と「組み合わせることができる」:2・16・18・20〜22
- ある場合にだけ作る(原文は「〜場合に作成する」):4 工事区分表・7 敷地現況図・23 仮設計画図
- ほかの図面や書類への記載で「代えることができる」:29〜32
組み合わせた図面や、ほかの図面で代えた図面は、一式の中に別の図面としては出てきません。
4・7・23は、その場合に当たらない工事では作りません。
建物の計画によって作らない図面や書類があることは、設計の仕事の報酬の基準にも書かれています(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 注1)。
設計の段階も、作る図面が変わる理由の1つです。
設計には、基本設計と実施設計の2つの段階があります(令和6年国土交通省告示第8号 別添一)。
作成基準 4.2 の表で、基本設計と実施設計のそれぞれで作る図面に付いているのが、○の印です。
段階ごとにどの図面を作るかは、「設計の段階と図面|基本設計と実施設計で描く図面の違い」の記事で解説しています。
まとめ
図面一式は、1つの工事のために作った図面と書類をまとめたものです。
国の建物では、表紙・図面目録・特記仕様書・工事区分表から始まり、敷地・建物・建物のまわりと工事のあいだだけ使うもの・構造の図面の順に32種が並びます。
並びを決めているのは国土交通省の作成基準で、図面の書き方をそろえて、仕事を効率よく進めるためです。
設備の図面は32種に入らず、設備の工事ごとに、別の基準で別の一式にまとめます。
改修工事や、図面を組み合わせたり代えたりする場合などには、32種が全部そろうとは限りません。
確かめの問い
読み終えたら、次の4つに答えてみましょう。
- 図面一式の中で、表紙と図面目録を見ると何が分かりますか。
- 建具表は、5つのまとまりのうち、どのまとまりに入りますか。
- 設備の図面が、作成基準の32種に入らないのはなぜですか。
- 図面一式に32種が全部そろわないのは、どんな場合ですか。1つ挙げてください。
答え
- 何の工事の図面が何枚あるかと、図面がどんな順番で並んでいるかが分かります。
- 建物の図面のまとまり(10〜19)に入ります。19番目です。
- 作成基準は建築工事の図面のための基準で、設備の図面は設備の工事ごとに、別の基準で別の一式にまとめるからです。
- 改修工事で工事の対象の部分に限る場合、ほかの図面と1枚に組み合わせる場合、ほかの図面や書類への記載で代える場合などです。
続けて読む記事
この記事で名前だけ出た事柄は、次の記事で解説しています。
- 「建築図面を読む順番|共通ルールから施工図まで」:建築図面を学ぶときに、どの図面から読み始めるとよいか
- 「建築図面の3つの種類|意匠図・構造図・設備図」:意匠・構造・設備の図面が、それぞれ何を表すか
- 「設計図書とは|図面と仕様書」:図面と仕様書が、それぞれ何を決めるか
- 「設計の段階と図面|基本設計と実施設計で描く図面の違い」:基本設計と実施設計で作る図面の違い
- 「建築図面の表題欄の読み方|図面名・縮尺・図面番号の場所」:1枚ごとの図面の、名前と番号を書く欄の読み方
図面一式の図面どうしを突き合わせて読む方法は、「整合チェックの考え方|建築図面を一式で成立させる読み方と確認の順番」の記事で解説しています。
*2026年9月29日と30日に原文で確かめた内容です。
国土交通省の「建築工事設計図書作成基準(令和2年改定)」と「建築工事設計図書作成基準の資料」、「建築設備工事設計図書作成基準(令和6年改定)」、「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」、告示「令和6年国土交通省告示第8号」の別添一、法律は「建築士法」「建築基準法」「建築基準法施行令」によります。
語の意味は、コトバンクの「デジタル大辞泉」(一式・仕様書・意匠・原寸・縮尺・契約・方位・造成・求積・告示・建具・工作物・垣・基礎・地盤・梁・部材・小屋組・施工・給排水・発注・配線図・エアコンディショニング・機器・器具・改修)と「精選版 日本国語大辞典」(伏図・外構・擁壁・仮設)、LIFULL HOME’S「不動産用語集」(仕上げ材)、東建コーポレーション「土地活用・建築・宅建用語辞書」(系統図)によります。
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