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建築図面の3つの種類|意匠図・構造図・設備図

編集部 読了 約24分

建築図面には、どんな種類があるのでしょうか。

建築図面は、建物の形や部屋を表す意匠図(いしょうず)、骨組みを表す構造図、電気・水・空気の設備を表す設備図の3つに分かれます。

図面が分かれるのは、建物の設計が、形と部屋・骨組み・設備の3つに分けて行われ、それぞれで図面を作るためです。

設計は、建物の形・大きさ・材料などを決めて、図面と仕様書にまとめる仕事(建築士法 第2条第6項)。仕様書は、図面では表しきれない工事のやり方や材料などを、書いて指示する書類です(ブリタニカ国際大百科事典「仕様書」)。

意匠図・構造図・設備図は、1軒の家のどこを描き分けているのか

意匠図・構造図・設備図は、家の目に見える形と部屋、家を支える骨組み、天井や壁の中の配線や管を、それぞれ描き分けています。

形と部屋を描くのが意匠図、骨組みを描くのが構造図、配線や管などの設備を描くのが設備図です。

家には、目に見える部屋や壁のほかに、壁や床の中に隠れた部分があります。

壁や床の内側と家の下にあるのは、家を支える骨組みです。

天井や壁の中には、電気の配線や、水や空気が流れる管が入っています。

同じ家の1階を、この3つに分けて描いた図で見てみましょう。

同じ木造2階建ての家の1階を斜め上から見た絵を3つ並べた図。左は壁と窓で区切られた部屋、中は基礎と柱と梁の骨組み、右は薄い骨組みの中に引いた電気の配線と、水の管・換気の管
左から、形と部屋、骨組み、配線と管。どれも同じ木造2階建ての家の1階で、2階と屋根は外して描いた。家の形は例。編集部が作成

上の図の真ん中の絵で、いちばん下の灰色の帯が基礎、縦に立つ木が柱、柱の上で横に渡した木が梁(はり)です。

基礎は、建物の重さを支えて地盤に伝える、いちばん下の部分を言います(デジタル大辞泉「基礎」)。

梁は、屋根や床の重さを支えるために、水平に架け渡すものです(改訂新版 世界大百科事典「梁」)。

右の絵は、骨組みを薄い灰色にして、電気の配線と、水の管・換気の管の道すじだけを色で示したものです。

換気は、部屋の汚れた空気を、外の新しい空気と入れかえることを言います(デジタル大辞泉「換気」)。

図面の名前は、意匠・構造・設備という語から来ています。

語の意味は、次のとおりです。

意匠は、形・色・模様・配置などについての工夫、つまりデザインのことです(デジタル大辞泉「意匠」)。

建物では、形や見た目、部屋の並び(間取り)、仕上げなどが意匠にあたります。

仕上げは、床・壁・天井などの、目に見える所に使う材料を指します(東建コーポレーション 建築用語辞書「仕上材」)。

構造は、建物の重さや、地震・風の力を支える骨組みのことです(建築基準法施行令 第1条第三号)。

設備は、電気・ガス・給水・排水・換気・冷暖房など、建物に設ける仕組みを指します(建築基準法 第2条第三号)。

同じ家を3つの図面で表すと、次のようになります。

同じ木造2階建ての家の1階を、意匠図の平面図、構造図の基礎伏図、設備図の設備位置図で並べた図
左から意匠図(平面図)、構造図(基礎伏図)、設備図(設備位置図)。家の形と、照明などの印は例。設備位置図の細い灰色の線は、平面図の壁。国土交通省「令和6年国土交通省告示第8号」別添一 の、戸建木造住宅の実施設計(工事ができるところまで細かく決める段階)で作る図面の一覧をもとに編集部が作成

上の図の3枚は、どれも同じ家の1階を上から見た図です。

それでも、描かれている物は違います。

左の平面図は、建物の各階を、ある高さで水平に切り、真上から見た図です(精選版 日本国語大辞典「平面図」)。

屋根の上から見ると屋根しか見えないため、建物を水平に切ったと考えて、切り口から下を見て描きます。

切る高さは、ふつう床から約1mほど上です(改訂新版 世界大百科事典「建築製図」)。

平面図には、部屋の並びと、壁・窓・ドアが描かれています。

真ん中の基礎伏図(きそふせず)は、基礎の配置を示す図です(建築工事設計図書作成基準の資料 資料2(21))。

建築工事設計図書作成基準は、国の建物の工事のために国土交通省が決めた、図面の描き方の基準です(建築工事設計図書作成基準 1.1・1.2)。

ふつうの家の図面が、この基準と同じ形とは限りません。

基準の資料は、同じく国の建物の工事のために国土交通省が作ったもので、図面ごとに書く事項などをまとめています(建築工事設計図書作成基準の資料)。

この記事では、この基準を「図面の基準」と呼びます。

伏図は、上から見下ろした形で描いた図面の名前です(精選版 日本国語大辞典「伏図」)。

同じ上から見た図でも、平面図には部屋と壁が、基礎伏図には基礎だけが描かれています。

右の設備位置図は、設備の位置を示す図です。

この図では、平面図の壁を細い線にして、その上に照明・コンセント・給水と排水・換気扇の位置を描いています。

建築図面の種類は、なぜ3つに分かれるのか

建築図面の種類が3つに分かれるのは、建物の設計が3つの種類に分けて行われ、種類ごとに図面を作るからです(令和6年国土交通省告示第8号 別添一)。

告示(こくじ)は、各省の大臣などが、公に知らせる必要のあることを知らせるために出すものです(国家行政組織法 第14条第1項)。

この告示は、建築士事務所(建物の設計を仕事として行う事務所)が、設計の仕事で受け取る報酬の基準を定めています。

別添(べってん)は、本文とは別に添えたもののことです(デジタル大辞泉「別添」)。

告示の別添一には、設計の仕事の中身と、設計でできあがる図面と書類が並んでいます。

できあがる図面と書類は、告示の言葉で「成果図書」と呼ばれます。

「図書」は、ふだんは本のことですね。

しかし成果図書の「図書」は、図面と書類のことです。

成果図書は、次の3つの設計の種類ごとに並んでいます(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 注3)。

  • 総合:建物の意匠の設計と、意匠・構造・設備の設計をとりまとめる設計
  • 構造:建物の構造の設計
  • 設備:建物の設備の設計

上の一覧の総合にある「とりまとめる」は、多くのものを整理して1つにすることです(デジタル大辞泉「取り纏める」)。

告示では、意匠図を作る設計の種類を「総合」と呼んでいます。

この記事では、3つの設計の種類で作られる図面を、それぞれ意匠図・構造図・設備図と呼びます。

告示の成果図書の表の下にある注。「総合」「構造」「設備」の意味が書かれている
注の3で、「総合」「構造」「設備」がそれぞれどの設計を指すかを見る。出典:国土交通省「令和6年国土交通省告示第8号」別添一 の注を切り出して編集部が作成

上の注にある総合・構造・設備の3つが報酬の基準に並ぶのは、報酬のもとになる仕事の量を、種類ごとに示しているためです(令和6年国土交通省告示第8号 別添三)。

「意匠図」という語は、告示にも、図面の基準にも出てきません。

辞典では、建物の形や寸法・材料を示す図面のまとまりを「建築図」と呼び、構造図・設備図と並べています(改訂新版 世界大百科事典「建築製図」)。

この記事では、題のとおり、このまとまりを意匠図と呼ぶことにしましょう。

3つの種類は、設計のどの段階で出てくるのか

3つの種類の区分けは、設計の前の段階(基本設計)にも、後の段階(実施設計)にもあります。

前の段階は、建物の配置、部屋の並び、寸法や面積、主な材料などを検討してまとめる段階です(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1一)。

後の段階では、工事をする人が設計の内容を正確に読み取れるように、基本設計をもとに細かく決めます(同 別添一 1二)。

どちらの段階の成果図書も、総合・構造・設備に分けて並んでいます(同 別添一 1一ロ・1二ロ)。

ただし戸建ての木造住宅以外の建物では、基本設計の構造と設備に、図面の名前が並んでいません(同 別添一 1一ロ(1))。

並んでいるのは、計画説明書・設計概要書などの書類です。

計画説明書に含まれるのは設計の考え方と計画のあらまし、設計概要書に含まれるのは仕様のあらましと計画の図です(同 別添一 1一ロ(1) 注6・注7)。

戸建ての木造住宅の基本設計では、構造に図面の名前が無く、設備には設備位置図が並んでいます(同 別添一 1一ロ(2))。

2つの段階で作る図面の違いは、「設計の段階と図面|基本設計と実施設計で描く図面の違い」の記事で確かめてください。

構造と設備の設計には、決まった資格の人が関わるのか

規模の大きい建物では、構造と設備の設計に、構造設計一級建築士・設備設計一級建築士が関わる決まりがあります(建築士法 第20条の2・第20条の3)。

建築士には、一級建築士・二級建築士・木造建築士があります(建築士法 第2条第1項)。

一級建築士は、国土交通大臣の免許を受けて、建物の設計などを行う人です(同 第2項)。

二級建築士と木造建築士は、都道府県知事の免許を受けます(同 第3項・第4項)。

構造設計一級建築士は、一級建築士のうち、国土交通大臣から構造設計一級建築士証を交付された人です(建築士法 第10条の3)。

設備設計一級建築士は、同じく設備設計一級建築士証を交付された人です(同)。

図面と仕様書を合わせた呼び名を、法律では設計図書(せっけいとしょ)と言います(建築士法 第2条第6項)。

告示の成果図書のほうは、図面と仕様書のほかに、工事費の見積もりや計算をまとめた書類まで含む呼び名です(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1二ロ)。

構造の設計図書と設備の設計図書は、法律の上でも分けて定められています(建築士法 第2条第7項)。

構造の設計図書(構造設計図書)には、基礎伏図や構造計算書などが入ります(同)。

構造計算書は、骨組みが建物の重さや地震などの力に耐えるかを計算した書類です。

設備の設計図書(設備設計図書)には、建築設備(建物に設ける電気・給水・排水・換気などの設備)の各階の平面図などが入ります(建築士法 第2条第7項)。

構造設計一級建築士が関わるのは、高い建物などの構造設計です(建築士法 第20条の2)。

高さが60mを超える建物や、木造で地上の階数が4以上か高さが16mを超える建物などが、これにあたります(建築基準法 第20条第1項第一号・第二号)。

構造設計一級建築士が設計したときは、構造設計図書に、構造設計一級建築士であることを表示します。

構造設計一級建築士ではない一級建築士が設計したときは、構造設計一級建築士に確かめてもらわなければなりません(建築士法 第20条の2第2項)。

確かめるのは、構造が建築基準法の決まりに合っているかです。

設備設計一級建築士は、階数が3以上で、床面積の合計が5,000㎡を超える建物の設備設計に関わります(建築士法 第20条の3)。

床面積の合計は、建物の各階の床の広さを足したものです(建築基準法施行令 第2条第1項第四号)。

5,000㎡は、1辺がおよそ70mの正方形の広さにあたります。

設備設計一級建築士が設計したときは、設備設計図書に、設備設計一級建築士であることを表示します。

設備設計一級建築士ではない一級建築士が設計したときも、設備設計一級建築士に確かめてもらわなければなりません(建築士法 第20条の3第2項)。

確かめるのは、設備が建築基準法の決まりに合っているかです。

意匠図とは、何を表す図面か

意匠図は、建物の形、部屋の並び、仕上げを表す図面です。

告示の「総合」が意匠の設計を受け持つので、総合の成果図書のうち、図面が意匠図にあたります。

戸建ての木造住宅の成果図書は、告示の中で別の表になっていて、この記事の最後の節で見ます。

ここでは、並ぶ図書がより多い、戸建ての木造住宅以外の建物の表を見てみましょう。

実施設計の総合の成果図書は、次のとおりです(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1二ロ(1)、戸建木造住宅以外の建物)。

図書何を表すか
建築物概要書建物の概要をまとめた書類
仕様書図面では表しきれない工事のやり方や材料などを指示する書類
仕上表建物の外と内の仕上げ
面積表及び求積図建物の面積と、その計算
敷地案内図敷地(建物が建つ、ひとまとまりの土地)への道案内と、周りの様子
配置図敷地の中の、新しく建てる建物や今ある建物などの位置の関係
平面図(各階)各階を水平に切った面を、真上から見た図
断面図建物を縦に切った図。建物と地面の関係、各階の高さ、階の数など
立面図(各面)建物の外観(外から見た形)。ふつうは東・西・南・北の4つの面を描く
矩計図(かなばかりず)建物の主な壁の部分を縦に切った面の、材料・つくり方・形・寸法など
展開図部屋ごとに、部屋の中の壁の面を描いた図。壁に付く窓や戸、器具や家具の配置など
天井伏図(各階)天井の面の仕上げや、天井の高さなど
平面詳細図主な部屋を取り出して、平面を細かく描いた図
部分詳細図平面図などでは表せない部分の、材料・つくり方・形・寸法など
建具表戸や窓(建具)と、その金物(ちょうつがい・引き手・錠など)やガラス
工事費概算書工事費の見積もり
各種計算書設計で行った各種の計算をまとめた書類
その他確認申請に必要な図書確認申請(工事の前に、建物の計画が建築基準法などの決まりに合っているかを確かめてもらう申請)に要る書類

上の表の右の列「何を表すか」は、図面と表について、建築工事設計図書作成基準の資料(資料2)と、改訂新版 世界大百科事典「建築製図」の説明を編集部が短く書いたものです。

仕様書・平面図・断面図・建具・建具の金物の説明は、最後にまとめた辞典によります。

敷地の説明は建築基準法施行令 第1条第一号、確認申請の説明は建築基準法 第6条によります。

建築物概要書・工事費概算書・各種計算書の説明は、名前を言いかえたものです。

断面図と矩計図は、どちらも建物を縦に切った図です。

断面図は建物全体の高さの関係を表し、矩計図は壁の部分の材料やつくり方を細かく表します。

天井伏図は、名前に「伏図」と付きますが、図面の基準の資料では、天井を下から見上げた形で描くことになっています(建築工事設計図書作成基準の資料 資料2(14))。

表に仕様書・工事費概算書・各種計算書といった書類も入っているのは、成果図書が図面と書類を合わせたものだからです。

仕上表・建具表・面積表は、表の形をした図書です。

それでも図面の基準の資料では、図面に書く事項の1つとして並んでいます(建築工事設計図書作成基準の資料 資料2(6)・(7)・(15))。

主な図面の読み方は、次の記事で確かめてください。

仕上表と建具表は、「仕上表の読み方|内部・外部」と「建具表の読み方|形・寸法・材質・ガラス・金物・防火の別」の記事で解説しています。

構造図とは、何を表す図面か

構造図は、建物の骨組みを表す図面です。

ふだんの会話では「構造」を「しくみ」の意味でも使うでしょう。

しかし構造図の「構造」は、骨組みのことです。

骨組みは、建物のいちばん下の基礎、縦に立つ柱、横に架け渡す梁、床などでできています。

建物の重さや、雪・風・地震などの力を支える基礎・柱・壁・梁などの部分は、法令の言葉で「構造耐力上主要な部分」と呼ばれます(建築基準法施行令 第1条第三号)。

構造図に描くのは、こうした部分の配置と組み方です。

建設中の建物の、柱と梁の骨組みだけが見えている姿
骨組みだけの建物のイメージ。縦に立つ柱と、横に架け渡した梁を見る。編集部が生成AIで作成

上の絵の柱や梁のような骨組みを表す、実施設計の「構造」の成果図書は、次のとおりです(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1二ロ(1)、戸建木造住宅以外の建物)。

  • 仕様書・構造基準図・伏図(各階)・軸組図・部材断面表・部分詳細図
  • 構造計算書・工事費概算書・その他確認申請に必要な図書

上の一覧に並ぶ名前の意味を、1つずつ確かめましょう。

部材は、柱や梁など、骨組みを組み立てている1つ1つの部分です(デジタル大辞泉「部材」)。

構造図の伏図は、柱・梁・壁・床などの部材の配置を、上から見下ろした形で描きます(建築工事設計図書作成基準の資料 資料2(21)・(22))。

軸組図は、骨組みを横から見た図です(東建コーポレーション 建築用語辞書「軸組図」)。

軸組図では、柱や梁などの部材の位置が分かります(建築工事設計図書作成基準の資料 資料2(23))。

部材断面表は、柱や梁などを切った切り口の形と寸法を表します(建築工事設計図書作成基準の資料 資料2(24)、資料での名前は「部材断面リスト図」)。

構造基準図は、骨組みの図面で何度も同じ形で描く細かい部分を、決まった形にまとめて描いた図です(東建コーポレーション 建築用語辞書「基準図」)。

たとえば、柱や梁をつなぐ所で使う板の大きさや、ボルトの本数を決めた図があります(同)。

一覧のうち構造計算書は、計算をまとめた書類です。

同じ家を3つの図面で表した図で、左の平面図と真ん中の基礎伏図は、どちらも上から見た図でした。

しかし、平面図は部屋と壁を描き、構造図の伏図は骨組みの部材の配置を描きます。

「伏図」と付く図面には、意匠図の天井伏図もあります。

骨組みの部位の名前は、「建物の骨組みの部位名|基礎・柱・梁・床」の記事で確かめてください。

骨組みの材料による構造の種類は、「建物の構造の種類|木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造」の記事で解説しています。

構造図の読み方は、「建築図面の構造図とは|骨組みを表す図面」(準備中)の記事で解説します。

設備図とは、何を表す図面か

設備図は、電気・給水・排水・空調・換気などの設備を表す図面です。

空調は、部屋の空気の温度や湿度などを、その部屋に合うように保つことです(改訂新版 世界大百科事典「空気調和」)。

設備には、天井の中や壁の中、床の下に設けるものもあります。

完成した建物では見えない配管や配線の位置も、設備図に描かれます。

天井の板を外した天井裏に、ダクトや配管、電気の配線が通っている
天井の中の設備のイメージ。天井の板の上にある太い管(空気を送るダクト)、細い管、配線を見る。編集部が生成AIで作成

上の図で天井の中に見えるダクト・管・配線も、建物に設ける設備です。

建物に設ける電気・ガス・給水・排水・換気・暖房・冷房・消火・排煙などの設備は、法律の言葉で「建築設備」と呼ばれます(建築基準法 第2条第三号)。

排煙は、中の煙を外に出すことです(デジタル大辞泉「排煙」)。

煙突・昇降機(エレベーターなど)・避雷針も、建築設備に入ります。

「設備」と聞くと、工場の機械のようなものを思い浮かべるかもしれません。

しかし設備図の「設備」は、建物に設けるものだけを指します。

実施設計の「設備」は、次の4つに分かれています(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1二ロ(1)、戸建木造住宅以外の建物)。

  • 電気設備
  • 給排水衛生設備(水を送り、使った水を流す設備と、トイレや洗面などの器具)
  • 空調換気設備(部屋の空気を冷やし、暖め、入れかえる設備)
  • 昇降機等(エレベーターなど。機械式駐車場も含む)

4つそれぞれに並ぶ成果図書は、たとえば次のような図面です。

  • 電気設備:「幹線系統図」「電灯、コンセント設備平面図(各階)」「火災報知等設備平面図(各階)」など
  • 給排水衛生設備:「給排水衛生設備配管系統図」「給排水衛生設備配管平面図(各階)」など
  • 空調換気設備:「空調設備系統図」「空調設備平面図(各階)」「換気設備平面図(各階)」など

上の一覧の名前には、「系統図」と「平面図」が多く出てきます。

名前に出てくる語の意味は、次のとおりです。

幹線は、大もとになる線のことです(精選版 日本国語大辞典「幹線」)。

電気の設備では、枝分かれする前の、元になる配線を指します。

系統図は、設備を系統(ひと続きのつながり)ごとに描き、配管などがつながる順が分かるようにした図です。

建物の形どおりには描かず、つながりを示す図になることが多いものです(東建コーポレーション 建築用語辞書「系統図」)。

設備の図面には、図面の基準とは別の基準(建築設備工事設計図書作成基準)があり、この記事では「設備の図面の基準」と呼びます。

この基準も、国の建物の工事のために国土交通省が決めたものです(建築設備工事設計図書作成基準 1.1・1.2)。

ふつうの家の設備の図面が、この基準と同じ形とは限りません。

設備の平面図は、各階を上から見た図(平面図)の上に、設備の機器や配管・配線を描いた図です(建築設備工事設計図書作成基準 4.1(10)・6.1)。

ガスの設備は、設備の図面の基準では、給排水衛生設備の図面に入ります(建築設備工事設計図書作成基準 7.2)。

設備図の読み方は、次の記事で解説します(準備中)。

  • 「建築図面の電気設備図とは|電気の設備と図面」
  • 「建築図面の空調・換気設備図とは|空気を扱う設備の図面」
  • 「建築図面の給排水衛生設備図とは|水とガスの設備の図面」

意匠図・構造図・設備図は、互いにどうつながるのか

3つの図面を1つにまとめ、食い違いが無いようにするのは、総合の設計を受け持つ設計者の仕事です。

意匠図・構造図・設備図は、別々に描かれても、同じ1つの建物を表しているためです。

告示の「総合」は、意匠の設計に加えて、意匠・構造・設備の設計をとりまとめる設計を指します(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 注3)。

国の工事の図面の基準は、図面のあいだで書く事項が重なったり、食い違ったりしないように求めています(建築工事設計図書作成基準 4.1(2))。

たとえば、柱の位置が意匠図と構造図で違っていたら、どちらのとおりに建てればよいか決まらないでしょう。

設備の図面は、建物の形を描いた図面を下に敷いて描きます。

設備の図面の基準では、この下に敷く図面を「建築図」と呼び、設備に要らない線や表現を消して使います(建築設備工事設計図書作成基準 4.1(10))。

ここでいう建築図は、意匠図にあたる、建物の形を描いた図面のことです(改訂新版 世界大百科事典「建築製図」)。

この記事の題の「建築図面」は、意匠図・構造図・設備図の全部を指します。

同じ家を3つの図面で表した図を、もう一度見てください。

右の設備位置図では、左の平面図の壁が細い線になって下に敷かれ、その上に照明やコンセントの位置が描かれています。

意匠図の天井伏図にも、天井に埋め込む照明器具のために、天井にあける穴を描きます(建築工事設計図書作成基準の資料 資料2(14))。

照明器具の位置は設備図に、それを入れる天井の穴は意匠図に描かれるわけです。

総合・構造・設備の成果図書の境目は、いつもはっきり分かれているとは限りません。

たとえば基本設計では、構造と設備の成果図書が、総合の成果図書に含まれる場合もあります(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1一ロ 注4)。

図面一式の中で、3つの図面がどんな順に並ぶかは、「建築図面一式の並び|表紙・図面目録から設備図まで」の記事で解説しています。

戸建ての木造住宅でも、3つの図面を作るのか

戸建ての木造住宅でも、成果図書の種類は総合・構造・設備の3つです。

ただし設備の図面は、電気・給排水衛生・空調換気をまとめた設備位置図1つです。

戸建ての木造住宅の成果図書は、告示の中で、ほかの建物とは別の表になっています(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1二ロ(2))。

実施設計の成果図書は、次のとおりです。

  • 総合:建築物概要書・仕様書・仕上表・面積表・敷地案内図・配置図・平面図(各階)・断面図・立面図(各面)・矩計図・展開図・天井伏図・建具表・工事費概算書・その他確認申請に必要な図書
  • 構造:仕様書・基礎伏図・床伏図・はり伏図(梁の伏図)・小屋伏図(屋根を支える骨組みの伏図)・軸組図・構造計算書・工事費概算書・その他確認申請に必要な図書
  • 設備:仕様書・設備位置図(電気、給排水衛生及び空調換気)・工事費概算書・その他確認申請に必要な図書
告示の、戸建木造住宅に係る実施設計の成果図書の表
戸建木造住宅の実施設計の成果図書。設備の欄の図面が「設備位置図」1つにまとまっていることを見る。出典:国土交通省「令和6年国土交通省告示第8号」別添一 の表を切り出して編集部が作成

上の表の設備の欄では、図面が設備位置図1つにまとまっています。

ほかの建物では、設備が4つに分かれ、系統図と平面図が並んでいました。

表の構造の欄の図面は、基礎・床・梁・小屋の伏図と、軸組図に分かれています。

小屋は、屋根を支える骨組み(小屋組)のことです(デジタル大辞泉「小屋組」)。

同じ家を3つの図面で表した図の真ん中は、このうちの基礎伏図です。

また、建物の計画によっては、表にある図書でも作らないものがあります(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 注1)。

まとめ

建築図面は、建物の形・間取り・仕上げを表す意匠図、骨組みを表す構造図、電気・水・空気の設備を表す設備図の3つに分かれます。

図面が分かれるのは、設計が総合・構造・設備の3つの種類に分けて行われ、種類ごとに図面と書類を作るからです。

告示で意匠図を作る設計の種類は、「総合」です。

規模の大きい建物では、構造と設備の設計に、構造設計一級建築士・設備設計一級建築士が関わる決まりがあります。

意匠図・構造図・設備図は同じ建物を表すので、総合がとりまとめます。

戸建ての木造住宅でも成果図書は3つの種類に分かれ、設備の図面は設備位置図1つです。

確かめの問い

読み終えたら、次の5つに答えてみましょう。

  1. 照明・コンセント・給水と排水・換気扇の位置を1枚に示した設備位置図は、意匠図・構造図・設備図のどれに入りますか。
  2. 告示では、意匠図を作る設計の種類を何と呼んでいますか。
  3. 骨組みを横から見て、柱や梁などの部材の位置を描いた図面は何ですか。また、3つのうちどれに入りますか。
  4. 階数が3以上で、床面積の合計が5,000㎡を超える建物の設備設計に関わる、決まった資格の人を何と呼びますか。
  5. 構造計算書は、図面ですか。

答え

  1. 設備図です。同じ家を3つの図面で表した図では、右の設備位置図にあたります。
  2. 「総合」です。総合は、意匠の設計と、意匠・構造・設備の設計のとりまとめを受け持ちます。
  3. 軸組図です。構造図に入ります。
  4. 設備設計一級建築士です。一級建築士のうち、設備設計一級建築士証を交付された人です。
  5. 書類です。骨組みが力に耐えるかを計算したもので、構造の成果図書に入ります。

続けて読む記事


*2026年9月29日と30日に原文で確かめた内容です。

法律は「建築士法」「建築基準法」「建築基準法施行令」「国家行政組織法」、国土交通省の資料は「令和6年国土交通省告示第8号」の別添一・別添三、「建築工事設計図書作成基準(令和2年改定)」とその資料、「建築設備工事設計図書作成基準(令和6年改定)」によります。

語の説明は、コトバンクで開ける辞典の「意匠」「基礎」「換気」「別添」「取り纏める」「建具金物」「排煙」「断面図」「部材」「小屋組」(デジタル大辞泉)、「平面図」「伏図」「幹線」(精選版 日本国語大辞典)、「仕様書」「建具」(ブリタニカ国際大百科事典)、「梁」「建築製図」「空気調和」(改訂新版 世界大百科事典)と、東建コーポレーションの建築用語辞書の「仕上材」「軸組図」「基準図」「系統図」によります。

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この記事について

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