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  1. 設計の段階と図面|基本設計と実施設計で描く図面の違い

設計の段階と図面|基本設計と実施設計で描く図面の違い

編集部 読了 約26分

基本設計と実施設計では、描く図面がどう違うのでしょうか。

基本設計と実施設計は、建物の設計を進める2つの段階の名前です。先に基本設計で全体を決め、あとの実施設計で工事ができるところまで細かく決めます(令和6年国土交通省告示第8号)。

告示は、国や地方公共団体が、ある事柄を公式に広く知らせるものです(デジタル大辞泉「告示」)。この告示は、設計の仕事の報酬を計算するときの標準として、国土交通大臣が定めたものです(令和6年国土交通省告示第8号 第一)。

基本設計では、配置図・平面図・立面図・断面図など、建物の全体を表す図面を作ります。

敷地の中の建物の位置、各階の部屋の並び、外から見た形、縦に切った形を、それぞれ表す図面です。

「切った形」は、建物を実際に切るのでなく、切ったと仮定して、その切り口を描いたものです(デジタル大辞泉「断面図」)。

実施設計では、その図面を細かく描き直し、細部や戸・窓(建具)、骨組みなどの図面を加えます(令和6年国土交通省告示第8号)。

細部は、外壁の切り口や部屋の壁の面など、建物の一部分のことです。

骨組みは、建物の基礎的な構造の部分です(デジタル大辞泉「骨組み」)。柱や、柱の上に水平に渡す梁(はり)がこれに当たります。

建具は、戸・障子・襖(ふすま)などのように、建物の内と外や部屋と部屋を仕切る、開け閉めできるものです(デジタル大辞泉「建具」)。

違いは、2つの段階で図面の使いみちが違うことから生まれます。

基本設計の図面は、建物の全体を建て主(建物の工事を頼む人)に説明するためのものです。

実施設計の図面は、工事をする人が読み取って工事をし、工事費を見積もるためのものです(令和6年国土交通省告示第8号)。

基本設計と実施設計は、どんな流れで進むのか

建物の設計は、基本設計から実施設計へと、2つの段階に分けて進みます。

先に基本設計で建物の全体を決め、そのあとの実施設計で、工事ができるところまで細かく決めます(令和6年国土交通省告示第8号 別添一)。

2つの段階で何を決め、どの図面や書類を作るかをまとめたのが、国の告示です。

令和6年国土交通省告示第8号は、建築士事務所(設計を仕事として行う事務所)が設計などの仕事で請求できる報酬の基準です。国土交通大臣が、建築士法 第25条にもとづいて定めました。

報酬の基準に設計の段階が書いてあるのは、報酬を計算する方法の1つが、標準の仕事ごとにかかる時間をもとにするものだからです(令和6年国土交通省告示第8号 第四)。

計算のもとになる標準の仕事の中身は、告示に別に添えられた書面(別添一)に、基本設計・実施設計の順に並んでいます。

この告示が示すのは「標準」です(同 第一)。仕事の一部だけを行う場合の計算のしかたも決めてあり、すべての建物で同じ仕事をするとは限りません(同 第四 3)。

この記事では、出典をたとえば「別添一 1 一 イ(7)」のように、告示の中の番号をたどって書きます。

別添一の中で、1は設計の仕事、一は基本設計、二は実施設計、三は工事が始まってからの仕事です。イは仕事の中身の表、ロはできあがる図面と書類の一覧、(7)などはその中の項目の番号です。

「同」は、すぐ前の出典と同じ書面を指します。

実施設計があとになるのは、実施設計が「基本設計に基づいて」、設計の考えをより詳しく形にする仕事だからです(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 二)。

設計の考えは、告示では「設計意図」と書かれています。その設計についての、設計をする人の考えのことです(同 1 一 イ(7))。

基本設計で配置や形、材料を決めたときの考えも、これに入ります。

建て主の要望から、基本設計、実施設計、工事へと進む流れの図
左から、建て主の要望、基本設計、実施設計、工事の順に進む。国土交通省「令和6年国土交通省告示第8号」別添一 をもとに編集部が作成

上の図の基本設計と実施設計では、設計図書(せっけいとしょ)を作ります。

設計図書は、建物の工事をするために要る図面と仕様書を合わせた呼び名です(建築士法 第2条第6項)。

仕様書は、工事の内容や手順を説明した書面です(デジタル大辞泉「仕様書」)。

「図書」と聞くと、ふだんは本を思い浮かべるでしょう。

しかし設計図書の「図書」は、図面と書類のことです。

法律では、この設計図書を自分の責任で作ることを「設計」と呼んでいます(建築士法 第2条第6項)。

つまり、基本設計も実施設計も、図面と書類を作ることが設計の仕事の中身です。

設計にかかわる立場には、法律の呼び名があります。

建て主は、法律では建築主と呼ばれ、建物の工事を頼む人、または自分で工事をする人のことです(建築基準法 第2条第十六号)。

自分の責任で設計図書を作る人は、設計者と呼ばれます(建築基準法 第2条第十七号)。

工事をする人は工事施工者と呼ばれ、工事を請け負う人、または自分で工事をする人のことです(建築基準法 第2条第十八号)。

施工は、工事を行うことです(デジタル大辞泉「施工」)。

図面と仕様書がそれぞれ何を受け持つかは、「設計図書とは|図面と仕様書」の記事で解説しています。

基本設計と実施設計では、図面を何のために作るのか

基本設計の図面の使いみちは、建て主への全体の説明と、工事費の概算(おおよその額)です(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 一 イ(6)(7))。

基本設計の図面ができると、設計者はそれを建て主に渡し、設計の考えと中身をまとめて説明します(同 イ(7))。

つまり基本設計の図面は、建て主が建物の全体の形とおおよその費用を知るためのものです。

一方、実施設計の図面は、工事施工者が中身を正確に読み取れるように作ります(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 二)。

設計の考えに合った工事をし、工事費を適正に見積もれるようにするためです(同 二)。

図面を読む人が工事施工者に変わるので、読むだけで工事ができるところまで描く必要があります。

実施設計の図面も、できあがると建て主に渡され、設計者が設計の考えと中身を説明します(同 二 イ(6))。

2つの段階を並べると、次のとおりです。

基本設計の図面実施設計の図面
決めること建物の全体(配置・部屋の並び・寸法や面積・主な材料など)細部の形・寸法・材料と、施工についての指定
誰が描くか設計者設計者
誰のためか建て主への説明工事施工者の工事と見積もり。できあがったら建て主にも説明する
工事費設計者が概算(おおよその額)を出す設計者が概算を出す。工事施工者は、この図面をもとに工事費を見積もる

※根拠:令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 一 本文・イ(6)(7)、二 本文・イ(4)(5)(6)

上の表に出てくる建て主や工事施工者のほか、建築図面を使う人の全体は、「建築図面とは何か|なぜ必要か・誰が使うか」の記事で解説しています。

基本設計では、何を決めるのか

基本設計では、建物の配置・部屋の並び・寸法や面積・主な材料など、建物の全体を決めます(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 一)。

その前にするのが、建て主の要望などを「設計条件」として整理することです(同 一)。

設計条件は、建て主の要望などの条件を、設計のために整理したものです(同 一)。

たとえば、耐震性能(地震への強さ)や設備の水準が入ります(同 イ(1))。

設備は、建物に備えつけた機器などのことです(デジタル大辞泉「設備」)。

そのうえで、次のことを考え、まとめます(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 一)。

  • 建物の配置(敷地のどこに建てるか)
  • 平面と空間の構成(部屋の並びや広がり)
  • 各部の寸法や面積
  • 建物として備える機能と性能
  • 主な材料や設備機器(照明・エアコン・給湯器などの機器)の種類と品質
  • 建物の内と外の意匠(形・色・配置などの工夫。デザイン。デジタル大辞泉「意匠」)

決めるのは主な材料までで、細部の形や材料を決めるのは、あとの実施設計です(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 二 イ(4))。

告示の表では、基本設計の仕事が7つに分かれています。

表に出てくる確認申請は、工事を始める前に、計画が法律に合っているかを確かめてもらう手続きです(建築基準法 第6条)。

建築主事などか、国土交通大臣や都道府県知事が指定した機関が、これを確かめます(建築基準法 第6条・第6条の2)。

建築主事は、都道府県や市などに置かれた、確認の事務を受け持つ人です(建築基準法 第4条)。

条例は、都道府県や市町村などが、法令の範囲内で議会の議決によって決めるきまりです(デジタル大辞泉「条例」)。

仕事何をするか
設計条件等の整理建て主の要望や条件を設計条件として整理する。要望があいまいなときや食い違うときは、建て主に説明を求めて話し合う
法令上の諸条件の調査と関係機関との打合せ建物に関する法律や条例の制限を調べる。確認申請に要ることを、前もって、確認をする役所など(告示の言葉では関係機関)と打ち合わせる
上下水道・ガス・電力・通信等の供給状況の調査敷地に水道やガス、電気、通信がどう来ているかを調べる
基本設計方針の策定どうまとめるかの方針を決め、建て主に説明する
基本設計図書の作成方針に基づき、建て主と話し合って基本設計の図書を作る
概算工事費の検討できた図書をもとに、工事費の概算を出す
基本設計内容の建築主への説明等途中で進み具合を報告し、できた図書を渡して中身を説明する

※根拠:令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 一 イ(1)〜(7)

上の表の2つ目と3つ目の仕事では、法律や条例の制限と、水道などの来かたを調べます。その条件の中で、建物の全体を決めるためです。

基本設計では、どの図面を作るのか

基本設計で作る図面は、配置図・平面図・立面図・断面図のように、建物の全体や敷地を表す図面です(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 一 ロ(1))。

決めるのが建物の全体なので、図面も全体を表すものになります。

木造2階建ての家を例に、基本設計の図面を並べてみましょう。

この図の図面は、どれも同じ縮尺でそろえています。縮尺は、図面を実物より縮めて描くときの、一定の比率です(デジタル大辞泉「縮尺」)。

たとえば1/100は、実物の100分の1の長さで描くことです。長さ1mの壁は、図面の上では1cmになります。

同じ木造2階建ての家の、配置図・1階平面図・南の立面図・断面図を、同じ縮尺で2行2列に並べた図
左上から配置図、1階平面図、立面図、断面図。どれも家の全体を1枚に描いている。家の形は例。編集部が作成

上の図の4つの図面は、それぞれ次のものを表します。

  • 配置図:敷地の中で、建物がどこに建つか
  • 平面図:各階を、ある高さの水平な面で切ったと仮定して、真上から見た形(精選版 日本国語大辞典「平面図」)
  • 立面図:建物の外側の1つの面を、横から見た形
  • 断面図:建物を縦に切ったと仮定して、その切り口を横から見た形

図の中の線と記号の意味も、見ておきましょう。

  • 配置図:点と線を交互に並べた線の四角が敷地の境、下の灰色の帯が道路、右上の丸に矢印が北の向きです
  • 平面図:点線の4分の1の円は、戸が開く向きです。壁の途中の細い2本の線は窓、階段の中の平行な線は1段ずつの段です
  • 立面図:「(南)」は、建物の南側の面を描いた図だという意味です。横の点線は、1階と2階の床の高さの位置です
  • 断面図:1階平面図の洗面所とLDKを横切る線で、建物を南北に切った形です。左が北で、細い横の線は天井です

LDKは、居間(リビング)・食堂(ダイニング)・台所(キッチン)をひとつにした部屋です(デジタル大辞泉「LDK」)。

一つひとつの図面の見方は、次の記事で解説しています。

国の工事の基準では、どの段階でどの図面を作るかが一覧になっています。

国土交通省の「建築工事設計図書作成基準」(この記事では作成基準と書きます)は、図面の書き方をそろえるための基準です(建築工事設計図書作成基準 1.1)。

この基準は、国の建物(官庁施設)の工事のために国土交通省が決めたものです(建築工事設計図書作成基準 1.2)。ふつうの家の図面が、この基準と同じ形とは限りません。

この基準は、図面と特記仕様書をまとめて「図面等」と呼んでいます(建築工事設計図書作成基準 1.1)。

特記仕様書は、その工事だけの決まりを書いた書類です。国の工事に共通の決まりは、「公共建築工事標準仕様書」などの標準仕様書にまとめてあります。

図面等に書くのは、標準仕様書に無いことや、標準仕様書と違うことです(建築工事設計図書作成基準 2.1)。

基準の4.2の表は、建築工事の図面等を32種並べ、基本設計と実施設計のそれぞれで作るものに○を付けています。

設備の図面は、この32種に入りません。

設備の図面の書き方は、別の「建築設備工事設計図書作成基準」が決めています(建築工事設計図書作成基準 1.2、建築設備工事設計図書作成基準 1.2)。

建築工事設計図書作成基準の4.2の表。32種の図面等の、基本設計と実施設計の欄の○
基本設計の欄と実施設計の欄の○を見比べる。出典:国土交通省「建築工事設計図書作成基準(令和2年改定)」4.2 の表を切り出して編集部が作成

上の4.2の表で、基本設計の欄に○があるのは、32種のうち次の10種です。

次の表の仕上表は、建物の外と内の仕上げを表す表です(建築工事設計図書作成基準の資料 資料2)。仕上げは物を作る最後の工程のことで(デジタル大辞泉「仕上げ」)、仕上表には、床・壁・天井などのいちばん表面の材料が並びます。

図面等何を表すか
表紙図面一式の表紙
特記仕様書その工事だけの決まり
敷地案内図敷地の場所
敷地求積図敷地の面積の計算
配置図敷地の中での建物の位置
面積表及び求積図建物の面積と、その計算
仕上表床・壁・天井などの表面の材料の一覧
平面図各階を水平に切って上から見た図
立面図建物の外側を横から見た図
断面図建物を縦に切った図

※「何を表すか」は、名前の意味を編集部が短く書いたもの

上の表の10種に、外壁のところを縦に切って詳しく描いた矩計図(かなばかりず)、部屋の壁を1面ずつ見た展開図、戸や窓の一覧の建具表などは入っていません。

それらは細部を表す図面で、実施設計で作ります(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 二 ロ(1))。

ここまでは、作成基準の一覧です。告示にも、基本設計でできあがる図面と書類の一覧があります。

告示では、各段階の仕事でできあがる図面と書類を「成果図書」と呼びます(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 一 ロ)。

2つは別々の書面の一覧です。

名前と数が少し違うので、この記事では、告示の一覧を「成果図書」、作成基準の一覧を「図面等」と書き分けます。

成果図書は、設計の種類ごとに「総合」「構造」「設備」の3つに分かれています(同 注3)。

総合は建物の見た目の設計と全体をまとめる設計、構造は骨組みの設計、設備は電気や水まわりなどの設計です。

総合の成果図書には、次の10があります(同 ロ(1))。

  • 計画説明書
  • 仕様概要書
  • 仕上概要表
  • 面積表及び求積図
  • 敷地案内図
  • 配置図
  • 平面図(各階)
  • 断面図
  • 立面図
  • 工事費概算書

仕様は建築物などのつくりや中身のことで(デジタル大辞泉「仕様」)、仕様概要書はそのあらましをまとめた書類です。仕上概要表には、名前のとおり、仕上げのあらましを表の形でまとめます。

構造と設備では、基本設計の成果図書は、計画説明書・設計概要書と工事費概算書が中心です(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 一 ロ(1))。

計画説明書には、設計のねらいと計画のあらましを書きます(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 注6)。

設計概要書には、仕様のあらましと計画の図を書きます(同 注7)。計画の図も入る点が、総合の仕様概要書との違いです。

骨組みと設備は、基本設計の段階では、説明の書類と、設計概要書の中の計画の図で表すということです。

その工事だけの決まりを書く特記仕様書は、「特記仕様書の読み方|工事概要・適用する仕様」の記事で解説しています。

実施設計では、何を決めるのか

実施設計では、基本設計で決めた全体をもとに、工事施工者がそのまま工事をできるところまで、細部を決めます(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 二)。

工事施工者が図書を正確に読み取り、設計の考えに合った工事をし、工事費を適正に見積もれるようにするためです(同 二)。

図書に具体的に書き表すのは、次のことです(同 二 イ(4))。

  • 建物とその細部の形・寸法・仕様(つくりや中身)
  • 工事に使う材料や設備機器の種類と品質
  • 特に指定しておく必要がある、施工についての情報

3つ目の施工についての情報には、工法・工事監理の方法・施工管理の方法などがあります(同 二 イ(4))。

工法は、工事の方法のことです(デジタル大辞泉「工法」)。

工事監理は、工事を設計図書と照らし合わせ、設計図書のとおりに行われているかを確かめることです(建築士法 第2条第8項)。

工事監理をする人を、工事監理者と呼びます(建築基準法 第2条第十一号)。

建築士は、国土交通大臣や都道府県知事の免許を受けて、建物の設計や工事監理などの仕事をする人です(建築士法 第2条第1項〜第4項)。

建築士でなければ設計できない建物の工事では、建て主が、建築士の中から工事監理者を定めます(建築基準法 第5条の6 第4項)。

施工管理は、国の工事の標準仕様書では、工事施工者が品質・工程・安全などを管理することです(公共建築工事標準仕様書 1.3.1)。

施工管理は、設計図書に合った建物を完成させるために行います(同 1.3.1)。

工事監理と施工管理は、どちらも「かんり」と読みますが、「監」と「管」の字が違う別の語です。

工事監理は工事が設計図書のとおりかを確かめる仕事で、施工管理は工事施工者が自分の工事を管理する仕事です。

一度決めたことは、実施設計ではもう変えないと思うかもしれません。

けれども実際には、実施設計の前や途中で建て主の要望を確かめ直し、必要なら設計条件を直します(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 二 イ(1))。

さらに、基本設計の内容に直しが要るものを整理し、建て主と話し合って、実施設計のもとになる事項を決めます(同 二 イ(3))。

直す点をまとめてから、細部に進むわけです。

告示の表では、実施設計の仕事が6つに分かれています(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 二 イ(1)〜(6))。

建て主の要望の確認、法令の詳しい調査と役所などとの打合せ、実施設計方針の策定、実施設計図書の作成、概算工事費の検討、建て主への説明です。

図書を作る仕事の中には、確認申請の図書を作ることも入っています(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 二 イ(4))。

工事の前に計画が法律に合うかを確かめてもらう図書も、実施設計の図面から作るわけです。

実施設計では、どの図面を作るのか

実施設計では、基本設計の図面を細かく描き直し、細部・建具・骨組みなどの図面を加えます(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 二)。

国の工事の基準では、実施設計の欄は32種すべてに○が付いていて、基本設計の10種との差は22種です(建築工事設計図書作成基準 4.2)。

細部の図面は、全体の図面より大きく描きます。

詳細図は、平面図などのふつうの図面では表しきれない部分の、材料や工法、形、寸法を描く図です(建築工事設計図書作成基準の資料 資料2)。

同じ基準の縮尺は、平面図・立面図・断面図が1/100か1/200、矩計図や詳細図が1/30か1/50です(建築工事設計図書作成基準 4.2)。

縮尺の分母が小さいほど、同じ長さが大きく描かれます。1/30で描くと、同じ長さが1/100のときの3倍より大きくなります。

細部を別の図面にするのは、細部を大きく描くためです。

基本設計に無かった図面だけを、実施設計で作ると思うかもしれません。

しかし平面図・立面図・断面図は、2つの段階の両方の成果図書にあります(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 一 ロ(1)・二 ロ(1))。

同じ平面図も、実施設計で描き込みを増やして作り直すということです。

平面詳細図は、平面図の形で描く詳細図で、あとの表の「平面・断面・部分詳細図」の1つです。縮尺は1/30か1/50で、平面図より大きく描きます(建築工事設計図書作成基準 4.2)。

同じ家の1階を、基本設計の平面図と、実施設計の平面詳細図で並べてみましょう。

同じ木造2階建ての家の1階を、基本設計の平面図と、実施設計の平面詳細図で並べた図
左が基本設計の平面図、右が実施設計の平面詳細図。右にだけある壁の厚さ、柱、細かい寸法を見る。家の形と描き込みは例。編集部が作成

上の図の左の平面図は、前の4枚の図の1階平面図と同じ間取りです。こちらには、建物全体の縦と横の寸法も入っています。

左の平面図の壁は、1本の太い線。右の平面詳細図では、壁の厚みを2本の線のあいだに描き、柱の位置と、柱と柱のあいだの寸法も入れています。

平面詳細図の読み方は、「平面詳細図の読み方|壁の構成・仕上げ・細かい寸法」の記事で解説しています。

このあとの表には、名前に「伏図(ふせず)」が付く図がいくつも出てくるので、先に意味を見ておきましょう。

伏図は、上から見た形に描いた図面です(精選版 日本国語大辞典「伏図」)。

ただし国の工事の基準では、名前に伏図と付いていても、天井伏図は下から見上げた形で描きます。各階床伏図も、いちばん下の階のほかは、見上げた形で描きます(建築工事設計図書作成基準の資料 資料2)。

基礎は、建物の重さを支えて地面に伝える、いちばん下の部分です(デジタル大辞泉「基礎」)。

部材は、建物などを組み立てている一つひとつの部分品です(デジタル大辞泉「部材」)。

梁(はり)は、柱などの上に水平に渡す部材で、柱の頭をつなぎ、上の床や屋根の重さを支えます(講談社「家とインテリアの用語がわかる辞典」「梁」)。

基礎伏図は基礎の配置を、各階床伏図は柱・梁・壁・床などの配置を表します(建築工事設計図書作成基準の資料 資料2)。

軸組図は、架構を表す図です(同 資料2)。

架構は、部材を組み立ててつくったもののことです(デジタル大辞泉「架構」)。

軸組図は、この骨組みを横から見た図で、柱や梁などの部材の位置が分かります(東建コーポレーション「土地活用・建築・宅建用語辞書」「軸組図」)。

この基準で、基本設計に無く、実施設計で加わるのは、次の22種です。

図面等何を表すか
図面目録図面の一覧
工事区分表同じ部分を別々の契約の工事で施工するとき、それぞれの工事の範囲が重ならないように分けた表
敷地現況図計画する前の敷地の状態
矩計図外壁のところを縦に切って、高さと材料の重なりを詳しく描いた図
平面・断面・部分詳細図ふつうの図面では表しきれない部分を、大きく詳しく描いた図
展開図部屋の中の壁を1面ずつ見た図
天井伏図天井の仕上げや高さと、照明や換気口などのための開口の位置を表した図
建具位置図戸や窓(建具)の位置
建具表建具の一覧
工作物等詳細図門・塀などの詳細
外構詳細図建物のまわりの舗装や排水などの詳細
植栽図植える木や芝
仮設計画図工事のあいだだけ使う囲いや出入口など
構造関係共通事項骨組みの図面に共通する決まり
基礎伏図基礎の配置
各階床伏図各階の柱・梁・床などの配置
軸組図柱や梁の組み方を横から見た図
部材断面リスト図柱や梁の断面の一覧
構造詳細図骨組みの部分の詳細
使用構造材料一覧表骨組みに使う材料の一覧
基礎・地盤説明書基礎と地盤の説明
施工方法等計画書骨組みの施工の方法などの計画

※「何を表すか」は、名前の意味を編集部が短く書いたもの

上の表の22種の多くは、建物の細部の図(矩計図・詳細図・展開図・天井伏図)、建具の図、建物のまわりの図、骨組みの図のどれかです。

告示の成果図書では、実施設計の総合に、矩計図・展開図・天井伏図・詳細図・建具表などが加わります(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 二 ロ(1))。

構造には、伏図・軸組図・構造計算書などが加わります(同 二 ロ(1))。

構造計算書は、建物の重さや地震・台風・積雪などの力に耐えるのに要る骨組みの材料の量などを、基準に従って計算した書類です(デジタル大辞泉「構造計算書」)。

電気・給排水衛生・空調換気の設備では、実施設計で系統図と各階の平面図が加わります(同 二 ロ(1))。

給排水衛生の設備は、水を送る給水、使った水を流す排水、お湯を送る給湯などの設備をまとめた呼び名です(建築設備工事設計図書作成基準 7.1・7.2)。

空調換気の設備には、空気調和の設備と換気の設備があります(同 7.1)。空気調和は部屋の温度と湿度を整える技術、換気は中の空気を外の空気と入れかえることです(精選版 日本国語大辞典「空気調和」、デジタル大辞泉「換気」)。

系統は、ひとつながりになって働くようにまとめたもののことで、「電気系統」のように使います(デジタル大辞泉「系統」)。

系統図は、設備を系統ごとにまとめて描いた図面で、位置関係や配管の順序が分かるように描かれます(東建コーポレーション「土地活用・建築・宅建用語辞書」)。

配管は、ガスや水道などの管を敷くこと、また敷いた管のことです(デジタル大辞泉「配管」)。

32種の図面等の並びと、どの順に束ねられるかは、「建築図面一式の並び|表紙・図面目録から設備図まで」の記事で解説しています。

戸建ての木造住宅では、どの図面を作るのか

戸建ての木造住宅でも、基本設計では全体の図面を、実施設計では細部と骨組みの図面を作ります。

戸建ての木造住宅の成果図書は、ほかの建物とは別の一覧です(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 一 ロ(2)・二 ロ(2))。

段階総合構造設備
基本設計仕様概要書・仕上概要表・配置図・平面図(各階)・断面図・立面図・工事費概算書仕様概要書・工事費概算書仕様概要書・設備位置図(電気、給排水衛生及び空調換気)・工事費概算書
実施設計建築物概要書・仕様書・仕上表・面積表・敷地案内図・配置図・平面図(各階)・断面図・立面図(各面)・矩計図・展開図・天井伏図・建具表・工事費概算書・その他確認申請に必要な図書仕様書・基礎伏図・床伏図・はり伏図・小屋伏図・軸組図・構造計算書・工事費概算書・その他確認申請に必要な図書仕様書・設備位置図(電気、給排水衛生及び空調換気)・工事費概算書・その他確認申請に必要な図書

※根拠:令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 一 ロ(2)・二 ロ(2)

この表の図書の名前は、告示の戸建ての木造住宅の一覧のとおりです。建築物概要書や面積表のように、ほかの建物の一覧と名前が違うものもあります。

小屋伏図の小屋は、屋根を支える屋根裏の骨組み(小屋組)のことです(デジタル大辞泉「小屋組」)。はり伏図の「はり」は、梁のことです。

表の床伏図・はり伏図・小屋伏図では、名前のとおり、床・梁・小屋の部材の並びを伏図で表します。

設備位置図は、名前のとおり、電気・給排水衛生・空調換気の設備をどこに置くかを表します。

基本設計の構造は仕様概要書と概算だけで、骨組みの図面は表に入っていません。

骨組みの伏図(基礎伏図・床伏図・はり伏図・小屋伏図)と軸組図は、実施設計で加わります。

ただし、どの建物でも表の図書をすべて作るとは限りません。

作らない図書があるかどうかは、建物の計画しだいです(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 一 ロ(2)・二 ロ(2) 注1)。

基礎・柱・梁などの名前は、「建物の骨組みの部位名|基礎・柱・梁・床」の記事で解説しています。

工事が始まってから、設計者は何をするのか

工事の段階でも、設計者は、質問に答え、施工図などを確かめ、材料選びの助言をします(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 三)。

告示の扱いでは、これらは、工事の段階で設計者が行うのが理にかなう仕事で、実施設計の業務の1つです(同 三)。

施工図は、国の工事の標準仕様書では工事のための詳細な図で、工事施工者が工事の前に作ります(公共建築工事標準仕様書 1.1.2・1.2.3)。

工事は、設計図書だけでなく、施工図などにも基づいて行います(同 1.5.1)。

3つの仕事は、次のとおりです。

  • 設計の考えを正しく伝えるための、質問への回答や説明
  • 設計の考えが正しく表れているかを確かめる必要がある部分の、施工図などの確認
  • 材料や設備機器(色・柄・形など)を選ぶときの、設計の考えからの検討と助言

どれも、設計の考えを工事に正確に伝えるための仕事です(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 三)。

質問への回答や説明は、建て主を通じて、工事監理者と工事施工者に行います(同 三)。

設計者が確かめるのは、設計の考えが正しく表れているかを確かめる必要があると、設計図書などで定めた部分の施工図です(同 三)。

この仕事と、工事監理は別の仕事です。告示は、設計の仕事(別添一 1)と工事監理の仕事(別添一 2)を分けて書いています(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 三・2 一)。

工事監理は、工事を設計図書と照らし合わせて、そのとおりに行われているかを確かめる仕事です(建築士法 第2条第8項)。

工事の段階で作る施工図と、できあがったときの図面は、「設計図・施工図・竣工図|図面の段階」の記事で解説しています。

まとめ

建物の設計は、全体を決める基本設計から、工事ができるところまで細かく決める実施設計へ進みます。

2つの段階で図面が違うのは、図面の使いみちが違うからです。

建て主に全体を説明して概算を出す基本設計では、配置図・平面図・立面図・断面図など、全体を表す図面を作ります。

工事施工者が読み取って工事と見積もりをする実施設計の図面は、基本設計の図面を細かく描き直したものです。

そのうえで、細部・建具・建物のまわり・骨組みの図面を加えます。

国の工事の基準の4.2で○が付くのは、基本設計の欄が10種、実施設計の欄が32種すべてです。

戸建ての木造住宅でも、基本設計で全体の図面を、実施設計で細部と骨組みの図面を作ります。

図面ができたあとも、設計者は工事の段階で、質問に答え、決められた部分の施工図を確かめます。

確かめの問い

読み終えたら、次の5つに答えてみてください。

  1. 基本設計と実施設計のうち、先に行うのはどちらですか。
  2. 工事施工者が図面を読み取って工事をし、工事費を見積もれるように細かく決めるのは、どちらの段階ですか。
  3. 建築工事設計図書作成基準の4.2で、矩計図・展開図・天井伏図・建具表を作るのは、どちらの段階ですか。
  4. 「実施設計では、どの図面を作るのか」の節で、基本設計の平面図と実施設計の平面詳細図を並べた図をくらべてください。実施設計の平面詳細図にだけ描かれているものを2つ挙げてください。
  5. 工事の段階で設計者が施工図などを確かめる仕事は、工事監理と同じ仕事ですか。

答え

  1. 基本設計です。実施設計は、基本設計に基づいて行います。
  2. 実施設計です。
  3. 実施設計です。基本設計の欄には○がありません。
  4. 壁の厚さ、柱の位置、柱と柱のあいだの細かい寸法のうち、2つです。
  5. 別の仕事です。施工図などの確認は実施設計の業務で、工事監理は工事を設計図書と照らし合わせて確かめる仕事です。

続けて読む記事

この記事で名前だけ出た事柄は、次の記事で解説しています。

図面と設計図書

実施設計で加わる図面

工事の段階の図面


*2026年9月29日と30日に原文で確かめた内容です。確かめた原文は次のとおりです。

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この記事について

PERSC編集部が、建築の制作に関わる知識を実務目線で整理しています。内容は公開・更新日時点の情報にもとづきます。誤りや古い情報にお気づきの場合はお問い合わせよりご連絡ください。

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