
特記仕様書の読み方|工事概要・適用する仕様
特記仕様書(とっきしようしょ)とは何で、どう読めばよいのでしょうか。
特記仕様書は、1つの工事だけの決まりを、文章で書いた書類です。
「特記」は、特別に書き記すことです(デジタル大辞泉「特記」)。
特記仕様書に何をどの順に書くかは、国土交通省が基準を決めています(建築工事設計図書作成基準 4.3)。
この基準は、国の建物の工事のために国土交通省が決めたものです(建築工事設計図書作成基準 表紙・1.2)。ふつうの家の特記仕様書が、この基準と同じ形とは限りません。
その基準では、特記仕様書の中に、工事の名前、工事の場所、建てる物の中身、そして特記仕様書に書いていない事項をどの標準仕様書に任せるかを、この順に書きます。標準仕様書(ひょうじゅんしようしょ)は、多くの工事に共通する決まりをまとめた仕様書です。
その順に上から読むと、どこに、何を、どれだけの広さで建てる工事なのかが分かります。
特記仕様書とは、どんな書類か
特記仕様書は、1つの工事のためだけに、材料や工事のやり方などの決まりを文章で書いた書類です。
工事の中身や手順を説明した書類を、まとめて仕様書(しようしょ)といいます(デジタル大辞泉「仕様書」)。
建物を建てる工事では、線で描く図面と一緒に、仕様書も作ります。
図面と仕様書を合わせた呼び名が、設計図書(せっけいとしょ)です(建築士法 第2条第6項)。
括弧の中には、その事実の出典を書いています。「第2条第6項」「4.3(2)3)③」のような数字と記号は、その法律や資料の中の項目の番号です。
「同」は、すぐ前に挙げた資料と同じ、という意味です。
国の建物の工事では、図面と特記仕様書をまとめて「図面等」と呼びます(建築工事設計図書作成基準 1.1)。図面等には1番目から並べる順番が決まっていて、特記仕様書は図面と同じ並びの中に入ります(同 4.2)。
1番目は図面等の表紙、2番目は図面目録(図面の一覧)で、特記仕様書は3番目です(同 4.2)。
図面等の並び全体は、「建築図面一式の並び|表紙・図面目録から設備図まで」の記事で解説しています。
特記仕様書を作るのは、建物を設計する人(設計者)です。
設計とは、自分の責任で設計図書を作ることだからです(建築士法 第2条第6項)。
法律で決まった大きさや造りの建物では、設計は建築士がしなければなりません(建築士法 第3条〜第3条の3)。建築士は、国や都道府県の免許を受けて、建物の設計などの仕事をする人です(建築士法 第2条第1項〜第4項)。
設計には、建物の全体を決める基本設計と、工事ができるところまで細かく決める実施設計の2つの段階があります(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 一・二)。
基本設計は全体を決める段階ですが、主な材料と、設備の機器の種類と品質も、この段階で検討します(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 一)。
設備は、建物に設ける電気・ガス・給水・排水・換気・暖房・冷房などの設備のことです(建築基準法 第2条第三号「建築設備」)。
この2つの段階のどちらでも、特記仕様書を作ります(建築工事設計図書作成基準 4.2)。
できた特記仕様書に従って工事をするのは、工事を頼む側から工事を請け負った会社(受注者)です(公共建築工事標準仕様書 1.1.1(2))。国の建物の工事では、工事を頼む側は国の役所です(公共建築工事標準仕様書 表紙)。
この記事では、国土交通省の「建築工事設計図書作成基準」の書き方で読んでいきます。
国の役所の建物を建てたり直したりする工事を、官庁営繕(かんちょうえいぜん)と呼びます(建築工事設計図書作成基準 表紙)。営繕は、建物を造ったり修理したりすることです(デジタル大辞泉「営繕」)。
この記事では、国土交通省が官庁営繕のために決めた基準を、まとめて「国の工事の基準」と呼びます。
特記仕様書と標準仕様書は、どう違うのか
特記仕様書が1つの工事だけの決まりを書くのに対して、多くの工事に共通する決まりを前もってまとめた仕様書が、標準仕様書です。
国の建物の建築工事には、国土交通省が決めた標準仕様書が3つあります(建築工事設計図書作成基準 2.1(1))。
- 「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」:建物の新築(新しく建てること)と増築(建て増し)に使う(公共建築工事標準仕様書 1.1.1(1))
- 「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)」:改修の工事のもの
- 「公共建築木造工事標準仕様書」:木造の工事のもの
上の一覧の2つ目にある改修は、今ある建物の悪い所を直すことです(デジタル大辞泉「改修」)。
名前の「(建築工事編)」は、工事の分野を表します。建物の電気や機械の設備の工事には、別に「電気設備工事編」と「機械設備工事編」があります(建築設備工事設計図書作成基準 2.1(1))。
標準仕様書で決まっている事項は、図面や特記仕様書には書きません(建築工事設計図書作成基準 2.1(2))。
ただ、標準仕様書の中には、「特記による」と書いた所があります。そこで何を使うかを、標準仕様書では決めずに、工事ごとの書類に任せているのです。
標準仕様書の言う「特記」は、特記仕様書や図面などに書かれた事項のことです(公共建築工事標準仕様書 1.1.2(ス))。
そのため特記仕様書には、その工事の中身と、標準仕様書が「特記による」として任せたこと、標準仕様書に無いこと・違うことが書かれます。
特記仕様書には、どの標準仕様書のどの版を使うかも書きます(建築工事設計図書作成基準 4.3(3)1)、建築工事設計図書作成基準の資料 資料3)。
標準仕様書には版があり、同じ名前でも中身が改められるためです。
図面と標準仕様書の分担は、「設計図書とは|図面と仕様書」の記事で解説しています。
特記仕様書には、何が書いてあるのか
国の工事の基準では、新営工事の特記仕様書に、工事名称・工事概要・建築工事仕様の3つを書きます(建築工事設計図書作成基準 4.3(1)1))。
新営工事(しんえいこうじ)は、国の工事の基準が、改修工事(今ある建物を直す工事)と分けて使う呼び名です(建築工事設計図書作成基準 4.3(1))。
| 部分 | 書くこと |
|---|---|
| 工事名称 | 工事の名前 |
| 工事概要 | 工事場所(工事の場所)・敷地面積(建物を建てる土地の広さ)・工事種目(工事の対象になる物の一覧) |
| 建築工事仕様 | その工事に使う標準仕様書と、標準仕様書に無いこと・違うこと |
上の表の工事概要は、どこに、何を建てるかを書く部分です。
建築工事仕様には、材料や工事のやり方の決まりを書きます。
書き方の見本として、架空の工事を使った記載例もあります(建築工事設計図書作成基準の資料 資料3)。
記載例が載っているのは、基準とは別の「建築工事設計図書作成基準の資料」という文書です。この資料は、国土交通省が、基準と同じく官庁営繕のために作ったものです(建築工事設計図書作成基準の資料 表紙)。
記載例の工事種目には、新しく建てる建物のほか、建て増す建物や取りこわす建物も並んでいます(建築工事設計図書作成基準の資料 資料3)。新しく建てる工事の中で、建て増しや取りこわしも一緒に行う例です。
記載例の最初のページは、次のような形です。

記載例では、上のページの「Ⅰ 工事概要」のあとに、「Ⅱ 建築工事仕様」が続きます。
ここからは、この記載例を上から順に読んでいきましょう。
工事概要のいちばん上には、何が書いてあるのか
記載例のいちばん上には、工事の名前、工事の場所、敷地の広さが、この順に書いてあります。
下の図の①②③の順に、上から読みましょう。
丸で囲んだ①②③は、編集部が付けた番号。その右の「1」「2」は、記載例そのものが工事概要の項目に付けた番号です。

上の図の①の「○○○○ 工事 特記仕様書」が、工事名称です。
○○○○の所に、工事の名前が入ります。
②の工事場所は、登記上の地名と地番で書きます(建築工事設計図書作成基準 4.3(2)1))。
登記は、土地や建物の場所や広さ、持ち主を、国の帳簿(登記簿)に記録することです。
地番(ちばん)は、登記簿の上で、土地1つごとに付けた番号です(デジタル大辞泉「地番」)。
地番は、ふだんの住所と同じとは限りません。市街地では、住所の表し方に、地番とは別の住居番号を使うことがあります(日本大百科全書「地番」)。
記載例では「○○県○○市○○町○○丁目○番地○号」と、県から号まで続けて書かれています。
③の敷地面積は、建物を建てる土地(敷地)の広さです。
記載例では「○○,○○○.○○㎡」と、平方メートルで書かれています。
敷地面積の測り方は、「建築図面の面積の種類|敷地面積・建築面積・延べ面積」の記事で解説しています。
工事概要の工事種目の1行目は、どう読むのか
工事種目の1行目は、左から、名称・構造・階数・工事種別・数量の順に読んでください。
工事種目は、記載例では工事概要の「3」の番号が付いた項目で、工事の対象になる物の一覧です。
一覧は、建物、工作物、立木竹の順に並べます(建築工事設計図書作成基準 4.3(2)2))。
工作物は、地上や地中に作り付けた物のことです(デジタル大辞泉「工作物」)。工事種目では建物と分けて並べるので、ここでは門・塀・舗装など、建物以外の物を指します(建築工事設計図書作成基準 4.3(2)2)、建築工事設計図書作成基準の資料 資料3)。
立木竹(りゅうぼくちく)は、土地に生えたままの木(立木)と、竹のことです(日本大百科全書「立木」)。
記載例の(13)の樹木のように、新しく木を植える工事も、工事種目に入ります(建築工事設計図書作成基準の資料 資料3)。
建物は1棟ずつ、名称・構造・階数・工事種別・数量・面積の順に書きます(建築工事設計図書作成基準 4.3(2)2)①)。記載例では、面積だけが1行目の下の欄に分かれていて、1行目に並ぶのは面積の前までの5つです(建築工事設計図書作成基準の資料 資料3)。
工事種目の物には、(1)(2)…と番号が付いています。記載例の(1)の1行目に、5つの順で番号を付けると次のようになります。

上の図の①の名称は「庁舎」で、役所の建物のことです(精選版 日本国語大辞典「庁舎」)。
名称は、国の財産の種類を並べた表(国有財産区分種目表)を見て決めます(建築工事設計図書作成基準 4.3(2)3)①)。物がいくつもあるときは、その表に並んだ種類の順に書きます(同)。
②の構造は「鉄骨鉄筋コンクリート造」です。
構造の欄は、建物の骨組みを何で作るかの種類を表します。
鉄骨鉄筋コンクリート造は、鉄骨のまわりに鉄筋を配し、コンクリートで固めて作る構造(家とインテリアの用語がわかる辞典「鉄骨鉄筋コンクリート造」)。鉄骨は、鉄材で組んだ骨組みです(精選版 日本国語大辞典「鉄骨」)。
鉄筋は、コンクリートの中に埋め込んで強くする鉄の棒です(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「鉄筋」)。
構造は、略した記号では書きません(建築工事設計図書作成基準 4.3(2)3)②)。
RC(鉄筋コンクリート)や S(鉄骨)とは書かず、「鉄筋コンクリート造」のように書きます。
構造の種類は、「建物の構造の種類|木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造」の記事で解説しています。
③の階数は「○階建(地下○階 塔屋○階)」です。
階数は、地上の階の数を「○階建」と書き、1階だけの建物は「平屋建」と書きます(建築工事設計図書作成基準 4.3(2)3)③)。
塔屋(とうや)は、建物の屋上に突き出した部分のことです。エレベーターの機械室などがあります(デジタル大辞泉「塔屋」)。
塔屋が2つ以上の階に分かれるときは、記載例の面積の欄のように、塔屋1階、塔屋2階…と数えます(建築工事設計図書作成基準の資料 資料3)。
かっこの中の地下と塔屋の階数は、地下の階(地階)や塔屋がある場合に書き足すものです。
(1)の建物は、かっこの中に地下と塔屋の両方が書かれているので、どちらもあると読めます。
④の工事種別は「新築」です。新築は、新しく建物を建てることです(デジタル大辞泉「新築」)。
工事種別は、新築か増築(建て増し)かなど、その建物に何をする工事かを表します(建築工事設計図書作成基準 4.3(2)3)④)。
⑤の数量は「1棟」です。
建物の数量の単位は、棟です(建築工事設計図書作成基準 4.3(2)3)⑤)。
①から⑤をつなぐと、(1)の1行目は「鉄骨鉄筋コンクリート造で、地下と塔屋のある○階建ての庁舎を、1棟新しく建てる」と読めます。
工事概要の面積の欄には、何が書いてあるのか
1行目の下の欄には、建物の面積が、国有財産法と建築基準法の2つの法律の決まりで測って書いてあります(建築工事設計図書作成基準 4.3(2)4))。
国有財産法は、国の財産の管理と処分について、基本の事項を定めた法律です(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「国有財産法」)。
建築基準法は、建物の敷地・構造・設備・用途について、最低の基準を定めた法律です(建築基準法 第1条)。
なぜ2つの法律の面積を書くのか、基準には理由が書かれていません。2つの法律の側には、それぞれ別に面積の測り方の決まりがあります(建築工事設計図書作成基準 4.3(2)4))。
下の図の①から④の順に、上から見ます。

上の図の①の建面積(たてめんせき)は、国有財産法の側で使う面積の行です。その測り方は、財務省の「国有財産台帳等取扱要領について」という別の文書によります(建築工事設計図書作成基準 4.3(2)4))。
その文書では、建面積は、原則として1階の床面積です(国有財産台帳等取扱要領について 第1 6(4))。床面積は、各階の、壁などの中心線で囲まれた部分の広さです(建築基準法施行令 第2条第1項第三号)。
行の右に「(国有財産法による)」と書かれています。
②の建築面積は、建築基準法の決まりで測った面積で、建物を真上から見たときの広さです(建築基準法施行令 第2条第1項第二号)。
建面積は1階の床の広さ、建築面積は真上から見た広さで、測る所が違います。別の決まりで測るので、別の行に書きます。
③の延べ面積は、各階の床面積を合計した広さです(建築基準法施行令 第2条第1項第四号)。
行の右には「(国有財産法及び建築基準法による)」とあり、記載例では両方の延べ面積を1行で表しています。
国有財産法の側の延べ面積も、測る決まりは建築基準法施行令の延べ面積と同じです(国有財産台帳等取扱要領について 第1 6(4))。そのため、2つの延べ面積は1つの値で表せます。
④は、階ごとの面積です。
延べ面積は、合計の面積と各階の面積の両方を書く決まりなので、③の下に④が続きます(建築工事設計図書作成基準 4.3(2)4)①②)。
面積は平方メートルで書き、小数点以下第2位までとし、第3位より下は切り捨てます(建築工事設計図書作成基準 4.3(2)4)④)。
同じ敷地に、同じ大きさと中身の建物が2棟以上ある場合に書くのは、合計の面積と1棟の面積です(建築工事設計図書作成基準 4.3(2)4)③)。
今ある建物に建て増す工事では、面積の欄の形が変わります。
(2)から(4)にも、建物が1棟ずつ同じ形で並びます。(2)は宿舎、(3)は自動車車庫、(4)は渡り廊下です(建築工事設計図書作成基準の資料 資料3)。
記載例の(3)は自動車車庫を増築する工事で、面積が増築部分・既存部分・合計の3つの列に分かれています(建築工事設計図書作成基準の資料 資料3)。
建築面積と延べ面積の測り方も、「建築図面の面積の種類|敷地面積・建築面積・延べ面積」の記事で解説しています。
工事概要で、建物のあとには何が並ぶのか
建物のあとに並ぶのは、門や塀などの工作物と、木や竹などの立木竹です(建築工事設計図書作成基準 4.3(2)2))。
記載例では、立木竹のあとに、(15)電気設備・(16)機械設備と、(17)取りこわす倉庫も並んでいます(建築工事設計図書作成基準の資料 資料3)。設備や取りこわす建物を、建物・工作物・立木竹の順のどこに置くかは、基準には書かれていません(建築工事設計図書作成基準 4.3(2)2))。
工作物と立木竹は、名称・構造・工事種別・数量の順に書きます(建築工事設計図書作成基準 4.3(2)2)②)。
立木竹には、構造は書きません。
記載例では、(5)から(17)までがこの部分です。

上の図の(5)の行には、「門 鉄筋コンクリート造(扉付き) 新設 1箇所」と書かれています。
これは、「鉄筋コンクリート造で扉の付いた門を、1箇所新しく作る」と読めます。
工作物の数量の単位は、箇所です(建築工事設計図書作成基準 4.3(2)3)⑤)。
記載例では、(6)の囲障や(8)の舗装のように、数量を「一式」と書いた工作物もあります(建築工事設計図書作成基準の資料 資料3)。
囲障(いしょう)は、塀や垣根などの囲いのことです(精選版 日本国語大辞典「囲障」)。一式は、ひとそろい全部という意味です(デジタル大辞泉「一式」)。
立木竹の数量は、本数か「一式」で書きます(建築工事設計図書作成基準 4.3(2)3)⑤)。
記載例の(13)の樹木と(14)の芝張りは、工事種別が「新植」、数量が「一式」です。芝は木でも竹でもありませんが、記載例では、植える物として樹木と同じ書き方で並んでいます(建築工事設計図書作成基準の資料 資料3)。
新植は、新しく植えることです。
(15)の電気設備と(16)の機械設備も、この一覧に並んでいます。
電気設備に入るのは、照明やコンセント、発電、通信などの設備です(建築設備工事設計図書作成基準 6.1)。機械設備には、空気調和(空調)、換気、給水、排水、消火、エレベーターなどの設備が入ります(同 7.1)。
(17)の倉庫は木造平屋建ての建物で、工事種別が「取りこわし」です。
工事種目には、新しく作る物だけでなく、取りこわす物も書かれるということです。
建築工事仕様の最初の文は、どの仕様を適用すると言っているのか
建築工事仕様の最初の文は、「図面と特記仕様書に書いていないことは、名前を挙げた標準仕様書の決まりに従う」と言っています。
「Ⅱ 建築工事仕様」の最初には、その工事に使う標準仕様書を書く決まりだからです(建築工事設計図書作成基準 4.3(3)1))。
記載例では、木造以外の新営工事、木造の新営工事、改修工事の3つに分けて、書き方を示しています。

上の図の一番上にある、木造以外の新営工事の(1)を読んでみましょう。
文は「図面及び本特記仕様書に記載されていない事項は、……「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)(○○年版)」……による。」です。
……で省いた所には、この標準仕様書を決めた国土交通省の部署の名前(大臣官房官庁営繕部)と、決めた年月が書かれています(建築工事設計図書作成基準の資料 資料3)。
文の中の「(以下「標準仕様書」という。)」は、長い名前を、このあとは短く「標準仕様書」と呼ぶ、という書き方です。
この文は、3つに分けて読みます。
1つ目の「図面及び本特記仕様書に記載されていない事項は」は、「図面にもこの特記仕様書にも書いていないことは」という意味です。
2つ目の「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)(○○年版)」は、使う標準仕様書の名前と版を表します。
3つ目の「による」は、「その標準仕様書の決まりに従う」という意味です。
3つをつなぐと、「図面と特記仕様書に書いていないことは、○○年版の公共建築工事標準仕様書の決まりに従う」と読めます。
特記仕様書を読めば、その工事の決まりが全部分かる、と思うかもしれません。
しかし、この最初の文は、特記仕様書に書いていない事項があることを前提にしています。
そうした事項は、この文で名前を挙げた標準仕様書のほうに書かれているのです。
木造の新営工事では、まず「公共建築木造工事標準仕様書」に従うと書きます(建築工事設計図書作成基準の資料 資料3)。
それにも書いていない事項は、「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」に従います。
改修工事で先に使うのは、「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)」です(建築工事設計図書作成基準の資料 資料3)。
改修の標準仕様書にも書いていない事項は、木造の場合と同じく、公共建築工事標準仕様書(建築工事編)に従います(同)。
木造以外の新営工事の(1)には、後半にもう1文があります。図面にも特記仕様書にも公共建築工事標準仕様書にも書いていない事項は、「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)」に従う、という文です(建築工事設計図書作成基準の資料 資料3)。
この1文は、使う必要が無ければ書きません(建築工事設計図書作成基準の資料 資料3 の※1)。どんな新営工事で使う必要があるかは、資料には書かれていません。
建築工事仕様には、ほかに何が書かれるのか
建築工事仕様には、使う標準仕様書の名前のほかに、標準仕様書が任せた事項や、標準仕様書と違う決まりが書かれます。
電気と機械の設備の工事の特記仕様書は、建築の工事とは別のものです。建物の工事に電気設備工事と機械設備工事を含む場合は、その工事にはそれぞれの特記仕様書を使う、と書きます(建築工事設計図書作成基準 4.3(3)2))。
そのほかに書くのは、次の4つです(建築工事設計図書作成基準 4.3(3)3))。
| 書くこと | 意味 |
|---|---|
| 一般共通事項 | 工事全体に共通する事項(基準は項目の名前だけを挙げています) |
| 標準仕様書にて特記することとしている事項 | 標準仕様書が「特記による」として、特記仕様書などに任せた事項 |
| 標準仕様書に規定されていない材料 | 標準仕様書に無い材料を使う場合の、その材料 |
| 特記仕様書にて標準仕様書の記載事項を打ち消す場合のその旨 | 標準仕様書の決まりを、この工事では使わないこと |
上の表の2つ目の「特記による」は、先に見たとおり、標準仕様書のあちこちに出てくる言い方です。
たとえば、建物の室内の空気に含まれる化学物質の濃度を測るかどうかは、標準仕様書では決めず、特記で決めます(公共建築工事標準仕様書 1.5.10)。
4つ目の「打ち消す」は、標準仕様書の決まりを、この工事では使わないと書くことです。
特記仕様書で標準仕様書の決まりを打ち消すと、同じ事項について、2つの書類の中身が違うことになります。
国の工事では、書類どうしで中身が違うとき、特記仕様書を標準仕様書より先に使います(公共建築工事標準仕様書 1.1.1(4))。
書類どうしの順番の全体は、「設計図書とは|図面と仕様書」の記事で確かめてください。
改修工事と設計変更では、何が変わるのか
改修工事では書く項目が少し変わり、設計変更(工事の途中で設計を変えること)では変更特記仕様書という別の特記仕様書を作ります。
改修工事では、工事概要に工事内容を足し、建築工事仕様の代わりに建築改修工事仕様を書きます(建築工事設計図書作成基準 4.3(1)2))。
建築改修工事仕様は、改修工事での建築工事仕様にあたる部分で、書き方の決まりは建築工事仕様と同じです(建築工事設計図書作成基準 4.3(3))。違うのは、最初の文で、改修工事の標準仕様書を先に使うと書く所です(建築工事設計図書作成基準の資料 資料3)。
工事内容に何を書くかについては、基準は項目の名前だけを挙げています。
設計変更では、変更特記仕様書を作ります(建築工事設計図書作成基準 6.1(2))。
変更特記仕様書の中身は、工事名称・工事概要・建築工事仕様に、変更内容という部分を加えた4つです(同 6.1(2))。変更内容には、何をどう変えるかを、工事種目ごとに書きます(同 6.1(2)3))。
変更特記仕様書の工事種目では、工事種別の欄に、新築や増築の代わりに「変更一式」と書きます(建築工事設計図書作成基準 6.1(2)1))。ここでの「一式」も、ひとそろい全部という意味です(デジタル大辞泉「一式」)。
建築工事仕様には、「図面及び変更内容に記載されていない事項は原設計による。」と書きます(建築工事設計図書作成基準 6.1(2)2))。
原設計は、変更する前の設計のことです。
つまり、図面にも変更内容にも書いていない事項は、変える前の設計のまま、と読めます。
改修工事と設計変更の図面は、「改修工事の図面|撤去・新設の表し方」(準備中)と「設計変更の図面|原設計と変更設計」(準備中)の記事で解説します。
まとめ
特記仕様書は、1つの工事だけの決まりを文章で書いた書類です。
国の工事の基準では、共通の決まりは標準仕様書にまとめてあります。
そのため特記仕様書には、その工事の中身と、標準仕様書が任せたこと、標準仕様書に無いこと・違うことを書きます。
中身は、工事名称・工事概要・建築工事仕様の3つの部分です。
工事概要の工事種目では、建物を名称・構造・階数・工事種別・数量・面積の順に読み、そのあとに工作物と立木竹が続きます。
建築工事仕様の最初の文は、書いていない事項をどの標準仕様書に任せるかを表しています。
確かめの問い
読み終えたら、次の5つに答えてみましょう。
- 工事種目(1)の1行目の図で、建物の骨組みの種類が書かれているのは①〜⑤のどれですか。
- 階数の欄に「平屋建」とあれば、その建物は地上何階ですか。
- 記載例の(17)の倉庫は、新しく建てる物ですか、取りこわす物ですか。
- 建築工事仕様の最初の文にある「図面及び本特記仕様書に記載されていない事項は、……による」とは、どういう意味ですか。
- 同じ事項について、特記仕様書と標準仕様書の中身が違っていたら、どちらを先に使いますか。
答え
- ②です。「鉄骨鉄筋コンクリート造」と書かれています。
- 地上1階です。1階だけの建物を「平屋建」と書きます。
- 取りこわす物です。工事種別に「取りこわし」とあります。
- 図面と特記仕様書に書いていないことは、名前を挙げた標準仕様書の決まりに従う、という意味です。
- 特記仕様書です(国の工事の場合)。
続けて読む記事
- 「設計図書とは|図面と仕様書」:図面と仕様書がそれぞれ何を決め、書類どうしが食い違ったときにどれを先に使うか
- 「建築図面一式の並び|表紙・図面目録から設備図まで」:表紙・図面目録・特記仕様書のあとに、どんな図面がどの順に続くか
- 「建築図面の面積の種類|敷地面積・建築面積・延べ面積」:敷地面積・建築面積・延べ面積を、それぞれどう測るか
- 「建物の構造の種類|木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造」:工事種目の構造の欄に書かれる、骨組みの材料による建物の分け方
- 「仕上表の下地と仕上げの表記|材料の名前の書き方」:図面に書く材料の名前を、標準仕様書の書き方に合わせる決まり
- 「建築図面とは何か|なぜ必要か・誰が使うか」:図面と仕様書を、誰が、建物ができるまでのどの段階で使うか
*2026年9月29日と30日に原文で確かめた内容です。
国土交通省の資料は、「建築工事設計図書作成基準(令和2年改定)」「建築工事設計図書作成基準の資料(令和2年改定)」「建築設備工事設計図書作成基準(令和6年改定)」「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」「令和6年国土交通省告示第8号」、財務省の資料は「国有財産台帳等取扱要領について」によります。法律は、「建築士法」「建築基準法」「建築基準法施行令」によります。
語の意味は、コトバンクで開ける辞典で確かめました。デジタル大辞泉は「特記」「営繕」「地番」「仕様書」「改修」「工作物」「新築」「塔屋」「一式」、精選版 日本国語大辞典は「庁舎」「鉄骨」「囲障」、日本大百科全書は「立木」「地番」、家とインテリアの用語がわかる辞典は「鉄骨鉄筋コンクリート造」、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典は「鉄筋」「国有財産法」です。
国土交通省の基準と標準仕様書は、国の建物の工事(官庁営繕)のためのものです。
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この記事について
PERSC編集部が、建築の制作に関わる知識を実務目線で整理しています。内容は公開・更新日時点の情報にもとづきます。誤りや古い情報にお気づきの場合はお問い合わせよりご連絡ください。

