
設計図・施工図・竣工図|図面の段階
設計図・施工図・竣工図は、どれも建物の図面です。では、この3つは何が違うのでしょうか。
違うのは、作られる時期と、作る人と、何のために作るかです。
図面は、建物などのつくりや工事の手順を、細かく示した図です(デジタル大辞泉「図面」)。
文の後ろの括弧には、その事実の出どころとして、辞典・法律・資料の名前と、その中の条や項の番号を書いています。
設計図は、工事の前に、建物を設計する人が、建物の形・大きさ・材料などを決めて作る図面です。
施工図は、工事のあいだに工事をする人が作る、詳しい図面です。工事を進めるために作ります。
竣工図(しゅんこうず)は、工事が終わったときの建物の状態を表す図面です。できあがったときの、建物の形やつくりを描きます(精選版 日本国語大辞典「竣工図」)。
設計図・施工図・竣工図は、いつ作られるのか
3つの図面は、設計のとき、工事のとき、工事が終わったとき(竣工)の、3つの時期ごとに作られます。建物は、先に設計をして、そのあとで工事をして建てるからです。
設計は、どんな建物にするかを決めて、図面と仕様書にまとめる仕事です(建築士法 第2条第6項)。
建築士法は、建物の設計などを行う技術者の資格を決めています(建築士法 第1条)。
仕様書は、工事の内容や手順を説明した書面です(デジタル大辞泉「仕様書」)。
工事は、実際に建物を建てる仕事です。
建築や土木の工事が終わることを、「竣工(しゅんこう)」と言います(デジタル大辞泉「竣工」)。
同じ建物を3つの時期で並べ、その時期に作る図面を下に書くと、次の図のようになります。

上の図の左は、設計のときです。建物はまだ無く、設計図が表すのは、これから建てる建物です。
真ん中の工事のときは、建物が建ちかけています。施工図は、その工事を進めるための図面です。
右の竣工のときは、建物ができあがっています。竣工図が表すのは、できあがった建物の状態です。
3つの図面には、どんな人と書類がかかわるのか
3つの図面には、設計図書という書類と、建築主・設計者・工事施工者・工事監理者の4つの立場の人がかかわります。
**設計図書(せっけいとしょ)**は、工事のための図面と仕様書を合わせた呼び名です(建築士法 第2条第6項、建築基準法 第2条第十二号)。
建築基準法は、建物の敷地やつくり、設備、使いみちについて、最低の基準を決めた法律です(建築基準法 第1条)。
「図書」は、ここでは本のことを言いません。図面と書類のことです。
**建築主(けんちくぬし)**は、建物の工事を注文する人、または工事をだれにも頼まずに自分でする人です(建築基準法 第2条第十六号)。
自分の責任で設計図書を作った人は、設計者と呼ばれます(建築基準法 第2条第十七号)。
工事施工者は、建物の工事を請け負う人、または自分で工事をする人です(建築基準法 第2条第十八号)。
「請け負う」は、日にちや代金を取り決めたうえで、仕事を引き受けることです(デジタル大辞泉「請け負う」)。
工事をだれにも頼まずに自分で建てる人は、建築主でもあり、工事施工者でもあります(建築基準法 第2条第十六号・第十八号)。
**工事監理者(こうじかんりしゃ)**は、工事を確かめる人です。工事を設計図書と照らし合わせて、設計図書のとおりに行われているかを確かめます(建築士法 第2条第8項、建築基準法 第2条第十一号)。
建築士は、国土交通大臣や都道府県知事の免許を受けて、設計や工事監理などの仕事をする人です(建築士法 第2条第1項〜第4項)。
建築士でなければ設計できない建物の工事では、建築主が、建築士の中から工事監理者を定めます(建築基準法 第5条の6 第4項)。
つまり建築主は、工事を工事施工者に頼み、工事監理者を定める立場です。
施工図と、工事が終わったときの図面の作り方や中身は、国の建物の工事の基準に、くわしく決められています。この記事では、その基準をもとに説明します。
公共建築工事標準仕様書は、国の建物(官庁施設)の工事のために国土交通省が定めた仕様書です(公共建築工事標準仕様書 はじめの注記・1.1.1(1))。材料と工事のやり方を決めています。
この記事では「標準仕様書」と略します。
官庁施設は、国の事務を取り扱う機関(官庁)の建物です(精選版 日本国語大辞典「官庁」)。ふつうの家の工事の図面が、この基準と同じ形とは限りません。
工事を請け負う契約を結んだ側を、国の工事の基準では「受注者」と呼びます(標準仕様書 1.1.2(イ))。受注者は工事を請け負う人なので、工事施工者にあたります(建築基準法 第2条第十八号)。
建設業法は、建設工事の請負契約などについて決めた法律です(建設業法 第1条)。
工事を頼む側は、「発注者」と呼ばれます。発注者は工事のおおもとの注文者で(建設業法 第2条第5項)、建物の工事では建築主にあたります(建築基準法 第2条第十六号)。
「監督職員」は、発注者が、工事の契約書に基づいて置く担当者です(標準仕様書 1.1.2(ア)、公共工事標準請負契約約款 第9条)。
公共工事標準請負契約約款は、国土交通省に置かれた中央建設業審議会が作った、工事の請負契約の標準の条項です(建設業法 第34条)。
監督職員は、受注者が出した品質管理の記録をもとに、工事が設計図書に合っているかを判断します(標準仕様書 1.1.2(カ))。記録には、受注者が確かめた施工の状態や、材料の試験の結果などが入ります(同)。
工事監理者は法律での呼び名で、監督職員は国の工事の契約での呼び名です。
設計図とは何か
設計図は、設計者が、工事を始める前に建物の形・大きさ・材料などを決めて作る図面です。設計図書のうちの図面が、設計図にあたります(建築士法 第2条第6項)。
設計図が工事の前に要るのは、工事施工者が、設計図から建物の形・大きさ・材料などを読み取って建てるからです。

上の絵のように、工事をする人は、図面を見ながら建物を建てます。
設計図が工事の前に要る理由は、国土交通省の告示にも書かれています。告示は、国や地方公共団体が、ある事柄を公式に広く知らせるものです(デジタル大辞泉「告示」)。
令和6年国土交通省告示第8号は、設計や工事監理の仕事の報酬の基準です。報酬を計算するもとになる、設計者と工事監理者の標準の仕事の中身も、この告示に並んでいます(令和6年国土交通省告示第8号 第四・別添一)。
設計には、建物の全体を決める初めの段階(基本設計)と、工事ができるところまで細かく決める後の段階(実施設計)があります。
後の段階で細かく決めるのは、工事施工者が設計図書の中身を正確に読み取り、設計の意図に合った工事をできるようにするためです(同 別添一 1 二)。
工事にかかる費用を前もって正しく計算できる(見積もれる)ようにすることも、同じ目的に入っています(同)。
設計図書は、国の工事の基準では図面のほか、標準仕様書や特記仕様書などの書類でできています(標準仕様書 1.1.1(2))。
特記仕様書は、その工事だけの決まりを書いた仕様書です。読み方は、「特記仕様書の読み方|工事概要・適用する仕様」の記事で解説しています。
受注者は、この設計図書に従って、責任をもって工事をします(標準仕様書 1.1.1(2))。
設計図は、何枚もの図面の集まりです。建物の位置、各階の部屋の並び、外から見た形などを、別々の図面に描き分けます(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 二 ロ(1))。
国の建物の工事では、図面ごとに何を表すかが、「建築工事設計図書作成基準の資料」にまとめてあります。この資料は、国土交通省が、国の建物(官庁施設)の工事のために作ったものです(建築工事設計図書作成基準の資料 はじめの注記)。
ふつうの家の図面が、この資料と同じ形とは限りません。
この資料では、主な図面がそれぞれ次のものを表します。
配置図は、新しく建てる建物や、もとからある建物などの位置の関係を表す図です(建築工事設計図書作成基準の資料 資料2(5))。敷地案内図は、工事場所への道案内と、周りの様子を表します(同 資料2(4))。
平面図は、各階を水平に切った面を表す図です(同 資料2(8))。建物を実際に切るのでなく、ある高さの水平な面で切ったと仮定して、真上から見た図です(精選版 日本国語大辞典「平面図」)。
立面図は、建物の外観と形を表します(建築工事設計図書作成基準の資料 資料2(9))。
断面図は、建物を垂直に切ったと仮定して、その切り口を表した図です(デジタル大辞泉「断面図」)。建物の各部分と地盤との関係や、階高・階数などを表します(建築工事設計図書作成基準の資料 資料2(10))。
地盤は、建物などを据える土台となる土地です(デジタル大辞泉「地盤」)。階高は、ある階の床面から、すぐ上の階の床面までの高さです(デジタル大辞泉「階高」)。
仕上表は、建物の外部と内部の仕上げを表します(建築工事設計図書作成基準の資料 資料2(7))。
仕上げは、物を作る最後の工程や、そのできばえのことです(デジタル大辞泉「仕上げ」)。建物では、床・壁・天井や外壁など、目に見える所に使う材料を仕上材(しあげざい)と呼びます(東建コーポレーション 建築用語辞書「仕上材」)。
それぞれの図面の読み方は、次の記事で解説しています。
- 「建築図面の配置図と外構図とは|敷地の図面」
- 「建築図面の平面図とは|水平に切った間取りの図面」
- 「立面図の読み方と考え方|建築図面で何を見るかを整理」
- 「断面図の読み方と作図前提|建築図面で高さ関係を迷わず判断するための基礎」
- 「建築図面の仕上表と建具表とは|表で表す図面」
設計図を使うのは、作った設計者のほかに、工事施工者と工事監理者です。工事施工者は設計図を読んで工事をし、工事監理者は工事を設計図書と照らし合わせて確かめます(建築士法 第2条第8項)。
工事のための図でも、実物と同じ大きさで描く「現寸図(げんすんず)」は、設計図書の図面から外されています(建築士法 第2条第6項、建築基準法 第2条第十二号)。
現寸図は、実物と同じ寸法で描いた、物を作るための図面です(精選版 日本国語大辞典「現寸図」)。国の工事の標準仕様書では、たとえば鉄骨(鉄でできた骨組み)の部材を作るときに、必要に応じて作ります(標準仕様書 7.3.2(2))。
部材は、柱など、建物を組み立てている一つひとつの部分品です(デジタル大辞泉「部材」)。
現寸図は、次の節で説明する「施工図等」の1つです(標準仕様書 1.1.2(タ))。
基本設計と実施設計で作る図面の違いは、「設計の段階と図面|基本設計と実施設計で描く図面の違い」の記事で解説しています。
設計図書の図面と仕様書が、それぞれ何を決めるかは、「設計図書とは|図面と仕様書」の記事で解説しています。
施工図は、誰が作るのか
施工図は、工事施工者が、工事を進めるために作る詳しい図面です。
作った施工図は、国の工事の基準では監督職員が承諾します。設計図書で決められていれば、工事監理者と設計者も確かめます。
施工図や現寸図など、工事の契約に基づいて工事をするために作る詳しい図を、まとめた呼び名が「施工図等」です(標準仕様書 1.1.2(タ))。
工事は、設計図書だけでなく、施工図等にも基づいて行います(標準仕様書 1.5.1(1))。施工図が要るのは、このためです。
建物の工事は、いくつもの工事に分かれています。標準仕様書は、木工事・タイル工事・塗装工事など、工事の種類ごとに章を分けています(標準仕様書 目次)。
施工図等を作るのは、その工事を始める前です(標準仕様書 1.2.3(1))。建物の工事全体で見れば工事のあいだですが、一つひとつの工事で見れば、始める前にあたります。
作ったら、監督職員の承諾を受けます(標準仕様書 1.2.3(1))。
承諾は、受注者が書面で申し出たことを、監督職員が書面で了解することです(標準仕様書 1.1.2(ウ))。
納まりは、部材どうしの取り付け具合や、組み合わさり方のことです(講談社「家とインテリアの用語がわかる辞典」「納まり」)。
施工図等を作るときは、関係するほかの工事との納まりなどを、ほかの工事の担当者と調整して、十分に検討します(標準仕様書 1.2.3(2))。
内容を変える必要が出たときは、監督職員に報告して、承諾を受けます(標準仕様書 1.2.3(3))。
工事監理者と設計者が施工図を確かめるのは、設計図書などで決められているときです。
告示は、2人が施工図を確かめる仕事を、「設計図書の定めにより」行うものとしています(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 1 三(1)・2 一(3))。どの施工図を確かめるかは、設計図書に書いた決まりによるということです。
工事監理者は、工事施工者が作って出す施工図が設計図書の中身に合っているかを検討し、その結果を建築主に報告します(同 別添一 2 一(3))。
設計者は、設計図書などで決めた部材や建物の部分について、施工図等を確かめます(同 別添一 1 三(1))。設計の意図が正しく表れているかを確かめるためです。
施工図も設計者が描くもの、と思うかもしれません。
しかし施工図は、工事施工者が「作成し、提出する」ものです(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 2 一(3))。設計者と工事監理者は、できた施工図を確かめる人です。
施工図等は、設計図書と別に数え、「工事関係図書」に入れます(標準仕様書 1.1.2(ソ))。
工事関係図書は、工事の予定表や計画書、工事写真など、工事や、材料などの試験の報告と記録の書類です(標準仕様書 1.1.2(カ)(ソ))。
施工図の種類と読み方は、「建築図面の施工図とは|工事のために描く図面」の記事で解説する予定です(準備中)。
竣工図は、設計図とどう違うのか
竣工図は、工事が終わったときの建物の状態を表す図面で、工事の前に形や材料などを決めた設計図とは、表す時期が違います。
国の工事の基準では、完成したときの状態を表す図面を「完成図」と呼びます(標準仕様書 1.7.2)。
完成図は、建設工事の目的物の完成時の状況を表した図です(建設業法施行規則 第26条第5項)。工事の目的物とは、その工事で作る建物などを指します。
建設業法施行規則は、建設業法を行うための細かい決まりを、国土交通省が定めたものです(建設業法 第40条の3)。
「竣工」の語は、標準仕様書にも、この記事で引いた法律・告示にも出てきません。「竣工図」は、辞典に載っている呼び名です(精選版 日本国語大辞典「竣工図」)。
辞典の竣工図も、標準仕様書や建設業法施行規則の完成図も、完成したときの建物を表す図面です。この記事では、竣工図の決まりとして、完成図の決まりを説明します。
設計図のとおりに建てたのなら、設計図がそのまま完成したときの図面になる、と思うかもしれません。
しかし設計図書は、工事の途中で訂正したり変更したりすることがあります(標準仕様書 1.1.8)。
訂正や変更をするのは、内容に疑問が出たときや、現場の納まりなどで設計図書のとおりにするのが難しいときです。受注者が監督職員と話し合い、その結果で設計図書を訂正したり変更したりします(標準仕様書 1.1.8(1)(2))。
そのため、完成したときの建物が、工事の前の設計図と同じとは限りません。
竣工図を設計図とは別に作るのは、このためです(精選版 日本国語大辞典「竣工図」)。
国の工事では、工事が完成したときに、受注者が完成図を監督職員に出します(標準仕様書 1.7.1・1.1.2(ケ))。
竣工図(完成図)には、何を書くのか
完成図として作るものは、国の工事の基準では5種の図面と表です。それぞれの図面と表に書くことも、決まっています(標準仕様書 表1.7.1)。
ただし、特記があれば、作るものと書くことは特記によります(標準仕様書 1.7.2)。
特記は、特記仕様書や図面など、その工事のために作った設計図書で指定したことです(標準仕様書 1.1.2(ス))。
完成図の5種は、配置図及び案内図・各階平面図・各立面図・断面図・仕上表です(標準仕様書 表1.7.1)。図面には、設計図の節で説明した図面と同じ名前が付いています。
完成図の「案内図」も、場所を案内する図です。設計図の敷地案内図と同じ図かどうかは、標準仕様書には書かれていません。
配置図及び案内図には、敷地と建物などの面積表、屋外排水系統図、外構、植栽を書きます(標準仕様書 表1.7.1)。
設計図の面積表は、建物の建築面積や延べ面積などを表す表です(建築工事設計図書作成基準の資料 資料2(6))。
敷地面積は、敷地を真上から見たときの広さを言います(建築基準法施行令 第2条第1項第一号)。
建築面積は、建物を真上から見たときの、外壁や柱の中心線で囲まれた部分の広さです(建築基準法施行令 第2条第1項第二号)。壁や柱には厚みがあり、中心線は、その厚みの真ん中に引いた線を指します。
延べ面積は、各階の床面積を足したものです(同 第四号)。
屋外排水系統図は、建物の外で、いらなくなった水を流す管のつながり(系統)を表します。排水は不用な水を外へ出すこと、系統はひとつながりになって働くようにまとめたもののことです(デジタル大辞泉「排水」「系統」)。
外構は、門・垣・塀など、家屋敷の外側のつくりを指します(デジタル大辞泉「外構え」)。植栽は、植えた草木のことです(デジタル大辞泉「植栽」)。
各階平面図には、室名・室面積・耐震壁を書きます(標準仕様書 表1.7.1)。
室名は部屋の名前、室面積は部屋の広さです。耐震壁は、建物の重さと、地震や風による横からの力に耐える、骨組みとして大事な壁です(デジタル大辞泉「耐震壁」「耐力壁」)。
各立面図には外壁の仕上げを、仕上表には屋外と屋内の仕上げを書きます(標準仕様書 表1.7.1)。
断面図には階高や天井高などを書き、2面以上作ります(標準仕様書 表1.7.1)。
天井高は、部屋の床面から天井までの高さです(建築基準法施行令 第21条第2項)。
「2面以上作る」は、切る場所を変えた断面図を、2つ以上作るということです。
完成図に書くことを、次の表にまとめます。
| 種類 | 記入内容 |
|---|---|
| 配置図及び案内図 | 敷地と建物などの面積表、屋外排水系統図、外構、植栽 |
| 各階平面図 | 室名、室面積、耐震壁 |
| 各立面図 | 外壁仕上げ |
| 断面図 | 階高、天井高などを表示し、2面以上作る |
| 仕上表 | 屋外、屋内の仕上げ |
上の表の断面図の欄にある階高や天井高は、「建築図面のレベル(高さ)の読み方|GL・FL・階高・軒高」の記事で確かめてください。
竣工図(完成図)は、工事のあとどうなるのか
完成図は、工事が終わったあとも、工事を直接請け負った建設業者のもとで、建物などを引き渡してから10年間保存されます。
建設業者は、建設業法の許可を受けて、建設工事の完成を請け負う仕事をする者です(建設業法 第2条第2項・第3項)。建物を引き渡す相手は、工事を注文した人です。
完成図は、国の工事の基準では、工事が完成したときに保全に関する資料と一緒に出します(標準仕様書 1.7.1)。保全は、建物などを守って、安全な状態に保つことです(デジタル大辞泉「保全」)。
保全に関する資料は、建物の使い方の説明書や、機器の取扱い説明書などです(標準仕様書 1.7.3)。
保存は、国の工事に限らず、建設業法が決めています。
建設業者は、営業所ごとに、営業に関する図書を保存しなければなりません(建設業法 第40条の3)。
発注者から直接工事を請け負った建設業者の場合、保存する図書に完成図が入ります(建設業法施行規則 第26条第5項)。
直接請け負うのは、発注者と契約を結んだ建設業者です。その建設業者から工事の全部や一部をさらに請け負う契約は、下請契約と呼ばれます(建設業法 第2条第4項)。
発注者から直接工事を請け負った建設業者は、建物の工事では工事施工者にあたります(建築基準法 第2条第十八号)。
保存する完成図は、工事の上で必要に応じて作った完成図か、発注者から受け取った完成図です(建設業法施行規則 第26条第5項)。
国の工事でなくても、完成図は、工事の上で必要に応じて作られるということです。建設業者が自分で作ることも、発注者の側から受け取ることもあります。
保存の期間は、建物などを引き渡してから10年間です(建設業法施行規則 第28条第2項)。
設計図・施工図・竣工図の違いは何か
設計図・施工図・竣工図は、作る時期も、作る人も、確かめる人も違います。作る時期・作る人・確かめる人で並べた表で、見比べてみましょう。
| 図面 | 作る時期 | 作る人 | 確かめる人・受け取る人 |
|---|---|---|---|
| 設計図 | 工事の前 | 設計者 | 工事施工者が読んで工事をする。工事監理者が工事と照らし合わせる |
| 施工図 | 工事のあいだ(一つひとつの工事を始める前) | 工事施工者 | 国の工事では監督職員が承諾する。設計図書で決められていれば、工事監理者と設計者も確かめる |
| 竣工図(標準仕様書では完成図) | 工事が完成したときに出す | 出典に書かれていない。国の工事では受注者が出す | 発注者から直接請け負った建設業者が10年間保存する |
上の表に並べたのは、この記事で引いた法律・告示・標準仕様書に書かれていることだけです。
誰が完成図を描くかは、標準仕様書に書かれていません。建設業法施行規則には、建設業者が必要に応じて作る完成図と、発注者から受け取る完成図の両方が出てきます。
設計図書で決められていれば、工事監理者は、施工図が設計図書の中身に合っているかを確かめます(令和6年国土交通省告示第8号 別添一 2 一(3))。
寸法は、物の長さのことです(デジタル大辞泉「寸法」)。縮尺は、図面を実物より縮めて描くときの、一定の比率です(デジタル大辞泉「縮尺」)。
国の工事では、完成図の寸法や縮尺などは、設計図書にならいます(標準仕様書 表1.7.1 の注)。完成図も、設計図書と同じ寸法の表し方と縮尺で描くということです。
設計図から施工図を作る流れは、「設計図と施工図の関係|設計図から施工図を起こす流れ」の記事で解説します(準備中)。
まとめ
設計図・施工図・竣工図は、作られる時期と作る人と目的が違う図面です。
設計図は、設計者が工事の前に建物の形・大きさ・材料などを決めて作る図面で、設計図書のうちの図面にあたります。工事施工者が、中身を正しく読み取って工事をするために要ります。
施工図は、工事施工者が工事を進めるために作る詳しい図面です。工事は施工図にも基づいて行い、施工図は工事の前に作って監督職員の承諾を受けます(国の工事の基準)。
設計図書で決められていれば、工事監理者と設計者も施工図を確かめます。
竣工図は、工事が終わったときの建物の状態を表す図面です。標準仕様書と建設業法施行規則では、完成したときの状態を表す図面を「完成図」と呼びます。
設計図書は工事の途中で訂正や変更をすることがあるので、完成したときの建物が、工事の前の設計図と同じとは限りません。
確かめの問い
読み終えたら、次の5つに答えてみましょう。
- 最初の図で、足場に囲まれた建てかけの家の下に書かれている図面は何ですか。
- 施工図を作るのは、設計者と工事施工者のどちらですか。
- 実物と同じ大きさで描く現寸図は、設計図書に入りますか。
- 国の工事の基準では、完成したときの状態を表す図面を何と呼びますか。
- 完成したときの建物が、工事の前の設計図と同じとは限らないのはなぜですか。
答え
- 施工図です。
- 工事施工者です。設計者は、施工図を確かめる側です。
- 入りません。設計図書の図面から外されています。
- 完成図です。
- 設計図書を工事の途中で訂正や変更をすることがあるからです。
続けて読む記事
- 「建築図面とは何か|なぜ必要か・誰が使うか」:建築図面は何のためにあり、誰が使うか
- 「設計図書とは|図面と仕様書」:図面と仕様書は、それぞれ工事の何を決めるか
- 「特記仕様書の読み方|工事概要・適用する仕様」:その工事だけの決まりは、どこにどう書かれるか
- 「設計の段階と図面|基本設計と実施設計で描く図面の違い」:設計の初めの段階と後の段階で、作る図面はどう違うか
- 「建築図面一式の並び|表紙・図面目録から設備図まで」:何枚もの設計図は、どんな順に並ぶか
- 「建築図面の施工図とは|工事のために描く図面」(準備中):施工図にはどんな種類があり、どう読むか
- 「設計図と施工図の関係|設計図から施工図を起こす流れ」(準備中):設計図から施工図をどう作るか
*2026年9月29日と30日に原文で確かめた内容です。
法律は「建築士法」「建築基準法」「建設業法」「建設業法施行規則」、国土交通省の資料は「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」「令和6年国土交通省告示第8号」の別添一、「建築工事設計図書作成基準の資料(令和2年改定)」、政令は「建築基準法施行令」、監督職員を置く側は中央建設業審議会「公共工事標準請負契約約款」によります。
語の意味は、小学館「デジタル大辞泉」(図面・仕様書・竣工・請け負う・告示・断面図・地盤・部材・階高・仕上げ・排水・系統・外構え・植栽・耐震壁・耐力壁・保全・寸法・縮尺)、「精選版 日本国語大辞典」(竣工図・官庁・平面図・現寸図)と、講談社「家とインテリアの用語がわかる辞典」(納まり)によります(コトバンク)。
会社の用語集は、東建コーポレーションの建築用語辞書の「仕上材」を開いて確かめました。
会員登録(無料)
記事やテーマのお気に入り・学習履歴・フォローが使えます。
この記事について
PERSC編集部が、建築の制作に関わる知識を実務目線で整理しています。内容は公開・更新日時点の情報にもとづきます。誤りや古い情報にお気づきの場合はお問い合わせよりご連絡ください。

