Vectorworksの画面構成入門|5大パレットと作業画面の使い方
Vectorworksの画面構成入門|5大パレットと作業画面の使い方
Vectorworks(建築・インテリア・ランドスケープに対応した総合CAD)を初めて開くと、画面のあちこちに小さなパレットが並んでいて、どこから触ればいいのか戸惑いやすいものです。ツールがどこにあるのか、選んだ図形をどこで編集するのか、最初は迷って当然です。
この記事では、Vectorworksの画面構成を「描く・選ぶ・整える・整理する」という作図の流れに沿って地図化します。よく使う5つのパレット(基本パレット・ツールセットパレット・オブジェクト情報パレット・属性パレット・ナビゲーションパレット)の役割を1つずつ整理していきます。あわせて、消えたパレットの戻し方から、作業画面(ワークスペース)を自分用に整える方法までやさしく解説します。
画面のどこに何があるかが分かれば、道具探しの往復が減り、作図そのものに集中できるようになります。
Vectorworksの画面構成をひと目で把握する
Vectorworksの画面は「描く道具(左)」「選んだものを整える情報パレット(右)」「図面全体を整理するパレット」の3系統に分けて見ると迷いません。この3つの居場所さえ頭に入れば、細かいパレット名を覚える前でも作図に入れます。
起動直後の画面は、大きく次の6つのエリアに分かれます。まずは全体像を一望してから、各パレットを順番に見ていきましょう。
| 画面エリア | 日本語UI名 | 役割 | この後の解説 |
|---|---|---|---|
| 上部の帯 | メニューバー | ファイル操作や表示の切り替えなど、コマンドの入口 | この章 |
| その下の帯 | ツールバー | 選択中のツールのモードやオプションが並ぶ | 2章 |
| 左側 | 基本パレット / ツールセットパレット | 図形を描く・編集するツールの置き場 | 2章 |
| 右側や周辺 | オブジェクト情報パレット / 属性パレット | 選んだ図形の寸法や見た目を整える | 3章・4章 |
| 図面整理 | ナビゲーションパレット | クラスやレイヤ、シートを一覧で操作する | 4章 |
| 中央 | 描画エリア | 実際に図面を描く広い作業スペース | 常に表示 |
出典: Palettes and tool sets(VW2025 Guide)(2026年7月時点)
画面の全体マップ|どこに何があるか
画面を役割で色分けすると、5つのパレットの位置関係がすっきり見えてきます。上部はコマンドの帯、左は道具箱、右は選んだ図形の調整台、というぐあいです。
上部にはメニューバーとツールバーが並びます。メニューバーはファイルの保存や表示の切り替えといったコマンドの入口で、ツールバーには選んでいるツールの動作モードが表示されます。
左側には、図形を描いたり編集したりするツールがまとまっています。日常的に使う線・矩形・円などは基本パレットに、壁や寸法などの専門ツールはツールセットパレットに置かれています。
右側や周辺には、選んだ図形を整えるパレットが配置されます。寸法や位置を変えるオブジェクト情報パレット(OIP)と、見た目を変える属性パレットの2つが中心です。図面全体の構造を管理したいときは、クラスやレイヤを一覧できるナビゲーションパレットの出番になります。そして中央の広いスペースが、実際に線を引く描画エリアです。
パレットが消えたら「ウインドウ > パレット」から戻す
パレットが画面から消えても、メニューの ウインドウ(Window)> パレット(Palettes)> [パレット名] を選べば、いつでも表示と非表示を切り替えられます。閉じるボタンを押して見失っても、ここから確実に呼び戻せるので安心してください。
表示の切り替えは、描画エリアの右クリックメニューや、各パレット右上のユーティリティメニューからも行えます。よく使うパレットが手元にないときは、まずこの操作を思い出しましょう。
パレットの位置や設定は、Vectorworksを終了するたびに作業画面ごと自動で保存されます。自分の使いやすい配置に整えておけば、次に開いたときも同じレイアウトで作業を再開できます(出典: Palettes and tool sets(VW2025 Guide)、2026年7月時点)。
図形を描く「基本パレット」と「ツールセットパレット」
よく使う線・矩形・円は「基本パレット」、壁や寸法などの専門ツールは「ツールセットパレット」。この2つを分けて覚えると、道具探しで迷わなくなります。作図ツールの置き場は大きくこの2系統だと理解しておくと安心です。
両者の違いは「いつも使う基本道具」か「分野別にまとまった専門道具」かにあります。次の表で使い分けの軸を整理します。
| 項目 | 基本パレット | ツールセットパレット |
|---|---|---|
| 置いてある道具 | 線・矩形・円などの基本的な作図/編集ツール | 3D・可視化・寸法など分野別に束ねた専門ツール |
| 使う場面 | 日常の作図でよく触れる | 壁や寸法など特定の作業に入るとき |
| 内容が変わる条件 | 有効な作業画面によって変わる | 有効な作業画面や製品グレードによって変わる |
出典: Palettes and tool sets(VW2025 Guide)(2026年7月時点)
基本パレット|いつも使う作図・編集ツール
基本パレットは、線・矩形・円といった基本的な図形作成/編集ツールをまとめた場所で、作業中にもっとも触れる機会が多いパレットです。まずここに手が伸びるようになると、作図のテンポが安定します。
含まれるツールは、有効な作業画面によって少しずつ変わります。そのため「同じVectorworksなのにツールの並びが違う」と感じることがありますが、それは作業画面の設定差によるものです。
各ツールの具体的な使い方は、この記事の範囲を超えるため深追いしません。直線・矩形・円・多角形といった作図ツールの使い分けは基本2D作図ツール|直線・矩形・円・多角形・曲線で、移動・複製・回転などの編集操作はオブジェクト編集を使いこなす|移動・複製・回転・ミラー・トリム・フィレットで解説しています。
ツールセットパレット|業種・用途別にまとまった専門ツール
ツールセットパレットは、3Dモデリング・可視化(Visualization)・寸法や注記(Dims/Notes)など、機能ごとにツールを束ねたパレットです。用途に応じてセットを切り替えれば、必要な専門ツールにすぐたどり着けます。
ここで1つ知っておきたいのが、使えるツールは製品のグレードによって変わることです。壁・ドア・窓などの建築ツールや、地形・植栽などのランドスケープツールは、上位製品(Architect や Landmark など)で利用できます。基本エディションであるFundamentalsは、基本的な作図が中心の構成です。自分の製品でツールが見当たらないときは、その機能が上位製品向けである可能性を確かめておくと、無駄に探し回らずに済みます。
よく使うツールセットは、パレットから引き出してドッキング(画面の端に固定して常設すること)しておけます。頻繁に開くセットを常に見える場所に置いておけば、切り替えの手間が減ります。
ツールを選んだ後に現れる「ツールバー」
ツールを選ぶと、そのツールの動作モードやオプションが上部のツールバー(ツールのモードやオプションが並ぶ帯)に表示されます。同じツールでも、ここで挙動を切り替えられるため、まず選択後にツールバーへ目を向ける習慣をつけると操作が正確になります。
たとえば矩形を描くツールを選ぶと、中心から描くか角から描くかといったモードがツールバーに並びます。描き方を変えたいときは、このモードを切り替えてから描き始めます。
数値を打ち込んで正確な寸法で描く操作は、座標入力やフローティングデータバー(カーソル付近に出る数値入力欄)が担います。この詳しい使い方は寸法どおりに正確に描く|スマートカーソル・座標入力・スナップで解説しているので、正確な作図に踏み込みたくなったときの手引きにしてください。
選んだ図形を編集する「オブジェクト情報パレット(OIP)」
図形を選んだあと、その数値をどこで変えればいいのか迷った経験はないでしょうか。寸法・位置・クラス・見た目の数値は、ほぼすべてオブジェクト情報パレット(OIP)で確かめて変更できます。Vectorworksで図形をいじる作業の中心になるパレットです。
OIPは選んだオブジェクトの種類に合わせて表示が切り替わり、3つのタブで内容を整理しています。形状・データ・レンダーの3タブが、それぞれ寸法・情報・質感を担当します。
| タブ | 扱う内容 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 形状(Shape) | 寸法・位置・クラス・レイヤなどのパラメータ | 図形のサイズや置き場所を変えるとき |
| データ(Data) | レコードデータやIFCデータ | 数量拾いやBIM連携で情報を持たせるとき |
| レンダー(Render) | 3Dオブジェクトへのテクスチャ割り当てとマッピング | 3D表現で素材の見え方を設定するとき |
出典: The Object Info palette(VW2025 Guide)(2026年7月時点)
形状タブ|位置・サイズ・クラス・レイヤを変える
形状(Shape)タブは、選んだ図形のジオメトリ・クラス・レイヤ・位置のパラメータを表示して編集する、もっともよく使うタブです。ここで数値を直接書き換えれば、マウス操作より正確に図形を整えられます。
表示される項目は、選んだオブジェクトの種類によって変わります。線を選べば長さや角度が、矩形を選べば幅や高さが並ぶといったぐあいで、その図形にとって必要な数値だけが出てきます。
Name(名前)欄では、図形に見分けやすい名前を付けられます。あとから特定の図形を探したり、スクリプトで参照したりするときに役立ちます。
データタブ・レンダータブ|情報とテクスチャ
データタブとレンダータブは、図面に「情報」や「見た目の素材」を持たせるためのタブです。ふだんの2D作図では使う機会が少なくても、BIMや3D表現に進むと出番が増えます。
データ(Data)タブは、図形に付いたレコードデータ(部材の仕様などをまとめた属性情報)やIFCデータ(建物情報を交換するための国際規格のデータ)を表示します。数量の集計やBIM連携の入口になるタブで、図面に数字以上の意味を持たせたいときに使います。
レンダー(Render)タブは、3Dオブジェクトへのテクスチャ(表面の質感を表す画像)の割り当てとマッピングを設定します。ここで木目や石材の質感を与えられますが、写真のようなレンダリング表現の作り込みは、レンダラーや3DCGの専門的な工程が担う分野です。この記事では、そうした設定の入口がレンダータブにある、という位置づけの紹介にとどめます。
複数選択時の一括編集・個別編集モード
複数の図形を選ぶと、OIPは一括編集モードと個別編集モードの2つで応じます。同じ種類の図形をまとめて直したいのか、1つずつ見ながら直したいのかで使い分けます。
一括編集モードは、同じ種類の複数オブジェクトをまとめて変更するモードです。たとえば10本の線の太さをそろえたいとき、まとめて1回で変更できます。個別編集モードは、Next/Previousのボタンで選択の中を1つずつ切り替えながら編集するモードで、1本ずつ状態を確かめたいときに向いています。
OIPが見当たらないときは、ショートカットの Ctrl+I(Windows)/ Cmd+I(Mac)で表示できます(出典: The Object Info palette(VW2025 Guide)、2026年7月時点)。
見た目を管理する「属性パレット」と図面を整理する「ナビゲーションパレット」
「どう見せるか」は属性パレット、「図面をどう整理するか」はナビゲーションパレット、「素材をどこに貯めるか」はリソースマネージャ。役割で覚えると混乱しません。この3つは選択後や図面管理の場面で活躍する補助役です。
属性パレット|塗り・線・不透明度をまとめて管理
属性パレットは、選んだ図形の見た目を一元管理するパレットです。色や線の太さを変えたいと思ったら、まずここを開くと覚えておけば迷いません。
属性パレットで直接設定できるのは、塗り(Fill)・ペン(Pen=線の色や太さ)・不透明度(Opacity)・線の太さ・始点や終点のマーカー・ドロップシャドウ(図形に落とす影)です。図形の基本的な装飾は、ほぼこのパレットで完結します。
線種やハッチング・タイル・グラデーション・イメージの塗りは「リソース」と呼ばれる素材で、これらも属性パレットから選んで適用できます。ただし、その素材そのものの管理や追加は、後述するリソースマネージャが担います。線種やハッチを使った表現を実際に作り込む手順は属性(線種・塗り・ハッチング・タイル)で表現するで解説しています。
ナビゲーションパレット|クラス・レイヤ・シートを一覧で操作
ナビゲーションパレットは、クラス・デザインレイヤ・シートレイヤ・ビューポート・保存ビュー・参照をタブで一覧し、描画エリアを開いたまま操作できるパレットです。図面の構造を管理する画面を、いちいち別ウインドウで開かずに済むのが利点です。
ここで気をつけたいのが、必要な製品グレードです。ナビゲーションパレットは Design Suite 製品(Architect・Landmark・Spotlight・Design Suite)の機能で、基本エディションのFundamentalsには含まれません。Fundamentalsを使っている場合は、代わりに「整理(Organization)」ダイアログ(ツール > 整理、Ctrl+Shift+O)でクラスやレイヤを管理します。自分の製品でパレットが見つからないときは、この整理ダイアログを開けば同じ管理ができると覚えておくと空振りしません。
クラスとレイヤを二層で使い分ける考え方そのものは、作図全体の流れの中で理解するとつかみやすくなります。その全体像はVectorworksの基本ワークフロー入門|2D図面から3Dモデルまでの全体像で解説しています。
リソースマネージャ|素材とシンボルの倉庫
リソースマネージャは、ファイルで使う素材を管理して呼び出す「倉庫」の役割を持つパレットです。ハッチング・レコードフォーマット・ワークシート・スクリプト・シンボル・テクスチャなどを、ここで一括して扱います。
とくにシンボル(何度も使い回せる部品化した図形)を貯めておくと、家具や建具などを図面全体で繰り返し配置できます。同じ部品を毎回描き直す手間が省けるため、図面の作成が速く、修正にも強くなります。まずは「素材とシンボルはリソースマネージャに集まっている」という位置づけだけ押さえておけば十分です。
作業画面(ワークスペース)を自分用にカスタマイズする
画面に並ぶツールやパレットは「作業画面(ワークスペース)」という設定で決まっていて、自分の使い方に合わせて足したり隠したりできます。使わない道具を隠すほど、初心者ほど画面がすっきりして迷いが減ります。
作業画面エディタの開き方とできること
作業画面の編集は、メニューの ツール(Tools)> 作業画面(Workspaces)> 現在の作業画面を編集(Edit Current Workspace)から開きます。編集画面では、メニュー・ツールパレット・ツールセット・ツール・コマンドの追加や削除、並べ替えができ、ツールやコマンドへのショートカットの追加・変更・削除も行えます。
編集画面は、左側に利用できる項目、右側に現在の作業画面の構成が並ぶ作りになっています。使いたい項目を左から右へドラッグして加え、いらない項目を外していくイメージです(出典: Modifying commands and tools in a workspace(VW2025 Guide)、2026年7月時点)。
まず「複製してから編集」で安全にカスタマイズ
作業画面を編集するときは「元を壊さない」しくみが備わっているので、思い切って触れて大丈夫です。既定の作業画面は直接は書き換わらず、編集を始めると自動でユーザーフォルダに同じ名前のコピーが作られ、そのコピーが編集されます。アプリケーションフォルダにある既定の作業画面は改変されない設計です。
さらに、自分で名前を付けて複製しておくと、用途別に作業画面を切り替えやすくなります。「2D作図用」「プレゼン用」のように分けておけば、作業に合わせて画面構成をまるごと入れ替えられます。
初心者がまず試しやすいのは、使わないツールセットを隠すことと、よく使うツールを手の届きやすい位置に寄せることです。この2つだけでも、目的のツールを探す時間がぐっと短くなります。整えた配置はパレットの位置も含めて終了時に保存されるので、いちど整えた環境はそのまま残ります。
画面構成でつまずきやすいポイントについての編集部の見解
Vectorworksの画面でつまずきやすいのは、機能の多さそのものではありません。どのパレットが何を担当しているのか、その切り分けが最初は見えにくいところにあります。これは公式ドキュメントを読み解いた編集部の見立てです。役割の地図さえ持てれば、初心者のつまずきの多くは先回りして避けられます。
とくに混同しやすい区別が3つあります。1つ目は基本パレットとツールセットパレットで、いつも使う道具と分野別の専門道具とで置き場が分かれています。2つ目の属性パレットとリソースマネージャは、見た目を適用する場所と素材を管理する場所が別です。3つ目のナビゲーションパレットと整理ダイアログでは、製品グレードによって図面管理の入口そのものが変わります。ここが最初のつまずきどころです。
Fundamentalsを使う人がナビゲーションパレットを探して見つからず、機能がないと思い込みがちです。そんな戸惑いは、初めてFundamentalsに触れたときに起こりやすいものです。実際には整理ダイアログ(ツール > 整理)で同じ管理ができるので、製品グレードで入口が違うと知っておくだけで無駄な回り道を避けられます。この記事で役割ごとにパレットを整理したのも、そうした典型的なつまずきを先に解いておくためです。
画面の役割を覚えた先に変わる作図のスピード
パレットの役割が頭に入ると、作図の景色は「道具を探す時間」から「図面を考える時間」へと変わっていきます。どこを見れば何ができるかが分かるほど、操作の往復が減り、手が止まらなくなるからです。
たとえば住宅のリビングを作図している場面を考えてみましょう。壁を引いたら形状タブで寸法を微調整し、線の太さは属性パレットで整え、部屋ごとの表示はナビゲーションパレット(Fundamentalsなら整理ダイアログ)でクラスを切り替えられます。この一連の流れを、パレットの居場所を意識せず自然にこなせるようになります。役割を知らないうちは1つの操作ごとにメニューを探していたのが、迷いなく手が動くようになるのが大きな違いです。
次の一歩としておすすめなのが、作業画面を1つ自分用に整えることです。使わないツールセットを隠し、よく使うツールを前に出しておくだけで、画面はあなたの作業スタイルに寄っていきます。そこから正確な数値入力や作図ツールの使い方へ進めば、画面構成という土台の上に、具体的な作図スキルを積み上げていけます。
まとめ|画面の役割が分かれば作図はぐっと速くなる
Vectorworksの画面は、役割で見れば5つのパレットに整理できます。図形を描くのは基本パレットとツールセットパレット、選んだ図形を整えるのはオブジェクト情報パレット(OIP)と属性パレット、図面全体を整理するのはナビゲーションパレット、そして素材を貯めておくのがリソースマネージャです。
この役割分担さえ頭に入れば、どこを見れば何ができるかが一望でき、作図・編集・整理の往復が速くなります。パレットが消えても ウインドウ > パレット から戻せますし、作業画面を自分用に整えれば使わない道具を隠して迷いを減らせます。ナビゲーションパレットは Design Suite 製品の機能で、Fundamentalsでは整理ダイアログが同じ役割を担う点だけ覚えておきましょう。
画面という土台が分かったら、次は実際に正確な図面を描く操作へ進みます。自分の課題に合わせて、次の記事から読み進めてください。
建築知識の教科書