Vectorworksのオブジェクト編集を使いこなす|移動・複製・回転・ミラー・トリム・フィレット
Vectorworksのオブジェクト編集を使いこなす|移動・複製・回転・ミラー・トリム・フィレット
Vectorworksで図形を描けるようになると、次にぶつかるのが「描いた図形を思いどおりに動かす・増やす・整える」編集の壁です。移動やミラーはなんとなく使えても、配列複製やトリミング、クリップサーフェスになると「どこにあるのか」「なぜ効かないのか」で手が止まりやすくなります。
この記事では、Vectorworksのオブジェクト編集を「選択してから加工する」という2段の流れと、位置を変える系・形を変える系の2グループに分けて理解する形にまとめました。移動・複製・回転・ミラー・トリム・フィレットから配列複製・変形ツールまで、それぞれの所在とつまずきやすい条件を日本語UIのラベルで押さえられます。正確な数値入力や図形を描く操作そのものは、関連記事にゆずって深追いしません。
オブジェクト編集の全体像|「選択→加工」と2つのグループ
Vectorworksの編集は「セレクションツールで対象を選ぶ→加工する」という2段の流れで動きます。編集ツールは数が多く見えますが、「位置・向き・数を変える系」と「形そのものを変える系」の2グループに分けると、どれをいつ使うかで迷わなくなります。
まずセレクションツールで対象を選ぶ
すべての編集は「対象を選んでから」始まるため、選び方を先に押さえておくと操作が安定します。図形の選択には基本ツールパレットのセレクションツール(選択ツール)を使い、既定ではショートカット X で呼び出せます。図形をクリックで選び、Shiftキーを押しながらのクリックで選択の追加・解除ができます。
範囲でまとめて選ぶマーキーは、矩形・なげなわ・多角形の3種類が用意されています。Alt(Windows)またはOption(Mac)を押しながらマーキーを引くと、枠に完全に囲まれた図形だけでなく「枠に触れた図形」も選べる交差選択に切り替わります(セレクションツール、2026年7月24日確認)。
つまずきやすいのがロックした図形です。ロックされた図形はマーキーに含まれても、ドラッグでは動きません。「選べているのに動かせない」ときは、加工メニューでロックを解除してから編集します。
編集ツールは2グループで捉える
11種類ある編集ツールは、目的で2つに分けると全体像がつかめます。位置・向き・数を変える系は移動・複製・回転・ミラー反転・配列複製で、図形の輪郭はそのままに配置だけを操作します。形そのものを変える系はトリミング・フィレット・面取り・クリップサーフェス・変形ツールで、輪郭を直接いじります。
下の早見表で、どのツールがどこにあり、何を変えるのかを一望できます。
| ツール | 所在 | 変える対象 |
|---|---|---|
| セレクションツール | 基本ツールパレット | 選択(すべての起点) |
| 移動 | 加工メニュー | 位置 |
| ポイント間複製ツール | 基本ツールパレット | 位置・数 |
| 複製 | 編集メニュー | 数 |
| 配列複製 | 編集メニュー | 数(規則配置) |
| 回転ツール | 基本ツールパレット | 向き |
| ミラー反転ツール | 基本ツールパレット | 向き(対称) |
| トリミングツール | ツールセット | 形(切る) |
| フィレットツール | 基本ツールパレット | 形(角を丸める) |
| 面取りツール | 基本ツールパレット | 形(角を落とす) |
| クリップサーフェス | 加工メニュー | 形(切り欠く) |
| 変形ツール | 基本ツールパレット | 形(輪郭) |
これらの編集ツールは、すべての製品構成で共通して使えます。エディションによる機能差や価格を気にせずに操作を覚えられる範囲です。なお「何ミリ動かすか」を寸法どおりに決める数値入力やスナップは、寸法どおりに正確に描く|スマートカーソル・座標入力・スナップで詳しく解説しています。
移動・複製で位置と数を操る
位置と数を扱うグループの中心は、距離を指定して動かす移動、同じ図形を増やす複製、規則的に並べる配列複製の3つです。手作業で1つずつ並べていた作業を、コマンドひとつで一気に片づけられます。
移動(Move)とポイント間複製ツール
図形を動かすやり方は、数値で指定する方法とクリックで指示する方法の2通りあります。加工メニューの「移動」(既定ショートカット Ctrl+M / Cmd+M)を選ぶと、X方向・Y方向のオフセット(ずらす量)を数値入力できます。3D空間で動かす場合はZ方向も指定でき、3D移動のコマンド(既定 Ctrl+Alt+M / Cmd+Option+M)も別に用意されています(移動、2026年7月24日確認)。
基本ツールパレットのポイント間複製ツールは、画面上のクリックで移動のベクトル(方向と距離)を指示するツールです。標準(移動)、複製(移動しながらコピー)、均等配置のモードがあり、ダブルクリックの操作で複製個数を有効にできます(ポイント間複製ツール、2026年7月24日確認)。「マウスで大まかに、でも基準点はスナップで正確に」動かしたいときに便利です。
たとえば平面図で家具を「壁から900mmだけ室内側へ寄せたい」ときは、移動コマンドにY方向900と入力すれば一発で決まります。数値入力とスナップの詳しい設定は寸法どおりに正確に描くで解説しています。
複製(Duplicate)で同じ図形を増やす
同じ図形をもう1つ作りたいときは、編集メニューの「複製」が一番手早い方法です。複製を選ぶと、わずかにずれた位置に同じ図形のコピーが1つ作られます。
ここで覚えておくと効くのが、移動した直後に複製を使うワザです。図形を移動させた直後に複製すると、直前と同じ方向・同じ距離でコピーが作られます。これを繰り返せば、等間隔に並んだコピーを手早く増やせます。たとえば階段の踏面を1段ぶん移動してから複製を連打すると、同じ蹴上・踏面のステップが積み上がっていきます。
配列複製(Duplicate Array)で規則的に並べる
窓・柱・什器のように「同じ図形を規則正しく並べる」場面では、配列複製が強力です。配列複製は編集メニューから呼び出せます(既定ショートカット Ctrl+Shift+Alt+D / Cmd+Shift+Option+D)。日本語UIでは「直線状に並べる」「行列状に並べる」「円弧状に並べる」の3タイプから選べます(図形を配列複製する、2026年7月24日確認)。
| タイプ | 並び方 | 主なパラメータ | 使いどころ |
|---|---|---|---|
| 直線状に並べる | 一直線に等間隔 | 複製の数+位置指定(X-Y座標基準/極座標=半径・角度) | 連窓、並んだ柱 |
| 行列状に並べる | 格子状 | 列数・行数・段数+列/行/段の間隔 | 駐車マス、タイル割り |
| 円弧状に並べる | 中心まわりに放射 | 複製の数+複製の角度 | 円卓の椅子、放射状の割付 |
いずれのタイプでも「寸法変更を伴う複製」や「回転しながら複製」を指定できます。3タイプとも2D・3Dの両方に対応し、2Dだけの図形ではZ=0として扱われます。たとえば12mスパンに0.9mピッチで方立を入れる連窓なら、直線状に並べるで数と間隔を打ち込むだけで済み、1本ずつコピーして並べる手間がなくなります。
回転・ミラーで向きと対称をつくる
向きと対称を扱うグループは、角度を指定して回す回転ツールと、軸に対して裏返すミラー反転ツールの2つです。どちらも複製モードを備えていて、元の図形を残したまま「回してコピー」「反転してコピー」ができます。
回転ツール(Rotate)
基準点を中心に、角度を指定して図形を回すのが基本ツールパレットの回転ツールです。標準モード(回す)と複製モード(回してコピー)があり、目的で切り替えます。操作は回転の中心をクリックし、基準となる線を引き、そこから回したい角度を指定する順で進みます。ダブルクリックすると回転ダイアログが開き、角度を数値で直接入力できます(回転ツール、2026年7月24日確認)。3Dビューでは軸まわりの回転や、他の図形の向きに合わせる整列回転も使えます。
操作の途中でAlt(Windows)またはCmd(Mac)を押すと、一時的にセレクションツールへ切り替わり、対象を選び直せます。斜めに配置した建具を「30度だけ起こしたい」といった調整に向いています。
ミラー反転ツール(Mirror)で左右対称に
左右対称の形をつくるときは、基本ツールパレットのミラー反転ツールが近道です。標準モード(反転)と複製モード(反転コピーで元を残す)があり、対称形をもう片側に作るなら複製モードを選びます。ミラー軸となる線を引くと、その線を鏡にして図形が反転します(図形をミラー反転する、2026年7月24日確認)。
たとえば左右対称の間取りや、観音開きの建具レイアウトなら、片側だけていねいに描いて中心線でミラー反転コピーすれば、反対側が一瞬で仕上がります。3Dビューでは、作業平面に対して裏返すミラーも使えます。
トリム・フィレット・面取りで交点と角を整える
図面の「角」まわりを整えるのが、トリミング・フィレット・面取りの3つです。交わった線を交点まで切るのがトリミング、角を円弧で丸めるのがフィレット、角を直線で落とすのが面取りで、それぞれ仕上がりが違います。
トリミングツール(Trim)で交点まで切る
別の図形と交わった線や壁の、余分な側を交点まで切り落とすのがツールセットのトリミングツールです。切りたい線・壁の余った側をクリックすると、交わる図形との交点まで切れます(既定ショートカット Alt+Shift+L / Option+Shift+L。トリミングツール、2026年7月24日確認)。
トリミングツールには2つのモードがあります。「すべての図形」は選択に関係なく、同一平面で重なる全図形に合わせて切ります。「選択中の図形」はあらかじめ選んだ図形にだけ合わせて切ります。意図しない図形まで切れてしまう、または狙った線が切れないときは、このモード切替を確認すると原因が見つかります。
切るの逆に、長さの足りない線を「延ばして繋ぎたい」ときは、加工メニューの「線分を結合」(既定 Ctrl+J)や基本ツールパレットの結合/合成ツールを使います(図形を結合する、2026年7月24日確認)。長さの違う線分の端点や交点を揃えて連結でき、「トリムでは延長できない」と迷ったときの受け皿になります。
フィレットツール(Fillet)で角を丸める
2つの図形が作る角に、接する円弧を入れて丸めるのが基本ツールパレットのフィレットツールです(既定ショートカット 7)。使う前にツールバーへフィレット半径を入力し、丸めたい2つの辺を順にクリックします(フィレットツール、2026年7月24日確認)。線・矩形・多角形・ポリライン(複数の線や円弧をひと続きにつないだ図形)・円・円弧・NURBS曲線(数式で表現するなめらかな自由曲線)・壁など、幅広い図形に使えます。
| モード | 元図形の扱い | 使いどころ |
|---|---|---|
| 標準 | 元の2図形を残したまま円弧を追加 | 下書き段階で元線を残したいとき |
| 分割 | 角の部分で図形を分割 | 一部だけ別に扱いたいとき |
| トリム | 元図形の角を切って円弧と一体化 | 仕上げで角を丸く整えたいとき |
覚えておきたい制限が1つあります。平行な線どうしや、同心円どうしにはフィレットを置けません。「フィレットが効かない」ときは、2つの図形が平行・同心になっていないかを疑うと解決が早くなります。
面取りツール(Chamfer)で角を落とす
角を円弧ではなく直線で落としたいときは、フィレットの直線版にあたる面取りツールを使います。基本ツールパレットから呼び出し、セットバック(角から落とす量)を指定すると、角がまっすぐカットされます。作成した面取りは、後からオブジェクト情報パレット(OIP)で数値を編集できるため、仕上がりを見ながら量を微調整できます。柱の面取りや、家具の角を安全側に落とす表現などに向いています。
クリップサーフェス・変形で図形の輪郭を作り替える
輪郭そのものを作り替えるのが、面を切り欠くクリップサーフェスと、頂点を編集する変形ツールです。切ったり丸めたりでは対応できない「形の作り直し」を担当します。
クリップサーフェス(Clip Surface)で切り欠く
重ねた上の図形の形で、下の図形をくり抜くのが加工メニューのクリップサーフェスです。切り抜きたい形の図形を対象の上に重ね、クリップサーフェスを実行すると、重なった部分がくり抜かれます。複数の切り抜き図形を一度にまとめて使うこともできます(Clip Surface、2026年7月24日確認)。
うまくいかないときの原因は、たいてい条件にあります。対象は同一平面上にある必要があり、シンボルやグループは切り欠けません。切り抜く側の図形にもシンボル・グループは使えません。また、開いた多角形は自動的に閉じてから処理され、切り欠いた後は図形の種類が変わることがあります(たとえば穴の開いた矩形はポリラインになります)。壁に開口を切る、床に吹き抜けの穴をあけるといった編集で活躍します。
変形ツール(Reshape)で頂点を編集
図形の輪郭を「頂点の単位で」作り替えるのが、基本ツールパレットの変形ツールです。頂点の移動・追加・削除に加え、頂点の種類を角と円弧で切り替えて、輪郭を自在に編集できます。図形をダブルクリックしても変形ツールの頂点移動モードに切り替わるため、素早く形の修正に入れます(2D変形モード、2026年7月24日確認)。
対応する図形は幅広く、多角形・ポリライン・2D図形・3Dソリッド・壁・屋根・NURBSなどを編集できます。図形を選ばずに変形ツールを使うとマーキーモードになり、矩形・なげなわ(Alt)・多角形(Ctrl+Alt)で複数の頂点をまとめて選べます。選んだ頂点は一括で移動でき、Shift+矢印キーで少しずつ動かすナッジや、Delキーでの削除もできます。敷地境界のラインを実測に合わせて数点ずらす、といった修正がまとめて片づきます。
編集ツールの使い分けについての編集部の見解
公式ヘルプを読み解くと、Vectorworksの編集ツールは目的で見て「位置・数を扱う系」と「形を扱う系」の2系統に収まります。編集部の見解として、初学者がつまずく箇所は道具の多さそのものより、それぞれのツールが持つ「効かない条件」を知らないことにあると考えます。
どの編集ツールにも、動かない・効かない条件が必ずあります。本文の各解説で触れたロックや平行・同心、同一平面といった条件を操作の前に押さえておくと、「バグではないか」と手を止めて悩む時間をまるごと省けます。効かない理由が先にわかっていれば、初学者でも落ち着いて原因を切り分けられます。
一方で、この記事は「編集操作そのもの」に範囲を絞っています。正確な寸法での移動や、図形を一から描く工程、パレットの配置といった前後の作業は別に押さえる必要があります。編集に慣れてきたら、次の段階として数値入力の精度を上げていくのがおすすめです。
これからの作図で編集ツールを活かすシーン
編集ツールの居場所と効かせ方を覚えた先に広がるのは、「手で並べる・手で消す」作業から解放された作図の景色です。配列複製で連窓や柱スパンを一括生成し、ミラー反転で対称の間取りを片側から起こし、トリミングとフィレットで交点と角を仕上げます。こうした流れが体に入ると、同じ図面を仕上げる時間が目に見えて短くなります。
たとえば集合住宅の基準階プランなら、住戸を1つ作り込んでから行列状に並べる配列複製で全住戸へ展開し、共用廊下側の建具はミラー反転で左右を揃えられます。手作業で1戸ずつコピーしていた頃と比べ、修正が入っても元の1戸を直して並べ直すだけで反映できます。
編集操作を覚えなかった場合と覚えた場合の差は、単なる速度だけではありません。編集を使いこなす人は「まず1つを正確に作り、規則で増やし、交点で整える」という設計的な段取りで図面を組み立てられます。次の一歩として、正確な数値で図形を動かす精度を寸法どおりに正確に描くで高めていくと、編集の速さと正確さが両立します。
まとめ|編集は「選択→2グループ」で覚える
Vectorworksのオブジェクト編集は「セレクションツールで選ぶ→加工する」の2段でできています。移動・複製・回転・ミラー反転・配列複製で位置と数を操り、トリミング・フィレット・面取り・クリップサーフェス・変形ツールで形を作り替える、という2グループの地図さえ持っておけば、道具が多くても迷いません。
つまずきやすい3点、つまりロック図形は動かないこと、フィレットは平行・同心には効かないこと、クリップサーフェスは同一平面かつシンボル・グループでは使えないことを押さえておくと、「できない」の多くはその場で解決できます。ここで取り上げた編集ツールは、いずれもすべての製品構成で共通して使えます。まずは配列複製とトリミングから手を動かして、日々の作図に取り入れてみてください。
建築知識の教科書