Vectorworksの基本2D作図ツール|直線・矩形・円・多角形・曲線の使い分け
Vectorworksの基本2D作図ツール|直線・矩形・円・多角形・曲線の使い分け
Vectorworksは、基本パレットに並んだツールだけで直線・四角形・円・円弧・多角形・曲線が一通り描けます。ただし、似たツールがいくつも並んでいるため、はじめて触る人は「どれを使えば思った形が描けるのか」で手が止まりがちです。円ひとつ描くにもモードがいくつもあり、多角形と曲線の違いも最初はわかりにくいところです。
この記事では、基本パレットの主要な2D作図ツールを「何が描けるか・どう使い分けるか」で整理し、バラバラに描いた線を1つの図形にまとめる工程までを扱います。
正確な寸法で描くためのスマートカーソルや座標入力は寸法どおりに正確に描く|スマートカーソル・座標入力・スナップ、描いた後に動かす・複製する・トリムするといった編集はオブジェクト編集を使いこなす|移動・複製・回転・ミラー・トリム・フィレットにゆずり、ここでは「描く」ことに集中します。
Vectorworksの2D作図ツールはどこにある?基本パレットの全体像
主要な2D作図ツールは、画面に常に出ている基本パレットにまとまっています。ここを最初に押さえておくと、以降のツール探しで迷わなくなります。どのツールで何が描けるかは、次の早見表で一望できます。
| ツール | 描けるもの | 主な用途 |
|---|---|---|
| 線分ツール | 1本の直線 | 補助線・寸法の当たり・単線の壁芯 |
| 複線ツール | 間隔を持つ平行2本線 | 壁・廊下・敷地境界の当たり |
| 四角形ツール | 長方形・正方形 | 部屋・敷地・什器の外形 |
| 角丸四角形ツール | 角に丸みのある四角形 | 框・カウンター・什器 |
| 円ツール | 円 | 柱・什器・植栽の平面 |
| 楕円ツール | 楕円 | 楕円形の卓・装飾 |
| 円弧ツール | 円弧 | アール壁・R納まり |
| 1/4円弧ツール | 90度の円弧 | コーナーのR・面取り表現 |
| 多角形ツール | 閉じた/開いた多角形(面) | 敷地・部屋・ゾーンの面 |
| 曲線ツール | 直線と曲線が混ざった図形 | 自由な輪郭・外構のライン |
出典: Palettes and tool sets(Vectorworks公式)(2026年7月24日確認)
基本パレットは何を収めたパレットか
基本パレットは、2Dと3Dの基本的なオブジェクトを作成・編集するツールを集めたパレットです。日常の作図で使うツールの大半がここに入っているので、初心者はまずこのパレットの中身を覚えれば十分に描き始められます。
収録されるツールは、ワークスペース(作業環境の設定)によって多少入れ替わります。ただし線分・四角形・円・円弧・多角形・曲線といった基本の2D作図ツールは、どのワークスペースでも共通して使えます。これらは製品の基本機能にあたるため、Vectorworksのどのエディションでも作図の可否に差はありません。エディションごとの機能差や価格については、Vectorworks製品情報(db.persc.jp)で確認できます。
似たツールは「長押し」で展開する
見た目が似たツールは、パレットの同じ場所にまとめて格納されています。ツールのアイコンを長押しすると、隠れているツールがポップアップで一覧表示され、そこから選べる仕組みです。
たとえば多角形ツールと三角形ツールは同じ位置に、円弧ツールと1/4円弧ツールも同じ位置に格納されています。この仕組みを知らないと「パレットに円弧しか見当たらない」「1/4円弧ツールが見つからない」と探し回ることになります。ツールが見当たらないときは、近くのアイコンを長押しして中身を確認してみてください。
直線・複線を描く|線分ツールと複線ツール
直線系は、1本の線を引く線分ツールと、平行な2本線を一度に引く複線ツールの2つを使い分けます。壁や通路のように「2本の線で幅を表現したい」場面では、複線ツールを使うと手数が半分になります。
線分ツールで1本の直線を描く
線分ツールは、始点と終点をクリックして1本の直線を引く、もっとも基本のツールです。補助線や単線の壁芯、寸法の当たりをとるときなど、使わない図面はほとんどありません。
ここで初心者がつまずきやすいのが、連続して線をつないで描いても、1本ずつが別々のオブジェクトになるという点です。四角い部屋の輪郭を4本の線で描いても、それは「4つの独立した線」であって「1つの四角形」ではありません。あとで面積を拾ったり塗りをかけたりするために1つの図形としてまとめたい場合は、この記事の後半で紹介する組み立て(Compose)を使います。
複線ツールで平行な2本線を描く
複線ツールは、あらかじめ設定した間隔で平行な2本線を一度に引くツールです。壁の内法と外法、廊下の両側、敷地境界の二重線など、幅を持った線を素早く描きたいときに向いています。
厳密な間隔や長さを数値で指定したいときは、画面に出るデータバーに値を打ち込みます。この「数値で正確に描く」作法は作図全体に共通する重要な技術なので、寸法どおりに正確に描く|スマートカーソル・座標入力・スナップでまとめて解説しています。
四角形・円・楕円・円弧を描く|モードで形が決まる
四角形・円・円弧の各ツールは、選ぶモードによって描き方が変わります。同じ円でも「中心から半径で」描くか「通過する3点で」描くかを選べるため、その場の条件に合ったモードを選ぶのが上達の近道です。
円弧はモードがとくに多いので、用途とモードの対応を先に一覧で示します。
| 描きたい状況 | 選ぶモード | 描き方の流れ |
|---|---|---|
| 中心と大きさが決まっている | 半径 | 中心→始点→終点 |
| 通したい3点が決まっている | 3点 | 始点→通過点→終点 |
| 既存の線になめらかにつなぎたい | 接線 | 接する線を指定して描く |
| 両端と中心を指定したい | 2点と中心 | 端点2つ→中心 |
| 弧の長さで決めたい | 弧長 | 中心・始点を決め弧長を入力 |
出典: Creating Arcs(Vectorworks公式)(2026年7月24日確認)
四角形・角丸四角形
四角形ツールは、部屋や敷地、什器の外形を最短で描くためのツールです。4つの描画モードを持ち、Shiftキーを押しながら描くと縦横が同じ正方形(1:1)になります。
角丸四角形ツールは、角に丸みを付けた四角形を描きます。カウンターの天板や框(かまち)、角を丸めた什器など、直角ではなく丸い角で表現したいものに向いています。角の丸み(半径)や全体の寸法をきっちり決めたいときは、データバーへの数値入力で指定します。
出典: 四角形を作成する(Vectorworks公式・日本語)(2026年7月24日確認)
円・楕円
円ツールは、半径・直径・3点・接線などのモードで円を描きます。柱や什器、植栽の平面など、平面図で丸いものを表すときの定番です。中心と半径がわかっているなら半径モード、通したい3点が決まっているなら3点モード、というように条件から選ぶと迷いません。
楕円ツールは、縦と横で径が違う楕円を描きます。楕円形のテーブルや装飾的な平面など、正円では表せない形に使います。
出典: Creating Circles(Vectorworks公式)(2026年7月24日確認)
円弧・1/4円弧
円弧ツールは、アール壁やR納まり、曲線的な外構など、円の一部だけを描きたいときに使います。半径・3点・接線に加えて、2点と中心・2点と半径・両端点と通過点・弧長といった方法でも描けます。半径モードは中心から始点・終点へ、3点モードは始点・通過点・終点へ、という順にクリックしていきます。
1/4円弧ツールは、90度ぴったりの円弧、または90度の楕円弧を描くための専用ツールです。コーナーのRや面取りの表現など「4分の1だけ欲しい」場面で、円弧ツールよりも手早く描けます。円弧ツールと同じ位置に格納されているので、アイコンの長押しで切り替えます。
出典: Creating quarter arcs(Vectorworks公式)(2026年7月24日確認)
多角形と曲線(ポリライン)を描く|「面」になる図形とNURBSとの違い
多角形ツールと曲線ツールは、線をつないで「閉じた面」をつくれる点が線分ツールとの大きな違いです。閉じた図形は既定で塗り(面)を持てるため、敷地や部屋の面積を扱ったり、色を塗ったりする土台になります。
3つの図形の性格を先に整理しておきます。
| ツール | 描くもの | 用途の中心 | 閉じると面になるか |
|---|---|---|---|
| 多角形ツール | 直線だけでできた多角形 | 敷地・部屋・ゾーンの面 | なる |
| 曲線ツール | 直線と曲線が混ざった図形 | 自由な輪郭・外構のライン | なる |
| NURBS曲線ツール | 3D空間の自由曲線 | 3D曲面づくりの元 | 2D作図の役割ではない |
多角形ツールで面をつくる
多角形ツールは、直線でつながれた多角形を描き、閉じれば1つの面(塗りを持てる図形)になるツールです。敷地・部屋・ゾーンといった「面として扱いたいもの」を1オブジェクトで描けるので、面積を拾いたい図形にはこのツールが向いています。頂点(角の数)は3個から32,767個まで作れます。
描き方のモードは3つあります。基本は各頂点を順にクリックする「頂点」モードです。ほかに、既存の図形の内側をクリックして輪郭を自動取得する「内側境界」モードと、投げ縄のように囲って輪郭をとる「外側境界」モードも選べます。
内側境界モードは、既存の部屋の内側をクリックするだけで輪郭をなぞった面が作れるので、床面積のあたりをとるときに便利です。辺の数を決めて正三角形や正六角形を描きたいときは、正多角形ツールを使います。
出典: 多角形ツール(Vectorworks公式・日本語)(2026年7月24日確認)
曲線ツール(ポリライン)で直線と曲線を1本に
曲線ツールは、直線・円弧・曲線のセグメントを混ぜて1本の図形にできる、汎用性の高いツールです。ここでいう曲線(ポリライン)は、連続した直線や円弧、曲線でできた図形を指し、開いた形も閉じた形も作れて、閉じれば面を持てます。外構のなめらかなラインや、直線と曲線が入り混じった輪郭を1本で描きたいときに活躍します。
頂点のモードは大きく3系統に分かれます。角をつくるなら頂点指定、なめらかな曲線ならベジェポイント指定かキュービックスプラインポイント指定を使います(前者は制御点に近づき、後者は制御点を通過します)。円弧をつくるモードも3つ(直線に接する円弧・弦と円弧上点・円弧指定フィレット)そろっています。モードを切り替えながらクリックすれば、1本の中に角と曲線を自由に混在させられます。最後にダブルクリックすると開いた曲線、始点をもう一度クリックすると閉じた曲線になります。
描いたあとに形を直したいときは、変形ツール(Reshape、頂点をつまんで動かすツール)やオブジェクト情報パレット(選択中の図形の情報を表示・編集するパレット)で頂点を編集できます。頂点のモードは後から「角から円弧へ」といった変換もできるので、まず大まかに描いてから整える進め方も可能です。
出典: 曲線を描く(Vectorworks公式・日本語)(2026年7月24日確認)
「曲線ツール」と「NURBS曲線」は別物
Vectorworksには「曲線ツール」とは別に「NURBS曲線ツール」があり、初心者はこの2つを混同しがちです。結論から言うと、平面図の作図で使うのは曲線ツールで、NURBS曲線は3Dモデリング用の別物と考えてください。
NURBS曲線ツールは、基本パレットではなく3Dモデリングツールセットに入っています。次数と重み付き制御点という数式で定義される高精度な自由曲線で、3D空間で曲面をつくる元になります。平面図の輪郭を描くだけなら曲線ツールで十分で、NURBS曲線は3Dで凝った曲面をつくりたくなったときに使うもの、と役割を切り分けておけば迷いません。なお、本格的な3D曲面づくりはこの記事の範囲を超えるため、ここでは区別を押さえるにとどめます。
出典: Concept: NURBS curves and surfaces(Vectorworks公式)(2026年7月24日確認)
描いた図形を1つにまとめる|組み立てと面づくり
作図は、線を描いて終わりではありません。バラバラに描いた線や図形を1つにまとめると、面積を拾ったり塗りをかけたりできるようになります。ここでは、線を1本の図形につなぐ組み立てと、面どうしを合体させる貼り合わせの2つを扱います。既存の図形を削る・整える加工は別の役割なので、そちらは後述のとおり編集の記事にゆずります。
使い分けを先に整理します。
| コマンド | できること | 使うときの前提 |
|---|---|---|
| 組み立て(Compose) | 線・円弧・開いた図形を1つの図形に結合 | 各図形の端点が接していること |
| 貼り合わせ(Add Surface) | 重なった面を1つの面図形にまとめる | 同じ平面上で接するか重なっていること |
組み立て(Compose)で線を1本の図形にする
組み立て(Compose)は、加工メニューにあるコマンドで、線・円弧・開いた多角形・曲線などを1つの図形に結合します。線分ツールで描いた4本の線を選んで組み立てを実行すれば、1つの閉じた図形にまとまり、面として扱えるようになります。
ここで最大のつまずきポイントが、各図形の端点が接している必要があるという条件です。公式ヘルプにも「端点が接していない図形は無視される」と明記されており、つないだつもりでも端点がわずかにずれていると、その線はまとめられずに残ってしまいます。確実に端点をそろえるにはスナップ(点や線に吸着させる機能)が要になるので、寸法どおりに正確に描く|スマートカーソル・座標入力・スナップで正確な接続の作法を確認しておくと、組み立ての失敗が減ります。
出典: Composing objects and surfaces(Vectorworks公式)(2026年7月24日確認)
貼り合わせ(Add Surface)で重なった面を1つにする
貼り合わせ(Add Surface)は、接するか重なっている同じ平面上の複数の面を、1つの面図形にまとめるコマンドです。加工メニューから実行します。多角形や曲線で描いた複数の面を合体させて、L字型やコの字型の1つの面にしたいときに使います。
たとえば、長方形のリビングと長方形のダイニングを別々に描いてから貼り合わせると、2つがつながったLDK全体の1枚の面になります。こうしてひとつにまとめておくと、面積の集計や塗りの管理が図形1つで済みます。なお、重なりを削る切り欠きや、移動・複製・回転・ミラー・トリム・フィレットといった編集は、この記事では扱いません。それらはオブジェクト編集を使いこなす|移動・複製・回転・ミラー・トリム・フィレットにまとめています。
出典: Add surface(Vectorworks公式)(2026年7月24日確認)
基本2D作図ツールについての編集部の見解|どこでつまずくか
公式ヘルプを読み解くと、Vectorworksの2D作図ツールは「ツールの数」よりも「モードと後工程」でつまずく設計だと感じます。ツール自体は線・四角・円・円弧・多角形・曲線と素直ですが、円弧のモードの多さや、多角形と曲線の役割の違いが、初心者の最初の壁になりやすい部分です。
編集部の見立てでは、最短で慣れるコツは「閉じた面が欲しいのか、線だけでいいのか」を描く前に決めることです。面が欲しいなら多角形か曲線、線でいいなら線分、というだけの判断でも、ツール選びの迷いはかなり減ります。円弧は用途からモードを逆算する癖をつけると、モードの多さが逆に武器になります。
もう1つ、見落とされがちなのが組み立ての「端点が接していないと無視される」という挙動です。公式ドキュメントにも明記されているこの仕様は、裏を返せば「描く精度が作図の締めの成否を決める」ということです。だからこそ、作図ツールとスナップ・数値入力はセットで身につけるのが遠回りに見えて近道になります。
作図ツールを手グセにした先の活用シーン
基本の2D作図ツールを迷わず選べるようになると、図面を描くスピードと、その先の作業のしやすさが大きく変わります。ツールを覚えたての段階と、手グセになった段階では、同じ平面図を描くのにかかる時間も、後工程の楽さもまったく違ってきます。
たとえば住宅の平面図で、部屋を多角形で「面」として描く癖がついていれば、そのまま床面積の集計や、床材ごとの塗り分けにスムーズに進めます。線分でバラバラに描いていた人が、組み立てや貼り合わせで面をつくれるようになると、面積の拾い直しや塗りのやり直しといった手戻りが減っていきます。
作図ツールを土台として押さえたら、次は正確な寸法で確定させる技術と、描いた図形を整える編集の技術を重ねると、平面図づくりが一段速くなります。さらに属性で線種や塗りを整えれば、見た目まで含めて実務で通用する図面に近づきます。作図・正確さ・編集・表現の4つがそろったとき、Vectorworksの2D作図はぐっと自分のものになります。
まとめ
Vectorworksの基本2D作図ツールは、基本パレットにまとまっており、似たツールは長押しで展開して選びます。線分・複線で直線を、四角形・円・楕円・円弧でモードを選びながら定番の図形を描き分けられます。
閉じた面が欲しいなら多角形か曲線、直線と曲線を混ぜたいなら曲線ツール、円の一部なら円弧ツールのモード、というように「何を描きたいか」からツールとモードを選ぶと迷いません。平面図の作図で使うのは曲線ツールで、NURBS曲線は3D用の別物と覚えておきましょう。
描いたあとは、組み立て(Compose)で線を1本の図形に、貼り合わせ(Add Surface)で面を1つにまとめられます。組み立ては端点が接していないと無視されるため、正確に描く技術とセットで身につけるのが上達の近道です。削る・整える編集は、作図とは別の工程として次の段階で押さえていってください。
建築知識の教科書