Vectorworksレコードフォーマット入門|図形にデータを持たせて数量拾いの元をつくる
Vectorworksレコードフォーマット入門|図形にデータを持たせて数量拾いの元をつくる
「図面は描けるけれど、建具表や数量の集計は毎回手で数えて拾っている」という方は少なくありません。Vectorworksのレコードフォーマット(図形に持たせるデータの器)を使うと、図形そのものに番号や仕様といった情報を持たせられます。持たせた情報はあとから機械的に集計できるので、手集計の手間と転記ミスを減らせます。
この記事では、レコードフォーマットの作成から、オブジェクトへの連結、値の入力までの基本を解説します。実際の集計手順や図面への自動注記は、範囲を分けています。読み終えるころには「図形に情報を持たせ、あとで自動集計できる状態」を、自分の手でつくれるようになります。
レコードフォーマットの基本(オブジェクトに情報を持たせる仕組み)
レコードフォーマットは、図形に情報をひもづけるための「器」です。器を図形に連結して値を入れると、その図形が自分専用のデータを持った状態になります。
まずは登場する言葉の役割を整理しておきます。ここがあいまいなままだと、あとの手順でつまずきやすくなるためです。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| レコードフォーマット | 図形に持たせるデータの器。フィールド(項目)の集合を定義したもの |
| フィールド | 器の中の1項目。建具番号・仕様名・数量など |
| レコード | 器を図形に連結し、値が入った状態のデータ |
| データタブ | オブジェクト情報パレットの中で、連結や入力をおこなう場所 |
ソース: Vectorworks Help: Creating Record Formats(確認日 2026-07-25)
レコードフォーマットは「データの入れ物」
レコードフォーマットは、図形に付けるデータの入れ物で、フィールドという項目の集まりとして定義します。たとえば「建具番号」「品番」「仕様」という3つのフィールドを持つ器を、ひとつのレコードフォーマットとしてつくれます。
この器を図形に連結して値を入れた状態が、その図形が持つ「レコード(データ)」です。器と、値の入ったレコードは別物だと押さえておくと、後半の説明がすっと入ってきます。レコードフォーマットはリソースマネージャ(部品やレコードなどの素材をまとめて管理する画面)で管理されます。
なぜ図形に情報を持たせるのか
図形に情報を持たせる最大の目的は、あとで数量を機械的に集計できるようにするためです。建具番号や仕様を図形自身が持っていれば、図面を目で追って数える必要がなくなります。
手で数えた集計は、図面を修正するたびに数え直しが発生します。データを持たせておけば、集計する側が変更に追従してくれるので、拾い直しの手間が消えます。建具番号や仕様を持たせておくことは、建具表・仕上表・数量表を自動で組み立てる土台づくりでもあります。この「情報を持つモデル」が、Vectorworksでデータを活用していく出発点になります。
レコードフォーマットを作成する(リソースマネージャ)
作成はリソースマネージャからおこないます。名前を付けてフィールドを追加していくだけで、器そのものは短時間で用意できます。
フィールドには5つのタイプがあり、入れたいデータの性質で使い分けます。集計に使う値ほどタイプ選びが効いてきます。
| フィールドタイプ | 入る値 | 使いどころ |
|---|---|---|
| Text(文字列) | 文字。既定のタイプ | 品番・仕様名・メモ |
| Integer(整数) | -32,768〜32,767の整数 | 数量・連番 |
| Number(数値) | 小数・分数・寸法・角度・日付などを書式で指定 | 面積・単価・寸法 |
| Boolean(論理値) | TRUE / FALSE の2択 | 確認済みかどうかのチェック |
| pop-up(選択リスト) | 登録した候補から選ぶ | 材種・仕上げなど表記をそろえたい項目 |
ソース: Vectorworks Help: Creating Record Formats(確認日 2026-07-25)
リソースマネージャから新規作成する
レコードフォーマットは、リソースマネージャの「新規リソース」から「レコードフォーマット」を選んで作成します。まずフォーマット名を付けます。
次に「新規」でフィールド編集の画面を開き、項目を1つずつ追加していきます。フィールド名は最大63文字まで付けられます。必要な項目を入れ終えたらOKで確定します。名前はあとから見て意味がわかるものにしておくと、集計時に迷いません。
フィールドタイプの選び方
タイプ選びは「その値をあとでどう使うか」で決めます。文字として表示するだけなら既定のText、数量として足し算するならInteger、面積や単価のように単位や小数を扱うならNumberが向いています。
pop-upは少し特別です。タイプでpop-upを選ぶと選択肢を登録する画面が開き、あらかじめ候補を入れておけます。入力時はその候補から選ぶ形になるので、「木」「木材」「Wood」といった表記のばらつきを最初から防げます。集計は表記が1文字でも違うと別物として数えてしまうため、選択肢が決まっている項目ほどpop-upが効きます。あわせてデフォルト値(連結したときに最初から入る初期値)を設定しておくと、入力の手間と打ち間違いを減らせます。
フィールド設計は最初に決める
集計で使いたい項目は、フォーマットを作る前に洗い出しておくのが安全です。理由は、レコードフォーマット自体をあとから編集してフィールドを増減しても、すでに連結済みの既存の図形には自動で反映されないためです。
つまり、途中で項目を足すと、それ以前に連結した図形は古い構成のまま取り残されます。手戻りを避けるには、建具表や数量表に載せたい項目を先に決めてから器をつくる順番がおすすめです。
オブジェクトにレコードを連結してデータを入力する(データタブ)
図形へのデータ付与は、オブジェクト情報パレット(選んだ図形の情報を表示・編集するパネル)のデータタブでおこないます。連結して値を入れるまでが基本の流れです。
データタブでレコードを連結する
図形を選んだら、オブジェクト情報パレットのデータタブを開きます。「レコードを連結」を押すと、リソースセレクタ(素材の一覧から選ぶ画面)が開きます。
ここで先ほど作成したレコードフォーマットを選ぶと、その図形に器が連結されます。連結を外したいときは「連結解除」を使えば、選んだ図形からレコードを取り外せます。連結は図形1つずつでも、複数選択でまとめてでもおこなえます。
フィールドに値を入力する
連結が済んだら、データタブのレコード一覧から対象のレコードを選びます。すると、そのフィールド一覧に現在の値が表示されます。
各フィールドの値を直接書き換えて、その図形固有の情報を入れていきます。たとえば玄関ドアの図形に「建具番号=WD-01」「仕様=木製フラッシュ戸」と入れる、といった具合です。同じ値を複数の図形に入れたいときは、対象の図形をまとめて選んでから入力すれば一度で反映できます。
シンボル定義に連結すると配置時に自動で付く
同じ部品を何度も配置する場合は、シンボル定義(配置用の部品の元データ)側にレコードを連結しておくと入力がぐっと楽になります。定義に連結しておけば、そのシンボルを配置するたびに自動でレコードが付き、定義側で決めたデフォルト値も一緒に入ります。
ここで1点だけ注意があります。シンボル定義を編集して連結した場合、すでに図面上に配置済みのシンボルには遡って反映されません。既存の配置分にもまとめて適用したいときは、リソースマネージャでそのシンボル定義を右クリックして連結する方法を使います。この方法なら、配置済みのものと今後配置するものの両方にレコードとデフォルト値が付きます。目的に応じて2つの方法を使い分けてください。
ソース: Vectorworks Help: Attaching record formats to symbols, objects, and materials(確認日 2026-07-25)
入力したデータを数量拾い・積算につなげる
図形に持たせたレコードの値は、そのままワークシート(表計算のように集計をおこなう機能)の元データになります。ここが、先に触れた「情報を持たせる」ことの見返りです。
集計の仕組みはシンプルです。図形に連結したレコードのフィールド値を、ワークシートのデータベース行で条件を指定して抽出・集計します。図形そのものを数えるのではなく、持たせた値を条件で拾って表にまとめる、という発想です。
実際の集計手順(データベース行の設定・抽出条件・関数)は範囲を分けているので、ワークシートで数量表・集計表を自動作成するで解説しています。この記事で図形にデータを持たせたら、次はそちらで集計の仕組みに進むのが自然な流れです。
つまずきやすいポイントと運用のコツ
初心者がつまずくのは、たいてい「言葉の混同」と「表記のばらつき」の2つです。ここを先回りで押さえておくと、あとで集計が崩れる事故を防げます。
「フォーマット」と「レコード」を混同しない
フォーマットは器(項目の定義)、レコードは図形に連結して値が入った状態、と役割が違います。この2つを同じものとして扱うと、「器を直したのに図形が変わらない」と混乱しがちです。
前述のとおり、器を後から直しても連結済みの既存図形は自動では変わりません。ですから、フィールドを追加・変更する設計変更は、いつ・どの図形に反映し直すかを運用ルールとして決めておくと安全です。
集計を崩さない入力ルール
集計を安定させるコツは、値の表記をそろえることです。全角と半角の違いや、略称のばらつきは、集計時に別々の項目として数えられてしまいます。選択肢が決まる項目はpop-upとデフォルト値で固定し、入力のたびに手打ちしない仕組みにしておくと確実です。
数量や面積のように計算する項目は、TextではなくInteger(数量)やNumber(面積・単価)で持たせ、単位や小数の書式を最初にそろえておきます。フィールド名と入力する値の書き方は、チームで共有してから運用を始めると、途中で表記が割れる事故を減らせます。
レコードフォーマットについての編集部の見解
レコードフォーマットは、Vectorworksを「図面を描くソフト」から「情報を持つモデルを扱うソフト」へ橋渡しする中心的な仕組みです。公式ドキュメントを読み解くと、その位置づけが見えてきます。編集部の所感を、実務目線で3点にまとめます。
1点目は、この機能が効く案件の見極めです。先に述べた「集計が変更に追従する」利点は、建具表や仕上表を何度も更新する案件ほど大きく働きます。逆に、一度きりで集計の必要がない図面では、設定の手間が上回ることもあります。導入するかどうかは、図面の更新頻度で判断するのが実務的です。
2点目は、導入ハードルの低さです。フィールドを並べて連結するだけなので、スクリプトを書くような専門知識は要りません。ただし、フォーマットを後から編集しても既存の連結図形に反映されないという公式仕様があるため、最初の項目設計が実質的な要になります。ここを軽く見て走り出すと、途中で器を作り直す遠回りになりがちです。
3点目は、始めどきの提案です。おすすめは、建具表や数量表を「毎回手で拾っている」段階の実務者が、集計頻度の高い対象からレコードを持たせ始めることです。建具や部屋など数の多い対象から手をつけると、投資対効果を実感しやすいはずです。なお、レコードフォーマットはエディションをまたいで使える基本機能ですが、エディションごとの対応範囲や価格は本文では扱いません。必要なときは db.persc.jp/vectorworks/ で確認してください。
応用シーンと次の一歩|データを持たせた先の景色
図形にデータを持たせられるようになると、次の一歩は使い道を広げることです。手入力で値を埋める段階から、図面づくりと連動してデータが増える段階へと進めます。
たとえば、図面上への情報の自動注記です。データタグ(図形が持つ値を図面上に自動で表示する仕組み)を使うと、建具番号や仕様を手書きせずに図面へ載せられます。命名やクラス(図形を用途で仕分ける属性)の条件で、データをまとめて割り当てる方法もあります。こうした自動化のやり方は、データマネージャとデータタグでBIM情報を管理・注記するで解説しています。
さらに、持たせたデータは社外にも渡せます。他のBIMソフトへ受け渡したい場合は、IFCとBIMワークフローの基本(データ連携)へ進むと、異なるソフト間でのやり取りまで見通せます。
まとめ
レコードフォーマットは、図形に情報を持たせるための「器」です。器を図形に連結して値を入れた状態が「レコード」で、この区別が理解の土台になります。
作成はリソースマネージャからおこない、連結と入力はオブジェクト情報パレットのデータタブでおこないます。シンボル定義に連結しておけば配置時に自動でレコードが付きますが、定義を編集して連結した場合は既存の配置分には反映されない点だけ覚えておきましょう。集計に使う項目は、あとから増やすと既存図形に反映されないため、最初に洗い出して設計するのが安全です。
こうして持たせた値は、ワークシートで抽出・集計でき、数量拾いや建具表の元データになります。まずは集計頻度の高い対象からデータを持たせ始め、次は集計の仕組みへ進んでみてください。
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