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Vectorworksデータマネージャとデータタグの使い方|属性を条件で割り当て図面に自動注記する

編集部 読了 約13分

Vectorworksデータマネージャとデータタグの使い方|属性を条件で割り当て図面に自動注記する

Vectorworks(ネメチェック社の建築・インテリア・ランドスケープ対応の総合CAD)で図面に部材の情報を管理・注記したいとき、鍵になるのが「データマネージャ」と「データタグ」の2つです。名前が似ていて役割を混同しがちですが、片方はデータの持たせ方を設計する裏方、もう片方はそのデータを図面に文字で見せる表方と、担当がはっきり分かれています。

この記事では、データマネージャによるデータ設計と、データタグによる図面注記の2つを扱います。

データセット・データシート・データマッピングの関係、クラスや属性による条件割り当て、図面へ情報を自動注記する3つの配置モードまでを、初心者が読んでわかる順序で解説します。

説明はすべてVectorworks公式ヘルプ(app-help.vectorworks.net、確認日2026年7月25日)に沿っており、版によって変わる新機能ではなく、長く使える基本のしくみに絞りました。

データマネージャとデータタグはセットで「データ活用」を完成させる

データマネージャは「どのオブジェクトにどのデータを持たせるか」をルール化する場所で、データタグは「そのデータを図面に文字で見せる」道具です。2つはセットで働き、片方だけでは図面の情報管理は完成しません。

データを「持たせる→割り当てる→見せる」の3ステップ

Vectorworksのデータ活用は、大きく「持たせる・割り当てる・見せる」の3ステップで流れていきます。この記事が担当するのは、そのうちの「割り当てる」と「見せる」の部分です。

情報の入れ物そのものは「レコードフォーマット」(オブジェクトに項目と値を持たせるための書式)で作ります。作り方の基本はレコードフォーマットでオブジェクトに情報を持たせるで解説しているので、まだ入れ物がない段階の方はそちらから読むと迷いません。

入れ物を用意したあと、それを「どのオブジェクトに、どういう条件で持たせるか」を設計するのがデータマネージャです。そして持たせたデータを図面に文字として出すのがデータタグになります。持たせたデータを集計して数量表や積算につなげたい場合は、役割が分かれていて、ワークシートで数量表・集計表を自動作成するが担当します。

なぜ手入力ではなくルール化するのか

オブジェクトの数が増えるほど、1つずつ手でデータを入力し注記するやり方は現実的でなくなります。数百件の部材を毎回手作業で直し続けられるでしょうか。だからこそ、条件でデータを割り当てるルール化が意味を持ってきます。

たとえばマンションの基準階で建具が100本を超えるような案件を考えてみてください。1本ずつ手打ちで符号や仕様を入力すると、時間がかかるうえに、あとで扉の仕様が変わるたびに全箇所を直す必要が出てきます。変更のたびに図面と表の整合が崩れ、拾い間違いも起きやすくなります。

データマネージャで「このクラスのオブジェクトにはこのデータを持たせる」と条件を決めておけば、対象の種類やクラスに応じてデータが自動で付きます。さらにデータタグはデータを参照して表示するしくみのため、オブジェクトを変えるとタグの文字も連動して変わります。手作業の文字注記にはできない、この変更への追従こそが、ルール化を選ぶ理由になります。

データマネージャでデータの持たせ方を設計する

データマネージャは、データセット・データシート・データマッピングという3つの言葉で「オブジェクトのデータ設計」を組み立てる場所です。まずこの3語の関係を押さえると、あとの操作が一気にわかりやすくなります。

用語役割
データセットオブジェクトに適用できるデータ項目のまとまり
データシートオブジェクト情報パレットのデータタブで入力する項目群
データマッピング特定タイプのオブジェクトに使うデータセットとデータシートの集合

データマネージャはツールメニューから開く

データマネージャはツール(Tools)メニューからアクセスします。開くと、最初から既定のデータマッピングが有効になっている状態です。

この既定マッピングは、オープンBIM(異なるBIMソフト間でデータをやりとりする共通ルール)でモデルを書き出すのに必要な標準データで構成されています。つまり何も設定しなくても、基本的なデータ設計はすでに用意されているということです。自分で変更または新規作成するまで、この既定マッピングがそのまま使われます。

だから初心者は、いきなりゼロから作り込む必要はありません。まず既定の状態でどんなデータが割り当たるかを確認し、足りない部分だけを足していくのが現実的な進め方です。

データセット・データシート・データマッピングの関係

3つの言葉は「項目のまとまり・入力する画面・その組み合わせ」と役割で分けると区別できます。

データセットは、オブジェクトに適用できるデータ項目のまとまりです。標準のVectorworksパラメータ、IFCフィールド(国際規格IFCで定められたBIM用の情報項目)、自分で作ったレコードフォーマットのカスタム項目までを、ひとまとめに含められます。

データシートは、オブジェクト情報パレット(OIP、選んだオブジェクトの情報を表示・編集するパレット)のデータタブで選んで入力できる項目群です。複数のデータセットから必要な項目を集め、現場でわかりやすいカスタムラベルを付けられます。「IfcDoor_OverallHeight」のような規格名のままでは読みにくい項目に、「建具高さ」といった名前を付け直せるわけです。

データマッピングは、特定タイプのオブジェクトに使うデータセットとデータシートの集合、つまりそのオブジェクトの「データ設計そのもの」を指します。ドアにはドア用のマッピング、壁には壁用のマッピングというように、対象ごとに設計をまとめて扱えます。

カスタムフィールドとカスタム式で欲しい情報を作る

標準項目にない情報が必要なときは、自作のカスタムフィールドとカスタム式で作れます。これがあると、既製の項目に縛られずに現場が必要とするデータを持たせられます。

自作したレコードフォーマットのカスタムフィールドは、そのままデータセットに含められます。レコードの作り方そのものはレコードフォーマットでオブジェクトに情報を持たせるで詳しく解説しているので、入れ物づくりから確認したい方はあわせて読んでみてください。

項目にはカスタム式を設定でき、他の項目の内容を参照して値を組み立てられます。たとえば「型番」と「サイズ」の2項目を組み合わせて1つの表示用テキストを作ったり、既存の寸法データから面積を自動計算して持たせたりできます。手入力を減らしながら、表示したい形の情報を用意できるのが利点です。

命名・クラス・属性による条件割り当て

データマネージャの本領は、クラスやオブジェクトの種類、命名ルールといった条件で、手入力なしにデータを一括で割り当てられる点にあります。式を書かない既定の自動付与でも多くのケースはカバーでき、細かい制御が必要なときだけ式を足す形になります。

データセットは種類・クラスで自動付与される

データセットは、オブジェクトの種類やクラスに応じて自動で付与されます。式を書かなくても、既定の状態で条件割り当てが働くしくみです(公式ヘルプ「Concept: Data mapping and data sheets」)。

このしくみがあるおかげで、最初にクラスや命名のルールを整えるほど、以降のデータ割り当てが手作業なしで機能します。たとえば内装のドアを「建具_内部」というクラスにまとめておけば、そのクラスに属したドアへ自動で対応データが付く、という運用ができます。

より複雑な分岐、たとえば同じ部材でも条件によって別のデータを割り当てたいケースは、次に説明する条件式マッピングで上書きしていきます。まず既定の自動付与でざっくり整え、細かい制御を式で足す、という二段構えが基本の流れです。

条件式マッピングと項目マッピングの違い

Vectorworksのマッピング式には、割り当てる対象を決める式と、値そのものを算出する式の2種類があります。名前が似ているので、何をする式かで区別しておくと混乱しません。

式の種類何をするか
条件式マッピングどのレコード/IFCエンティティ/プロパティセットを割り当てるかを条件で判定する
項目マッピング各パラメータの実際の値を算出・表示する

条件式マッピング(Conditional mapping formula)は、オブジェクトが特定のレコードと単純な1対1対応にならないときに使います。IFCエンティティ(IFC上でのオブジェクトの分類)の式は有効なIFCタイプを返す必要があり、空や無効な値だと書き出されません。プロパティセット(IFCで属性をまとめる単位)の式は真偽値(trueかfalseの2値)を返し、trueのときだけ出力されます。

項目マッピング(Field mapping formula)は、各パラメータの実際の値を算出・表示する式です。定数・変数・演算子・関数で構成し、たとえば入力済みの数値から表示用の値を作り出すといった役割を担います。

クラス・オブジェクト種類・命名で自動的に割り当てる

式の変数には、オブジェクトパラメータ・レコード項目・クラス名・スタイルデータが使えます。つまり「クラスがこれなら」「この種類のオブジェクトなら」という条件を、式の中で判定材料にできます。

具体例で考えてみます。同じ躯体(建物を支える構造部分)の部材でも、設定によってIfcBeam(梁)・IfcColumn(柱)・IfcMember(部材)など、異なるIFC分類へ振り分けられます。図面上では似た線に見える部材を、データの世界では役割ごとに正しく仕分けられるということです。

ここで生きてくるのが、日ごろのクラスや命名ルールの整え方です。クラスを役割ごとに分け、命名にルールを持たせておくと、こうした条件分岐がそのまま狙いどおりに働きます。逆にクラスが雑然としていると、あとから条件を書いても正しく振り分けられません。データ設計は図面を描き始めるクラス設計から始まっている、と考えると腑に落ちます。

データタグで図面上に情報を自動注記する

データタグは、オブジェクトに紐づくデータを図面上に文字として表示する注記オブジェクト。手打ちの文字と違い、参照先のデータが変わるとタグの表示も自動で更新されます。

配置モード挙動
単一の対象オブジェクト(Single Object)カーソルを重ねた対象を1つずつタグ付けする
すべての対象オブジェクト(All Objects)同種の対象をまとめて一括でタグ付けする
選択した対象オブジェクト(Selected Objects)事前に選んだ範囲だけを一括でタグ付けする

データタグが表示できる情報

データタグは、図面オブジェクトに紐づく情報をほぼ全種類表示できます。高さなどの一般パラメータ、型番などのレコード項目、IFCデータまで幅広く出せます。

データを持たない単純なラベルも作れます。日付や番号のスタンプのように、参照ではなく固定の文字を置くだけのタグです。だから「まずは番号を振るだけ」という軽い使い方から始められます。

表示の作り込みには幅があります。手入力の説明を1つ出すだけの簡単なタグから、複数のデータを組み合わせて自動表示する複雑なタグまで対応します。たとえばドアに連番D-1、D-2…を自動生成する使い方があり、平面図の建具符号をタグに任せてしまう運用につながります。

3つの配置モードを使い分ける

データタグには3つの配置モードがあり、対象の数や選び方に応じて使い分けます。少数を狙って付けるのか、大量に一括で付けるのかで選ぶモードが変わります。

単一の対象オブジェクト(Single Object)は、カーソルを重ねた対象を1つずつタグ付けするモードです。対象がハイライトされるので、狙った1本にだけ付けたいときに向きます。

すべての対象オブジェクト(All Objects)は、現在のレイヤやビューポート注記(レイアウト上に配置する注記領域)の中でタグを付けられる対象をすべてハイライトし、1つクリックすると同種をまとめてタグ付けするモードです。公式ヘルプでも「1つのオブジェクトをクリックすればすべてにタグを付けられる」と説明されています。

選択した対象オブジェクト(Selected Objects)は、事前に選んでおいた範囲だけを一括でタグ付けするモードです。たとえば実施設計で「この住戸のドアだけ符号を振りたい」というとき、その住戸のドアを選んでから一括でタグを付けられます。大量注記を効率よく片づけたい場面で頼りになります。

データタグスタイルで見た目と中身を統一する

データタグスタイルは、「何のデータをどう見せるか」を定義する再利用リソースです。これを使うと、図面全体でタグの見た目と表示内容を統一できます。

スタイルはツールバーのリソースセレクタから選びます。ライブラリのタグをダブルクリックすると、ファイル内に「Data Tag Styles」というフォルダが作られ、そこにリソースが配置される流れです。用意されたスタイルをそのまま使うほか、自分でカスタムスタイルを作ることもできます。

対象に合わせたスタイルを選ぶのがコツです。壁用・ドア用というように、そのオブジェクトに適した情報が出るスタイルを使えば、壁には壁の、ドアにはドアの必要な情報が自然に並びます。スタイルを整えておくほど、担当者が変わっても図面の注記がぶれません。

オブジェクトと連動して自動更新される

データタグの価値は、参照先のデータと連動して自動更新される点に集約されます。オブジェクトを変更すると、タグの表示テキストにその変更が反映されます。公式ニュースルーム(2024年4月)も「オブジェクトを変更すると、その変化がデータタグの連動テキストに忠実に反映される」と明言しています。

タグのレイアウトを編集すると、同じスタイルのタグにまとめて反映されます。図面のあちこちに散ったタグを1つずつ直す必要がなく、注記全体の整合を保ちやすくなります。

手打ちの文字注記だと、モデルを変えたときに注記が置いていかれ、図面と実態がずれる事故が起きます。データタグはデータを見に行って表示するため、そのずれが構造的に起きにくくなります。ここが、注記をタグに任せる最大の理由です。

データマネージャとデータタグについての編集部の見解

公式ドキュメントを読み解くと、この2つのツールは「データの設計」と「データの見せ方」をきれいに分業させる思想で作られている、というのが編集部の見立てです。

強みは、図面の注記を「手打ち文字」から「データ参照」へ置き換えられる点にあります。建具が数十本から数百本に及ぶ集合住宅や、間仕切りの多いオフィス改修のように、注記の数が多く変更も頻繁な案件ほど、自動割り当てと連動更新の効果が大きくなります。

一方で、つまずきやすいのは概念の三層構造です。データセット・データシート・データマッピングの関係と、条件式マッピング・項目マッピングの違いは、最初はどうしても抽象的に感じられます。海外の公式解説でも、いきなり式から入るより、既定の自動付与から触れる順序がすすめられています。まずはクラスと命名を整え、既定マッピングの挙動を確認するところから始めるのが安全です。

エディション(製品グレード)についても触れておきます。図面へのデータタグ注記はどのエディションでも置ける一方、裏側のデータ設計を担うデータマネージャの高度なマッピングはArchitect以上で使えます。自分の環境でどこまでできるかは、対応エディションの詳細で確認してください。エディション別の対応範囲や価格の比較は、Vectorworksのエディション比較・価格まとめで整理しています。

データ設計を整えた先に図面管理はどう変わるか

データマネージャとデータタグを使いこなすと、図面が「線の集まり」から「情報を持ったモデル」へと変わっていきます。ここでは、この2つを覚えた先に広がる実務の景色を描いてみます。

クラスと命名を整え、条件でデータを割り当てる習慣がつくと、注記は「描くもの」ではなく「モデルから引き出すもの」になります。実施設計で建具の仕様が変わっても、モデルを直せば図面の建具符号や仕様のタグが連動して更新され、拾い直しの手戻りが減ります。この状態まで来ると、図面の整合を保つ作業が驚くほど軽くなります。

さらに一歩進めると、持たせたデータは注記だけでなく集計にも使えます。データタグで図面に見せた情報を、そのまま数量表や建具表として自動集計する流れです。集計のしくみはワークシートで数量表・集計表を自動作成するでまとめているので、注記の次の一歩として読むと、データを持たせる意味がはっきりします。

他のBIMソフトへのデータ受け渡しを見据える段階では、IFC連携が視野に入ります。データマネージャで設計したデータをIFCとして書き出し、ArchiCADやRevitとやりとりする実務はIFCとBIMワークフローの基本で解説しています。データ設計を整えた先に、注記・集計・連携という3つの出口が開けていきます。

まとめ

データマネージャは、データセット・データシート・データマッピングという三層で「オブジェクトにどのデータを持たせるか」を設計する場所です。ツールメニューから開き、既定マッピングで基本を押さえつつ、カスタムフィールドや式で必要な情報を足していきます。

割り当ては、まずオブジェクトの種類やクラスによる自動付与が既定で働きます。そのうえで、条件式マッピングで割り当てる対象を判定し、項目マッピングで値を算出することで、さらに細かく制御できます。クラスと命名を整えるほど、この自動割り当てが手作業なしで機能します。

データタグは、設計したデータを図面に文字として注記する道具です。単一・すべて・選択の3配置モードで大量注記を効率化でき、データタグスタイルで見た目と中身を統一できます。オブジェクトを変えるとタグ表示も連動するため、手打ち文字のように注記が置いていかれません。

図面へのデータタグ注記はどのエディションでも置けますが、裏側のデータ設計を担うデータマネージャの高度なマッピングはArchitect以上で使えます。対応エディションの詳しい比較は製品情報で確認してください。