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Vectorworksのプラグインオブジェクト入門|壁・柱・スラブ・ドア・窓・階段の置き方と編集

編集部 読了 約12分

Vectorworksのプラグインオブジェクト入門|壁・柱・スラブ・ドア・窓・階段の置き方と編集

Vectorworksで建物を描くとき、壁やドアを「線」や「箱」として1本ずつ引いていくのは遠回りです。Vectorworksの壁・柱・スラブ・ドア・窓・階段は、寸法や仕様のパラメータ(数値の設定項目)を持った「プラグインオブジェクト」と呼ばれる賢い部品として用意されています。数値を変えれば形が追従するので、まず置いてから、あとで直せます。

この記事では、これら6つの建築部材の置き方と、置いたあとにオブジェクト情報パレット(画面右側で選択中のものの設定を表示・編集するパネル。以下OIP)で調整する流れを、初心者向けに整理します。あわせて、どの部材がどのエディションで使えるのか、自分で作る自由モデリングやシンボルと何が違うのかも押さえます。

プラグインオブジェクトとは|パラメータで形が変わる「賢い部品」

壁やドアは「線や箱」ではなく、寸法や仕様のパラメータを持ち、あとから数値で作り変えられる部品です。だから「まず置いて、あとで直す」という作り方ができます。手で完成形を作り込む必要がなく、修正に強いのが最大の利点です。

パラメトリックとはどういうことか

パラメトリックとは、幅・高さ・段数などの数値を変えると、それに合わせて形が自動で追従する仕組みのことです。壁・柱・スラブ・ドア・窓・階段はどれも、この仕組みで動くプラグインオブジェクトとして扱われます。

描いたあとは、対象を選んでOIPで寸法・高さ・クラス・スタイルを変更できます。作り直しは不要です。たとえば壁を1枚引いてから「やっぱり天井高を2,400mmから2,700mmに」と思ったとき、数値を打ち替えるだけで壁全体が伸びます。これがBIM(建物の情報を3Dモデルに持たせながら設計する進め方)的な「置く→OIPで直す」という作り方の土台になります。

自由モデリング・シンボルとの使い分け

部品づくりには3つの領域があり、最初に区別しておくと迷いません。自由な造形(押し出しや回転体など、形を自分で作る操作)は、決まった形のない造作を作るときの領域で、Vectorworksの3Dモデリング基礎で解説しています。

同じ形を何度も使う什器や記号は、シンボルにすると管理が楽になります。これに対して、壁・建具・階段のように「寸法違いで大量に出てくる建築部材」は、パラメータで形が変わるプラグインオブジェクトが最適です。造作は自由モデリング、繰り返す部品はシンボル、建築部材はプラグインオブジェクト、という住み分けで覚えておくと選択に迷いません。

出典: 公式ヘルプ Drawing walls 2026 / Doors and Windows 2026(確認日2026年7月24日)

壁と柱をつくる|建物の骨格を置く

壁は高さと厚みを持つ「賢い面」、柱は見た目と構造情報を併せ持つ部材です。これら建築部材の作成には、Architect などの上位エディションが必要になります。上位エディションとは、Architect・Landmark・Spotlight・Design Suite を合わせた総称で、Design Series と呼ばれます。一方、汎用の2D/3D作図が中心の Fundamentals には、壁の作成機能が含まれません(2026年時点・公式ヘルプ)。

ツールできること必要エディション
壁ツール高さ・厚み・層構成を持つ壁を作図Architect などの上位エディション
柱ツール建築柱・構造柱を作図Architect(基本柱は Landmark / Spotlight にもあり)
付柱(Pilaster)壁に一体化する柱型を挿入Architect

エディションごとの詳しい対応や価格は、DBサイトの db.persc.jp/vectorworks/ にまとめています。ここでは操作の流れに集中します。

壁ツールで壁を描く・OIPで直す

壁ツールは、上位エディションの「Building Shell(建物の外殻)」ツールセットにあります。壁の作成には Design Series 製品が必要で、Fundamentals では既存の壁を一部のツールで変更できるだけです(2026年時点)。

作図には2つのモードがあります。頂点モードは点を連続してクリックし、ダブルクリックで確定する方式で、部屋の間仕切りを一気に引くのに向きます。矩形モードは対角の2点を指定して四方の壁をまとめて生成する方式で、外周を一発で囲えます。壁はハイブリッド(2Dの平面図と3Dが連動する性質)なので、平面で引けば立体も同時にできあがります。

描いたあとは、壁を選んでOIPから壁高さ・拘束・クラス・キャップ(壁の端の処理)などを変更できます。スタイルを作り直さずに調整できるので、設計変更が続く序盤でも身軽に進められます。

壁スタイルと構成材で層を持たせる

壁スタイル(設定を保存して使い回す仕組み)と構成材(Component=壁の層構造)、カーテンウォールは、いずれも上位エディションの機能です。

構成材を定義すると、壁が「石こうボード+断熱材+外装材」のような層を持つBIM部材になります。単なる厚みの面ではなく、材料構成の情報を持った壁として集計や納まり検討に使えるのがねらいです。よく使う仕様は壁スタイルに保存しておくと、次の物件でそのまま呼び出せます。

柱ツールで柱を置く

柱には性格の違う何種類かがあります。建築上の見た目を持つ建築柱、付柱(Pilaster)、そして構造解析に向けた構造定義は Architect で作成できます。基本的な柱は Landmark・Spotlight でも作図でき、これらもすべて Design Series です。

配置で1つ覚えておきたいのが、壁との関係です。付柱は壁に挿入できますが、柱は壁に挿入できません。柱型を壁と一体で見せたいときは付柱を選ぶ、という使い分けになります。柱は見た目と構造情報を両立でき、材料リソースで構成材を持たせればBIMのデータに乗ります。ここが、ただの四角い押し出しとの決定的な違いです。

出典: 公式ヘルプ Walls 概要 2026 / Drawing walls 2026 / Creating columns and pilasters(確認日2026年7月24日)

スラブで床・天井・屋根をつくる

スラブは床・天井・フラット屋根をつくる面部材です。壁を基準に一発で床を張れ、構成材で層構造を持たせればBIMのデータになります。壁で骨格を作ったら、次に床を張る、という順番で建物が立ち上がっていきます。

スラブツールは、床・天井・フラット屋根などの建築スラブを作ります。作り方は2通りあり、輪郭を手で描く方法と、すでにある壁を基準に自動で床面を生成する方法があります。壁がひと通り引けているなら、後者のほうが早く正確です。

スラブ構成材を材料リソースで作れば、床の層構成を持ったまま効率的なBIMワークフローに乗せられます。スラブも壁と同じく「Building Shell」ツールセットに入る、上位エディション向けの機能です。なお、勾配のある屋根はスラブではなく屋根ツール(同じく上位エディションの建築オブジェクト)が担当します。平らな面はスラブ、傾いた屋根は屋根ツール、と部材の境界を覚えておくと迷いません。

出典: 公式ヘルプ Creating slabs / Building Shell toolset(確認日2026年7月24日)

ドアと窓を壁に差し込む

ドアや窓は壁に差し込むと、壁が自動でくり抜かれて開口ができます。幅・高さ・開き勝手はOIPで後から自由に直せるので、位置決めから寸法調整までを一気に進められます。

壁への挿入と自動開口

ドアツール、窓ツール、ドア窓アセンブリツールのいずれかで配置します。壁に挿入すると、ドアの位置が壁の経路に沿って拘束され、壁が自動で開口します。開口を手で描いてから建具をはめ込む、という二度手間が要りません。

壁に入れずに単独で置く配置(フリースタンディング)もできます。たとえばガラス張りのエントランスで、既製の壁とは独立してドアだけ先に検討したい場面などに向きます。まず壁に差して開口を作り、あとから位置をOIPで微調整する流れが基本です。

OIPで寸法・種別・開き勝手を直す

プラグインオブジェクトとして挿入すると、ドア設定の大半の項目がOIPに表示され、後から編集できます。上面ビューや平面ビューでは幅を直接コントロールでき、そのほかの寸法はスタイルやプリファレンス(既定値の設定)で決めます。

ドア・窓ツールは Architect と Design Suite(いずれも Design Series)で作成でき、Fundamentals には含まれません。Architect では、エネルギー解析に必要な情報などを加えて機能を拡張できます。エディションや価格の比較は db.persc.jp/vectorworks/ にまとめています。

出典: 公式ヘルプ Doors and Windows 2026 / Inserting doors / Door settings 2026(確認日2026年7月24日)

階段で上下階をつなぐ

階段は平面と立体を同時に持つハイブリッド部品です。蹴上(けあげ=1段の高さ)や踏面(ふみづら=1段の奥行き)を数値で決められ、上下階をつなぐ配置のルールがあります。図面表現とプレゼン用の立体を1つの部品でまかなえるのが強みです。

階段はハイブリッドオブジェクトで、2Dの平面表現と3Dを同時に制御できます。多数の詳細設定を持ち、蹴上・踏面・手すりなどを細かく調整できます。2つの階をつなぐ場合は、下の階を表すレイヤに階段を配置します。ツールバーのPreferencesから階段設定ダイアログを開いて、あらかじめ既定値を決めておくと、置いたあとの手直しが減ります。

階段ツールは Architect・Landmark・Design Suite に含まれます。簡易版のSimple Stair(シンプルな階段)は Landmark と Spotlight にあり、Architect にも追加できます。まずは基本の階段ツールで蹴上・踏面を入れてみて、必要に応じて詳細を詰めていくのがつまずきにくい進め方です。

出典: 公式ヘルプ Inserting a stair(確認日2026年7月24日)

プラグインオブジェクトを編集部が読み解く

公式ドキュメントを読み解くと、Vectorworksのプラグインオブジェクトは「まず置いて、あとで直す」という設計思想で一貫していると編集部では見ています。壁・柱・スラブ・ドア・窓・階段のどれもが、完成形を手で作り込むのではなく、パラメータを持った部品として置いてからOIPで整える流れになっているためです。

実用面では、この作り方が設計変更の多い初期段階で強みを発揮します。天井高や建具の幅が打ち合わせで二転三転しても、数値を打ち替えれば形が追従するので、作り直しの負担が小さくなります。壁と建具が連動して開口まで自動化される点は、手描きCADから移るときの実務的な利点として編集部では捉えています。

一方で制約もはっきりしています。公式ヘルプによれば、壁・柱・スラブ・ドア・窓・階段という賢い建築部材は Architect などの上位エディションが前提で、汎用作図中心の Fundamentals では作成できません(2026年時点)。ここを知らずに始めると「壁ツールが見当たらない」とつまずくため、自分の使うエディションの対応範囲は先に確認しておきたいところです。

まとめると、寸法違いの建築部材を数多く扱う人ほど、プラグインオブジェクトの恩恵が大きいと編集部では考えています。造作中心で自由な形を追いたい場合は自由モデリング、繰り返す什器はシンボル、という切り分けができていれば、Vectorworksの部品づくりで戸惑う場面はかなり減ります。

OIPで部品を賢く育てる|編集と再利用のコツ

どの部品も、選ぶ→OIPで数値を直す、が共通の流れです。よく使う設定はスタイルとして保存すれば、プロジェクトをまたいで賢い部品を使い回せます。ここを押さえると、部材ごとに操作を覚え直す必要がなくなります。

OIP編集とスタイル化の考え方

壁・柱・スラブ・ドア・窓・階段は、どれも選択してOIPで寸法・高さ・クラス・スタイルを後から変更できます。操作の入口が共通なので、1つの部材で編集に慣れれば、ほかの部材にもそのまま応用できます。

さらに、プラグインオブジェクトのスタイル、またはシンボルとして保存すれば、プロジェクト間で再利用できます。標準の建具仕様や壁構成を一度スタイルにしておけば、次の物件では呼び出すだけで済みます。こうした部品資産の一元管理は、リソースマネージャでリソースを管理・共有するで解説しています。

出典: 公式ヘルプ Drawing walls 2026 / Doors and Windows 2026(確認日2026年7月24日)

次の一歩|建物として積み上げ、表現を作り込む

個々の部品を置けるようになったら、次は階を積んで図面化する建築のワークフローへ進みます。壁で骨格、スラブで床、建具で開口、階段で上下階、と部材が揃えば、それらを積層して1棟の建物モデルにまとめる工程が見えてきます。階の積み上げから図面化までの通し手順は、Vectorworksの建築ワークフローで解説しています。

パースとして本格的に見せたいときは、表現を作り込む工程が待っています。Vectorworks内蔵のRenderworksや、より作り込みたい場合はレンダラーやBlenderでの仕上げ工程へ進むと、質感や光の表現が一段上がります。「部品を賢く置く→建物として積み上げる→表現を作り込む」という3段階で捉えると、いま自分がどこにいて次に何を学べばよいかが見通せます。

まとめ|賢い部品を起点にBIMの作り方へ

Vectorworksの壁・柱・スラブ・ドア・窓・階段は、寸法を後から変えられるパラメトリックなプラグインオブジェクトです。完成形を手で作り込むのではなく、まず置いてからOIPで直す、というBIM的な作り方が身につけば、設計変更の多い実務でも身軽に動けます。

賢い建築部材の作成には、Design Series(Architect 等)が前提です(2026年時点)。ドア・窓は壁に差せば自動で開口ができ、よく使う仕様はスタイルとして保存すれば次の物件でも呼び出せます。造作は自由モデリング、繰り返す部品はシンボル、建築部材はプラグインオブジェクト、と使い分けるのが上達の近道です。まずは壁を1枚引いてOIPで高さを変えるところから、賢い部品の感覚をつかんでみてください。