Vectorworksのナビゲーションパレットで表示を切り替える|クラス・レイヤの可視化と登録ビュー
Vectorworksのナビゲーションパレットで表示を切り替える|クラス・レイヤの可視化と登録ビュー
「特定のレイヤやクラスだけ表示したい」「非表示にしたはずなのに、図形が画面から消えない」。Vectorworksで作図していると、こうした表示まわりのつまずきに何度もぶつかります。表示の切り替えをまとめて受け持つのが、ナビゲーションパレット(クラスやデザインレイヤの表示を一か所で操作するパレット)です。
この記事では、ナビゲーションパレットを使った表示の切り替えを、操作ベースで解説します。表示・グレイ・非表示の3状態、アクティブの切り替え、クラスオプションとレイヤオプション、そして登録ビューでの保存まで、日々の作図を速くする操作を順番に扱います。
なお、何をレイヤに・何をクラスに割り当てるかという設計の考え方はVectorworksのクラス・デザインレイヤ完全ガイドで解説しているため、ここでは「すでに用意した二軸を画面上でどう見せ分けるか」に絞ります。
ナビゲーションパレットの役割|表示を操作する司令塔
ナビゲーションパレットは、クラス・デザインレイヤ・登録ビューなどの表示を一か所で切り替える司令塔です。画面に開いたまま作図でき、切り替えた結果がそのまま図面に反映されます。手を止めずに「今いじる層だけ見せる」運用ができるパレット、と考えるとつかみやすいでしょう。
6つのタブでファイルの構造にアクセスする
ナビゲーションパレットには、クラス/デザインレイヤ/シートレイヤ/ビューポート/登録ビュー/ファイル参照という6つのタブがあります。各タブには、そのファイルに含まれる項目が一覧で並びます。VW2024からVW2026まで、この6タブ構成は変わりません。
このうちこの記事が主に扱うのは、クラス・デザインレイヤ・登録ビュー・ファイル参照の表示制御です。シートレイヤとビューポートは、図面を用紙にまとめる段階で使うため、ここでは対象にしません。
パレットが画面に見当たらないときは、「ウインドウ > パレット > ナビゲーション」から呼び出します。キーボードショートカットは、WindowsがCtrl+Shift+N、MacがCmd+Shift+Nです。「ナビゲーションパレットが出ない」と感じたら、まずこの手順を試してください。
出典: The Navigation palette(VW2024 EN)(2026年7月現在)
オーガナイザとの違いは「作図しながら操作できる」こと
ナビゲーションパレットの強みは、作図画面を触りながら表示を切り替えられる点にあります。提供する機能は組織化ダイアログ(オーガナイザ。クラスやレイヤをまとめて管理する画面)とほぼ同じですが、オーガナイザは開いている間、作図画面を操作できません。
たとえば住宅の平面図で、家具クラスを表示したり隠したりしながら寸法を確認したい場面。ナビゲーションパレットなら、開いたまま切り替えて結果をその場で見られます。オーガナイザだと、開いて設定し、閉じて確認し、また開く、という往復が必要になります。
ナビゲーションパレット自体は、公式の機能一覧で「Design Suite product required」と記載されており、Design Suite系の製品(Architect / Landmark / Spotlight / Design Suite)で使えます。基本構成のFundamentalsでは、組織化ダイアログから同じクラス・レイヤの表示切替や登録ビューの操作を行います。エディションごとの機能差は、https://db.persc.jp/vectorworks/ で確認できます。
出典: Palettes and tool sets(VW2024 EN)(2026年7月現在)
表示・グレイ・非表示|クラスとレイヤの見え方を切り替える
アクティブでないクラスやレイヤは、「表示・グレイ表示・非表示」の3状態から選んで見せ分けます。切り替えは、各項目の名前の左にある表示設定列をクリックするだけで完了します。1クリックで状態が移り変わる手軽さが、この操作の入口といえるでしょう。
| 表示状態 | 画面での見え方 | 編集・スナップ | 使う場面 |
|---|---|---|---|
| 表示 | 通常どおり表示される | アクティブなら編集できる | 今いじる層・確認したい層 |
| グレイ表示 | 薄いグレーで表示される | 編集は不可・スナップは設定次第 | 位置合わせの下絵に残したい層 |
| 非表示 | 画面に描画されない | どちらもできない | 今は不要な層 |
出典: Visibility columns(VW2024 JP)(2026年7月現在)
グレイ表示が活きるのは、下絵として層を残したいときです。既存の躯体をグレイ表示にしておけば、その上に設備を描くとき、躯体の位置を見ながら、誤って躯体を動かす心配がありません。
名前の左の「表示設定列」をクリックして切り替える
基本の操作は、表示設定列を1回クリックして、表示・グレイ表示・非表示を順に切り替えることです。クリックのたびに状態が移り変わるため、目的の見え方になるまで押します。
ここで押さえておきたいのが、アクティブなクラス・レイヤは常に表示されるという点。作業対象そのものは3状態の切り替えを受け付けないので、「アクティブな層が消せない」のは仕様どおりの動きです。
一括切替と階層クラスへの一括適用
数十のクラスを1つずつ切り替えるのは、さすがに骨が折れます。表示設定列をAlt+クリック(Windows)またはOption+クリック(Mac)すれば、リストの全項目へ同じ設定を一度に適用できます。
親子構造を持つ階層クラスでは、親クラスの表示設定列をクリックすると、その下位クラスすべてに設定が引き継がれます。「まず全部を非表示にして、必要な層だけ表示に戻す」という進め方なら、目的の層だけを素早く画面に出せるのではないでしょうか。設備の分岐が多い図面ほど、この時短が効いてきます。
出典: The Navigation palette(VW2024 EN)(2026年7月現在)
「非表示にしたのに消えない」の正体はクラス×レイヤのAND条件
表示まわりで初心者が最もつまずくのが、「消えない」「出ない」という現象です。原因はどこにあるのでしょうか。カギは、オブジェクトが所属クラスと所属レイヤの両方が表示のときだけ見える、というAND条件(両方を満たしたときだけ成立する条件)にあります。
つまり片方でも非表示なら、その図形は描画されません。「非表示にしたのに消えない」ときは、もう一方の軸(クラス側かレイヤ側)がまだ表示のまま。逆に「表示にしたのに出ない」ときは、もう一方が非表示になっています。この二軸のどちらを操作しているかを意識すると、切り分けが一気に楽になります。
表示は二軸の掛け合わせで決まるため、そもそも何をレイヤに・何をクラスに割り当てるかで、操作のしやすさが変わります。割り当ての設計はクラスとデザインレイヤの使い分け設計で解説しています。AutoCADの画層による一軸のレイヤ管理に慣れている方は、AutoCADのレイヤ管理の考え方と読み比べると、二軸にする利点がつかみやすくなります。
出典: Concept: Visibility of Drawing Elements(VW2019 EN)(2026年7月現在)
アクティブなクラス・レイヤを切り替える
アクティブの切り替えは、「今から何を描くか」を決める操作です。アクティブなクラス・レイヤは常に表示され、新しく作図するオブジェクトは、そのアクティブな層に入ります。表示の話に見えて、実は「どこに描くか」を左右する設定でもあります。
ダブルクリックでアクティブにする
クラスやレイヤをアクティブにするには、項目をダブルクリックするか、名前の左の列をクリックします。アクティブになっている項目は太字で表示されるため、どこが作業対象かを一目で確認できます。
新しい図形はアクティブなクラス・アクティブなレイヤに入るので、描く前にアクティブを合わせておくのが基本です。たとえば1階の間仕切りを描くなら、レイヤを「1階」、クラスを「間仕切り」に合わせてから線を引きます。合わせ忘れると、意図しない層に図形が混ざり、あとで表示切替をしても目的の図形が付いてこなくなります。
出典: The Navigation palette(VW2024 EN)(2026年7月現在)
アクティブを軸に「今いじる層」へ集中する
アクティブは常に表示される、という性質をうまく使うと、作業対象だけに集中できます。この後の「クラスオプション・レイヤオプションで見え方をまとめて決める」で説明するレイヤオプションを「アクティブのみ」にすれば、今いじる層だけが画面に残り、ほかの情報に気を散らされずに描き込めます。
干渉しやすい層はグレイ表示にしておくのがコツです。たとえば天井伏図を描くとき、床の家具レイヤをグレイ表示にすれば、家具の位置を参照しながら、家具そのものは誤って動かさずに済みます。作業対象が変わるたびにアクティブを切り替える習慣。これが、表示を散らかさないコツになります。
クラスオプション・レイヤオプションで見え方をまとめて決める
個別の表示設定とは別に、アクティブでない層全体の「見え方の上限」を一括で決めるのが、クラスオプションとレイヤオプションです。制御できるのは表示だけではありません。スナップ(線や点に吸着してカーソルを合わせる機能)と編集の可否まで、6つの設定でまとめて決められます。
| 設定 | 他の層の表示 | スナップ | 編集 |
|---|---|---|---|
| アクティブのみ(Active Only) | 非表示 | 不可 | アクティブのみ |
| 他をグレイ表示(Gray Others) | グレイ表示 | 不可 | アクティブのみ |
| グレイ表示+スナップ(Gray/Snap Others) | グレイ表示 | 可 | アクティブのみ |
| 他を表示(Show Others) | 通常表示 | 不可 | アクティブのみ |
| 表示+スナップ(Show/Snap Others) | 通常表示 | 可 | アクティブのみ |
| 表示+スナップ+編集(Show/Snap/Modify Others) | 通常表示 | 可 | 通常表示の層も可 |
出典: Setting global visibility with class and design layer options(VW2024 EN)(2026年7月現在)
これらは表示の「上限」を決める設定です。個別の項目を、この上限より低い状態(グレイや非表示)に絞ることはできます。ただし、上限を超えて濃く表示することはできません。「他を表示」を選んでいても、個別に非表示にした層は、そのまま隠れたままになります。
6つの設定でスナップ・編集まで制御する
設定を変える場所は、ビューバー(画面上部の操作バー)にあるクラスオプション・レイヤオプションのアイコン、または作図画面の右クリックメニューです。アイコンには現在の設定が示されるので、いま何を選んでいるかを見て確認できます。
6設定は、他の層を「非表示にするか・グレイにするか・通常表示にするか」と、「スナップを許すか・編集まで許すか」の組み合わせです。アクティブのみは今いじる層だけを残し、グレイ系は下絵として薄く残し、表示系はほかの層も見せます。編集まで許すのは「表示+スナップ+編集」だけ。それ以外は、編集できるのがアクティブな層に限られます。
出典: Setting global visibility with class and design layer options(VW2024 EN)(2026年7月現在)
場面ごとの使い分け
どの設定を選ぶかは、作業の目的で決まります。精密な作図で誤編集を避けたいなら、アクティブのみか、他をグレイ表示が向いています。ほかの層の端点に合わせて線を引きたいなら、グレイ表示+スナップか、表示+スナップ。参照はできても対象は動かせないので、安心して作業を進められます。
複数のレイヤを横断して一気に整えたいときは、表示+スナップ+編集にすると、通常表示の層をまとめて編集できます。逆に「なぜかスナップできない」「ほかの層が編集できない」と感じたら、まずこのオプションを疑ってみてください。表示設定列ではなく、こちらの上限が効いているケースが多いはずです。
登録ビューでよく使う表示を保存して呼び出す
登録ビュー(表示状態や視点をまとめて保存し、ワンクリックで呼び戻す機能)を使うと、「平面編集用」「プレゼン用」「設備確認用」といった表示のセットに名前を付けて保存できます。一度作っておけば、切り替えは一瞬です。
| 分類 | 保存される内容 |
|---|---|
| 視点 | 投影・3D方向・平面回転・クリップキューブ位置 |
| 表示範囲 | ズームとパン |
| 見た目 | レンダリングモードとオプション・データビジュアライゼーション |
| レイヤ | デザインレイヤの表示設定+アクティブレイヤ |
| クラス | クラスの表示設定+アクティブクラス |
出典: Creating saved views(VW2023 EN)(2026年7月現在)
登録ビューに保存される内容
登録ビューには、視点と表示状態がワンセットで記録されます。クリップキューブ(3Dモデルを箱状に切り取って断面を見る機能)の位置やレンダリングモード(線画・陰影付きなど画面の表示品質の設定)に加えて、デザインレイヤとクラスの表示設定・アクティブまでが保存されます。
ここで効いてくるのが、表示設定を作図画面・登録ビュー・ビューポートでそれぞれ独立して持てる点です。だから登録ビューごとに違う見せ方を固定でき、「平面編集用は間仕切りと寸法だけ」「プレゼン用は家具と仕上げまで」といった切り替えを、名前を選ぶだけで再現できます。
作成・切替・再定義の手順
登録ビューを作るには、ナビゲーションパレットの登録ビュータブを開き、ユーティリティメニューの「新規(New)」を選びます。今の画面の状態が、そのまま名前付きで保存されます。
保存した登録ビューは、ダブルクリックで切り替えられます。表示状態を変えたあと、その状態を登録ビューに反映したいときは、右クリックまたはユーティリティメニューの「再定義(Redefine)」で上書きします。名前を変えずに中身だけ更新できるので、作業の進み方に合わせて育てていけます。
出典: Creating saved views(VW2023 EN)/Editing saved views(VW2024 EN)(2026年7月現在)
作成後に増えたクラス・レイヤに注意する
登録ビューには、落とし穴が1つあります。登録ビューを作ったあとに追加したクラスやレイヤは、公式ドキュメント(EN)によれば、表示設定の上で「表示」として一覧に並ぶとされています。
そのため「昔作った登録ビューに切り替えたら、意図しない層が出てきた」ということが起こります。見せ方を保ちたいなら、層を増やすたびに登録ビューを再定義して、表示状態をそのつど確かめておくのが安全です。図面が育つプロジェクトほど、この一手間が効いてきます。
出典: Editing saved views(VW2024 EN)(2026年7月現在)
参照ファイルの表示を管理する
外部から取り込んだ図面も、自ファイルと同じ表示設定列で見せ分けられます。その入口が、ナビゲーションパレットの「ファイル参照」タブ(外部の図面ファイルを取り込んで参照する仕組み)です。
ファイル参照タブで外部図面を一覧する
ファイル参照タブでは、外部参照した図面ファイルが一覧で並び、そこから表示を管理できます。参照で取り込んだクラスやレイヤも、自ファイルのものと同じく、表示設定列で表示・グレイ・非表示を切り替えられます。
たとえば意匠の担当者が、設備事務所から受け取った設備図を参照しながら天井を検討する場面。設備の参照レイヤをグレイ表示にしておけば、ダクトの位置を見ながら、設備図そのものは触らずに照明を配置できます。敷地図や構造図を参照しつつ、必要な層だけ表示する運用に向いています。
出典: The Navigation palette(VW2024 EN)(2026年7月現在)
ナビゲーションパレットについての編集部の見解
公式ドキュメントを読み解くと、ナビゲーションパレットの価値は「作図の手を止めずに表示を切り替えられる」一点に集約されます。同じ機能はオーガナイザにもありますが、開くたびに作図が止まる往復が消えるだけで、日々の作業テンポは大きく変わるといえるでしょう。
実用面で効いてくるのは、表示設定列のワンクリックと、Alt/Optionクリックの一括適用です。編集部の見立てでは、クラスが数十を超える中規模以上の図面ほど、この一括操作の有無が作業時間を左右します。階層クラスの親をクリックして下位ごと切り替えられる設計も、実務での取り回しを軽くしているポイントです。
押さえておきたい制約は、ナビゲーションパレット自体がDesign Suite系の製品で使えるという点。Fundamentalsでは組織化ダイアログでの操作になり、開いたまま作図する使い方はできません。とはいえ、表示切替や登録ビューという機能そのものはFundamentalsでも使えます。できることの差というより「作業のテンポの差」と捉えるのが、実態に近いのではないでしょうか。
こうしてみると、頻繁に表示を切り替えながら描くインテリアや設備の実務者ほど、ナビゲーションパレットの恩恵を受けやすいといえます。まずは「表示・グレイ・非表示の3状態」と「登録ビューでの保存」の2つ。この2つを手になじませると、投資対効果を実感しやすいはずです。
表示切替を使いこなすと日々の作図はどう変わるか
表示切替を身につけると、図面との向き合い方そのものが変わります。切り替えを知らないうちは、全部の層が重なった画面から目的の線を探し、間違えて別の層を動かしてしまいがちです。使いこなせるようになると、今の作業に必要な層だけを画面に残し、迷いなく描き進められます。
たとえば住宅1件を、平面・展開・設備と描き分けるプロジェクトを想像してみてください。表示切替を使わない人は、そのつど手作業で目的の層を探します。使う人は「平面編集用」「設備確認用」の登録ビューを名前で呼び出し、数秒で作業モードを切り替えます。この差は1日では小さくても、案件をまたぐと確実に積み上がっていくでしょう。
次の一歩は、自分の作業パターンに合わせて登録ビューを2〜3個そろえること。よく使う表示の組み合わせをセット化しておけば、翌日以降はワンクリックで同じ環境に戻れます。表示の操作が身についたら、その表示構成を毎回同じ形で再利用するレイヤ・クラス標準とテンプレートを整えるへ進むと、チームでも同じ見せ方をそろえられます。
まとめ|表示切替は「二軸を可視化する操作」
Vectorworksの表示は、クラスとレイヤのAND条件で決まります。表示設定列で表示・グレイ・非表示の3状態を切り替え、クラスオプションとレイヤオプションで全体の見え方の上限を決め、登録ビューでよく使うセットを保存します。この3つの操作を使い分けられれば、「消えない」「出ない」というつまずきは、自分で切り分けられます。
効果を最大にするコツは、何をレイヤに・何をクラスに割り当てるかを先に決めてから、表示切替に入ることです。設計が整っていれば、切り替えは一段と素直に効きます。設計から操作へと、この順番で身につけていってください。
建築知識の教科書