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クラスとデザインレイヤの使い分け設計|二軸を破綻させない標準

編集部 読了 約11分

クラスとデザインレイヤの使い分け設計|二軸を破綻させない標準

Vectorworksを使い始めて最初につまずくのが、クラスとデザインレイヤという2つの整理軸の使い分けです。AutoCADの画層を一本で管理してきた人ほど「どちらに何を入れればいいのか」で迷い、途中で図面がぐちゃぐちゃになりがち。整理軸が1本から2本に増えた瞬間に、手が止まってしまうわけです。

この記事では、クラスとデザインレイヤの役割の違いから、どの要素をどちらに割り当てるか、なぜ図面が破綻するのか、最初にどう決めれば後で崩れないかまでを、設計判断に絞って解説します。

各軸の作成手順やオプションの細かい操作には踏み込みません。ここで解説するのは「どちらに何を割り当てるか」という設計の考え方です。破綻しない二軸の標準を、公式ヘルプで裏取りした事実から組み立てていきましょう。

クラスとデザインレイヤは「どこに」と「何を」で役割が分かれる

デザインレイヤは「どこに置くか(場所)」、クラスは「何を・どう見せるか(種別)」を担う別々の軸です。どちらか一方に入れるものではありません。すべてのオブジェクトが、常に場所と種別の両方を同時に持ちます。各オブジェクトが必ず1レイヤと1クラスに属する状態。この同時保持こそが「二軸」という言葉の意味です。

担当する問い持たせるもの代表的な操作
デザインレイヤどこに置くか(場所)縮尺・標高(Z高さ)・積み重ね順層として重ね・隠し・縮尺変更
クラス何を・どう見せるか(種別)線の太さ・色・ハッチ・塗り・表示可否種別ごとに一括で見せ・隠し・体裁変更

デザインレイヤは「どこに置くか」の軸

デザインレイヤ(design layer)は、オブジェクトを描く場所を決める軸です。公式ヘルプはこれを、手描きのトレーシングペーパー(透明な下敷き)にたとえています。手描きの各要素がそれぞれの紙に乗るのと同じで、Vectorworksの各オブジェクトも1枚のレイヤに乗ります。

レイヤが担当するのは「どこに(where)」です。縮尺をレイヤごとに設定でき、標高(Z高さ)や2Dの積み重ね順も持てます。だから図面の重ね順や高さを、場所の単位で管理できます。詳細図と全体図のように縮尺の違う図面を、同じデータの中で別レイヤとして扱えるのも、このしくみのおかげです。

さらにArchitect以上のエディションでは、デザインレイヤを建物の階(ストーリ)に関連付けられます(2026年時点)。1階・2階・屋根といったフロアを、レイヤと階の対応で管理できるしくみです。住宅案件で各階の平面図を切り替えながら作図する場面で役立ちます。

クラスは「何であるか・どう見せるか」の軸

クラス(class)は、オブジェクトが何であるか(種別)と、その見た目を決める軸です。クラスはデザインレイヤを横断します。複数のレイヤにまたがるオブジェクトでも、属性と表示をまとめて制御できるのが特徴です。

クラスが担当するのは「何を(what)」。線の太さ・色、ハッチング、塗り、テクスチャ、そして表示するかどうかを、種別ごとにまとめて切り替えられます。ここで効くのが横断性です。別々のレイヤに置かざるを得ない同じ種別のオブジェクトも、1つのクラスにまとめれば一括で表示・非表示・体裁変更ができます。たとえば1階と2階の別レイヤにある「注釈」を、注釈クラスひとつでまとめて非表示にする、といった使い方です。

見た目をクラス側で一元管理したいなら、オブジェクトの属性を「クラスにより(ByClass、クラスの定義を自動で継承する設定)」にしておきます。こうしておくと、クラスの定義を変えるだけで、そのクラスに属する全オブジェクトの体裁が一斉に切り替わります。属性設定の具体的な手順はクラスで見た目と表示を一元管理するで解説しています。

AutoCADの画層は一軸、Vectorworksは二軸

AutoCADの画層に慣れた人がつまずくのは、整理の軸が1本から2本に増えるからです。AutoCADは画層という一本の軸に「場所」も「見た目」も一緒に載せます。いっぽうVectorworksは、場所(デザインレイヤ)と種別(クラス)を分けて持ちます。

この二軸化が、Vectorworks最大の特徴であり、初学者最大のつまずきどころ。画層一本の感覚のまま作図すると、あとで説明する「レイヤに種別を持たせて増殖する」「クラスに場所を持たせて崩れる」という失敗に直結しやすくなります。画層一本の考え方はAutoCADの画層(レイヤ)管理で整理しています。まず一軸の発想を確認してから二軸に読み替えると、理解が早くなるはずです。

(出典: Vectorworks 公式ヘルプ(product-help.vectorworks.net)「デザインレイヤ」「クラス」の項、2026年7月24日確認)

二軸に何を割り当てるか(配分の標準)

割り当ての判断基準は、たった一言に集約できます。「場所が違うならレイヤ、種類が違うならクラス」。この配分を最初に腹落ちさせておけば、要素が増えても迷いません。

要素の例割り当て先理由
1階・2階・屋根伏図デザインレイヤ置く場所(階)が違う
敷地と建物デザインレイヤ場所が違う
詳細図と全体図(縮尺違い)デザインレイヤ縮尺が違う
クラス要素の種別
通り芯クラス種別(まとめて表示切替したい)
寸法・注釈クラス種別・見せ方
家具・什器クラス種別(プレゼン時だけ表示したい)

デザインレイヤに割り当てるもの(場所・階・縮尺)

デザインレイヤで分けるのは、置き場所が物理的・論理的に違うものです。1階・2階・屋根伏図といった階、敷地と建物、詳細図と全体図のように縮尺が違う図面は、それぞれ別のレイヤに置きます。

判断の合図は「縮尺や高さが違うか」。レイヤは縮尺と標高を単位で持てるので、縮尺や高さが変わるものはレイヤで分けるのが自然です。逆に、同じ場所・同じ縮尺にあるものをレイヤで分けようとすると、次に説明するレイヤ増殖の原因になります。デザインレイヤの作成や縮尺・高さ設定の具体的な操作はデザインレイヤで階層・縮尺・高さを管理するで解説しています。

クラスに割り当てるもの(要素種別・見せ方)

クラスで分けるのは、同じ場所にあっても種類が違うものです。壁・通り芯・寸法・注釈・家具・什器などの「要素の種別」は、階が同じでもクラスで分けます。

種別で分ける最大の利点は何でしょうか。見せ方の切り替えが、種別の単位でできることです。プレゼン用の図面では家具クラスを表示し、施工図では家具クラスを非表示にする。この切り替えを、どのレイヤにある家具に対しても一括で効かせられます。1階と2階の両方に家具があっても、家具クラスをオフにすれば全フロアの家具が一度に消えます。命名規則や属性の詳細はクラスで見た目と表示を一元管理するで解説しています。

迷ったときの一問一答

割り当てに迷ったら、2つの問いで即断できます。1つ目は「置く場所(階・敷地・縮尺)が違う?」。Yesならデザインレイヤです。2つ目は「物の種類・見せ方が違う?」。Yesならクラスです。

では両方Yesのときは、どうすればいいのでしょうか。二者択一ではなく「レイヤ×クラス」の掛け合わせで管理します。全オブジェクトは常に1レイヤと1クラスを同時に持つので、「1階レイヤ」という場所と「壁クラス」という種別を独立に指定できます。結果として「1階に置いた壁」を過不足なく位置づけられるわけです。場所と種別を別々の軸で自由に組み合わせられるのは、この掛け合わせが成立するからです。

二軸が破綻する典型パターンと原因

二軸が崩れるときは、たいてい「場所と種別を取り違える」ことが原因です。ここでは初学者が実際にやりがちな3つのパターンを、症状・原因・対処の順で見ていきます。どれも「レイヤの担当」と「クラスの担当」を混ぜたときに起きるもの。逆に言えば、担当さえ混ぜなければ避けられます。

レイヤに種別を持たせてレイヤが増殖する

「壁レイヤ」「窓レイヤ」「建具レイヤ」のように、要素の種別でレイヤを作り始めると、レイヤが際限なく増えていきます。階×種別の掛け算でレイヤ数がふくらむからです。1階から3階までの建物で種別を10個レイヤにすれば、それだけで30枚のレイヤ。ここまで来ると管理が破綻します。

対処は単純です。種別はクラスの担当に戻します。レイヤを場所(階・敷地・縮尺)だけに使うと決めれば、レイヤ数は階の数まで一気に収まります。壁や窓は種別なので、レイヤではなくクラスで分けましょう。

クラスに場所を持たせて図面ごとに崩れる

逆に「1階クラス」「2階クラス」のように場所をクラスに持たせると、表示制御が図面ごとに崩れます。場所(階)をクラスに載せると、レイヤとクラスの役割が重複するからです。どちらで表示を切り替えているのか、自分でも分からなくなります。

対処は、場所をレイヤの担当に戻し、クラスは種別に徹させること。クラスを種別だけに使うと決めておけば、家具クラスや注釈クラスの表示切り替えが、どの図面・どの階でも同じように効きます。表示切替の操作そのものはナビゲーションパレットで表示を切り替えるで解説しています。

属性をByClassにせず「クラスが効かない」

クラス側で線や色を整えても見た目が変わらないなら、原因はほぼ1つです。オブジェクトの属性が個別指定のままになっています。クラスに定義した線の太さ・色・塗りは、オブジェクト側の属性を「クラスにより(ByClass)」にして初めて反映されます。

自分の図面がどちらの状態かは、属性パレットで見分けられます。クラスにより設定された属性には、属性パレット上で曲がった矢印(by-classを示すマーク)が表示されます。この曲がった矢印が出ていなければ、その属性は個別指定のまま。クラスが効いていない状態です。自分の図面で原因を切り分ける、確かな手がかりになります。属性を「クラスにより」に設定する具体的な手順はクラスで見た目と表示を一元管理するで解説しています。

(出典: Vectorworks 公式ヘルプ(product-help.vectorworks.net)「クラス」「属性(クラスによる設定)」の項、2026年7月24日確認)

破綻しない標準の作り方

崩れない二軸の標準は、2点でほぼ決まります。「最小構成から始める」と「名前を先に決める」。いきなり細かく分けず、必要になったときに足していく。これが、あとで破綻しない組み立て順です。

最小構成から始める

レイヤとクラスは、最小の単位から始めるのが安全です。レイヤは「1階・2階・敷地」といった場所の最小単位から、クラスは「壁・注釈・寸法」といった主要な種別から始めます。最初から想定しうる全種別を作り込むと、使わない空の箱が大量に残ります。それ自体が、混乱のもとになります。

必要になった時点で1つずつ足していけば、図面の複雑さに応じて構成が自然に育ちます。住宅の実施設計で建具の種別分けが必要になったら、そのタイミングで建具クラスを追加する。この進め方なら、無駄がありません。

命名規則を先に決める

名前は、あとから統一しようとすると必ず崩れます。だから最初に決めておきます。ねらいは「種別が一目で分かり、まとめて表示切替できる粒度」に名前をそろえること。たとえば注釈系を「注釈-寸法」「注釈-室名」のように接頭辞でそろえておけば、注釈系だけをまとめて表示・非表示にする操作がしやすくなります。

Vectorworksには標準命名(Standard Naming、命名規約をあらかじめ設定するしくみ)もあります。これはArchitect以上のエディションの機能で(2026年時点)、モデル系を「Mod-」で始めるといった既定の規約を使えます。命名規則やチーム標準、テンプレートファイル(.sta)での再利用についてはレイヤ・クラス標準とテンプレートを整えるで解説しています。

表示制御は組織化ダイアログとナビゲーションパレットで確認する

決めた二軸は、実際に切り替えて確認しておくと安心です。レイヤ・クラスの作成と管理は、組織化ダイアログ(Organization dialog)でまとめて行います。表示やアクティブ状態の切り替えは、ナビゲーションパレットで行います。設計した割り当てが意図どおり表示切替に効くかを、この2か所で試してみてください。

なお、デザインレイヤ上にビューポートを作る機能(デザインレイヤビューポート、DLVP)は、Design Suiteで使えます(2026年時点)。どのエディションで何ができるか、購入の判断についてはこの記事では扱いません。Vectorworksの製品情報(db.persc.jp)で確認してください。

二軸設計についての編集部の見解

公式ヘルプを読み解くと、Vectorworksの二軸には一本の設計思想が通っています。「場所(レイヤ)と種別(クラス)を分ける」。この一点さえ守れば、あとは自然に運用できる作りです。破綻例の多くがこの一点を混ぜたことに起因するのも、公式の定義と照らし合わせると納得できます。

一方で、AutoCADの画層一本の感覚が強い人ほど、最初の切り替えに時間がかかるのも確かです。編集部としては、いきなり全体を設計するより、小さく試すことをおすすめします。まず「壁クラス」ひとつを作り、属性を「クラスにより」に設定し、曲がった矢印が出るところまで、実際に手を動かしてみてください。この小さな1周で、場所と種別が別々に効く感覚がつかめるはずです。

二軸の考え方そのものは、エントリー版のFundamentalsでも通用します。標準命名やデザインレイヤビューポートといった一部の機能はDesign Suite以上ですが(2026年時点)、レイヤ=場所・クラス=種別という配分の原則は、どのエディションでも変わりません。まずは上位機能を無理に使わず、割り当ての判断を固めることを優先しましょう。

二軸を身につけた先に変わる作図の景色

二軸の割り当てを一度自分のものにすると、次に見えてくる景色があります。図面が大きくなっても、管理コストがほとんど増えない状態です。ここが、一軸の感覚のまま作図する人との分かれ道になります。

では、二軸が固まったあとには何ができるようになるのでしょうか。表示切り替えの高速化、そして標準をテンプレート化してチームで共有する段階へ進めます。保存ビューやテンプレート(.sta)の効果も、割り当てが整っているほど大きくなります。毎回同じ組織を再利用でき、設計判断の土台がそのまま運用の効率化につながっていく。二軸を固めることは、その先の作業スピードへの投資でもあります。

まとめ

Vectorworksのクラスとデザインレイヤは、役割の違いさえ押さえれば迷わず使い分けられます。要点は次のとおりです。

デザインレイヤは「どこに(場所・階・縮尺)」を、クラスは「何を・どう見せるか(種別・属性・表示)」を担います。全オブジェクトは常に1レイヤと1クラスを同時に持つので、二者択一ではなく掛け合わせで管理します。迷ったら「場所が違うならレイヤ、種類が違うならクラス」で判断できます。

破綻するパターンは3つあります。レイヤに種別を持たせて増殖するケース、クラスに場所を持たせて崩れるケース、属性をByClassにせずクラスが効かないケースです。いずれも場所と種別の担当を混ぜたときに起きるので、レイヤは場所・クラスは種別と役割を固定すれば避けられます。崩れない標準は、最小構成から始めて名前を先に決めれば作れます。まずはこの2つから手をつけてみましょう。