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Vectorworksのクラス入門|属性・表示制御・AutoCAD画層との違い

編集部 読了 約15分

Vectorworksのクラス入門|属性・表示制御・AutoCAD画層との違い

Vectorworksの「クラス」は、線や塗りといった見た目と、表示するかどうかの状態を、要素の種別ごとにまとめて管理する仕組みです。同じ図面から用途に応じた複数の版を、切り替え一つで作り分けられるのは、このクラスがあるからです。

AutoCADの画層(レイヤ)に慣れた方ほど、最初につまずきやすいポイントがあります。Vectorworksは「どこにあるか(場所)」と「どう見えるか(見た目)」を別々の軸に分けており、見た目を担うのがクラスだからです。

この記事では、クラスが管理する対象、作り方と属性の自動反映、表示の制御、そしてAutoCAD画層との違いと命名のコツまでを扱います。

もう一方の軸である場所の管理は、デザインレイヤで階層・縮尺・高さを管理するにまとめています。

クラスは「見た目と表示」を束ねる仕組み

クラスは、線・塗り・テクスチャ・文字スタイルといった見た目と、表示状態を、要素の種別ごとにファイル全体でまとめて管理する仕組みです。デザインレイヤをまたいで効くため、別々の階に描いた同じ種別の要素を、一つのグループとして扱えます。

項目内容
制御する対象グラフィック属性(線・塗り)/テクスチャ/文字スタイル/可視性(表示状態)
効く範囲ファイル全体。デザインレイヤをまたいで適用される
既定クラス「なし(None)」=新規オブジェクトの既定、「寸法(Dimension)」=寸法用(どちらも削除不可・リネーム可)
作成・管理場所オーガナイザ、表示バーのクラスリスト、ナビゲーションパレット(上位エディション)
役割分担クラス=見た目・表示、デザインレイヤ=場所(階・縮尺・重なり順)

ソース: 概念:クラスの概要(Vectorworks公式Help 2024)(2026年7月現在)

クラスが一元管理する4つの対象

クラスが束ねるのは、グラフィック属性・テクスチャ・文字スタイル・可視性の4つです。公式Helpでも、これらを図形に割り当て、クラスを使って表示を制御できると整理されています。

この4つがファイル全体に効くため、別レイヤーにある同じ種別の要素を、一つのまとまりとして扱えます。たとえば1階と2階に分けて描いた「壁」を「壁クラス」でまとめておけば、線の太さや塗りを後から一度に変更できます。

見た目を要素ごとに個別設定していくと、修正のたびに全部を触り直すことになります。クラス側にまとめておけば、種別ごとの一括変更が効いて手戻りが減る、というのが最大の利点です。

最初からある「なし」クラスと「寸法(Dimension)」クラス

新規ファイルには「なし(None)」と「寸法(Dimension)」の2つのクラスが最初から用意されています。「なし」は新規オブジェクトが入る既定のクラス、「寸法」は寸法オブジェクトが既定で入るクラスです。どちらも名前は変えられますが、削除はできません。

なお日本語版の資料では、この既定クラスが「一般」と表記される場合があります。実機の版によって「なし」と「一般」の表記ゆれがあるため、手元のクラスリストでどちらの名前になっているかを確認しておくと迷いません。

まずは「なし」に何でも入る状態から始まり、そこへ種別ごとのクラスを足していくのが基本の流れです。最初から全部を分ける必要はありません。表示を分けたい単位が出てきたところで、クラスを切っていけば十分です。

レイヤは「場所」、クラスは「見た目」

公式の整理では、クラスは見た目(appearance)を、レイヤは場所(location)を決めます。この役割分担が、Vectorworksの組織化の土台。二軸に分かれている点さえ押さえれば、後の操作がぐっと見通しやすくなります。

場所の軸、つまり階・縮尺・重なり順を担うのがデザインレイヤです。こちらの作り方や縮尺の考え方は、デザインレイヤで階層・縮尺・高さを管理するで解説しています。

この記事では、見た目と表示の軸であるクラスに集中します。二つの軸をどう割り当てるかという設計の話は、クラスとデザインレイヤの使い分け設計|二軸を破綻させない標準にまとめています。

AutoCADの画層との違い|一軸を二軸に分ける

AutoCADの画層が「場所も見た目も」まとめて担っていた役割を、Vectorworksはレイヤ(場所)とクラス(見た目)の二軸に分けています。色や線種の設定をレイヤに探して、見当たらずに手が止まった経験はないでしょうか。ここを理解しておくと、その違和感の正体がはっきりします。

項目AutoCAD 画層Vectorworks デザインレイヤVectorworks クラス
主な役割場所と見た目を1つで管理場所(階・縮尺・重なり順)見た目(線・塗り・テクスチャ・文字)と表示
効く範囲図面全体配置の階層ファイル全体・レイヤ横断
DWGでのやり取りそのまま画層設定により画層またはクラスへ書き出すと画層へ変換される

ソース: 概念:クラスの概要(Vectorworks公式Help 2024)(2026年7月現在)

画層は「場所と見た目」を1つに束ねていた

AutoCADでは、画層に「どこにあるか」と「どう見えるか(色・線種・表示)」を同時に持たせる管理が基本です。1本の軸ですべてを整理する考え方で、詳しい運用はAutoCADのレイヤ(画層)を管理するで解説しています。

この前提のままVectorworksを触ると、レイヤに色を割り当てようとして「色の設定が見当たらない」と戸惑うことになります。色や線はレイヤではなくクラス側にあるからです。

一軸に慣れた頭で二軸を触ると、割り当て先の判断で一度つまずきやすくなります。ここを先に押さえておけば、後の操作がすんなり入るはずです。

Vectorworksはレイヤ(場所)とクラス(見た目)に分離

Vectorworksでは、どの階・どの縮尺に置くかをデザインレイヤが、何色でどんな線か・表示するかをクラスが担います。役割が分かれているぶん、指定は二軸で行うのが基本です。

たとえば外壁を1つ描くとき、「1階レイヤ」に置きつつ「壁クラス」で見た目をそろえます。場所と見た目を別々に指定するので、置き場所はそのままで見た目だけを全部切り替える、といった操作が効きます。

慣れると柔軟に扱えますが、最初は「これはレイヤかクラスか」と割り当て先に迷いがちなところ。どちらに何を入れるかの原則は、クラスとデザインレイヤの使い分け設計|二軸を破綻させない標準で整理しています。

DWGでやり取りするとクラスは画層に変換される

Vectorworksのクラスは、AutoCADの画層に相当する機能で、DWG書き出し時にはAutoCADの画層として取り出されます。逆に、AutoCADからDWGを読み込むと、画層はVectorworks側のクラス(設定によってはレイヤ)へ変換されます。

つまり書き出し・読み込みの両方向で、クラスと画層が対応する関係にあります。AutoCAD側とデータを行き来させる案件では、クラスの設計がそのまま相手先の画層設計になると考えておくと安全です。

変換時の細かい割り当て設定や、他CADとの相互運用の比較は、https://db.persc.jp/vectorworks/ でまとめています。この記事では「クラスと画層が対応する」という概念だけを押さえておけば十分です。

クラスを作成して属性を割り当てる

クラスはオーガナイザ、または表示バーのクラスリストで作り、クラスの編集で「属性を使う」を有効にすると、そのクラスで描いた要素が自動で見た目をそろえます。ここを外すと「クラスで色を決めたのに図面が変わらない」というつまずきの原因になります。だからこそ、作成と属性設定はセットで覚えたいところです。

ソース: 概念:クラスの概要(Vectorworks公式Help 2024)クラスの属性を設定(Vectorworks公式Help 2024)(2026年7月現在)

オーガナイザ/表示バーのクラスリストで作る

クラスは、オーガナイザ(Organizer)ダイアログ、または画面上部の表示バーにあるクラスリストから作成・管理します。ナビゲーションパレットからも扱えますが、これは上位エディションで利用できる機能。まずは表示バーのクラスリストを入口にすると迷いません。

作りたい種別ごとにクラスを1つずつ足していくのが基本です。たとえば住宅の平面図なら「壁」「建具」「寸法」「注釈」「下地」のように、後で表示を分けたい単位でクラスを用意します。

作ったクラスをアクティブにしてから作図すると、その要素はそのクラスに属します。アクティブなクラスは、オーガナイザや表示バーで太字で強調されるので、今どのクラスで描いているかを確認しながら進められます。

クラスの編集ダイアログの「属性を使う」で属性を自動適用

クラスの編集(Edit Class)ダイアログで「属性を使う」を有効にすると、そのクラスで描いたオブジェクトが、クラスに設定した2Dグラフィック・注釈文字・テクスチャを自動で使います。

これを有効にしておくと、「壁クラスで描けば必ず壁の見た目になる」という状態を作れます。既存の要素にも後からまとめて適用するか尋ねられるので、途中からクラス運用に切り替えることもできます。

見た目を要素ごとに手で決めていくのではなく、クラス側に一度決めておく発想です。線の太さや塗りを変えたくなったら、クラスの編集を開いて直すだけで、その種別の要素すべてに反映されます。

ByClass(クラス基準)と個別上書きの使い分け

属性パレットで塗りや線を「クラススタイル」に設定すると、オブジェクトはクラスの属性に追従します。これがByClass(クラス基準)の状態です。線の太さなら「クラス属性」、テクスチャなら「クラスによるテクスチャ」、文字なら「クラスの文字スタイル」が、同じくクラス基準を指すラベルにあたります。

逆に、要素を選んで属性パレット・オブジェクト情報パレット・リソースマネージャから個別に指定すれば、クラスの属性を上書きできます。原則は「見た目はクラスにそろえ、例外だけ個別で上書き」。こうしておくと、後からの一括変更が効いて管理が楽になります。

クラスで色を決めたのに、図面がまったく変わらない。そんな場面に覚えはないでしょうか。現場でもっとも多いつまずきが、クラスの編集で「属性を使う」にチェックが入っていないケースです。反映されないと感じたら、まずこのチェックを確認してみてください。

クラスの表示制御|表示・グレイ表示・非表示

クラスは種別ごとに表示・グレイ表示・非表示を切り替えられ、これで1つの図面から用途別の見せ方を作り分けられます。設備を消した意匠版や、下地だけを残した版を、切り替え一つで呼び出せるようになります。

可視状態見える選択・スナップ使いどころ
表示(Visible)通常の作業対象
グレイ表示(Grayed)△(薄く表示)参照用消さずに参照だけしたいとき
非表示(Invisible)××完全に隠したいとき

ソース: 概念:クラスの概要(Vectorworks公式Help 2024)(2026年7月現在)

3つの可視状態とアクティブクラス

アクティブなクラスは常に表示されます。それ以外の非アクティブなクラスは、表示(Visible)・グレイ表示(Grayed)・非表示(Invisible)から選べます。グレイ表示は薄く見える参照用、非表示は完全に隠す状態なので、目的に合わせて使い分けましょう。

要素はクラスとレイヤの両方に属するため、実際の見え方は制限の強い方の設定に従います。たとえばクラスが表示でも、置いているレイヤがグレイ表示なら、その要素は灰色で表示されます。

「クラスは表示にしたのに薄いまま」というときは、レイヤ側の可視状態を確認します。二軸それぞれに可視状態がある点が、レイヤ横断で効くクラスの特徴といえます。

クラスオプションで全体の見え方を切り替える

クラスオプション(Class Options)では、非アクティブなクラス全体の扱いを一括で設定できます。「アクティブのみ表示」「他を表示」「他をグレイ表示」といった切り替えで、図面全体の見え方をまとめて変えられます。

「アクティブのみ」にすると、作業中のクラス以外が画面から消え、込み入った図面でも編集に集中しやすくなります。込み合った平面図で寸法だけを触りたいときなどに役立つ設定です。

なお壁・ドア・窓といった建築オブジェクトは、部品ごとに別のクラスで表示を制御できます。これらの建築オブジェクトは上位エディションで扱えるため、どのエディションで何が使えるかの比較は、https://db.persc.jp/vectorworks/ を参照してください。

版の作り分けはビューポート/保存ビューで固定する

クラスの表示状態は、ビューポート(図面を配置・出力するための枠)や保存ビューごとに保持できます。この保持のおかげで、用途ごとの見せ方を切り替え一つで呼び出せます。

たとえばプレゼン用に家具と植栽を表示した版と、確認申請用に構造だけを残した版を、同じ図面から別々のビューとして固定しておけます。毎回クラスを手で切り替える手間がありません。

切り替え操作そのものの詳しい手順や、ビューの保存については、ナビゲーションパレットで表示を切り替えるで解説しています。この記事では、クラスの可視3状態が版の作り分けの土台になる点を押さえておけば十分です。

破綻しないクラス命名規則

クラスは要素の種別で分け、階層のある名前を付けると、数が増えても迷子になりません。クラスをどんどん作ったものの、名前がバラバラで目当てのひとつを見失った経験はないでしょうか。命名のルールを最初に決めておくと、後からの一括表示や属性変更がそのまま効きます。

要素の種別で分ける(用途ベースの命名)

クラスは「場所」ではなく「要素の種別・見せ方」で分けます。壁・建具・寸法・注釈・下地のように、後で表示や属性をまとめて操作したい単位で切るのが基本です。場所の分けはレイヤの役割なので、クラスに階や部屋を持ち込まないようにします。

「なし」に全部を入れたままにすると、表示の作り分けも一括変更も効きません。種別ごとに分けておくことで、クラスの強みがそのまま活きてきます。

迷ったときは、「これだけ表示・非表示にしたい」と思う単位を探すと、クラスの切り方が決まります。表示を分けたい理由が、そのままクラスを分ける理由になるからです。

階層命名(親-子)で数の増加に耐える

「大分類-小分類」のように区切り記号で階層化すると、クラスが増えても扱いやすくなります。たとえば「家具-椅子」「家具-机」のように名付ければ、ナビゲーションパレット上で家具のまとまりとして扱えます。

命名を統一しておくと、後からクラス単位でまとめて表示を切り替えたり、属性を変えたりする操作が楽になります。名前がそろっているほど、まとめ操作の対象を選びやすくなるからです。

プロジェクトの途中で大量にリネームすると手戻りになります。区切り記号や大分類のルールは、作業を始める前に決めてみてください。

標準命名と自社標準に沿わせる

AIA(米国建築家協会が定める命名標準)やBS(英国規格の命名標準)といった既定の標準や、自社で決めた標準に沿わせると、チーム内で表記がそろいます。表記が人によって違うと、同じ種別なのに別々のクラスが増えてしまいます。

標準命名の適用や、テンプレートファイル(.sta)での再利用については、レイヤ・クラス標準とテンプレートを整えるで解説しています。毎回同じ組織を使い回したいチームは、こちらが入口になります。

この記事では、命名は最初にルール化しておくという原則までを押さえておけば十分です。ルールが先にあると、クラスが増えても破綻しにくくなります。

クラスの二軸運用を編集部が読み解いた所感

公式ドキュメントを読み解くと、クラスは「見た目と表示を、種別ごとにファイル全体でそろえる」ための仕組みだと一貫して説明されています。AutoCADの画層が担っていた役割のうち、色や線種、表示にあたる部分をクラスへ切り出した設計だといえます。

導入の手間という観点では、クラスはどのファイルでも使える中核機能です。最初に種別ごとのクラスと命名ルールを決める手間はかかりますが、その先の修正が一括で効くぶん、案件が進むほど楽になっていきます。

制約として編集部が注目したのは、二軸ゆえの割り当ての迷いと、「属性を使う」のチェック漏れです。公式Helpのクラス属性の解説でも、属性が反映されない原因として、このチェックの有無が挙げられています。ここを最初に押さえておくだけで、初期のつまずきは大きく減らせるでしょう。

これらを踏まえると、クラスはAutoCADからの移行組にも、Vectorworksから設計を始める初学者にも、早い段階で理解しておきたい機能です。表示の作り分けと一括変更という恩恵が、日々の作図でそのまま返ってくるからです。

クラスを整えた先に広がる制作の景色

クラスの二軸を使いこなせるようになると、日々の作図の景色が変わります。図面を描き直さずに、表示の切り替えだけで用途別の版を出せるようになるからです。

クラスを整えなかった場合、意匠版と設備版を別ファイルで管理したり、その都度要素を消したり戻したりする作業が残ります。一方でクラスと保存ビューを整えておくと、同じ1ファイルから複数の見せ方を呼び出せます。打ち合わせ中に「設備を消した状態で見せてほしい」と言われても、その場で切り替えて対応できます。

ここから次の一歩に進むなら、場所の軸であるデザインレイヤと、二軸の割り当て設計を続けて押さえるのが近道です。見た目の軸(クラス)と場所の軸(レイヤ)の両方が揃って初めて、Vectorworksの組織化は本領を発揮します。両方を学んだ先には、規模の大きな図面でも破綻しない管理と、チームで同じ標準を共有できる制作環境が見えてきます。

まとめ

Vectorworksのクラスは、線や塗りといった見た目と、表示状態を、要素の種別ごとにまとめて管理する仕組みです。AutoCADの画層が場所と見た目を1つの軸で担っていたのに対し、Vectorworksはデザインレイヤ(場所)とクラス(見た目)の二軸に分けている点が最大の違いになります。

作成はオーガナイザや表示バーのクラスリストで行い、クラスの編集で「属性を使う」を有効にすると見た目が自動でそろいます。原則は見た目をクラスにそろえ(ByClass)、例外だけ個別に上書きすることです。表示・グレイ表示・非表示の可視3状態を使えば、1つの図面から用途別の版を作り分けられます。命名は要素の種別で分け、階層のある名前を最初にルール化しておくと、数が増えても破綻しません。

次に押さえたいのは、もう一方の軸である場所の管理と、二軸をどう割り当てるかの設計です。以下の記事から、自分が今つまずいているところに合わせて読み進めてください。