Vectorworksデザインレイヤの使い方|縮尺・標高・積み重ね順を管理する5設定
Vectorworksデザインレイヤの使い方|縮尺・標高・積み重ね順を管理する5設定
Vectorworksのデザインレイヤ(Design Layer|作図やモデリングの対象物を置く層)は、図面を「どこに・どの階・どの縮尺で」という場所の軸で整理するしくみです。AutoCADの画層のように表示のオン・オフだけを担う一軸ではなく、Vectorworksでは場所を受け持つデザインレイヤと、見た目を受け持つクラスの二軸で図面を組み立てます。この二軸を最初につかめないことが、Vectorworksを学び始めた人が最初につまずくポイントです。
この記事では、デザインレイヤを作成し、レイヤ縮尺・標高(Z)・レイヤ壁高さ・積み重ね順・レイヤオプションの5つの設定を、一本の順番で押さえられるように解説します。
情報は2026年7月時点で、Vectorworks公式ヘルプ(app-help.vectorworks.net、Vectorworks 2025版)を直接確認して接地しました。エディションごとの価格や推奨PCの違いには踏み込まず、機能に必要なエディションの注記だけを添えます。
デザインレイヤとは|二軸の「場所・階・縮尺」を受け持つ層
デザインレイヤは、図面組織の二軸のうち「どこに置くか」という場所側を受け持つ層です。作図やモデリングの対象物を置き、積み重ね・非表示・縮尺設定・並べ替えができるため、複数の階や複数の縮尺を1つのファイルで扱えます。
デザインレイヤが受け持つのは「どこに・どの階・どの縮尺で」
デザインレイヤは、対象物を「場所・階・縮尺」で仕分けるための層です。Vectorworksでは1つの対象物を、デザインレイヤ(場所の軸)とクラス(見た目の軸)の両方に割り当てて管理します。
この二軸構造が、AutoCADの画層に慣れた人にとって最初の戸惑いになります。AutoCADの画層は「表示のオン・オフ」を切り替える一軸のしくみで、場所も見た目も1つの層で兼ねます。いっぽうVectorworksは、場所はデザインレイヤ、見た目はクラス、と役割が分かれています。だからこそ「1階の平面図」はレイヤで、「壁の線色」はクラスで、と別々に管理でき、変更が波及しにくくなります。画層一本での管理に慣れている方は、AutoCADの画層管理の考え方と読み比べると、一軸と二軸の違いがはっきりします。
たとえば住宅の実施設計で1階・2階・配置図を1ファイルにまとめるとき、それぞれを別のデザインレイヤに分けておけば、階ごとに表示を切り替えながら作図を進められます。線の色や種類はクラス側で統一しておけるので、階が増えても見た目のルールは1か所で管理できます。
(出典: Concept: Layers overview Vectorworks 2025版 2026年7月時点)
シートレイヤーとの違い(作図はデザイン、印刷はシート)
同じ「レイヤ」でも、デザインレイヤとシートレイヤー(Sheet Layer)はまったく用途が違います。デザインレイヤは縮尺を持って作図する層、シートレイヤーは1対1の実寸でビューポート(作図画面を切り取って配置する窓)やタイトルブロック、注釈を並べる印刷レイアウト用の層です。
簡単に言うと、モデルや図面を描くのはデザインレイヤ、それを紙のレイアウトとしてまとめて印刷するのはシートレイヤー、と役割で覚えると混乱しません。この記事はデザインレイヤ側の設定に集中します。見た目の軸であるクラスの作り方はクラスで見た目と表示を一元管理する、どちらの軸に何を割り当てるかの設計はクラスとデザインレイヤの使い分け設計で解説しています。
(出典: Concept: Layers overview 同ヘルプ 2026年7月時点)
デザインレイヤを作成する
デザインレイヤはオーガナイザ(Organization)から作成し、場所・階を単位にして分けます。作成した層のうち作図の対象にする層を「アクティブ」にしておくと、後半で解説するレイヤオプションが理解しやすくなります。
オーガナイザでの作成手順
デザインレイヤは、メニューの Tools > Organization(日本語版のオーガナイザ)を開き、デザインレイヤのタブで新規作成します。作成時に名前や縮尺などを設定でき、あとから編集で変更できます。
作成したら、これから作図する層を「アクティブレイヤ」にします。アクティブレイヤとは、いま作図や編集の対象になっている層のことです。新しく引いた線や配置した対象物は、このアクティブレイヤに入ります。なぜここで押さえておくかというと、あとで解説するレイヤオプション(この記事の後半)が、すべて「アクティブレイヤと、それ以外の他レイヤをどう扱うか」を切り替える設定だからです。アクティブレイヤの切り替えや、表示状態の保存といった実際の操作はナビゲーションパレットで表示を切り替えるで解説しています。
(出典: Concept: Layers overview/Changing the design layer stacking order Vectorworks 2025版 2026年7月時点。いずれもオーガナイザのデザインレイヤタブが操作の起点です)
場所・階でレイヤを分ける(命名の第一歩)
デザインレイヤは、場所・階・縮尺を単位に分けるのが基本です。たとえば「1階平面」「2階平面」「配置図」のように、どこの図面かでレイヤを切ります。線色や線種といった見た目はクラスに任せるので、レイヤ名に色や部材の種類を入れる必要はありません。
この分け方を守ると、二軸が破綻しにくくなります。逆に「壁レイヤ」「建具レイヤ」のように部材の種類でレイヤを切ってしまうと、本来クラスが担うべき見た目の仕分けがレイヤに混ざり込み、階ごとの管理ができなくなります。
名前の付け方をチームの標準やテンプレートとして再利用する方法は、レイヤ・クラス標準とテンプレートを整えるで解説しています。どちらの軸に何を割り当てるか迷ったときは、クラスとデザインレイヤの使い分け設計へ進んでください。
レイヤ縮尺を設定する
レイヤ縮尺(Layer Scale)は、実物のサイズと図面上のサイズの比で、線や文字、ハッチングの見え方を左右します。各デザインレイヤが独立した縮尺を持てるため、詳細図と配置図を別々の縮尺で1ファイルに共存させられます。
レイヤ縮尺が変えるもの(線・文字・ハッチング)
レイヤ縮尺は、対象物の実寸ではなく「図面上での見た目の大きさ」を制御します。既定は1対1です。縮尺を変えると、線の太さ・線種のパターン・マーカー(矢印や点などの記号)・文字・ハッチング(塗りつぶしの模様)の見え方が調整されます。
だから、同じ壁の断面を1対50の詳細図と1対200の配置図で見せたいとき、それぞれのレイヤに合った縮尺を設定しておけば、線の太さや文字が縮尺なりに適切な大きさで表示されます。各デザインレイヤは独立した縮尺を持てるので、詳細図レイヤと配置図レイヤを別縮尺で管理し、あとでシートレイヤーに並べて1枚の図面にまとめられます。
縮尺の決め方とScale Text
レイヤ縮尺は、そのレイヤの主要な出力縮尺に合わせるのが実務的です。印刷したい縮尺にレイヤ縮尺をそろえておくと、シートレイヤーのビューポートで文字や線の見た目を細かく調整する手間が減ります。設定はビューバー(画面上部の操作帯)の縮尺表示、またはオーガナイザのデザインレイヤタブの編集から変更できます。
縮尺を後から変えるときに気をつけたいのが、文字の扱いです。Scale Text(文字を縮尺に合わせる)にチェックを入れると、縮尺を変更したときに配置済みの文字も比例して調整されます。チェックを外すと、文字は現寸のまま保たれます。作図の途中で縮尺を変える可能性があるなら、文字が意図せず伸縮しないよう、この設定がどちらになっているかを確認しておくと安心です。
(出典: Design Layer Scale Vectorworks 2025版 2026年7月時点。標準仕様のため内容は現行版でも変わりません)
標高(Z高さ)とレイヤ壁高さを管理する
デザインレイヤは、平面的な位置だけでなく高さの情報も持てます。レイヤ自体の標高(Elevation)と、そのレイヤで作る壁の高さ(Layer Wall Height)を組み合わせると、階ごとの床レベルと階高を層に持たせられます。
Elevation(レイヤの標高)
Elevation(レイヤの標高)は、そのレイヤの基準面からの高さで、レイヤ上に置く対象物の既定の標高を決めます。デザインレイヤ同士をぴったり重ねるのではなく、間に高さの距離を持たせて3Dで積み上げられるため、1階と2階を高さ方向にずらして配置できます。
ここで境界になるのが、階(ストーリ)との関係です。レイヤをストーリ(Story Level|建物各階の絶対標高を定義するしくみ)に関連付けると、そのレイヤの標高はストーリ側から自動的に決まり、手動では変更できなくなります。つまりストーリを使わない場合は標高を手動で持たせ、ストーリを使う場合は階の設定から自動で決まる、という切り分けになります。
Architect以上では、レイヤ標高に切断面(平面図として切る高さ)を連動させる設定もあります。詳細はこの記事の範囲外ですが、そうしたエディションによる違いがある点だけ押さえておけば十分です。
(出典: Setting design layer properties/Concept: Layers overview Vectorworks 2025版 2026年7月時点)
Layer Wall Height(レイヤの壁高さ)
Layer Wall Height(レイヤの壁高さ)は、そのレイヤで作成した壁の高さを、層側であらかじめ決めておくしくみです。柱など一部の対象物にも効き、壁のトップバウンド(上端をどこに合わせるかの設定)と連動します。
だから、たとえば1階の階高を2,900mmと決めているなら、1階レイヤの壁高さを2,900mmに設定しておけば、そのレイヤで引いた壁が既定でその高さになります。レイヤ標高で床のレベルを、レイヤ壁高さで階の高さを持たせると、階ごとの高さ関係が層の設定として整理されます。
(出典: Setting design layer properties 同ヘルプ 2026年7月時点)
階(ストーリ)への布石
階数が増えるほど、標高と壁高さを手作業で管理するのは煩雑になります。Vectorworksには、建物各階の絶対標高を定義し、関連するレイヤや対象物の高さを自動で調整するストーリ(Stories)というしくみがあります。ストーリ自体は作図の対象物を持たず、ストーリに関連付けたデザインレイヤ(ストーリレイヤ)に壁やスラブ(床版)などを置きます。
ストーリはArchitect(およびLandmark)以上のエディションで使える機能です。基本エディションのFundamentalsでは、この記事で見てきた手動のレイヤ標高とレイヤ壁高さで高さを管理します。どのエディションで何が使えるかの詳しい違いは、db.persc.jp/vectorworks/ にまとめています。ここでは、高さ管理を階単位で自動化する上位のしくみがある、という布石までにとどめます。
(出典: Concept: Stories and story-aware objects/Setting up the building structure with stories 2026年7月時点)
積み重ね順(スタッキングオーダー)を整える
積み重ね順(Stacking Order)は、デザインレイヤの表示と印刷の上下関係を決める設定です。対象物を動かさずに、レイヤ単位で前後関係だけを整理できます。
積み重ね順とは(#列と1が最上)
積み重ね順は、デザインレイヤをどの順番で上に重ねて表示・印刷するかの並びです。初期状態では作成した順に並び、あとから変更できます。オーガナイザのデザインレイヤタブを詳細表示にすると、現在の順位を示す「#」の列が表示され、1が最も上になります。
この順番は、平面図での重なりに影響します。たとえば敷地図や既存図をトレース用の下敷きとして使うとき、その下敷きレイヤを最背面に置いておけば、新しく描く図面が常に手前に表示され、下敷きに邪魔されずに作図できます。
積み重ね順を変える2つの方法
積み重ね順は2つの方法で変更できます。1つ目は、#列を並べ替えの基準列にして、動かしたいレイヤの#をドラッグで上下に移動する方法です。2つ目は、レイヤを選んで編集を開き、Stacking Order(重ね順)の欄に順位の番号を直接入力する方法です。
どちらの方法でも結果は同じなので、細かく入れ替えたいときはドラッグ、順位をきっちり指定したいときは番号入力、と使い分けると作業が早くなります。下敷きにする基準図は最背面、といった運用のルールをチームで決めておくと、ファイルを共有しても順序が崩れにくくなります。
(出典: Changing the design layer stacking order Vectorworks 2025版 2026年7月時点)
レイヤオプションで他レイヤの表示を切り替える
レイヤオプション(Layer Options|メニューの View から設定)は、アクティブレイヤ以外の「他レイヤ」をまとめてどう扱うかを決めるグローバルな設定です。ここで押さえておきたいのは、このグローバル設定とは別に、各レイヤが個別の可視性(表示・グレー・非表示)を持っている点です。
この2つは組み合わさって効きます。たとえば「他レイヤも表示」に設定していても、個別に非表示へ設定したレイヤは画面に出てきません。先にこの二層の関係を理解しておくと、6種類の選択肢の意味が読み解きやすくなります。
6つのレイヤオプションの違い
レイヤオプションは、他レイヤの表示・スナップ(点や線に吸着させる機能)・編集の許可範囲が段階的に広がる6種類です。Vectorworks 2025版の公式ヘルプで、それぞれの挙動を確認しました。
| レイヤオプション | 他レイヤの表示 | スナップ | 編集 |
|---|---|---|---|
| Active Only(アクティブのみ) | 非表示 | 不可 | アクティブのみ |
| Gray Others(他をグレー) | グレー表示 | 不可 | アクティブのみ |
| Gray/Snap Others(グレー+スナップ) | グレー表示 | 可 | アクティブのみ |
| Show Others(他も表示) | 通常表示(非表示・グレー設定を除く) | 不可 | アクティブのみ |
| Show/Snap Others(表示+スナップ) | 通常表示 | 可 | アクティブのみ |
| Show/Snap/Modify Others(表示+スナップ+編集) | 通常表示 | 可 | 通常表示レイヤも可 |
表の縦の並びは、他レイヤへの関与が下にいくほど強くなる順番です。Active Onlyはアクティブレイヤだけに集中する設定で、他レイヤは画面から消えます。Gray Othersにすると他レイヤはグレーで背景として見えますが、吸着も編集もできません。Gray/Snap Othersは、グレー表示のまま他レイヤの点や線にスナップできる設定です。Show系の3つは他レイヤを通常表示にしたうえで、スナップ、さらに編集まで、と許可範囲が広がっていきます。最も開放的なShow/Snap/Modify Othersでは、通常表示になっているレイヤの対象物も編集できます。
(出典: Setting global visibility with class and design layer options Vectorworks 2025版 2026年7月時点)
作業効率を上げる使い分け
レイヤオプションは、作業の目的に合わせて選ぶと効率が上がります。目的別の選び方の目安は、次のとおりです。
- 他レイヤを参照するだけでよいとき: Gray Others(他をグレー表示)
- 隣の階の基準線に吸着させたいとき: Gray/Snap Others(グレー表示+スナップ)
- 複数のレイヤをまたいでまとめて修正したいとき: Show/Snap/Modify Others(表示+スナップ+編集)
たとえば2階平面を作図しながら、1階の柱位置に合わせたい場面を考えます。Gray/Snap Othersにしておけば、1階レイヤはグレーの下敷きとして見えつつ、その柱の芯にスナップして柱を積み上げられます。誤って1階側を編集してしまう心配もありません。
こうしたレイヤオプションを作業中にすばやく切り替える運用や、表示状態を保存して呼び出すやり方はナビゲーションパレットで表示を切り替えるで解説しています。なお、専用のナビゲーションパレットを使うには、Design Suite(統合パッケージ、2026年時点)が必要です。
デザインレイヤ運用についての編集部の見解
デザインレイヤでつまずくかどうかは、機能を1つずつ覚えるより「場所の軸を1本に保てるか」で決まる、と編集部では見ています。公式ヘルプを読み解くと、レイヤ縮尺も標高も積み重ね順も、すべて「そのレイヤがどこの図面か」を起点に設定が連なっていくためです。
Vectorworks公式ヘルプでも、図面組織は場所を受け持つデザインレイヤと見た目を受け持つクラスの二軸で考える、という役割分担が示されています(出典: Concept: Layers overview 2026年7月時点)。初学者がつまずきやすいのは、この役割分担を崩し、レイヤに部材の種類を持ち込んでしまうケースです。壁レイヤ、建具レイヤ、と部材でレイヤを切ると、見た目の仕分けを担うべきクラスと役割が重複し、階ごとの高さ管理も縮尺管理も破綻します。デザインレイヤはあくまで「1階平面」「配置図」のような場所・階・縮尺の単位に保ち、線色や線種はクラスへ寄せる。この線引きを最初に決めておくことが、後戻りを防ぐ最も確実な近道だと考えられます。
エディションの選び方については、Fundamentalsでも手動のレイヤ標高とレイヤ壁高さで高さを管理でき、この記事の設定はひととおり実行できます。ストーリによる自動化が必要になるのは、階数の多い建物を扱い始めてからで十分です。
二軸を整えた先に広がる作図の景色|次の一歩
デザインレイヤの5つの設定を整えた先では、図面の作り方そのものが変わります。場所はレイヤ、見た目はクラス、と役割が分かれていれば、階を1つ増やしても、線のルールを見直しても、影響がその軸の中で完結します。1つの変更が図面全体に波及して手戻りする、という状況から抜け出せます。
次の一歩は、もう一方の軸であるクラスを整えることです。レイヤで場所を仕分けられるようになったら、クラスで見た目を一元管理できるようにすると、二軸がそろって図面の組織化が完成します。そのうえで、どちらの軸に何を割り当てるかの標準を決めておけば、テンプレートとしてチームで再利用でき、新しいプロジェクトを毎回ゼロから組み直す必要がなくなります。
まとめ
Vectorworksのデザインレイヤは、二軸の図面組織のうち「どこに・どの階・どの縮尺で」という場所の軸を受け持つ層です。設定は、デザインレイヤの作成、レイヤ縮尺、標高(Z)とレイヤ壁高さ、積み重ね順、レイヤオプションの順で押さえると、一本の流れとして理解できます。
レイヤ縮尺は線や文字の見え方を、標高とレイヤ壁高さは階ごとの高さを、積み重ね順は表示の上下関係を、レイヤオプションは他レイヤの見せ方をそれぞれ制御します。高さを階単位で自動化したいときは上位エディションのストーリを、見た目を管理したいときはクラスを使い、デザインレイヤと組み合わせます。
もしどちらの軸に何を置くか迷ったら、場所・階・縮尺はレイヤ、要素の種別や見せ方はクラス、という原則に立ち返ってください。この線引きを保つことが、Vectorworksで図面を破綻させずに育てる土台になります。
建築知識の教科書