Twinmotionの太陽・空・地理座標設定|正確な日影・日照スタディ
Twinmotion(Epic Games提供・完全無料のリアルタイムレンダラー)で太陽を扱うと、地図で敷地を指して時刻を動かすだけで、勘ではなく実際の日影をその場で確認できます。設計検討の初期段階で「南向きの居室に何時から日が入るか」「冬至に隣地へ影がどこまで伸びるか」を、書き出しを待たずに見られる点が建築実務で重宝されています。
この記事では、太陽の位置決め(敷地の場所・真北・時刻・季節)と、それを使った日影・日照スタディの手順に集中して解説します。光の考え方そのもの、空の作り込み、天候演出、露出調整はそれぞれ別のテーマに分けているため、本文の途中で関連記事へ送り出します。数値や設定範囲は公式ドキュメントで確認できる範囲を2026年7月現在としてまとめています。
Twinmotionの太陽は「場所×日付×時刻」で正確に決まる
Twinmotionの太陽は、敷地の緯度経度と日付・時刻が決まれば、実際の空にある太陽と同じ位置に置けます。Dynamic sky(動的な空)が既定のライティング環境になっていて、太陽・空・影が連動しながら光の見え方を決めます。勘や経験則ではなく、座標にもとづく光。これが、リアルタイムで日影を扱える土台になります。
太陽の位置は方位と高さで決まる
太陽の位置は方位角と高度という2つの角度で表せて、この2つが影の向きと長さを決めます。方位角(azimuth、真北を基準にした水平方向の角度)は太陽が東西どちらから差すかを表し、高度(elevation、地平線からの上向きの角度)は太陽の高さ、つまり影の長さを左右します(SunEarthTools 太陽位置、2026年7月現在)。
場所(緯度経度)と日付、時刻が決まれば方位角と高度が定まるため、影の向きと長さも一つに決まります。Twinmotionでは時刻・月・方位を動かすと、影がその場で画面に反映されます。書き出しを待たずに「午前10時の光」と「午後3時の光」を並べて比べられるので、狙った時間帯を試しながら決められます。
この記事で扱う範囲と、扱わない範囲
この記事が扱うのは太陽の位置決めと日影・日照スタディで、光の基礎概念や空の作り込みは別のテーマに分けています。光の当て方そのものが初めての場合は、自然光と人工光の考え方を先に押さえると理解が早くなります(Twinmotionのライティング基本|自然光と人工光の考え方)。
空のHDRI(360度撮影した実写の光情報)や雲の作り込みはTwinmotionのHDRIスカイとボリュメトリック雲|空作りの実践で解説しています。雨・雪や季節の植栽といった表現の演出はTwinmotionの天候・季節設定|雨・雪・風・季節で表現を変えるにまとめています。この記事の「季節」は、あくまで太陽位置を決める要素として扱います。
地理座標(Geolocation)で敷地の太陽位置を合わせる
地図で敷地を指せば実座標の太陽軌道が再現され、日影スタディに使える光になります。順番として最初に整えたいのが、敷地の場所と真北の2つ。真北を合わせないと影の方角がまるごとずれてしまうため、この2つはいつもセットで確認します。
地図で敷地の場所を指定する
Sun > Location の Map(地図)でアイコン(ピン)をドラッグすると、敷地の場所を指定できます。マウスホイールでズームでき、検索バーに地名を入れて呼び出すこともできます。選んだ地理座標に応じて、緯度・経度にもとづいた太陽位置が自動で取得されます(Ambience Settings(Twinmotion公式)、2026年7月現在)。
緯度によって太陽の高さが変わる点は、最初に押さえておきたいところです。同じ日時でも北の土地と南の土地では影の長さがちがうため、たとえば札幌の住宅と那覇の住宅では冬至の影の伸び方が大きく変わります。敷地の場所指定をていねいに行うほど、その後のスタディが実際の条件に近づきます。
North offsetで真北をモデルに合わせる
North Offset(真北のずれ角)はシーン内の地理的な北の向きを設定する項目で、範囲は0°〜360°です(Ambience Settings(公式)、2026年7月現在)。場所が正しくてもモデルの向きがずれていると、朝日や西日の入り方が現実と食いちがってしまいます。
敷地図の方位マーク、またはCAD/BIMデータ側の北を基準に、建物の向きへNorth offsetを合わせておくと以降のスタディが正確になります。ここで気をつけたいのは、Revit や Archicad から Datasmith(後述のホスト連携形式)で取り込んでも、Twinmotion側の北が敷地の真北へ自動で一致するとは限らない点です。取り込んだあとはNorth offsetを必ず自分で確認して合わせます。真北がずれると日影スタディ全体が意味をなさなくなるため、この最初の確認がもっとも大切な作業になります。
時刻と季節(Month)で光と影を動かす
時刻スライダーを動かすと影がその場で動くので、何時の光が映えるか、どの季節に影が伸びるかを試しながら決められます。狙った条件の太陽高度と影を作り出すのは、時刻と月(Month)の2つです。では、時刻と季節はそれぞれ影にどう効くのでしょうか。
時刻で1日の影の動きを見る
Time of Day(時刻)を設定すると、太陽高度と影をふくむライティングがその場で更新されます。時刻の表示形式は、Preferences > Settings > Timestamp で12時間表示と24時間表示を選べます(Ambience Settings(公式)、2026年7月現在)。
書き出しを待たずに朝・昼・夕の光を比べられるため、たとえば住宅のリビングで「午前の採光が一番気持ちよく見える時刻」を探しながら決められます。プレゼン用の外観カットを1枚選ぶときも、時刻スライダーを左右に動かして影の落ち方を見比べれば、建物のボリュームがきれいに立つ時間帯を選べます。
月(Month)で季節ごとの日照を比べる
Month を切り替えると季節ごとの太陽位置が決まり、日影が周辺へおよぼす影響を可視化する日影スタディ(sun study)に使えると公式に明記されています(Ambience Settings(公式)、2026年7月現在)。夏至は太陽が高く影が短く、冬至は太陽が低く影が長くなるため、条件が大きく変わります。
では、いつの日照をチェックすればよいのでしょうか。設計検討では、日照がもっとも厳しくなる日を確認しておくと判断しやすくなります。南向きの居室が冬でも十分に日を受けられるか、あるいは冬至の午後に隣地へ長い影が越境しないかを、Month と時刻の組み合わせで確かめられます。雨・雪や植栽の色づきといった季節の演出はTwinmotionの天候・季節設定|雨・雪・風・季節で表現を変えるで解説しています。この記事の季節は、太陽の位置を決める要素に限定します。
太陽と空の見え方を追い込む
太陽のサイズで影のやわらかさが、色温度で朝夕の空気感が決まります。日陰が暗く沈んで読めないときは、空の側の環境光で持ち上げます。仕上がりを左右するのは、この明るさ・大きさ・色みの3つ。主な設定は次の範囲で調整できます。
| 項目 | 設定範囲 | 効果 |
|---|---|---|
| Intensity(強さ) | 0〜150,000 Lux | 太陽全体の明るさ |
| Size(サイズ) | 0.00〜20.00 | 見かけの大きさ。影のやわらかさに影響 |
| Reflection(反射) | 0.00〜1.00 | 鏡面のハイライトの強さ |
| Temperature(色温度) | 1,700〜12,000 K | 朝夕の暖色〜昼の白色 |
| Ambient Light(環境光) | 0.00〜2.00 | 空からの回り込み光。日陰の明るさ |
ソース: Ambience Settings(Twinmotion公式)(2026年7月現在)
太陽の強さ・サイズ・色温度
Sun の各スライダーは、それぞれ光のちがう性質を受け持ちます。Intensity は明るさ、Size は見かけの大きさ、Reflection はハイライトの強さ、Temperature は光の色みを決めます(Ambience Settings(公式)、2026年7月現在)。
Size を上げると影のふちがやわらかいソフトシャドウ(輪郭がぼける影)になり、下げると輪郭がくっきりします。日影スタディでは影の境界を明確に読みたい場面が多いため、Size をやや控えめにすると影の届く範囲が判別しやすくなります。色温度は下げると朝夕の暖色に、上げると昼の白い光に近づくので、狙う時間帯の空気感に合わせて動かします。
日陰の明るさは空とセットで見る
日陰が暗すぎて影の中が読めないときは、Ambient Light で日陰側の明るさを補います。空の色みやかすみは Turbidity(大気の濁り、0.0〜1.0)や Atmosphere Density(大気密度、0.0〜20.0)で調整でき、これらは近年の版で拡充された動的な空の制御です(Ambience Settings(公式)、2026年7月現在)。
画全体の明るさや色みを整えるカメラ側の露出調整は、別のテーマとして分けています(Twinmotionの露出・ホワイトバランス調整|画を整えるカメラ設定)。空そのものをHDRIやボリュメトリック雲で作り込みたい場合はTwinmotionのHDRIスカイとボリュメトリック雲|空作りの実践で解説しています。この記事の空は、太陽に付随する明るさの調整までに留めます。
日影・日照スタディを設計検討に使う
地図で敷地を合わせ、季節と時刻を振り、影の品質を高精度に切り替えれば、隣地や室内への影を実条件で読めます。見栄えを狙って動かした光と、検討のための正確な光は分けて考えるのが要点です。影の品質は次の2方式から選べます。
| 影の品質 | 主な設定項目 | 特徴 |
|---|---|---|
| Standard(標準) | View Distance 10〜5,000 m / Bias 0.10〜1.00 | 表示範囲とにじみ補正を調整。軽快 |
| Accurate(高精度=Virtual Shadow Maps) | Sun Bias / Lights Bias −3.00〜3.00 | 細部まで正確。負荷は上がる |
ソース: Ambience Settings(Twinmotion公式)(2026年7月現在)。影設定は Standard / Lumen(標準的なリアルタイム描画モード)で有効です。
朝・昼・夕と季節を振って影を読む
Location と North offset を合わせたうえで Month と Time of Day を振ると、影の伸び方を条件ごとに比較できます。隣地への越境影や南向き居室への日照など、実際の設計課題に沿って時刻と季節を選ぶと判断がぶれません。たとえば3階建て住宅の計画で、冬至の午後2時に北側の隣地へ影がどこまで届くかを確認し、軒の出や建物の位置を調整する、といった使い方ができます。
見栄え優先で時刻を動かした光は、実際の日影とはかぎりません。設計検討では実座標と実際の季節・時刻を優先します。ここで一度断っておきたい点があります。Twinmotionの日影は、設計検討や近隣配慮の合意形成を可視化するのに向いています。一方で日影規制の適合判定(証明用の日影図)は、専用の日影解析ソフトで行うのが前提です。Twinmotionの絵は、その法的な判定を代替するものではありません。
影の品質を上げて正確に見る
スタディの信頼性を上げたいときは、影を Standard から Accurate(Virtual Shadow Maps、高精度な影の描画方式)に切り替えると細部まで正確になります。Standard は View Distance 10〜5,000 m と Bias 0.10〜1.00、Accurate は Sun Bias / Lights Bias が −3.00〜3.00 の範囲で調整できます(Ambience Settings(公式)、2026年7月現在)。
Accurate は Standard より正確で、Path Tracer(物理的に正確な高品質モード)での影とも整合する設計です(Twinmotion公式ニュース)。この結果、リアルタイムで詰めた日影が最終出力でもズレにくく、スタディで出した結論をそのまま提出用の画にできます。Path Tracer とリアルタイムモードの使い分けはTwinmotionの画作り・出力・Path Tracerガイドで解説しています。
ホストと連動して検討ループを速くする
Revit や Archicad、SketchUp などのホストとは、Datasmith Direct Link(ホストのCAD/BIMとライブ同期するしくみ)でつながり、設計変更を Twinmotion 側へ反映できます(Datasmith Direct Link(Epic公式)、2026年7月現在)。平面や高さを直したらすぐ日影を見直す、という設計変更から確認までのループが速く回ります。
実座標の太陽を保ったまま複数の設計案を比較できるので、近隣配慮の検討や、施主・近隣への説明資料づくりに向いています。たとえば「軒を30cm伸ばした案」と「窓位置を東へずらした案」を切り替えながら、冬至の日照が確保できるほうを画で見せて合意を進める、といった進め方ができます。
太陽・日影設定についての編集部の所感
編集部が公式ドキュメントと公式ニュースを読み解くかぎり、Twinmotionの太陽まわりは「即時性」と「実座標」の2つに強みがあります。時刻スライダーを動かすと太陽高度と影がその場で更新される設計になっていて、書き出しを待たずに「何時の光が映えるか」を画面上で比べられます。地図で敷地を指定してから光を作る流れにすると、日影の確認とプレゼン用の1枚づくりが地続きになり、検討と表現を別作業に分けずに進められます。
一方で公式ドキュメントが繰り返し触れているのは、North offset を合わせないと影が現実とずれるという点です。ここを飛ばして時刻だけ動かしても、見た目はそれらしくなっても日影の根拠にはなりません。だからこそ、最初の場所・方位合わせがもっとも大切だといえます。影が読みにくいときは影品質を Accurate に切り替えると細部が締まり、隣地への影の届き方を説明する説得力が高まるとされています。
無料で始められて実座標の太陽を扱える点は、設計初期の日照検討を軽い気持ちで回せる強みです。ただし法的な日影規制の判定は専用ソフトの領分なので、Twinmotionは「合意形成のための可視化」と割り切ると、その速さを素直に活かせます。
太陽・日影設定がこれからの設計コミュニケーションを変える
太陽と日影を実座標で扱えるようになると、設計の説明の仕方が変わります。これまで日影図の読み方に慣れていない施主や近隣に対して、平面図と数字だけで説明していた場面を、実際の影が動く画で見せられるようになります。
日影を扱えなかったときは、日照の良し悪しを言葉と経験則で伝えるしかありませんでした。実座標の太陽で朝・昼・夕の影を並べて見せられると、「冬でもこの時間まで居室に日が入ります」という説明が、その場の1枚で伝わります。設計者にとっては、案を比較しながら日照を確保する検討が早まり、打ち合わせの中でその場で方針を決めやすくなります。
この使い方に慣れた先では、天候や季節の演出、空の作り込み、露出の追い込みを重ねていけます。すると検討用の正確な光と、提案を後押しする映える光を、同じデータから作り分けられます。太陽の位置決めは、そのすべての土台になる最初の一歩です。
まとめ
Twinmotionの太陽は Dynamic sky で決まり、Location(地図)で敷地を指定し North offset で真北を合わせれば、実座標の太陽位置を再現できます。場所と方位を最初にていねいに合わせることが、正確な日影スタディの前提になります。
Time of Day と Month を振り、影の品質を Accurate(Virtual Shadow Maps)に切り替えれば、隣地への越境影や室内への日照を実条件で検討できます。Datasmith Direct Link を使えば設計変更から日影の再確認までのループが速く回り、近隣説明や合意形成の資料づくりに活かせます。見栄えの光と検討の光を切り分けることが、日影・日照スタディを設計に役立てる要点です。