TwinmotionのHDRIスカイとボリュメトリック雲|空作りの実践
TwinmotionのHDRIスカイとボリュメトリック雲|空作りの実践
建築パースの印象は、空でその大半が決まります。同じ建物でも、青空の抜けた昼と厚い雲の夕方では、まったく別の作品に見えるからです。Twinmotion(Epic Games製の無料リアルタイムレンダラー)には、この空を作る方法が2つ用意されています。実写の空を1枚読み込んで光ごと決める「HDRIスカイ」と、太陽・空・雲を自分で組み立てる「Dynamic sky」です。
この記事では、HDRIスカイによるライティングと、2025.1で導入された本物の立体的なボリュメトリック雲(実写のように厚みを持つ立体的な雲)の設定と使い分けを、公式仕様に沿って解説します。太陽の位置合わせや日影スタディといった正確な日照の話はTwinmotionの太陽・空・地理座標設定|正確な日影・日照スタディにゆずり、ここでは空そのものの見た目づくりに集中します。内容は Unreal Engine 5.5 を基盤とする Twinmotion 2025.1 を前提にしています(2026年7月10日時点)。
Twinmotionの空作りは「Dynamic sky」と「HDRI」の2モードで決まる
空作りの出発点は、どちらのライティングモードで作るかを先に決めることです。Twinmotion 2025.1では環境設定(Env)タブが再設計され、「Dynamic sky」と「HDRI」という2つのモードがはっきり分かれました。選んだモードによって使える設定が切り替わるため、ここを間違えると欲しい設定が画面に出てこない、という迷いが生まれます(Twinmotion 2025.1 Release Notes、2026年7月10日確認)。
Dynamic skyモードでできること
Dynamic skyは、太陽(Sun)・空(Sky)・雲(Clouds)の設定を自分で操作して空を組み立てるモードです。時間帯を動かせば太陽の高さと影が変わり、雲量を上げれば空が曇っていきます。あとで解説するボリュメトリック雲が使えるのは、このDynamic skyモードだけです。時間の変化やアニメーションで空を動かしたいなら、こちらを選びます。
HDRIモードでできること
HDRIモードは、360度の実写光情報を持つHDRI(High Dynamic Range Image)を1枚読み込み、その画像に含まれる光と反射で一気にライティングを決めるモードです。空の色・明るさ・映り込みが写真そのものの品質で得られるため、リアルな質感を最短で出せます。空・屋内・屋外・スタジオといった環境が用意されており、目的に合うものを選ぶだけで下地が整います。
どちらを選ぶか|用途別の使い分け
選び方はシンプルで、空を動かしたいか、写真品質の光を最速で欲しいかで分かれます。雲が流れる外観アニメーションや、時間帯を変えた検討をしたいならDynamic skyが向いています。反対に、静止画で写真のようなリアルさを短時間で出したいならHDRIが手早いです。どちらが上ということはなく、案件の求める絵で決めるのが実務的です。
HDRIスカイでリアルな光と映り込みを作る
HDRIスカイの強みは、空・光・反射がまとめて1枚の画像で決まることです。太陽光の向きや空の色を個別に調整しなくても、読み込んだ瞬間に写真品質の環境光が建物に回り込みます。ガラスや金属の映り込みも、そのHDRIに写っている風景がそのまま反射に使われます。
SkydomeとBackdropの違い
HDRIには、光と反射に使う「Skydome」と、背景としても見せる「Backdrop」の2つの見せ方があります。Skydomeは回転だけができる球状のドームで、位置の移動や拡大縮小はできません。光と映り込みを担う役割に特化しています。一方のBackdropは半球状のドームで、回転に加えて拡大縮小ができ、地面付きで背景の風景として見せられます。カメラに空だけでなく地平線や遠景を写し込みたいなら、Backdropが向いています(Ambience Settings、2026年7月10日確認)。
明るさ・回転・ライティング量を整える
HDRIを読み込んだあとは、3つの数値で全体を整えます。
| 設定 | 範囲 | 役割 |
|---|---|---|
| Intensity | 0.00〜100.00 | HDRI全体の明るさ |
| Rotation | 0°〜360° | 空を回して太陽の向きを合わせる |
| HDRI affects lighting | 0.00〜2.00 | 建物に落ちる光の強さ |
ソース: Ambience Settings(2026年7月10日確認)
最も効くのがRotationです。HDRIの中には太陽(明るい部分)が写っており、これを回すと影の向きが変わります。建物の正面に光を当てたいなら、Rotationで明るい方向を正面に持ってくると、狙った陰影が作れます。数値を触る前にこの回転で光の向きを決めておくと、そのあとの調整が楽になります。
Directional lightで影の向きを足す
HDRIの光はやわらかく回り込む反面、くっきりした直射の影が出にくいことがあります。そこで使うのが、HDRIモードで併用できるDirectional light(方向を持った疑似太陽の光源)です。「Match HDRI」を有効にすると、HDRIに写った太陽の位置に合わせて明るさ・位置・光源の大きさが自動で設定されます。手動で追い込みたい場合は、Intensity(0.00〜10.00)とRotation Z/X(0°〜360°)で影の濃さと向きを調整できます。外観パースでシャープな建物の影が欲しいときに、この一手間が効いてきます。
ボリュメトリック雲で本物の立体的な空を作る
ボリュメトリック雲は、Twinmotion 2025.1で加わった、厚みと立体感のある本物の雲です。従来の平面的な雲と違い、地面に影を落とし、風で流れ、太陽の光を透過します。Unreal Engine 5.5基盤への更新でパストレーシングやLumen(Unreal Engineのリアルタイム間接光の仕組み)が改善され、雲を含む空全体の光の回り方が自然になりました。設定はDynamic skyモードのCloudsセクションにまとまっています。
雲量と高度を決める
雲作りで最初に触るのは、雲の量と高さの2つです。Cloudスライダー(0〜100%)で空をどれだけ雲が覆うかを決め、Height(250〜4000m)で雲の高度を設定します。雲量を10〜30%程度に抑えると青空に浮かぶ点在した雲になり、70%以上まで上げると空一面が曇った表情になります。Heightを低くすると雲が近く大きく見え、高くすると遠景の薄い雲になります。この2つで空の骨格が決まるので、細かい形の調整に入る前に決めておくと迷いません。
雲の形を作り込む
雲量と高度が決まったら、形と質感を作り込みます。それぞれの設定が雲のどこに効くかを押さえておくと、狙った空に近づけやすくなります。
| 設定 | 範囲 | 効果 |
|---|---|---|
| Scale | 0.00〜1.00 | 雲1つの大きさ(低いほど小さい雲) |
| Vertical extent | 0〜100% | 雲の縦方向の高さ |
| Puffiness | 0〜100% | もこもこした形の細かさ |
| Density | 0〜100% | 雲の濃さ(水滴の密度) |
| Flat bottom | 0〜100% | 雲底の平らさ |
| Cirrus clouds | 0〜100% | 高層のすじ雲の量 |
| Color | 任意 | 雲の色味の調整 |
ソース: Ambience Settings(2026年7月10日確認)
夏の入道雲のような立体感を出したいなら、Vertical extentとPuffinessを高めにし、Flat bottomを上げて雲底を平らにそろえると、それらしくなります。反対に、薄く広がった秋の空を作るなら、Densityを下げてCirrus cloudsを足すと、高いすじ雲の表情が出ます。数値の意味がわかっていれば、空の種類ごとに再現の見当がつきます。
風で雲を流す・プリセットを使う
ボリュメトリック雲は静止画だけでなく、動く空にも使えます。「Affected by wind」を有効にすると雲が風で流れ、Speed factor(0.00〜5.00)で流れる速さを調整できます。風そのものの設定は季節・天候とつながっているため、雨や雪と合わせて空全体を演出したいときはTwinmotionの天候・季節設定|雨・雪・風・季節で表現を変えると合わせて調整すると整います。
雲がなかなか決まらないときは、用意されたプリセットを起点にするのが早道です。いくつかの雲の形がプリセットとして用意されており、そこから微調整すると、ゼロから作るより短時間でまとまります。作り込んだ設定は自分のプリセットとして保存して、別の案件で再利用できます。
HDRIと立体雲は同時に使えない|モードの使い分け
ここで押さえておきたいのが、ボリュメトリック雲はDynamic skyモード専用で、HDRIモードでは使えないという点です。HDRIモードの空はHDRI画像に写った雲がそのまま出るため、雲の量や形を後から数値で変えることはできません。この制約を知らないと、HDRIで光を決めたあとに雲を動かそうとして設定が見つからず、手が止まります。
立体的な雲が欲しいならDynamic sky
動く立体雲と、その雲が落とす影が欲しいなら、選ぶのはDynamic skyです。HDRIの写真的な光に未練が残るかもしれませんが、Dynamic sky側にもSky設定にTurbidity(大気の濁り具合)とAtmosphere density(0.0〜20.0)があり、空の色や光の抜け方を追い込めます。これらを調整すると、HDRIに頼らなくても澄んだ空やかすんだ空を作り分けられます。雲の自由度を取るか、HDRIの光を取るかの選択になります。
太陽位置と日影の正確さは別テーマ
空の見た目とは別に、設計検討で正確な太陽位置や日影が必要になる場面があります。地理座標を使った正確な日照スタディや、時期・時刻ごとの日影の検証は、空作りとは目的が異なります。この正確な日照の作り方はTwinmotionの太陽・空・地理座標設定|正確な日影・日照スタディで解説しています。空の表情はこの記事で作り、日照の正確さはそちらで詰める、という役割分担になります。
空作りを実践するときの勘所|編集部の所感
公式ドキュメントを読み込んだ編集部の所感として、空作りでつまずきやすい点を3つ挙げます。いずれも仕様を知っていれば避けられるものです。
1つ目は、Sky設定のTurbidityとAtmosphere densityの存在です。雲や太陽ばかり触りがちですが、この2つで空の色の抜けと光の散り方が変わります。空が思ったより白っぽい、あるいは濁って見えるときは、まずここを見直すと解決することが多いはずです。
2つ目は、雲のHeightです。同じ雲量・同じ形でも、高度を変えるだけで見え方が大きく変わります。外観に迫力を出したいのに雲が遠く貧弱に見えるなら、Heightを下げて雲を近づけると印象が変わります。
3つ目は、プリセットの持ち出しです。作り込んだ雲のプリセットは端末のローカルに保存される仕様で、別のPCで開くと名前が「Custom」に戻ることがあります。チームで共有する前提のときは、設定値そのものを記録に残しておくと安心です。Twinmotion本体の全体像はTwinmotionとは?Unreal Engineベースの建築レンダラー徹底ガイドで解説しています。
空作りの活用シーンと次の一歩
作った空は、そのまま建築プレゼンの説得力になります。ここでは実務での使いどころと、空の次に整えるべき設定を挙げておきます。
活用シーン|住宅外観と夕景で映える
ボリュメトリック雲がとくに効くのは、住宅の外観パースと夕景です。たとえば南向きの住宅外観で、立体的な雲が屋根や壁にやわらかい影を落とすと、のっぺりしがちな面に陰影の変化が生まれます。夕景では、雲の色をわずかに暖色へ振り、Densityを上げて厚みを出すと、夕日に染まる空が作れます。アニメーションで雲を流せば、静止画にはない時間の流れを見せられます。HDRIスカイは、屋内から窓の外に写り込む空を写真品質で見せたい内観パースで力を発揮します。
次の一歩|露出と天候をそろえる
空が決まったら、次は画全体の明るさをそろえる工程です。せっかくの空も、露出が合っていないと白飛びや暗さで台無しになります。カメラの露出とホワイトバランスの整え方はTwinmotionの露出・ホワイトバランス調整|画を整えるカメラ設定で解説しています。光の当て方そのものを基礎から確認したいならTwinmotionのライティング基本|自然光と人工光の考え方から入ると、空作りの理解も深まります。
まとめ
Twinmotionの空作りは、実写の光を1枚で決めるHDRIスカイと、太陽・空・雲を自分で組み立てるDynamic skyの2モードで考えると整理できます。写真品質の光を最速で欲しいならHDRI、動く立体雲や時間変化が欲しいならDynamic skyという選び分けが基本です。
ボリュメトリック雲はDynamic skyモード専用で、Cloud(雲量)とHeight(高度)で骨格を決め、Puffiness・Density・Vertical extentなどで形を作り込みます。HDRIモードでは雲を数値で動かせないという制約も、先に知っておくと迷いません。空の色はSky設定のTurbidityとAtmosphere densityで追い込めます。
空が決まったら、露出・ホワイトバランスをそろえ、天候や季節と連動させることで、空作りが1枚のパースとして完成します。まずは無料のTwinmotionでプリセットの雲を呼び出し、HeightとCloudを触るところから始めてみてください。
建築知識の教科書