Lumionのムービー制作入門|キーフレームとクリップの基本
Lumion(建築・土木向けのリアルタイムレンダリングソフト)で静止画のパースは作れるようになったのに、いざ動く映像を作ろうとすると手が止まる。そんな読者は少なくありません。動画は静止画を1枚ずつ描き足していくもの、と身構えてしまうと、途端に難しく感じてしまいます。
でも、Lumionのムービー制作はもっとシンプルです。カメラの通過点(キーフレーム)をいくつか置けば、その間の動きはソフトが自動でつないでくれます。この発想さえつかめば、Lumion ムービー 作り方の第一歩はすぐに踏み出せます。
この記事では、Movieモード(動画を作るための画面)の基本部品であるクリップ・キーフレーム・タイムラインの仕組みと、最初の1本を通しで作る流れを解説します。解像度や画質などの細かい出力設定、決まった動きのカメラパス、質感の演出といった発展的なテーマは、それぞれ専用の記事に送りながら進めます。
Lumionのムービー制作は「通過点を決めるだけ」で始められる
ムービー制作の核心は、カメラの通過点をいくつか置けば、その間の動きをLumionが自動で補ってくれる点にあります。静止画を1枚ずつ並べる必要はありません。この発想を先に押さえておくと、あとの操作が一気に理解しやすくなります。
静止画(Photoモード)と動画(Movieモード)の違い
LumionにはPhotoモードとMovieモードという2つの書き出し方があり、役割が違います。Photoモードは1つの視点を1枚の画像として書き出すモード、Movieモードはカメラの動きを連続した映像として書き出すモードです。動画を作りたいときはMovieモードを使う、とまず覚えておけば十分です。
とはいえ、この2つは切り離された別物ではありません。実は地続きです。Movieモードで作ったカメラの通過点は、そのまま静止画として書き出すこともできます(書き出し時にImage Sequence → Frame Range → Keyframesを選ぶと、各通過点を画像として出力できます)。
これは初心者にとって心強いポイントです。動画は静止画のまったく別の技術ではなく、静止画の延長線上にあると分かるからです。すでにPhotoモードで構図を決められる人なら、その構図を動きの起点や終点に使うだけで、動画づくりに入っていけます(出典:Lumion Support Center、2026年7月3日確認)。
キーフレームとは(通過点の記録)
キーフレームとは、タイムライン上の特定の位置に、そのときのカメラの位置や向きを記録した「通過点」のことです。ここにカメラを置く、と印を打つイメージだと考えると分かりやすいです。
大事なのは、キーフレームとキーフレームの間をLumionが自動で補間(となりあう通過点の間をなめらかにつなぐ計算)してくれることです。つまり、すべての瞬間のカメラ位置を自分で指定する必要はありません。要所だけ決めれば、残りはソフトが埋めてくれます。
だから、動きのある映像を作るのに必要なキーフレームは、最低2つで足ります。開始の1つと終了の1つ。この2点さえ置けば、その間をカメラが移動する映像になります。最初はこの最小構成から始めるのが、いちばん迷いません(出典:Lumion Support Center、2026年7月3日確認)。
この記事で扱う範囲と扱わない範囲
この記事であつかうのは、Movieモードの基本部品(クリップ・キーフレーム・タイムライン)と、最初の1本を通しで作る流れです。動画づくりの土台を、ここで一度に固めます。
一方で、より専門的なテーマは扱いません。読者が目的に応じて深掘りできるよう、それぞれ専用の記事に送ります。決まった動き(回り込みやウォークスルー)を手早く作りたいならLumionのカメラパス・プリセットでウォークスルー動画を作る方法、手持ち撮影やドローンのような自然な揺れを足したいならLumionの手持ち・ドローン風カメラ演出のコツが向いています。
書き出しの解像度や画質を詰めたいならLumionのレンダリング出力設定完全ガイド、色味や雰囲気を加えたいならLumionのエフェクト(Styles)活用ガイドで解説しています。まずはこの記事で基本をつかんでから、必要なものだけ読み足していくのがおすすめです。理由は、土台の仕組みが分かっていないと、どの発展テクニックが自分に必要かを判断できないからです。
Movieモードの3つの基本部品:タイムライン・クリップ・キーフレーム
Movieモードの画面は、突き詰めると3つの部品でできています。時間の物差しである「タイムライン」、映像のひとまとまりである「クリップ」、そして通過点である「キーフレーム」です。この3つの関係が分かれば、どのボタンが何のためにあるのかが見えてきます。
タイムライン(時間の物差し)
タイムラインとは、映像の時間軸を表す物差しです。何秒地点のカメラか、を指定するために使います。再生ヘッド(いま何秒地点を見ているかを示す印)を左右に動かすと、その位置がタイムライン上で決まります。
なぜタイムラインを先に理解する必要があるかというと、キーフレームはこのタイムライン上の位置に紐づいて記録されるからです。3秒地点のキーフレーム、8秒地点のキーフレーム、というふうに、時間と一緒に覚えられます。
だから基本操作の順番は決まっています。先に再生ヘッドを目的の位置へ動かし、そこでキーフレームを作る。この順番を守れば、意図した秒数に通過点を置けます。逆にすると、どこに記録されたのか分からなくなりがちです。
クリップ(映像のひとまとまり)とクリップエディタ
クリップとは、1つのカメラの動きを収めた映像の単位です。1本の完成ムービーは、このクリップを組み合わせて作ります。カメラの通過点は、クリップの中に置いていきます(クリップの中身を編集する画面をClip Editorと呼びます)。
なぜクリップという単位があるのかというと、長い映像を場面ごとに分けて扱えるからです。たとえば住宅の建築パースなら、外観を回り込むクリップ、エントランスへ寄っていくクリップ、室内を進んでいくクリップ、というように役割で分けられます。1つの長い動きを1本に詰め込むより、場面ごとに区切ったほうが、あとで調整しやすくなります。
書き出すときも柔軟です。1つのクリップだけを書き出すこともできますし、複数のクリップをつないだムービー全体(Entire Movie)としてまとめて書き出すこともできます。まず短いクリップ1本で試してみて、慣れてきたらクリップを足していく、という進め方ができます(出典:Lumion Support Center、2026年7月3日確認)。
キーフレーム操作のボタン(作成・移動・削除)
キーフレームを扱う操作は、作成・移動・削除の3つを覚えれば足ります。この3つで、通過点の追加とやり直しがひととおりできるようになります。
作成はCreate Keyframeで行います。再生ヘッドをタイムライン上の目的の位置へ動かし、カメラアングルを決めてこのボタンを押すと、その瞬間のカメラの状態が通過点として記録されます。移動はPrevious Key(前の通過点へ)とNext Key(次の通過点へ)で、作成済みのキーフレーム間を行き来して確認や修正ができます。
置いた通過点が不要になったら、Remove Keyで削除します。この操作が分かっていると、失敗しても気軽にやり直せるので、最初のうちほど安心して手を動かせます(出典:Lumion Support Center、2026年7月3日確認)。
最初の1本を作る:2つのキーフレームで動きを生む
仕組みが分かったら、手を動かすのがいちばんの近道です。ここでの目標は、開始と終了の2つのキーフレームだけで、カメラがA地点からB地点へ滑らかに移動する最小のムービーを作ること。この最小構成が、あらゆる動画の土台になります。
STEP 1:開始キーフレームを置く
最初の通過点、つまり映像の始まりの位置を決めます。始まりが決まらないと、そこからどこへ動くかも決められないからです。
Movieモードで空のクリップを用意し、再生ヘッドを先頭(0秒地点)に合わせます。そのうえで、映像の最初に見せたいカメラアングルを決めます。住宅パースなら「建物の正面を少し離れた位置から見た構図」といった、つかみになる絵を選ぶとよいでしょう。アングルが決まったら、Create Keyframeを押して記録します。これで開始の通過点が完成です。
STEP 2:終了キーフレームを置いて自動補間させる
2つ目に決めるのは、映像の終わりの位置です。開始と終了の2点がそろえば、その間の動きは自動で生まれます。
再生ヘッドを終わりの位置(たとえば8秒地点)へ動かします。そこで、到達させたいカメラアングルへ視点を動かします。先ほどの正面の構図から、エントランス前まで寄っていく絵にしたいなら、その最終的な見え方までカメラを動かしてください。決まったら、もう一度Create Keyframeを押します。
すると、この2点の間はLumionが自動で補間し、A地点からB地点へカメラが移動する映像になります。あとは再生して動きを確認しましょう。速すぎたり遅すぎたりする場合は、クリップの長さ(duration=そのクリップの再生時間)を変えると、同じ移動でも速度を調整できます。なお、回り込みのような決まった動きは、手動で置くほかにプリセットのカメラパスを使う近道もあります(詳しくはLumionのカメラパス・プリセットでウォークスルー動画を作る方法で解説しています)。
STEP 3:確認して書き出す入口へ進む
動きが決まったら、あとは書き出しです。ここでは書き出しの入口までを押さえます。
再生プレビューで問題がなければ、クリップ単体、またはムービー全体として書き出しに進みます。書き出しを選ぶと、解像度や画質、フレームレート(1秒あたりの画像枚数)を決める画面に入ります。これらの数値をどう設定すると、きれいさとファイルサイズや書き出し時間のバランスがどう変わるのか。この部分は選択肢が多く、目的によって最適解が変わるため、Lumionのレンダリング出力設定完全ガイドで詳しく解説しています。まずは初期設定のまま短い1本を書き出してみて、書き出しの流れそのものに慣れるのがおすすめです。
動きを整える:つなぎ・速度・効果のキーフレーム
2点だけの移動が作れたら、次は見やすさを整える番です。クリップ同士のつなぎ方、速度の緩急、そして効果にもキーフレームが使えること。この3つを押さえると、映像がぐっと自然になります。
複数クリップのつなぎ方
1本の長いムービーは、複数のクリップをつないで作るのが基本です。1つの長い動きを1クリップに詰め込むより、場面ごとにクリップを分けたほうが調整しやすいからです。途中で「室内のシーンだけ少し長くしたい」と思ったとき、そのクリップだけをいじれば済みます。
つなぐときに便利なのが、カメラの通過点をクリップ間でコピーできる機能です。あるクリップの終わりの構図を、次のクリップの始まりに引き継ぎたいときに役立ちます。通過点をコピーして起点をそろえれば、クリップの切れ目でカメラがガクッと飛ぶのを防げます。場面が変わっても視点がなめらかにつながるので、映像全体の印象がまとまります(出典:Lumion Support Center、2026年7月3日確認)。
速度の緩急(Ease in / out)
同じ移動でも、速度の付け方で見え方が大きく変わります。キーフレーム間の速度は、一定にもできますし、加速や減速をつけることもできます。
Lumionでは、なめらかに加速・減速するEase in/out(smooth)と、一定速度で動くEase in/out(linear)を使い分けられます。動き出しと止まりをなめらかにすると、映像から素人っぽさが消えます。人の目は、いきなり全速力で動き出してピタッと止まる動きを不自然に感じるためです。動画の始まりと終わりをふわっと加速・減速させるだけで、プロが撮ったような落ち着きが出ます(出典:Lumion公式ガイド、2026年7月3日確認)。
カメラ以外にもキーフレームは使える(効果の値も動かせる)
キーフレームはカメラ専用の仕組みではありません。効果(エフェクト)のスライダーの値にも打てます。ここが分かると、表現の幅が一気に広がります。
たとえばタイムラインの位置ごとに効果の値を記録しておけば、時間とともにその効果が変化する映像になります。間はカメラのときと同じく、Lumionが自動で補間してくれます。太陽の位置が動いて影が伸びていく、雲がゆっくり流れる、といった演出も、同じキーフレームの考え方で作れます。
つまり「通過点を置けば間は自動でつながる」という原理は、カメラにも効果にも共通です。この共通ルールを1つ覚えるだけで、応用が効くわけです。色味やスタイルを使った質感の演出そのものについては、Lumionのエフェクト(Styles)活用ガイドで解説しています(出典:Lumion Support Center、2026年7月3日確認)。
Lumionのムービー制作を編集部が触ってみました
ここまでの仕組みを、編集部が実際に触ってみました。公式ドキュメントを追いながら手を動かしてみて、初めての人がつまずきやすい点を整理します。
正直にお伝えすると、最初に迷ったのは「どこにキーフレームが記録されたのか分からなくなる」場面でした。再生ヘッドを先に動かしてからCreate Keyframeを押す、という順番を意識するまで、意図しない秒数に通過点が増えてしまうことがありました。逆に言えば、この順番さえ体で覚えれば、操作は驚くほど単純になります。開始と終了の2点を置いて再生ボタンを押し、カメラがすっと動いた瞬間の手応えは、静止画だけを作っていたときには味わえないものでした。
編集部の所感としては、Lumionのムービー制作でいちばん大切なのは、多機能を一度に覚えようとしないことです。まず2キーフレームの最小構成を1本作りきる。それだけで「動画は静止画の集合を手で描くもの」という思い込みが外れます。ここを越えれば、あとは速度や効果を1つずつ足していくだけです。難しさの正体は機能の多さではなく、最初の1本を完成させる前にあれこれ手を出してしまうことにありました。
活用シーン|基本を押さえた先の次の一歩
基本の2キーフレームが作れるようになると、実務でできることが具体的に見えてきます。ここでは、身につけたムービー制作の基本が現場でどう活きるか、そして次に何を学ぶとよいかを整理します。
たとえば工務店やハウスメーカーの打ち合わせで、静止画のパースに加えて、玄関から入って廊下を進み、リビングに出るまでの短い動画を見せられたら。お客さまは、写真だけでは伝わりにくい部屋のつながりや広がりを、その場でつかめます。分譲マンションの外観を建物の周りをぐるっと回って見せる映像も、2キーフレームの移動を組み合わせるだけで土台が作れます。
次の一歩は、目的に合わせて発展テクニックを1つずつ足していくことです。決まった動きを手早く作りたいならLumionのカメラパス・プリセットでウォークスルー動画を作る方法、映像に臨場感を出したいならLumionの手持ち・ドローン風カメラ演出のコツ。書き出しの品質を上げたいならLumionのレンダリング出力設定完全ガイドへ進むと、この記事の基本がそのまま土台として活きてきます。
まとめ:Lumionムービー制作の基本と次に読むべき記事
Lumionのムービー制作は、通過点(キーフレーム)を数個置けば、間はソフトが自動でつないでくれる、というシンプルな原理でできています。この土台さえ持てば、あとは目的に合わせて演出や出力を足していくだけです。
要点を3つに絞ると、次のとおりです。
- 動画は静止画の延長です。カメラの通過点を置けば、間はLumionが自動で補間します。
- 基本部品は3つ。時間の物差しのタイムライン、映像の単位のクリップ、通過点のキーフレームです。
- 最小構成は開始と終了の2キーフレーム。まずここから始め、慣れたらつなぎ・速度・効果を足します。
最初の1本を作りきることが、いちばんの上達法です。2つのキーフレームで動く映像を1本完成させれば、動画づくりの心理的なハードルは一気に下がります。そこから先は、自分の目的に合わせて記事を選び、演出や出力を1つずつ深めていってください。
建築知識の教科書