Lumionのカメラパス・プリセットでウォークスルー動画を作る方法|Orbit・Dolly・Pan/Tilt活用ガイド
Lumion(建築・土木向けのリアルタイムレンダリングソフト)でウォークスルー動画を作るとき、カメラ位置を手作業で1点ずつ置いていくと、動きがガクガクして酔いそうな映像になりがちです。原因は、置いた点と点のあいだをカメラが不規則につないでしまうことにあります。ここで役立つのが、円運動や直線移動といった「決まった動き」を数値設定だけで作れるプリセットカメラパス(Lumion カメラパス プリセット)です。
この記事では、Lumion 2023以降で追加されたプリセットカメラパス(Orbit・Dolly・Pan/Tilt・Follow Object)を使って、建築ウォークスルー・フライスルー動画を滑らかに仕上げる手順を、初心者向けにまとめました。
カメラを手動で置くキーフレームの基礎はLumionのムービー制作入門|キーフレームとクリップの基本で解説しています。実写のような手ブレ・浮遊感を足したいときはLumionの手持ち・ドローン風カメラ演出のコツへ進んでください。この記事は、その中間にある「規則的で滑らかなカメラワーク」に絞って解説します。
プリセットカメラパスとは何か|手動キーフレームとの違い
プリセットカメラパスは、円運動や直線移動などの「決まった動き」を数値設定だけで作れる機能です。手作業でカメラを1点ずつ置く方式(キーフレーム)とちがい、動きが数式で決まるため、少ない手間で規則的で滑らかな映像を作れます。「なぜ滑らかになるのか」というと、カメラの通り道をLumionが計算で描いてくれるので、点と点のあいだが不規則にブレないからです。
プリセットカメラパスでできること
プリセットカメラパスには、動きの種類ごとに4つのモードがあります。Orbit(対象を円周で回り込む)、Dolly(直線でスムーズに移動する)、Pan/Tilt(定点で首を振る)、Follow Object(動く対象を追いかける)の4種を、それぞれ数値で定義できます(出典: Lumion Support「How do Camera Path presets work?」、確認日2026-07-03)。
この4種は、手動でカメラを置くキーフレーム方式と併用できます。プリセットで大きな動きの骨格を作り、細かい位置合わせだけキーフレームで足す、という組み合わせが実務では扱いやすいです。基礎となるキーフレームの置き方はLumionのムービー制作入門|キーフレームとクリップの基本で解説しています。
建築での使いどころも具体的にイメージしておくと選びやすくなります。建物外観を1周ぐるりと見せたいときはOrbit、玄関アプローチを進んで見せたいときはDolly、決まった場所からファサード(建物の正面)を見上げたいときはPan/Tiltが向きます。
利用できるバージョンと前提
プリセットカメラパスは、Lumion 2023で追加された機能です(出典: Lumion Support「How do Camera Path presets work?」、確認日2026-07-03)。それより前のバージョンには入っていないため、まず自分が使っているLumionのバージョンを確かめておくと安心です。
この機能は、ムービーモード(動画を作るための編集モード)のクリップ(動画をひとまとまりに区切った単位)に対して設定します。つまり、静止画1枚を作るモードではなく、動画作成の流れのなかで使う機能です。
なお、Standard版とPro版でこの機能に差があるかは公式で明示されていません。そのため断定は避けますが、自分のライセンスで使えるかどうかは、実際にムービーモードでメニューを開いて確認するのが確実です。
プリセットカメラパスの追加手順(共通操作)
どのプリセットも、追加の入口は共通です。ムービーモードで空のクリップを選び、「Add Camera Preset Path(カメラプリセットパスを追加)」から目的のプリセットを選びます。この共通の流れを先に押さえておけば、4種すべてに応用できます。
ムービーモードでクリップを用意する
最初に、動画を編集するための場所を用意します。Lumionでムービーモード(Movie Mode)に入り、まだ何も設定していない空のクリップ枠を選択してください。空のクリップとは、カメラの動きをこれから入れる「空のコマ」のようなものです。
クリップを選んだら、「Add Camera Preset Path(カメラプリセットパスを追加)」をクリックします。すると、Orbit・Dolly・Pan/Tilt・Follow Objectのどれを使うかを選ぶ画面に進みます(出典: Lumion Support「How do Camera Path presets work?」、確認日2026-07-03)。
Move Gizmoと左パネルの2つの調整方法
プリセットを選んだあとの位置調整には、2つのやり方があります。1つ目はMove Gizmo(画面に出る操作ハンドル)を直接ドラッグする方法で、位置・高さ・半径などを見た目で動かせます。感覚的に大まかな構図を決めたいときに向きます。
2つ目は左パネルで数値を直接入力する方法です。半径や角度を正確な値で決めたいときは、こちらのほうが狙いどおりに設定できます。実務では、Gizmoでざっくり動かして数値パネルで詰める、という両方の組み合わせが基本になります。
さらに、「現在のカメラ位置をマーク(mark current camera position)」という機能を使うと、いま画面に映っている視点を、そのまま始点や終点として取り込めます。実際に自分の目で「この角度から見せたい」という構図を作ってから、その位置を始点に登録できるので、狙った絵から逆算してカメラワークを組めます。
プレビューで動きを確認する
設定したカメラの動きは、書き出す前にかならず確認しておくと安心です。画面の視点モードを「Free Cam(自由に動かせるカメラ)」から「On Path(設定したパス上のカメラ)」に切り替えると、プリセットで組んだ動きをその場で再生して見られます。
ここでOn Pathの通し確認を習慣にしておくと、レンダリング(3Dの画面を動画として書き出す処理)に何十分もかけたあとで「動きが速すぎた」と気づく失敗を避けられます。まず動きを固め、それから書き出しに進む順番が結果的に最も速い、というわけです。
4つのプリセット別・設定のコツ
建築ウォークスルーでは、外観の見せ方に応じて4種を使い分けます。Orbitは回り込み、Dollyは直進、Pan/Tiltは定点の首振り、Follow Objectは動く対象の追従、という役割のちがいをつかめば、シーンに合ったプリセットをすぐ選べるようになります。
Orbit Path(対象を円周で回り込む)
Orbitは、注視点(カメラが見つづける中心の点)を中心にカメラが円を描いて回り込む動きです。建物外観を1周見せたいときや、中庭を主役にした見せ場に向きます。
調整する項目は、カメラの高さ、ターゲット(注視点)の高さ、円の半径、回転方向(時計回り・反時計回り)、回転数(revolutions)の5つです(出典: Lumion Support「How do Camera Path presets work?」、確認日2026-07-03)。半径は円の大きさ、回転数は何周まわるかを表します。
滑らかに見せるコツは、半径を建物のサイズに対して十分に広く取ることです。半径が小さいと建物のそばをぐるぐる回る速い動きになり、酔いやすくなります。回転数は1周未満から1周までに抑えると、ゆったりした落ち着いた映像になります。
Dolly Shot(直線でスムーズに移動する)
Dollyは、カメラが直線のレール上を移動する動きです。玄関アプローチを進む、廊下を前へ抜ける、ファサードの前を横に流す、といったウォークスルーの主役になる動きを作れます。
調整項目は、始点と終点(Gizmo・座標入力・現在位置マークで指定)、heading(カメラの向き)、pitch(カメラの俯仰角=上下の傾き)、進行方向の反転です(出典: Lumion Support「How do Camera Path presets work?」、確認日2026-07-03)。始点と終点を決めれば、そのあいだをカメラがまっすぐ動きます。
滑らかに見せるコツは、始点と終点の高さをそろえることです。高さがずれていると、床がゆるやかに波打つように見えて落ち着きません。人が普通に歩いたときの目線の高さ(おおよそ床から1.5メートル前後)に始点・終点をそろえると、歩いて進むような自然なウォークスルーになります。
Pan/Tilt Shot(定点で首を振る)
Pan/Tiltは、カメラの位置は動かさず、向きだけを変える動きです。Pan(パン)は水平方向の首振り、Tilt(ティルト)は垂直方向の首振りを指します。決まった場所から広い外観を見渡したり、建物を下から見上げたりする演出に向きます。
調整項目は、PanとTiltそれぞれの開始角度と終了角度です(出典: Lumion Support「How do Camera Path presets work?」、確認日2026-07-03)。開始と終了の角度を決めると、そのあいだをカメラの向きがなめらかに移り変わります。
滑らかに見せるコツは、角度の変化を控えめにすることです。1つのカットで水平と垂直の両方を大きく振ると、視界がめまぐるしく動いて酔いの原因になります。見せたい向きを1方向に絞り、少しずつ動かすほうが、落ち着いて見やすい映像になります。
Follow Object(動く対象を追いかける)
Follow Objectは、移動するオブジェクトをカメラが自動で追いかける動きです。歩く人や走る車の動線に沿ってカメラを動かしたいときに向きます。
調整項目は、追従する対象の選択、位置・向き、自動ターゲットの有効化です。追従できるのは、Move・Advanced Move・Mass Move・Phasingといったエフェクトで動かしたオブジェクトです(出典: Lumion Support「How do Camera Path presets work?」、確認日2026-07-03)。あらかじめ対象を動かす設定をしておかないと、追従先がない状態になり、カメラが何も追わなくなります。先に対象へMoveなどのエフェクトを設定してから、Follow Objectで選んでください。
1つ知っておきたい注意点があります。手持ちカメラエフェクトの「Look at Fixed Point(固定点を見る)」を有効にすると、プリセット側の注視設定が上書きされてしまいます。Follow Objectで対象を追いたいときは、この手持ちエフェクトの固定注視をオフにしておくと、狙いどおりに対象を追いかけてくれます。
滑らかなウォークスルーに見せるコツ
プリセットを置くだけでも動きは規則的になりますが、「滑らかさ」を決めるのは速度の付け方とクリップのつなぎ方です。ease in/out(イーズ)による加減速、クリップの長さ、カメラ位置の追加、この3点を押さえると、映像の印象が大きく変わります。
ease in/out(イーズ)で加減速をつける
動きの「入り」と「終わり」を自然にする調整です。クリップにease in/out(イーズインアウト)を設定すると、動き始めはゆっくり加速し、終わりに向けて減速する、なめらかな緩急がつきます(出典: Lumion Support「Lumion 10 Movie Mode Movie Controls」、確認日2026-07-03)。実際の乗り物やカメラワークも急に止まったり動いたりしないので、この緩急があるだけで映像がぐっと上品に見えます。
反対に、Linear(リニア=一定速度)は最初から最後まで同じ速さで動きます。機械的な印象になりますが、均一に動かしたい場面には向いています。ウォークスルーは基本的にease in/out、長い直進をずっと同じ速度で流したいときはLinear、と使い分けると扱いやすいです。
クリップ長と速度で「歩く速さ」を作る
動きの速さは、クリップの長さで決まります。Lumionでは、クリップの長さを変えるとカメラの移動速度が変わります。同じ距離でも、クリップを長くすればゆっくり、短くすれば速く動く仕組みです(出典: Lumion Support「Lumion 10 Movie Mode Movie Controls」、確認日2026-07-03)。
目安は、人が実際に歩く体感に近い速さです。速すぎる移動は酔いの大きな原因になるので、確認しながら少しずつ長さを調整してください。細かく位置を合わせたいときは、Spacebarを押しながらWSAD・QEキーでカメラをゆっくり操作すると、狙った位置に止めやすくなります(出典: Lumion「Import a custom camera path」、確認日2026-07-03)。
カメラ位置を増やして曲線を滑らかにする
最後に、カーブの質を上げます。手動キーフレームを併用する場合、カメラ位置(撮影ポイント)を増やすほど、Lumionが補間(点と点のあいだを計算でつなぐこと)に使う情報が増え、通り道がなめらかになります。曲がり角のように動きが変わる場所ほど、点を細かく足すと効果が出ます。
急な方向転換は、1点で無理に曲げず、いくつかに分けてゆるやかにつなぐときれいに見えます。キーフレームを使った具体的な操作手順はLumionのムービー制作入門|キーフレームとクリップの基本で解説しています。ここに実写のような揺れや浮遊感まで足したいときは、あとの内部リンクから手持ち・ドローン風の演出記事へ進んでください。
書き出し(レンダリング)設定の目安
動きが決まったら書き出しに進みます。ウォークスルーでは、fps(1秒あたりのコマ数)と解像度(画像の細かさ)の選び方で、レンダリング時間と滑らかさのバランスが変わります。まず動きを固めてから、確認用・納品用で設定を変えていくのが失敗の少ない進め方です。
fps(フレームレート)の選び方
fps(frames per second=1秒あたりのコマ数)は、動画のなめらかさを決める値です。Lumion公式は30fpsを推奨しており、60fpsが必要なのは、高速なオブジェクトアニメーションや速いカメラのパンがある場合に限られるとしています(出典: Lumion Support「How can you reduce rendering times?」、確認日2026-07-03)。
このちがいはレンダリング時間に効いてきます。30fpsは60fpsと比べて書き出すコマ数が半分になるため、レンダリング時間もおおよそ半分に抑えられます(出典: Lumion Support「How can you reduce rendering times?」、確認日2026-07-03)。ゆったりした建築ウォークスルーなら30fpsで十分に滑らかなので、まずは30fpsを基準に考えると効率的です。
解像度とレンダリング時間の考え方
解像度は、確認用と納品用で分けて考えると無駄がありません。HDやFull HDなど用途に応じて選べますが、動きや構図をチェックする段階では低い解像度、お客さまに渡す最終版では高い解像度、という使い分けが基本です。高い解像度ほど1コマの計算に時間がかかるためです。
進め方の目安としては、まずOn Pathプレビューで動きを固め、次に低解像度でテスト書き出しして滑らかさを確認し、問題なければ本番の高解像度で書き出す、という3段階が安全です。fpsや解像度をさらに細かく詰めたいときはLumionのレンダリング出力設定完全ガイド|静止画・動画・画質で解説しています。
プリセットカメラパスを編集部が試してみました
ここまでの手順をふまえて、プリセットカメラパスを実際に触ったうえでの編集部の所感をまとめます。結論から言うと、初心者がまず1本のウォークスルーを完成させるなら、Dollyを軸にするのが最も近道だと感じました。
理由は3つあります。1つ目は、始点と終点の2点を決めるだけで動きが完成するため、設定でつまずきにくいこと。2つ目は、始点・終点の高さをそろえるだけで「歩いて進む」感覚が出しやすく、建築ウォークスルーの王道の絵になること。3つ目は、直線移動なので酔いにくく、クライアントに見せても安心感があることです。
Orbitは見栄えがよく建物紹介の冒頭に映えますが、半径と回転数の調整に少し慣れがいります。Pan/Tiltは1カットの表情づけには便利な一方、それ単体では動画が単調になりがちでした。まずDollyで1本を通して作り、慣れてきたらOrbitやPan/Tiltを差し込んでいく順番が、初心者にとってもっとも挫折しにくいと考えています。
活用シーン・次の一歩
プリセットカメラパスに慣れてくると、複数のクリップを組み合わせた「作品としてのウォークスルー」に手が届くようになります。ここでは、これからの活用シーンと次の一歩を具体的に描いておきます。
たとえば住宅案件なら、Orbitで外観を1周見せて全体像を伝え、Dollyで玄関アプローチを進み、室内に入ってからPan/Tiltでリビングを見渡す、という3クリップの流れを作れます。決まった動きを数値で組めるプリセットだからこそ、こうしたカット割りを短時間で試行錯誤できます。動きに実写のような揺れや浮遊感を足せば、さらに臨場感のある映像に近づきます。
次の一歩として、まずはDollyかOrbitのどちらか1つで短いウォークスルーを1本完成させてみてください。そのうえで、揺れ演出や出力設定を深めていくと、表現の幅が一気に広がります。手ブレ・ドローン風の演出はLumionの手持ち・ドローン風カメラ演出のコツ、アニメーションから出力までの全体像はLumionのアニメーション・レンダリング出力ガイドで解説しています。
まとめ
Lumionのプリセットカメラパスは、円運動や直線移動といった「決まった動き」を数値だけで組める機能で、手ブレのない滑らかなウォークスルー動画を短時間で作れます。要点を整理すると、次の5点になります。
プリセットは4種(Orbit・Dolly・Pan/Tilt・Follow Object)で、外観の見せ方に応じて使い分けます。追加はムービーモードの空クリップから「Add Camera Preset Path」で行い、Gizmoと数値パネルの両方で調整します。滑らかさはease in/out・クリップの長さ・カメラ位置の追加で作り込めます。書き出しは30fpsが基本で、60fpsは速い動きがあるときだけで十分です。そして、手動キーフレームの基礎と揺れ演出は、それぞれの関連記事に役割を分けています。
まずはDollyかOrbitで1本のウォークスルーを完成させ、動きの感覚をつかむところから始めてみてください。そこから出力設定や揺れ演出を足していけば、建築プレゼンで使える臨場感のある映像に仕上がっていきます。
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