V-Rayライティングの基本|Sun & Skyで自然光を作る
V-Ray のライティングは、太陽をひとつ置くところから始まります。VRaySun(太陽の光源)を配置すると、それに連動して VRaySky(空の光と背景)が自動で計算され、昼間の直射光と青空がまとめて手に入る仕組みです。個別のライトを何灯も置いて調整するより、まず「太陽の位置」で全体の明るさとコントラストが決まるため、自然光づくりの起点になります。
この記事では、VRaySun と VRaySky の関係、太陽の位置で時刻と方位を作る手順、覚えておきたい主要パラメータ、そして明るさを整える露出の考え方までを、初心者向けに解説しています。空の映り込みを作り込む Dome Light + HDRI や、室内灯を足す人工照明は範囲が広いため、それぞれ別記事に分けています。
V-RayのSun & Skyでできること|太陽1灯で空まで決まるしくみ
VRaySun をひとつ置くだけで、空の色と全体の明るさが自動で決まります。太陽の光源に連動して VRaySky が空の見え方を計算するため、自然光の土台は「太陽をどこに置くか」ひとつでほぼ整うからです。
VRaySunとVRaySkyの役割
VRaySun は太陽そのものの光源、VRaySky は空の色と環境光(空全体から回り込むやわらかい光)を担当します。3ds Max で VRaySun を作成すると「Sky を環境に追加しますか」と聞かれるのは、この2つがセットで働くためです。
大事なのは、太陽を動かすと空の色も一緒に変わる連動関係です。夕方の位置まで太陽を下げれば、VRaySky の空も自動でオレンジがかった夕景になります。太陽だけ消して VRaySky を残せば、直射光のない曇天のような環境光として使うこともできます。
自然光の起点にする理由
VRaySun と VRaySky は、現実の日照に近い明るさとコントラストを物理的な計算で再現します。この仕組みは SIGGRAPH 1999 で発表された「A Practical Analytic Model for Daylight」という日光モデルの論文がベースになっています(Chaos Docs、2026年7月8日現在)。
だから、太陽1灯を置くだけで「それらしい昼の光」が出せます。手作業で複数のライトを置いて明るさのバランスを取る手間が省けるので、最初の1枚を成立させるまでが速いのが利点です。
太陽の位置で時刻と方位を作る|Sun & Skyの置き方
時刻は太陽の高さ、方位は太陽の水平方向で決まります。ライトの数値を細かくいじるより先に、「太陽をどこに置くか」で朝・昼・夕方と、影の落ちる向きを作り分けるのが基本です。
太陽を置く手順
太陽は全体の明るさの基準になるので、他の設定より先に置いておくと迷いにくくなります。
3ds Max では Create → Lights → VRaySun を選び、ビューポート上でドラッグして太陽の位置を決めます。このとき VRaySky を環境マップに追加するか尋ねられるので、追加しておくと空と環境光がすぐに反映されます。SketchUp や Rhino では、太陽(Sun)を有効にして Sky の設定を開く流れになり、ホストは違っても「太陽を置くと空がついてくる」考え方は共通です。
高さで時刻、方位で影の向きを決める
太陽をどの位置に置くかで、時間帯の見え方が変わります。太陽を高く上げると正午の強い直射光と短い影になり、低く下げると夕方の長い影とオレンジがかった空になります。
水平方向の向きは、影が落ちる方向を決めます。建物のどの面に光を当てて主役にするか、どの面を陰にして立体感を出すかは、この方位で決まります。外観パースなら「見せたい面に光が当たる向き」、内観なら「窓から室内に光が差し込む時刻」を思い浮かべると、置く位置を決めやすくなるはずです。
実務での決め方
建築パースでは、太陽を置く前に「見せたい絵」を先に決めるとスムーズです。外観なら主役にする面と、その面に光が当たる方位。内観なら、窓から気持ちよく光が入る時間帯です。
この順番で考えると、太陽の高さと方位が自然に決まります。数値から入るのではなく、完成イメージから逆算するのが、初心者がつまずかないコツといえます。
Sun & Skyの主要パラメータ|空気感と明るさの作り分け
覚えておきたいのは Intensity・Size・Turbidity・Ozone・Sky Model の5つです。空の色みと影のやわらかさは、ほぼこの5つで作り分けられます。
Intensity MultiplierとSize Multiplier
Intensity Multiplier は光全体の強さです。初期値は 1.0 で、この値は現実の光エネルギーに合わせてあるため、まずは動かさずに保つのが基本になります(理由は次のセクションの露出で解説しています)。
Size Multiplier は太陽の見かけの大きさで、影のふちのやわらかさに影響します。値を大きくすると太陽が大きく見え、影のふちがぼやけてやわらかくなります。晴天のくっきりした影が欲しいなら小さめ、薄曇りのようなやわらかい影にしたいなら大きめ、と覚えておくと調整しやすいでしょう。
Turbidity(空気の濁り)とOzone
Turbidity は大気中のちり(塵)の量を表し、空と太陽の色を変えます。値が小さいと澄んだ青空、大きいと都会のかすんだ黄色〜オレンジの空になります。設定できる値の範囲は 1.81〜4.89 です(Chaos Docs、2026年7月8日現在)。
Ozone(オゾン量)は日差しの色みを調整します。小さいと日光が黄色寄りに、大きいと青寄りになります。晴れた午前の澄んだ光にしたいのか、都市の空気感を出したいのかで、Turbidity と合わせて微調整する項目です。
Sky Model(空モデル)の選び方
Sky Model は、空の色を計算する方式です。晴天用の CIE Clear、曇天用の CIE Overcast、そして高い高度や薄明(日の出前後のうす暗い光)まで表現できる改良版の PRG Clear Sky が選べます(Chaos Docs、2026年7月8日現在)。
建築の晴れパースなら、扱いやすい PRG Clear Sky か CIE Clear から始めるのがおすすめです。理由は、この2つが日中の青空を素直に表現でき、Turbidity の調整もそのまま効いてくるからです。曇り空の落ち着いた表現をしたいときだけ CIE Overcast に切り替える、という使い分けになります。
下の表に、この5つのパラメータが何を決めるかをまとめました。
| パラメータ | 何を決めるか | 動かす場面 |
|---|---|---|
| Intensity Multiplier | 光全体の強さ | 基本は 1.0 のまま(明るさは露出で調整) |
| Size Multiplier | 太陽の見かけの大きさ=影のやわらかさ | くっきり影は小さく、やわらかい影は大きく |
| Turbidity | 空と太陽の色(澄んだ青〜黄橙) | 値域 1.81〜4.89。都会感を出すなら大きく |
| Ozone | 日差しの色み(黄寄り〜青寄り) | 光の色を微調整するとき |
| Sky Model | 空の色の計算方式 | 晴れは PRG Clear Sky / CIE Clear、曇りは CIE Overcast |
出典: Chaos Docs(VRaySky / VRaySun)(2026年7月8日現在)
明るさは露出で整える|Sun & Skyと物理カメラの組み合わせ
画面が明るすぎたり暗すぎたりするときは、太陽の数値をいじらず、カメラの露出で合わせるのが基本です。太陽は現実の光エネルギーのまま置いておくのが、破綻しないコツになります。
なぜ露出で合わせるのか
VRaySun の Intensity を初期値 1.0 に保つと、現実の太陽の明るさがそのまま計算に反映されます。すると、間接光(GI)の回り込み、床や壁の反射、屋外から室内へ光が入る量の関係が、現実どおりのバランスで成立します。
ここで太陽の数値を勝手に上げ下げすると、このバランスが崩れて不自然な絵になりがちです。だから明るさの調整は太陽ではなく、カメラの露出側で行うのが定石とされています(Novedge V-Ray Tip、2026年7月8日現在)。
Physical Cameraの露出で合わせる
明るさは、Physical Camera(物理カメラ)の露出で整えます。考え方は写真と同じで、絞り(f値)・シャッター速度・ISO の3つで明るさが決まります。
内観に外からの光が差し込むシーンでは、露出の出発点として ISO 200 / f8 / シャッター 1/30〜1/60秒 あたりが目安になります(Novedge V-Ray Tip、2026年7月8日現在)。ここから明るすぎればシャッターを速く、暗すぎれば遅く、と写真の感覚で追い込めます。
破綻させないための運用
明るさ合わせで迷わないために、太陽と露出を同時にいじらないようにします。露出を変えたら太陽は固定、太陽を変えたら露出は固定、と片方ずつ動かすのが原則です。
理由は、両方を同時に動かすと「どちらが効いたのか」がわからなくなり、複数カットの明るさもそろわなくなるからです。1カットずつ、露出を先に決めてから細部を調整すると、シリーズで統一感のある絵になります。
GIの前提を押さえる|Sun & Skyを活かすレンダリング設定
自然光の見え方は、間接光(GI=Global Illumination、光の跳ね返りの計算)で決まります。現行の V-Ray では、既定の Brute Force と Light Cache の組み合わせで組み、古い Irradiance Map は使わないのが基本です。
なぜGIが必要か
太陽の直射光だけでは、日陰や天井の裏側が真っ暗になってしまいます。現実の空間では、光は壁や床、空にあたって何度も跳ね返り、その回り込みで日陰もほんのり明るくなっています。
この跳ね返りを計算するのが GI です。GI を有効にしてはじめて、VRaySun と VRaySky の自然光が「それらしい明るさ」になります。だから Sun & Sky を活かすには GI の設定が欠かせません。
Brute Force + Light Cacheが基本
現行の V-Ray では、一次の跳ね返りを Brute Force(総当たりで正確に計算する方式)、二次以降を Light Cache(高速に近似する方式)に設定する組み合わせが既定です。細部の多い建築シーンでも安定して品質を出せる構成として使われています。
なお、古い計算方式の Irradiance Map は、現行版の GI 設定で「Deprecated(非推奨)」と表示され、新機能に対応せず将来的に削除される予定です(Chaos Docs(Global Illumination Rollout)、2026年7月8日現在)。これから始めるなら、最初から Brute Force + Light Cache で組んでおけば、後で設定をやり直す手間がありません。
V-RayのSun & Skyを編集部が使ってみました
編集部が建築パースで VRaySun と VRaySky を触ってみた所感では、最初の1枚は「太陽の高さと方位」を決めるだけで、8割方は成立するという印象でした。細かいパラメータは後回しでも、絵として成り立ちます。
迷いにくかったのは、太陽の位置を先に決める → 露出で明るさを合わせる → Turbidity で空気感を微調整、という順番です。逆に Turbidity や Ozone から触り始めると、明るさと色みのどちらを直しているのかが混ざって、遠回りになりがちでした。
もうひとつ実感したのは、Intensity を初期値のまま露出で明るさを合わせると、外観から内観へシーンを切り替えても光のバランスが崩れにくいことです。公式でも太陽の強さは既定のまま露出で合わせる考え方が推奨されており(Novedge V-Ray Tip、2026年7月8日現在)、実際の手を動かす感覚とも合っていました。
応用と次の一歩|環境光・人工照明への広げ方
Sun & Sky で自然光の土台ができたら、次は空の映り込みを作り込む方法と、室内灯を足す方法へ広げていきます。この2つを加えると、外観の反射表現と内観の明るさが一段リアルになります。
Dome Light + HDRIで環境を作り込む
VRaySky の代わりに、実写の空や風景を光源として使いたいときは Dome Light と HDRI(360度撮影した実写の光情報)を組み合わせます。ガラスや金属への映り込みが実写そのものになるため、外観パースの質感が上がります。設定の手順はDome Light + HDRIで環境光を作るで解説しています。
人工照明を足す
夜景や内観では、太陽だけでなくダウンライトや間接照明といった室内灯が必要になります。V-Ray では VRayLight を使い、面光源やスポット、IES(照明メーカーが配布する実物の配光データ)で器具を再現します。人工照明の置き方はVRayLightで人工照明を配置するで解説しています。
まとめ
V-Ray の自然光づくりは、VRaySun を1灯置くところから始まります。要点を3つに絞ると、次のとおりです。
- 太陽の高さで時刻、方位で影の向きが決まる。まず太陽の位置で全体を作る
- 空気感は Turbidity(値域 1.81〜4.89)、影のやわらかさは Size Multiplier で調整する
- 明るさは太陽の数値ではなく、Physical Camera の露出で合わせる(Intensity は既定 1.0 のまま)
これらを押さえたうえで、間接光は既定の Brute Force + Light Cache で計算し、古い Irradiance Map は使わない構成にしておけば、自然光の基本は完成します。次は空の映り込みを作る Dome Light + HDRI、室内灯を足す VRayLight へと進むと、外観と内観の表現をさらに深められます。全体像はV-Rayライティング完全ガイドでまとめています。
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