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3DCG · V-Ray

Dome Light + HDRIで環境光を作る|V-Rayで空と反射をリアルに整える手順

編集部 読了 約11分

Dome Light(V-Rayの環境光用ライト)と HDRI(明るさの情報を持った360度写真)を組み合わせると、1枚の空の画像だけで、光・影・映り込みをまとめて作れます。建築の外観パースや半屋外のカット、曇りや夕方の空気感をリアルに出したいとき、最も手早く自然な光にたどり着ける方法です。

この記事では、Dome Light の作り方から HDRI の読み込み、マッピングと空の向きの合わせ方、Finite Dome を使った地面への光の落とし方と反射のなじませ方、そして明るすぎ・ノイズへの対処までを、順を追って解説しています。パラメータ名や仕様は Chaos の公式ドキュメント(2026年7月8日時点)で確認したものを使っています。

Dome Light + HDRIとは|1枚の空写真で光と反射をまとめて作るしくみ

Dome Light + HDRI は、シーン全体を包む大きなドーム(半球や球)に空の写真を貼り、その写真の明るさをそのまま光源にするしくみです。太陽光・空の色・雲の柔らかい光まで、実際の空が持つ情報がまるごと光になるため、手作業でライトを足していくよりも自然な仕上がりになります。

HDRIが「光」になる理由

HDRI(High Dynamic Range Image)は、ふつうの写真よりもはるかに広い明るさの幅を記録した画像です。空の青、雲の白、そして太陽まわりの強烈な明るさが、白飛びせずに数値として残っています。

この明るさの差が、そのまま光の強さになります。太陽が写っている部分は強い光として床に影を落とし、青空の部分はやわらかい環境光として全体を包みます。だから読者が用意するのは「1枚のいい空」だけで、ライトを何個も置く必要がありません。

Sun & Skyとの使い分け

自然光には Sun & Sky(V-Rayが空と太陽を物理計算で作る機能)という選択肢もあります。晴れた日のカラッとした直射光を、時刻や方角の数字で正確に作りたいときは Sun & Sky が向いています。

いっぽう HDRI は、曇り空・夕焼け・都市の空など「その場の空気感」をそのまま持ち込みたいときに強みが出ます。実写の空を使うので、雲のかたちや色まで再現できるからです。晴天の物理的な正確さがほしいなら Sun & Sky、空気感や映り込みの豊かさがほしいなら HDRI、と選ぶとよいでしょう。Sun & Sky の基本はV-Rayライティングの基本|Sun & Skyで自然光を作るで解説しています。

Dome Lightの作り方|VRayLightをDomeタイプで置く

Dome Light は、専用のライトがあるわけではなく、VRayLight のタイプを「Dome」に切り替えて使います。まずこの1つを置くところから始まります。

VRayLightを作成してDomeに切り替える

シーンに VRayLight を1つ作成し、タイプ(Type)を Dome に変更します。これで、そのライトがシーン全体を包む環境光になります。

Dome Light で覚えておきたいのは、ライトを置く「位置」は光の向きに影響しないという点です。ドームはシーン全体を覆う想定なので、床のどこに置いても結果は変わりません。空(太陽)の向きは、あとで説明する HDRI の水平回転で決めます。ここを勘違いすると「ライトを動かしても影が変わらない」と悩むことになるので、向きは回転で調整すると覚えておきましょう。

Dome spherical(全球)と半球の違い

Dome Light は初期状態では上半球だけを照らします。空だけが写っている HDRI(地面が写っていないタイプ)なら、この上半球のままで問題ありません。

いっぽう、地面や地平線まで360度ぐるっと写った HDRI を使う場合は、全球で照らす設定(dome spherical を有効にする)に切り替えます。こうすると下側の情報も使われ、地面から反射する光まで取り込めます。用意した HDRI が「空だけ」か「360度全部」かで、この切り替えを決めてください。

HDRIを読み込む|テクスチャスロットにVRayHDRIを入れる

HDRI は、Dome Light のテクスチャスロットに VRayHDRI というマップを差し込んで読み込みます。ここが環境光作りの中心です。

Dome LightのテクスチャスロットにVRayHDRIを割り当てる

Dome Light のパラメータには、貼り付ける画像を指定するテクスチャスロット(Dome tex)があります。ここに VRayHDRI マップを割り当て、その VRayHDRI のビットマップスロットで、実際の .hdr や .exr ファイルを読み込みます。

VRayHDRI をそのまま使う理由は、露出(明るさ)やマッピングをこのマップ側でこまかく調整できるからです。3ds Max 標準のビットマップでも表示はできますが、HDRI の広い明るさ情報を正しく扱うには VRayHDRI を通すのが確実です。読み込んだあとは、VRayHDRI を背景の環境スロットにもインスタンス(同じマップの複製)として差し込むと、ビューポートの背景でも同じ空が確認できます。

マッピングは球状(spherical)が基本

市販や配布の HDRI の多くは、360度をヨコ長の1枚に引き伸ばした「等距円筒(equirectangular)」という形式です。この形式は、マッピング種別を球状(spherical)にすると正しく貼れます。VRayHDRI は初期状態で spherical になっていることが多いので、そのままで合うことがほとんどです。

もし空の上下が切れる、地平線が二重になる、といった崩れが出たら、マッピング種別が合っていない可能性を疑ってください。読み込んだ HDRI の形式と、マップ側のマッピング設定がずれているのがおもな原因です。

空の向きは水平回転(Horiz. rotation)で決める

太陽の位置、つまり影の落ちる向きは、VRayHDRI の水平回転(Horiz. rotation)で調整します。この数値を変えると、貼り付けた空がぐるっと回り、太陽がくる方角が変わります。

建築パースでは、影の向きが構図の印象を大きく変えます。たとえば建物のファサード(正面)に光を当てて陰影を強く見せたいのか、逆光ぎみに空を明るく抜きたいのかで、ちょうどいい回転角は変わります。ライト自体を動かすのではなく、この回転で太陽をねらった位置に持ってくるのがコツです。

Finite Domeで地面と反射をなじませる|空と映り込みのリアルさ

Finite Dome(有限ドーム)を有効にすると、無限に遠いドームではなく、シーンの中に物理的な大きさを持ったドームがあるかのように光が計算されます。これによって、地面に空の光が落ち、カメラを動かしたときに背景がわずかに動く視差も生まれます。

Finite Domeを有効にする理由

初期状態の Dome Light は、無限に遠いドームとして扱われます。この状態だと、背景の空はきれいに見えても、地面に空の色や明るさが落ちにくく、カメラを動かしても背景が張り付いたまま動きません。

Finite Dome は、公式ドキュメントによれば「物理的な大きさを持つドームを模して計算する」機能です。地面に光のテクスチャを投影でき、カメラ移動時の視差も出るため、外観パースで地面と空をひとつの空間としてなじませたいときに効いてきます(出典: Finite dome light mode|Chaos Docs、2026年7月8日時点)。

Radius・Proj height・Ground blendの役割

Finite Dome を有効にすると、地面と空のなじみを整えるための項目が使えるようになります。それぞれの役割は次のとおりです。

パラメータ役割
Radius有限ドームの半径。シーンの広さに合わせて大きさを決める
Proj height環境マップを投影する高さのオフセット。地面への映り方を調整する
Ground blend地面と上半球の境目のなじみ。0.0で境目がくっきり、1.0で球状に溶け込む

Ground blend は、公式ドキュメントによると 0.0 で地面と空の遷移がシャープになり、1.0 に近づくほどドームが球へと変化してなめらかにつながります(出典: Finite dome light mode|Chaos Docs、2026年7月8日時点)。地面と空の境目が不自然に見えるときは、この値を上げてなじませてみてください。

反射に空を映す

ガラスや水面に空が映り込むのは、その映り込みの源が環境=HDRI だからです。Dome Light に読み込んだ空が、そのまま窓ガラスや床の水たまり、金属の表面に反射します。

つまり、いい HDRI を1枚入れておくだけで、反射の情報まで一気にリアルになります。逆に、反射する空がのっぺりした単色だと、ガラスや水面も安っぽく見えてしまいます。映り込みをどう見せるかは、ガラスや水のマテリアル側の設定とセットで考えると仕上がりが上がります。マテリアルの作り方はV-Rayでガラスと水をリアルに表現するで解説しています。

露出とノイズを整える|明るすぎ・ざらつきへの対処

HDRI 環境光は「置いただけ」だと明るすぎたりノイズが出たりします。ここを整えることで、はじめて実務で使える画になります。ポイントは露出・ノイズ・二重ライティングの3つです。

明るすぎ・暗すぎは強度で合わせる

読み込んだ直後は白飛びしたり、逆に暗すぎたりすることがよくあります。明るさは、Dome Light の強度(Multiplier)と、VRayHDRI 側の全体倍率の両方で調整できます。

露出はライト側だけでなくカメラ側(VRayPhysicalCamera の露出設定)でも変わるため、両輪で合わせるのが基本です。まずライト側でおおまかな明るさを決め、カメラ側で最終的な露出を追い込むと、迷いにくくなります。空だけ明るすぎて建物が暗い、といったときは、HDRI 側の倍率を下げつつライト強度で全体を持ち上げると整いやすいでしょう。

Adaptive Dome Lightでノイズと描画時間を抑える

HDRI 環境光は全方向から光が来るため、そのまま計算するとノイズ(画像のざらつき)が出やすく、描画にも時間がかかります。ここで役立つのが Adaptive Dome Light(適応型ドームライト)です。

Adaptive Dome Light は、HDRI の中でも明るく効いている方向へサンプル(光の計算回数)を集中させるしくみです。太陽のような強い光源のある向きに計算を寄せることで、少ない計算でもノイズを抑えられ、描画も速くなります。V-Ray では標準で有効になっていることが多いので、HDRI を使うときはオンのままにしておくと安心です。

二重ライティングを避ける

見落としやすいのが、光を二重に足してしまう失敗です。Dome Light に HDRI を入れているのに、GI(グローバルイルミネーション=間接光の計算)の環境にも同じ HDRI を入れてしまうと、同じ空から光が二重にやってきます。

こうなると必要以上に明るくなり、描画時間も伸びて、調整がしにくくなります。Chaos のドキュメントや解説でも、Dome Light と環境マップの両方に光源を入れないよう案内されています。HDRI で環境光を作るなら光源は Dome Light に一本化し、GI 環境側は黒(無効)にしておくのが基本です。

Dome Light + HDRIを編集部が使ってみました

編集部が Chaos の公式ドキュメントと公式ブログの手順に沿って、外観パースで HDRI 環境光を組む流れをたどってみました。所感としては、「1枚のいい空を選ぶ」ところで仕上がりの8割が決まる、という印象です。

公式ブログの外観ライティング手順でも、Dome Light に HDRI を割り当て、水平回転で太陽の向きを決めるところから始めることが示されています。逆にいうと、のっぺりした空や解像度の低い HDRI を選ぶと、いくらパラメータをいじっても映り込みや影がリアルになりません。無料配布の HDRI でも解像度と明るさの幅(ダイナミックレンジ)がしっかりしたものを選ぶのが、遠回りに見えて最も確実な近道だと感じました。パラメータ面では、Finite Dome の Ground blend を少し上げて地面と空をなじませるひと手間が、外観の完成度を目に見えて押し上げます。

活用シーンと次の一歩

Dome Light + HDRI は、外観や半屋外のパースで力を発揮します。使いどころを押さえたうえで、次にどこを学ぶと表現が伸びるかも見ていきます。

こんなシーンで活きる

住宅やビルの外観パースで、実際の空の空気感を出したいときに向いています。曇り空のやわらかい光、夕焼けの暖色、都市の抜けた青空など、Sun & Sky では作りにくい「その日の空」をそのまま持ち込めるからです。

半屋外のテラスやエントランス、ガラスの多いファサードのように、映り込みが見せ場になるカットとも相性がよい方法です。窓や床に空がきれいに映り込むと、それだけで空間の質感が上がります。

次の一歩

環境光の土台ができたら、光の質をさらに詰めていく段階に進めます。晴天の直射光を数字で正確に作りたいなら Sun & Sky、映り込みの質を上げたいならガラス・水のマテリアルへと進むと、外観の完成度がまとまってきます。

自然光の基礎はV-Rayライティングの基本|Sun & Skyで自然光を作る、反射・透過の質感づくりはV-Rayでガラスと水をリアルに表現するで解説しています。ライティング全体の流れを俯瞰したいときはV-Rayライティング完全ガイド|自然光・環境光・人工照明の作り方を入口にしてください。

まとめ

Dome Light + HDRI は、1枚の空の写真から光・影・映り込みをまとめて作れる、外観パースの現実的な環境光の作り方です。要点は次の3つに絞れます。

  • VRayLight を Dome タイプにし、テクスチャスロットに VRayHDRI で空を読み込む。マッピングは spherical、太陽の向きは水平回転で合わせる。
  • Finite Dome を有効にすると地面に光が落ち、Radius・Proj height・Ground blend で空と地面をなじませられる。反射に映る空も HDRI が源になる。
  • 明るさは Dome Light 強度と HDRI 倍率+カメラ露出で調整し、Adaptive Dome Light でノイズを抑える。GI 環境との二重適用は避ける。

いい HDRI を1枚選ぶことが、パラメータ調整以上に仕上がりを左右します。まずは解像度と明るさの幅がしっかりした空を選び、この記事の手順で環境光を組んでみてください。