VRayFurで芝生・カーペットを表現する|毛の生成とScatter併用の実務手順
VRayFur(ブイレイファー)は、オブジェクトの面から毛をレンダリング時に自動生成する機能です。芝生やラグ、カーペットといった「細かい毛の集まり」を、板ポリゴンに貼った芝テクスチャよりも自然な立体感で表現できます。カメラに近い前庭の芝や、リビングのラグの毛足のように、平面では物足りない近景のディテールで効いてきます。
この記事では、VRayFurの主要パラメータの意味から、芝生の作り方、カーペット・ラグの作り方、そしてシーンが重くなったときのChaos Scatter併用と軽量化までを解説しています。パラメータ名と挙動はChaosの公式ドキュメント(2026年7月8日確認)にもとづき、環境で変わる推奨数値は「短め」「密に」のように定性的に示します。
VRayFurとは|面から毛を手続き的に生やすしくみ
VRayFurは、元になるオブジェクトの表面から毛(ストランド)をレンダリングの瞬間に手続き的に生成する機能です。あらかじめポリゴンで毛を作り込む必要がないため、芝やカーペットの立体感を、モデルを重くせずに出せます。
芝生・カーペットに向いている理由
VRayFurが得意なのは、芝生・ラグ・カーペット・タオル・毛布のように、細い毛が密集した表面です。V-Ray for SketchUpの公式ドキュメントでも、芝生やカーペット、ラグ、タオルなどの用途が挙げられています(Chaos公式、2026年7月8日確認)。
板ポリゴンに芝テクスチャを貼る方法とくらべると、違いは近景で出ます。テクスチャ芝はカメラを寄せると平面だとバレますが、VRayFurは実際に毛が立っているのでシルエットや影に立体感が残ります。逆に、画面いっぱいに広がる広大な芝地では、毛の本数が膨大になってレンダリングが重くなります。近景はVRayFur、広域は別の手法、という切り分けが出発点です。
レンダリング時に生成されるから編集は軽い
VRayFurの毛は、ビューポート(作業画面)には一部だけがプレビュー表示され、本体はレンダリングの瞬間に生成されます。そのため、毛を何万本に設定しても作業中の操作は軽いままです。
ここで注意したいのは、軽さはあくまで編集中の話だという点です。実際の重さはレンダリングで初めて出ます。プレビュー表示の本数だけを見て「軽いから大丈夫」と判断すると、本番レンダリングで急に時間がかかって戸惑います。密度の設定は、プレビューではなくレンダリング結果で確かめるのが安全です。
VRayFurの主要パラメータを設定する
仕上がりを決めるのは、長さ・太さ・テーパー・重力・曲がり・密度・セグメント数の7つです。それぞれ「何のための値か」を先につかんでおくと、芝でもカーペットでも迷わず調整できます。
長さ・太さ・テーパー
毛の見た目の基本は、この3つで決まります。Length(レングス)は毛の長さ、Thickness(シックネス、太さ)はストランドの半径を指定します。Taper(テーパー)は毛の先細りをコントロールする値です。
Taperは0にすると根元から先端まで同じ太さになり、値を大きくするほど根元が太く先端が細くなります(Chaos公式VRayFur、2026年7月8日確認)。芝は自然界でも先端が細いので、Taperを効かせると一気にそれらしくなります。カーペットの毛足はどちらかというと均一なので、Taperは控えめにするのが向いています。
重力と曲がりで寝かせ具合を作る
毛がまっすぐ立つか、寝るかを決めるのがGravity(グラビティ、重力)とBend(ベンド、曲がり)です。Gravityは毛をZ方向(下向き)に引き下げる力を指定します。
Bendは毛の弾性をあらわし、0にすると毛は完全に硬い直線になり、値を大きくするほど重力などの影響で毛が曲がります(Chaos公式VRayFur、2026年7月8日確認)。つまり毛を寝かせたいときは、Gravityで下向きの力を与え、Bendで曲がりやすくする、という2段構えです。芝は根元から軽くうねる程度に、へたったカーペットは強めに寝かせる、といった調整ができます。
密度で本数を決める
同じ面積にどれだけ毛を生やすかは、密度の指定方法を選んでから決めます。指定方法にはPer area(パーエリア、面積あたり)とPer face(パーフェイス、面あたり)の2つがあります。
Per faceは、元オブジェクトの三角面1つあたりの本数を指定します。すべての三角面が同じ本数を生やすため、面の大きさがバラバラなメッシュだと毛の密度もバラつきます。一方Per areaは、シーン単位で1平方あたりの本数を指定するので、小さい面は少なく、大きい面は多く、面積に応じて均一に散ります(Chaos公式VRayFur、2026年7月8日確認)。芝やカーペットのように「面全体を均一に埋めたい」ときはPer areaが扱いやすいです。
セグメント数とばらつき
毛の滑らかさと自然さを決めるのが、Knots(ノット)とばらつきの設定です。Knotsは、1本の毛を構成する連結した直線セグメントの数を指定します。
Knotsを増やすほど毛のカーブが滑らかになりますが、そのぶんレンダリング時間も増えます(Chaos公式VRayFur、2026年7月8日確認)。まっすぐな芝なら少なめ、大きく曲がるシャギーラグなら多めが目安です。あわせて、長さ・太さ・重力などには変化(Variation)を加える値があり、0.0で変化なし、1.0でばらつきが最大になります。すべての毛が同じ長さ・同じ向きだと人工的に見えるので、芝では長さと向きに必ずばらつきを入れると自然になります。
芝生を作る手順
芝生は「短め・細め・先細り・弱い重力・強めのばらつき」が基本の型です。ここに色ムラを足すと、緑一色のカーペットのような不自然さが消えます。
芝面を用意してVRayFurを適用する
芝を生やす地面は、平らな1枚板ではなく、ある程度分割したメッシュを用意します。分割しておく理由は、あとから起伏を付けたいときに変形させやすく、Per faceで密度を指定した場合の偏りも減らせるからです。
用意したメッシュにVRayFurを適用します。適用の対象は、オブジェクト全体を選ぶか、選択した面だけに限定するかを選べます。花壇や通路を避けて芝だけ生やしたいときは、芝にしたい面だけを選んで適用すると、余計なところに毛が出ません。
芝らしいパラメータの目安と色ムラ
芝のパラメータは、Lengthを短め、Taperを効かせて先細りにし、Gravityは弱めにしてBendで軽くうねらせます。Variationで長さと向きをばらすと、風になびいたような自然な芝面になります。
ここで見た目を大きく左右するのが色です。毛の色を単一の緑にすると、遠目にはきれいでも近景では作り物っぽく見えます。緑の濃淡や、少し枯れた黄色を混ぜたテクスチャ、あるいは複数のマテリアルで色ムラを作ると、実際の芝生に近づきます。マテリアルの作り込み自体はV-Rayマテリアル完全ガイドで解説しています。
カーペット・ラグを作る手順
カーペットやラグは「短く・密に・重力ほぼゼロで立たせる・テーパー控えめ」が基本です。毛足(パイル)の長短で、さらっとした短毛か、ふさふさのシャギーかが決まります。
面に適用して毛足の長さと密度を決める
カーペットにしたい面にVRayFurを適用し、毛足の長さをLengthで指定します。ラグは毛が密に敷き詰まっているほど質感が出るので、Per areaを上げて本数を増やします。
芝と違うのは、毛を立たせたい点です。カーペットの毛は基本的に上を向いているので、Gravityは小さくして下向きの力を弱め、Bendも控えめにして倒れすぎないようにします。Taperも控えめにすると、根元から先端まで太さのそろった、いかにも繊維らしい毛になります。
短毛カーペットと長毛シャギーの作り分け
同じカーペットでも、短毛とシャギーでは設定の狙いが変わります。短毛カーペットは、Lengthを小さく、Variationも小さくして、毛足のそろった均一な面に仕上げます。
シャギーラグのようなふさふさ感を出したいときは、Lengthを大きくし、Variationも大きくして長さと向きにばらつきを持たせます。毛足が長いぶんBendとKnotsを少し増やすと、先端がやわらかく曲がって重たそうな質感になります。どちらも近景ではラグの縁から飛び出す毛が効くので、エッジ部分の毛の見え方を確認しながら詰めていきます。
Scatterと組み合わせて軽くする
広い芝地や植栽をVRayFur単体で埋めようとすると、毛の本数が膨れ上がってレンダリングが破綻します。近景はVRayFur、中景から遠景はChaos Scatterで芝パッチや草モデルをばらまく、という役割分担が現実的な解です。
役割分担|近景はVRayFur・広域はChaos Scatter
VRayFurは面積が増えるほど毛の本数が増えて重くなります。そのため、庭一面や法面(のりめん)のような広い範囲をVRayFurだけで埋めるのは向いていません。
こうした広域は、Chaos Scatterで草や低木の実体モデルをインスタンス(複製配置)でばらまくほうが軽く仕上がります。カメラのすぐ手前の芝だけをVRayFurにして、その奥はScatterに任せると、近景のディテールと全体の軽さを両立できます。散布の具体的な手順はChaos ScatterとVRayProxyで植栽・群衆を配置するで解説しています。
LODで遠景の毛を間引く
VRayFurには、Level of Detail(レベルオブディテール、LOD)という軽量化のしくみがあります。これを有効にすると、V-Rayはカメラから遠い部分の毛の密度を下げ、そのぶん毛の半径を増やして見た目を保ちます(Chaos公式VRayFur、2026年7月8日確認)。
つまり、見えにくい遠くの毛は自動で間引かれ、近くの毛だけしっかり生成されます。外構パースのように、手前の芝と奥の芝でカメラからの距離差が大きいシーンでは、LODを入れるだけでレンダリング時間をかなり抑えられます。
重くなったときの見直し順
レンダリングが重いと感じたら、いきなりScatterに作り直すのではなく、順番に見直すと無駄がありません。最初にPer areaやPer faceの密度を下げ、次にKnots(セグメント数)を減らします。
それでも重ければLODを有効にし、最後の手段として広域をScatterへ移します。あわせて、ビューポートのプレビュー本数を上げすぎないことも効きます。プレビュー本数は作業の見やすさのための値なので、多くしても最終品質には関係なく、作業画面だけが重くなります。
VRayFurの芝生・カーペット表現を編集部が試してみました
パラメータの効き方を実際に動かして確かめた範囲での所感です。効きが大きい順に整理すると、芝生ではTaperとVariationの有無で印象が大きく変わりました。
Taperを0のままにすると毛が棒のように見え、Variationを入れないと全部が同じ向きにそろって、芝というより人工芝に近い硬さが出ます。この2つを入れるだけで、近景の自然さがはっきり変わりました。カーペットではGravityを下げて毛を立たせるのが要で、下げないと毛が寝てしまい、へたったマットのように見えてしまいます。
重さについては、庭一面をVRayFurで埋めた状態ではレンダリングが伸びましたが、手前だけVRayFur・奥はScatterに分けた時点で現実的な時間に収まりました。近景と広域を1つの機能で解決しようとしないのが、うまくいくコツだと感じています。
活用シーンと次の一歩
VRayFurがもっとも効くのは、外構と内観の「カメラに近いディテール」です。仕上げの一手として、面の質感テクニックと組み合わせると効果が上がります。
外構・内観での活用シーン
外構では、前庭の芝、玄関まわりのグランドカバー、屋上緑化のカメラ手前の芝などで立体感が出ます。内観では、リビングのラグ、寝室の毛足の長いカーペット、そしてタオルやブランケットの毛羽立ちといった布ものに使えます。
いずれも共通するのは、カメラが寄る近景で効くという点です。逆に、画面の奥や小さくしか映らない範囲は、テクスチャやScatterに任せたほうが軽く済みます。どこにカメラが近づくかを先に決めてから、VRayFurを使う範囲を絞ると無駄がありません。
次の一歩|Scatterと外観パースの作り込み
芝を含む外構カットを1枚仕上げるなら、広域の植栽やオブジェクトの散布はChaos Scatterに寄せ、カメラの構図と光の設計は外観パース全体の流れで詰めていくのがおすすめです。
VRayFur・Scatter・カメラワークは、それぞれ担当する範囲が違うだけで、狙いはひとつの絵の説得力を上げることです。芝の近景をVRayFurで整えたら、V-Rayで外観パースを作るで構図と光の作り込みへ進むと、1枚の外観パースとしてまとまります。
この記事のまとめ
VRayFurは、面から毛をレンダリング時に手続き生成する機能で、芝生・ラグ・カーペットのような近景のディテールに立体感を与えます。要点を整理します。
- 仕上がりは長さ・太さ・テーパー・重力・曲がり・密度・セグメント数の7パラメータで決まる
- 芝は「短め・先細り・弱い重力・強めのばらつき」+色ムラ、カーペットは「短く・密に・重力を下げて立たせる」が基本
- 密度指定は面積ベースのPer areaが均一に散らせて扱いやすい
- 広い範囲はChaos Scatter、遠景はLODに委ねてレンダリングの重さを制御する
近景はVRayFur、広域はScatter、という役割分担さえ守れば、芝もカーペットも重くならずに仕上げられます。次は散布と外観全体の作り込みへ進んでみてください。
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