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3DCG · V-Ray

VRay Proxy・Scatterで重いシーンを軽くする|樹木や芝を効率配置

編集部 読了 約13分

外構パースに木を50本並べたら、ビューポート(作業画面)がカクついてレンダー中に落ちた。そんな重さの正体は、じつは「同じ高ポリの木を並べた分だけ、そのポリゴンがまるごとメモリに載っている」ことにあります。木を減らさなくても、この重複を断ち切れば軽くなります。

この記事では、VRayProxy(レンダーのときだけ外部ファイルから読み込むメッシュ)とChaos Scatter(面やスプラインの上に分身を一気に配置するツール)の仕組みと作り方、両方を組み合わせて樹木や芝を効率よく配置する手順を、Chaos公式ドキュメント(2026年7月8日時点)をもとに解説します。

重いシーンの正体|なぜ樹木や芝でメモリが足りなくなるのか

重さの多くは「植栽の重複」から生まれます。1本の木が数十万ポリゴンあると、それを50本置いた瞬間に数千万ポリゴンがメモリに載り、ビューポートの描画もレンダーも一気に苦しくなります。

原因を切り分けると、対処法も見えてきます。木を減らすのではなく、重複したデータを「共有」するか、実体を持たない「分身」に置き換えるか、という発想に切り替えるのが軽量化の出発点です。

メモリを食っている3つのもの

樹木や芝で重くなるとき、負荷の中身はおおむね3つに分かれます。

1つ目は、植栽モデル自体のポリゴン数です。葉を1枚ずつ作り込んだ木は、それだけで数十万ポリゴンになります。2つ目は、その重複です。同じ木を50本コピーすると、単純計算で50倍のメモリを使います。3つ目は、ビューポートの描画負荷で、これは最終画質とは別に「作業中の重さ」として効いてきます。

この3つは原因が違うので、効く対策も変わります。どこが重いのかを見分けておくと、次に使う道具を選びやすくなります。

「モデルを減らす」以外の解き方がある

軽くする方法は、木の本数を削ることだけではありません。データの持ち方を変えるアプローチがあります。

ひとつはVRayProxyで、モデルをシーンに常駐させず、レンダーのときだけディスクから読み込む仕組みです。もうひとつはChaos Scatterで、木や草を「インスタンス(複製の実体を持たない分身)」として面の上にばらまく仕組みです。前者は重複データの共有、後者は実体そのものの削減にあたります。どちらも本数を減らさずに重さを抑えられるので、表現を諦めずにすみます。

VRayProxyはレンダー時にだけ読み込む外部メッシュ

VRayProxy(ブイレイプロキシ)は、ジオメトリ(3Dの形状データ)をシーンに常駐させず、レンダー時にだけ外部ファイルから読み込む仕組みです。ふだんはメッシュがシーンにいないので、置いてあってもメモリをほとんど消費しません。

Chaos公式は、VRayProxyについて「レンダー時にのみ外部メッシュからジオメトリを取り込み、シーンにジオメトリは存在せずリソースを消費しない」と説明しています(Chaos Docs VRayProxy、2026年7月8日時点)。重い植栽をたくさん置きたい場面ほど、この「常駐させない」性質が効いてきます。

.vrmeshファイルに何が入っているか

VRayProxyが読み込むのは.vrmeshという専用ファイルです。このファイルに、その木や芝の形状情報がまとめて保存されています。

公式によれば、.vrmeshには頂点と面のトポロジ(面のつながり方)、テクスチャチャンネル、面のマテリアルID、スムージンググループ、法線が格納され、メッシュはあらかじめ小さな塊(チャンク)に分割して保存されます(Working with vrmesh Files、2026年7月8日時点)。塊に分けてあるおかげで、V-Rayは必要な部分だけを取り出しやすくなります。だから巨大なメッシュでも、まるごと抱え込まずに扱えるわけです。

同じ.vrmeshは自動でインスタンス扱いになる

VRayProxyの効き目が大きいのは、同じファイルを参照するProxyをV-Rayがまとめて扱ってくれるからです。ここが本数を増やしても重くなりにくい理由です。

公式は「同じ.vrmeshファイルを読み込むProxyは、設定が同じであればインスタンスの複製とみなしてメモリを節約する」と説明しています(Working with vrmesh Files、2026年7月8日時点)。同じ木を100本置いても、メモリ上のメッシュ実体は基本的に1つ分ですむ設計です。これが「木を減らさずに軽くする」の中身になります。

注意:モディファイアを足すと省メモリ性が消える

便利なVRayProxyにも落とし穴があります。Proxyオブジェクトそのものを後から編集すると、せっかくの省メモリ性が失われます。

公式は「VRayProxyオブジェクトにモディファイア(変形機能)を追加すると省メモリの性質を失う。変更はProxyではなく、書き出す前の元ジオメトリに対して行うこと」と注意しています(Chaos Docs VRayProxy、2026年7月8日時点)。形を直したくなったら、Proxyをいじるのではなく、元のモデルを修正してから.vrmeshに書き出し直す、という順番を守ってください。この一手間で、重さがぶり返すのを防げます。

VRayProxyの作り方と表示モードの使い分け

VRayProxyを使う流れは、大きく3ステップです。元メッシュを.vrmeshに書き出し、それをProxyとして読み込み、ビューポートの表示を軽い形式に切り替える。この3つを押さえれば、作業中もレンダーも軽く回せます。

とくに表示モードの選び方で、作業の快適さが変わります。作業画面に重いフルメッシュを出しっぱなしにしないことが、カクつき対策の要です。

メッシュを.vrmeshに書き出す

最初のステップは、木や芝のモデルを.vrmeshファイルに書き出すことです。3ds MaxではオブジェクトをV-Ray mesh export(メッシュ書き出し)でファイル化します。

このとき大切なのは、書き出す前に元モデル側で形やマテリアルを仕上げておくことです。理由は前述のとおりで、Proxy化したあとに変形を加えると省メモリ性が消えてしまうからです。葉の量やスムージングなど、後から直したくなりそうな部分は、書き出し前に決めておくと手戻りがありません。

表示モードを選んで作業画面を軽くする

書き出したProxyは、ビューポートにどう表示するかを選べます。ここを軽い形式にしておくと、たくさん置いてもビューポートがカクつきにくくなります。

公式ドキュメントには、表示の選択肢としてBounding box(バウンディングボックス=形状を囲う箱)、Point cloud(点の集まり)、Preview from file(ファイルの簡易プレビュー)、Full mesh(フルメッシュ=完全表示)が用意されています(Chaos Docs VRayProxy、2026年7月8日時点)。

軽い順にざっくり言えば、Bounding boxが最も軽く、Point cloudやPreview from fileが中間、Full meshが最も重い表示です。大量に並べる作業中はBounding boxやPreviewにしておき、構図の最終確認や1本ずつの見た目チェックのときだけFull meshに切り替える、という使い分けが快適です。表示は見た目の話なので、切り替えても最終レンダーの品質には影響しません。

V-Ray GPUでもProxyは使える

「GPUレンダリングに切り替えたらProxyは使えないのでは」と気になるかもしれません。その心配は要りません。

VRayProxyはGPU(V-Ray GPU)でも利用できると公式に記載されています(Chaos Docs VRayProxy、2026年7月8日時点)。CPUで組んだ植栽シーンを、そのままGPUレンダーに持っていける設計です。なお、どのGPUでどれくらい速くなるかといった実測の話は個別のハードウェア条件に左右されるため、この記事では扱いません。

Chaos Scatterは面やスプラインにインスタンスを一気に配置する

Chaos Scatter(カオススキャッター)は、指定したモデルを別のオブジェクトの面やスプライン(線)の上に、インスタンスとしてばらまくツールです。芝・下草・並木・群衆のように「同じものを大量に、でも少しずつ違えて置きたい」場面に向いています。

公式は「指定モデルのインスタンスを他オブジェクトの面やスプライン上に作成する強力な配置ツールで、緑・岩・芝で満たす屋外シーンにとくに有用」と説明しています(Chaos Scatter、2026年7月8日時点)。1本ずつ手で置くのではなく、面を指定してまとめて撒けるのが強みです。

面に撒くか、スプライン沿いに撒くか

Scatterの起点は「どこに撒くか」の指定です。Distribute On(配置先)で、対象となる面やスプラインを指定します。

面に撒く2D散布は、水平・垂直・複雑な3D形状のどの面でも使えると公式に記載されています(Chaos Scatter、2026年7月8日時点)。地面の芝なら地形メッシュを配置先に、道沿いの並木ならスプラインを配置先に、というように使い分けます。撒く土台を選ぶだけで配置が始まるので、広い範囲でも一度に埋められます。

数・密度とスケール/回転のランダム化で自然に見せる

同じモデルを撒くと、そのままでは並びが不自然になりがちです。そこでScatterは、大きさと向きをばらつかせて自然に見せる調整ができます。

公式によれば、Scaleは指定した下限から上限まで連続的にスケールをばらつかせ、Rotationは各軸のMin/Max(最小・最大の角度)で連続的に回転をばらつかせられます(Chaos Scatter、2026年7月8日時点)。木の高さを0.8〜1.2倍で散らし、向きを0〜360度でランダムにするだけでも、コピー感がぐっと薄れます。さらにAvoid collision(重なり回避)を使うと、インスタンス同士がめり込むのを防げるので、密に撒いても不自然になりません。

ビューポート表示数を絞って作業を軽くする

Scatterで数万本を撒くと、今度はビューポートが重くなります。ここでも表示と実際のレンダー数を分けて考えるのがコツです。

Scatterには作業画面に出すプレビュー数を絞る設定があり、ビューポートには一部だけ表示しつつ、レンダーでは指定した本数をすべて描く、という運用ができます。作業中は間引いて軽く、レンダーはフル、という切り替えです。VRayProxyの表示モードと同じ考え方で、「作業の重さ」と「最終品質」を分けて扱うと、大量配置でも手が止まりません。

ProxyとScatterを組み合わせて重いシーンを軽くする

いちばん効くのは、この2つを重ねて使うことです。1本の木をVRayProxy化し、それをChaos Scatterのソース(撒く元)に指定する。すると、実体はProxyの1つ分のメッシュ参照でありながら、面の上に数百本を表現できます。

Proxyが「重複データの共有」を、Scatterが「実体を持たない分身での配置」を担うので、二重に重さを抑えられる組み合わせです。植栽の多い外構パースほど、この効果がはっきり出ます。

手順の全体像

流れはシンプルです。まず木のモデルを.vrmeshに書き出してProxy化します。次にそのProxyをScatterの配置元として指定し、地面メッシュや道沿いのスプラインをDistribute Onに設定します。最後に密度・スケール・回転を調整して、自然な散らばりに整えます。

Proxyの表示はBounding boxに、Scatterのプレビュー数は少なめに絞っておくと、作業中のビューポートが軽いまま保てます。レンダー時には、Proxyがファイルからメッシュを読み込み、Scatterが指定本数を描くので、見た目は密な植栽に仕上がります。

カメラに映る範囲だけ残す

数を増やすほど、画面の外にも大量のインスタンスが生まれます。そこで、カメラに映らない植栽を間引くと、無駄な負荷を減らせます。

Scatterには、Camera ClippingやFrustum(カメラの視錐台=映る範囲)に基づいて画角の外を間引く仕組みがあります(Chaos Scatter、2026年7月8日時点)。カメラを固定したパースなら、映る範囲だけ密に、外側は撒かない、という調整で軽さと見た目を両立できます。アニメーションでカメラが動く場合は、動く範囲を含めて間引き範囲を決めておくと、フレームごとの抜けを防げます。

芝は低ポリ+Scatter、遠景の並木はProxyという役割分担

すべてを同じやり方で撒く必要はありません。近景の芝と遠景の並木では、向いている道具が違います。

足元の芝や下草は、1株を低ポリで作ってScatterで敷き詰めるのが軽くて自然です。一方、背景の並木や大きな樹木は、作り込んだ高ポリモデルをProxy化し、Scatterで並べると、質感を落とさずに数を稼げます。近いものは軽いモデルで数を、遠いものはProxyで質を、と役割を分けると、限られたメモリの中で見せ場を作れます。

重いシーンを軽くするワークフローを編集部が使ってみました

編集部の所感を、公式仕様をもとに整理します。ここは実測レポートではなく、Chaosのドキュメントに書かれた仕組みから、どこに手を入れると効きやすいかを組み立てた見立てです。

当てどころには効き目の大小があります。まず植栽をVRayProxy化して重複データを共有させ、次にChaos Scatterでカメラ外を間引き、そのうえでProxyの表示モードとScatterのプレビュー数を軽くする。この順番で手を入れると、メモリと作業の重さの両方に効きます。ノイズやサンプリングといった画質側の重さは原因が別なので、そちらはV-Rayレンダリング高速化完全ガイドで全体像を整理しています。

効き目が大きい順の当てどころ

順番をつけるなら、影響の大きいところから触るのが近道です。

最初はProxy化で、これは重複した植栽メッシュのメモリを共有させるので、木の本数が多いほど効きます。次がScatterの間引きで、カメラに映らないインスタンスを減らせば、描く量そのものが減ります。三番目が表示・プレビューの軽量化で、これは作業中の快適さに効きます。逆に、1本しか置いていないシーンではProxy化の効果は小さいので、シーンの状態に合わせて当てどころを選んでください。

応用シーンと次の一歩|植栽表現を伸ばす方向

軽くする段取りが身についたら、次は密度と質感を上げていく段階です。同じProxy+Scatterの土台のまま、表現の幅を広げられます。

この記事の範囲は「重さを抑えて置く」ところまでですが、その先に草地の作り込みや、パース全体の構図設計が続きます。

活用シーン

活用の幅は、住宅の外構から大規模ランドスケープまで広がります。

住宅外構では、庭木と芝を数十本〜数千株ばらまくだけでも生活感が出ます。大規模なランドスケープや公園のパースでは、Scatterのカメラ間引きが効き、映る範囲だけに数万本を集中させられます。街路パースの並木は、1本をProxy化して道沿いのスプラインに沿わせると、質感を保ったまま長い距離を埋められます。どの場面でも「近景は数、遠景は質」の役割分担が土台になります。

次の一歩

置けるようになったら、質感づくりへ進みましょう。芝や草地は、モデルの散らばりだけでなく、毛足や色のばらつきで印象が大きく変わります。草・芝の作り込みはV-Rayで芝・草を表現する方法で解説しています。

配置と質感が整ったら、次は構図です。植栽をどこに置けば建物が引き立つかは、外構全体の見せ方で決まります。外構パースの構図や光の当て方はV-Rayで外観パースを仕上げる方法で解説しています。

まとめ

重いシーンを軽くする要点を、3つに絞ります。

1つ目は、重さの正体が「同じ高ポリ植栽の重複」にあること。木を減らさなくても、データの持ち方を変えれば軽くなります。2つ目は、VRayProxyがレンダー時にだけ.vrmeshを読み込み、同じファイルを自動でインスタンス扱いして重複メモリを共有すること。3つ目は、Chaos Scatterが面やスプラインにインスタンスを撒き、スケール・回転のランダム化とカメラ間引きで自然さと軽さを両立できることです。

最も効くのは、木をProxy化してScatterのソースに指定する組み合わせです。近景の芝は低ポリ+Scatter、遠景の並木は高ポリのProxyという役割分担を土台に、表示モードとプレビュー数を絞れば、大量の植栽を抱えても作業とレンダーの両方を軽く保てます。まずは手元の一番重い植栽をひとつProxy化するところから始めてみてください。