ガラス・水・カーテンの透過マテリアルを作る|屈折とフォグの設定4パターン
窓ガラス、浴室の水、リビングのレースカーテン。建築パースで「透ける素材」を作るときに使うのが、VRayMtl(V-Rayの標準マテリアル)の屈折(Refraction、光が透けて曲がるはたらき)です。透過の見え方は、屈折色でどれだけ透けるか、IOR(屈折率)で光がどれだけ曲がるか、Fog color(フォグ、厚みで濁る色)でどれだけ色づくか、というたった3つの要素で決まります。
この記事では、窓ガラス・水面・レースカーテン・色ガラスの4パターンについて、透過マテリアルの作り方を初心者向けに解説します。数値や動作はChaos公式ドキュメント(documentation.chaos.com)と屈折率の一般値をもとに、2026年7月現在の情報で整理しました。
屈折は反射(Reflection)とセットで使う場面が多いので、反射・屈折の基本はVRayMtlの反射・屈折を設定するで、透過を美しく見せる光源づくりはV-RayのDome LightとHDRIで空を作るで解説しています。
透過マテリアルは屈折(Refraction)で作る
透ける素材は、VRayMtlの屈折(Refraction)で作ります。ガラスも水もカーテンも、突き詰めれば屈折色・IOR・Fogの3つの設定を変えているだけです。この3つの意味を先に押さえておくと、素材ごとに数値を丸暗記しなくても、自分で調整できるようになります。
屈折(Refraction)でできること
屈折色(Refraction color)は「どれだけ透けるか」を決める設定です。この色を白に近づけるほど光が通り抜けて透明になり、黒にすると光がまったく通らず不透明になります。真っ黒だとガラスなのに透けない、という初心者のつまずきは、たいていこの屈折色が黒のままなのが原因です。
透明な素材ほど、じつは反射も強く出ます。ガラスや水は透けると同時に、表面に空や照明が映り込むからです。そのため透過マテリアルは、屈折だけでなく反射(Reflection)とセットで作るのが基本になります。反射側の設定はVRayMtlの反射・屈折を設定するで解説しています。
もうひとつ覚えておきたいのが、屈折を使うと計算が重くなるという点です。光がマテリアルを何度も通り抜けるぶん、レンダリング時間が伸びます。だからこそ、透けさせる必要のない素材にまで屈折を入れないことが、作業を軽くするコツになります。
IOR(屈折率)が見た目を決める
IOR(Index of Refraction、屈折率)は、光がその素材を通るときにどれだけ曲がるかを表す数値です。IORが1のときは光がまったく曲がらず、板ガラスをまっすぐ通したような見え方になります。値を上げるほど光が大きく曲がり、向こう側の景色がゆがんで見えるようになります。
素材ごとの目安になる屈折率は、物理的に決まっています。水はおよそ1.333、一般的な窓ガラス(クラウンガラス)は1.50〜1.54、アクリル(PMMA、透明プラスチック)は約1.489です(出典: Wikipedia|List of refractive indices、2026年7月現在)。
この数値を素材に合わせて入れるだけで、見た目のリアルさが大きく変わります。たとえば水槽を作るとき、ガラスの面には1.5、中の水には1.33を入れると、それぞれの屈折の強さが実物に近づきます。逆に、すべて同じIORにしてしまうと、水とガラスの境目がぼやけて不自然になります。
Fog color(フォグ)で厚みの色を出す
屈折色が「透け具合」を決めるのに対して、Fog color(フォグ)は「厚みで濁る色・色づき」を決めます。うすいコップのふちは無色に見えるのに、分厚いガラスの断面が緑がかって見えるのは、このフォグのはたらきです。光が素材の中を長く通るほど、フォグの色が濃く乗っていきます。
フォグの効き方は、Fog multiplier(フォグの強さ)とFog bias(濁りの偏り)という設定で調整します。フォグの色をわずかな緑や青に、強さをごく小さくすると、透明感を保ったまま自然な色ガラスや深い水を表現できます。強さを上げすぎると、薄い部分まで濃く色づいてしまい、真っ黒に近い見た目になるので注意しましょう。
初心者がやりがちなのが、色ガラスを作ろうとして屈折色そのものに色をつけてしまうケースです。屈折色に色を入れると、厚みに関係なく全体が均一に色づき、のっぺりした見た目になります。ガラスや水の「深いところほど濃くなる」自然な色づきは、フォグでしか出せません。
窓ガラスのマテリアルを作る
建築パースで最も出番が多い透過素材が、窓ガラスです。基本形は、屈折色をほぼ白、IORを1.5前後、そこに反射をうすく乗せる、という組み合わせです。この3点さえ押さえれば、住宅でも商業施設でも通用するガラスになります。
板ガラスの基本設定
窓ガラスは、屈折色を白に近い明るいグレーにして、光がほぼ全部通り抜けるようにします。IORはクラウンガラスの実値に合わせて1.5前後にすると、板ガラス特有の落ち着いた透け方になります。ここまでで「透明な板」ができあがります。
ただし、これだけだとガラスに見えません。ガラスは透明でも、表面に空や室内が必ず映り込むからです。反射(Reflection)をFresnel(見る角度で反射の強さが変わるしくみ)で薄く乗せると、正面はよく透け、斜めから見たふちは映り込む、というガラスらしい見え方になります。反射の作り方はVRayMtlの反射・屈折を設定するで詳しく解説しています。
昼の窓が透けたり映り込んだりする理由
昼間の窓が「透けて外が見える」か「鏡のように映り込む」かは、室内と室外のどちらが明るいかで決まります。外が明るく室内が暗いと、外の景色が透けて見えます。逆に室内のほうが明るいと、窓は室内を映す鏡のようになります。これは実物のガラスと同じ現象です。
そのため、窓ガラスの見え方を思いどおりにするには、マテリアルよりも周囲の明るさ、とくに空や太陽の光をどう作るかが効いてきます。外の景色をきれいに透けさせたいなら、屋外側にしっかりした明るさを用意することが大切です。空と光の作り方はV-RayのDome LightとHDRIで空を作るでまとめています。
影が真っ黒になるときの対処
窓ガラスを入れたのに、床に落ちる影が真っ黒になってしまうことがあります。これは、屈折マテリアルが標準では光を通さない影を落とすためです。透明なガラスなら、影もうすく光を通したほうが自然です。
このときはAffect shadows(影に透過を反映する設定)をオンにします。オンにすると、ガラスを通った光が床にうっすら届き、色ガラスなら影にその色がのる、という自然な見え方になります。窓や天窓を作ったのに室内が暗いと感じたら、まずこの設定を確認しましょう。
水面・水中のマテリアルを作る
水はガラスによく似ていますが、屈折率が1.33とやや低く、深さによって色が変わる点が違います。プール・浴室・水盤といった水景では、この2つの違いを押さえると一気にそれらしくなります。
水面の基本設定
水面は、屈折色を白、IORを水の実値1.33にして、反射をFresnelで乗せるのが基本です。IORが1.33だとガラスより光の曲がりがゆるやかで、水らしいやわらかい透け方になります。
水面の波は、屈折や反射の設定ではなくバンプ(表面の凹凸を疑似的に表現するしくみ)やノイズで作ります。平らなポリゴンにさざ波のパターンを乗せると、光がゆらぐ水面になります。波の大きさは、プールなら細かく、静かな水盤ならほとんど平らに、と場面で変えると自然です。
深い水・プールの色
プールの水が青緑に見えるのは、水が深いほど光が水中を長く進み、フォグの色が濃く乗るからです。浅い水盤ではほぼ無色透明なのに、深いプールでは底が青みがかって見えるのは、このフォグの効き方の差によるものです。
作るときは、Fog colorをうすい青緑にして、強さを深さに合わせて調整します。浅い水は強さをごく小さく、深いプールはやや強めにすると、実物のような「浅いところは澄み、深いところは色づく」グラデーションが出ます。ここでも色は屈折色ではなくフォグでつけるのが自然な見え方のコツです。
濡れた床・薄い水膜の表現
雨上がりの路面や、水をこぼした床のような「薄い水」は、屈折ではなく反射で表現します。数ミリの水膜は光をほとんど曲げないので、屈折を入れても効果が見えないうえ、計算だけ重くなるためです。
薄い水は、床のReflection(反射)を上げて映り込みを強くするだけで、それらしくなります。乾いた床より濡れた床のほうがまわりを鏡のように映すのは、水の膜が反射を強めているからです。屈折を使わずに反射で作る、と覚えておくと、無駄に重いシーンを避けられます。
カーテン・レースなど薄い透過を作る
レースやオーガンジーのような薄い布は、ガラスや水と同じ屈折では作りません。薄い布には、屈折を使わず「薄い透過(thin-walled、厚みのない透け)」やOpacity(不透明度)で軽く透けさせるほうが、きれいで軽い結果になります。
なぜカーテンに屈折を使わないか
布は光を曲げないので、屈折で作ろうとすると理屈に合いません。それでも屈折を入れると、計算が重くなるうえに、影が不自然に濃くなったり、向こう側がゆがんで見えたりと、かえって布らしさが失われます。カーテンやレースに屈折は不要、と最初に割り切るのが早道です。
薄い布に向いているのは、Opacity(不透明マップで一部を透かす方法)か、thin-walled(薄い透過)の設定です。どちらも光を曲げずに「向こうが透けて見える」状態を作れるので、レンダリングも軽くなります。
レースの透け方を作る
レースの織り目から向こうが透けて見える表現は、Opacityマップ(黒い部分が透け、白い部分が残るマスク画像)で作るのが確実です。糸の部分を白、すき間を黒にした画像を差し込むと、そのすき間からきちんと背景が透けます。
もっと単純な半透明のカーテンなら、屈折色をうすいグレーにするだけでも透け感が出ます。ポイントは、逆光で見たときにふわっと明るく透ける見え方を意識することです。カーテンは正面から見るより、光を背にしたときに透け感がいちばん映えるので、光の向きと合わせて調整するとよいでしょう。
薄い透過(thin-walled)の使いどころ
thin-walled(薄い透過)は、厚みのない一枚のポリゴンを軽く透けさせたいときに使います。障子紙、すりガラスのシート、ランプシェードの布のように、「厚みはほぼないが光を通す」素材に向いています。
この設定を使うと、内部での光の曲がりを計算しないぶん処理が軽くなり、影も自然になります。逆に、分厚いガラスや水のように厚みで色が変わる素材には向きません。厚みのある素材は通常の屈折、厚みのない布やシートは薄い透過、と使い分けると迷いません。
透過マテリアルでつまずくポイントについての編集部の所感
透過マテリアルのトラブルは、「真っ黒/真っ白になる」「影が真っ黒」「処理が重い」の3つにほぼ集約されます。編集部が公式ドキュメントの仕様と海外フォーラムの報告を突き合わせたところ、初心者が詰まる箇所はこの3つにきれいに分かれていました。ここでは、それぞれの原因と対処を整理します。
真っ黒・真っ白になるとき
ガラスをレンダリングしたら真っ黒、または真っ白になるのは、光がマテリアルを通り抜ける回数(Max depth)が足りないケースが多いです。ガラスは表と裏の2面を通るので、通過回数が少ないと途中で計算が打ち切られ、黒く抜けたような見た目になります。この回数を増やすと、奥まで光が通って正しく透けるようになります。
真っ白に飛ぶ場合は、屈折色が明るすぎるか、周囲が明るすぎることが原因です。屈折色を少しグレーに寄せる、または空や照明の明るさを見直すと落ち着きます。透過は反射や間接光の影響を受けやすいので、マテリアル単体ではなく光とセットで確認するのが近道です。
影が真っ黒になるとき
透明なガラスや水を置いたのに影が真っ黒になるのは、Affect shadows(影に透過を反映する設定)がオフのままだからです。標準では、屈折マテリアルは光を通さない不透明な影を落とします。
この設定をオンにすると、マテリアルを通った光が影に届き、透明なら影がうすく、色ガラスなら影に色がのります。窓・天窓・水面など、光を通してほしい素材ではまずここを確認すると、室内の暗さの多くが解決します。
ノイズが出る・処理が重いとき
透過マテリアルにザラついたノイズが出るのは、屈折glossiness(屈折のぼかし、すりガラスのような曇り具合)を強くかけたときに起きやすい現象です。曇りガラスやすりガラスを表現するとこの傾向が出ます。対処としては、Denoiser(ノイズを除去する後処理機能)を併用するのが定番です。
処理が重いと感じたら、透けさせる必要のない素材から屈折を外すのが最も効きます。とくに薄いカーテンや薄い水膜に屈折を入れているとムダに重くなるので、前の章で触れたように反射やOpacityに置き換えると軽くなります。
透過マテリアルの活用シーンと次の一歩
透過の作り分けができるようになると、住宅から商業、水景まで表現の幅が大きく広がります。最後に、案件ごとの使いどころと、次に学ぶとよいテーマを整理します。
案件別の使いどころ
住宅パースでは、窓ガラスと浴室・洗面まわりの水が透過の主役です。窓は屈折色白・IOR1.5・薄い反射、浴槽の水はIOR1.33で作ると、生活感のあるリアルな室内になります。レースカーテンを薄い透過で足せば、やわらかい光の入る部屋を表現できます。
商業施設や外構では、ガラスの什器やショーウィンドウ、エントランスの水盤、屋外のプールや池が出番です。深い水はフォグをやや強めに、大きなガラス面は反射のグレアを意識すると、空間の広がりや高級感が伝わりやすくなります。
次に学ぶこと
透過マテリアルは、反射・屈折の基本の上に成り立っています。屈折色やFresnelの意味をもう一段深めたい方は、VRayMtlの反射・屈折を設定するで土台を固めておくとよいでしょう。
透過を美しく見せる最も大きな要素は、じつは光です。ガラスや水がどう透けるかは、空と太陽の明るさで大きく変わります。仕上げの一歩として、V-RayのDome LightとHDRIで空を作るで、透過が映える光の作り方を身につけてみてください。
この記事のまとめ
透過マテリアルは、屈折色(どれだけ透けるか)・IOR(光がどれだけ曲がるか)・Fog(厚みでどれだけ色づくか)の3つで決まります。この3要素の役割を分けて考えることが、ガラス・水・布を作り分ける出発点になります。
素材ごとの勘どころは次の3点です。窓ガラスはIOR1.5前後+薄い反射、水はIOR1.33+深さで効くフォグ、レースやカーテンは屈折を使わず薄い透過やOpacityで軽く作ります。数値は水1.333・クラウンガラス1.50〜1.54という実際の屈折率を目安にすると、迷わず設定できます。
透過でつまずいたら、真っ黒はMax depth、影の真っ黒はAffect shadows、重さは不要な屈折を外す、という3つの対処を思い出してください。ここまで押さえれば、住宅の窓から屋外のプールまで、透ける素材をひととおり自分で作れるようになります。
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