Vectorworksの断面・立面をビューポートで生成する手順|切断設定から断面表現まで
Vectorworksの断面・立面をビューポートで生成する手順|切断設定から断面表現まで
Vectorworks(建築・インテリア・ランドスケープを扱う総合CAD)で3Dモデルをつくったとします。多くの人が最初に迷うのが「この立体から、どうやって断面図や平面図を出すのか」という部分です。2D CADのように断面線を一本ずつ引き直すのではなく、切る位置を決めるだけで断面図が生成されます。しかも、モデルを直せば図面のほうも追従します。
この記事では、断面ビューポート(モデルを切って断面図をつくる窓)を使い、断面図・平面図・立面図を3Dモデルから切り出す手順を解説します。切断線の引き方から、切断面の高さ、断面の見た目を図面らしく整える設定まで、公式ヘルプで確認した操作を順に追います。立面図だけは作り方が少し違うので、その使い分けもあわせて整理します。
3Dモデルから断面・平面・立面が「生成」できる仕組み
Vectorworksでは、モデルのどこを切るかを決めるだけで断面図や平面図が生成され、モデルを直すと図面のほうも更新できます。これがBIM(建物の情報を3Dで持ち、図面と連動させる考え方)による図面生成の核心で、この記事の守備範囲でもあります。
まずは「何を、どのコマンドで切り出すのか」を1枚で見てから、個別の手順に入ります。
| 切り出したい図面 | 使うもの | コマンド | 必要な製品 |
|---|---|---|---|
| 断面図(縦に切る) | 断面ビューポート | 垂直断面ビューポートを作成 | 業種別製品(Design Suite 表示) |
| 平面図(横に切る) | 水平断面ビューポート | 水平断面ビューポートを作成 | 業種別製品(Design Suite 表示) |
| 外観立面 | 標準ビューポート(切らない) | 前/後/左/右ビューで作成 | 全製品 |
| 室内立面(内装展開) | 室内展開図ビューポート | 室内展開図ビューポートを作成 | Architect |
ソース: Vectorworks公式ヘルプ「断面ビューポートの作成」(2026年7月24日確認)
断面ビューポートは「モデルを切って図面にする」ツール
断面ビューポートは、決めた切断面でモデルの縦または横の断面図をつくる機能で、モデル自体には手を加えません。公式ヘルプでも「モデルはそのまま(intact)に保ちながら断面図を作成する」と説明されています。縦に切るのが「垂直断面ビューポートを作成」、横に切るのが「水平断面ビューポートを作成」の2つのコマンドです。
ここで初心者がいちばん詰まるのが、モデルを直したときの動きです。線画(ワイヤーフレーム、線だけで表示する軽い描画)の表示は変更が自動で反映されます。一方で、断面ビューポートのように描画(レンダリング)を伴う表示は、モデルを変えると「最新でない状態」になります。つまり、変更しただけでは断面図は描き変わりません。
反映させるには更新の操作が必要です。方法は3つあります。ビューメニューの「ビューポートを更新」、オブジェクト情報パレット(選んだものの情報を表示・編集するパレット)の更新ボタン、ビューポートの右クリックメニューです。この一手間さえ覚えれば、2D CADのように断面を一から引き直す必要はなくなります。
この記事で扱う範囲と、図面化の基礎の置き場所
この記事は「断面・平面・立面をどう切り出すか」に集中します。シートレイヤ(提出用の紙にあたるレイヤ)やビューポートそのものの作り方という器の部分は、シートレイヤーとビューポートでモデルを図面化するで解説しています。図面化がはじめての方は、そちらを先に読むと流れがつかみやすくなります。
もう一点、前提として押さえておきたいのがエディションです。断面ビューポートの作成はFundamentals(もっとも基本のエディション)では使えず、業種別製品が必要になります。公式ヘルプの該当ページ上部にも「Design Suite」の表示があります(2026年時点)。どのエディションで何ができるかの詳しい比較は、判断材料として db.persc.jp/vectorworks/ にまとめています。
断面図を作る|断面ビューポートの作成手順
断面図は、モデルのどこを縦に切るかを切断線で決めて、「垂直断面ビューポートを作成」コマンドを実行すればつくれます。切る位置と向き、置き場所、初期の描画設定を順に決めていく流れです。
切断線を引いて断面の位置と向きを決める
最初にやることは、モデルのどこを切るかを切断線で示すことです。コマンドを選んだら、クリックで切断線の端から端までを指定し、黒い矢印で「残す側(見せたい側)」を指定します。この矢印の向きを間違えると、見たかった側と反対の断面が出てきます。最初は矢印の方向を確認する習慣をつけると迷いません。
切断線を引く元は3つから選べます。デザインレイヤ(作図用の作業レイヤ)の平面ビュー、断面でない既存のビューポート、クリップキューブ(立体を切り取って中を見る機能)です。公式ヘルプによれば、すでにある水平断面ビューポートから縦の断面ビューポートを作成することもできます。まっすぐ一本ではなく、途中で直角に折れた断面線も1本の線として引けるため、階段まわりのように切る位置をずらしたいときに役立ちます。
シートレイヤに置くか、デザインレイヤに置くか
つくった断面ビューポートをどこに置くかで、後の使い勝手が変わります。提出図面にするならシートレイヤ、詳細検討用ならデザインレイヤ、と覚えておくと迷いません。
シートレイヤに置くと、注釈や図面番号が自動で連携し、1枚の紙に複数の断面図を別々の縮尺で並べられます。提出図面はこちらが基本です。一方でデザインレイヤに置くのは、詳細断面をさらに作り込みたいときや、別ファイルから参照させたいときで、縮尺は置いたレイヤに従います。器そのものの詳しい扱いはシートレイヤーとビューポートでモデルを図面化するで解説しています。
表示と描画の初期設定
作成ダイアログでは、断面図の見え方を左右する設定を最初に決めます。ここで詳細レベル(どこまで細かく描くか)、レイヤやクラスの可視性(どの要素を表示するか)、背景・前景のレンダリングモード(描画方法)を指定します。
はじめのうちは、まず線画で図面として成立させることを優先すると失敗が減ります。質感や陰影の作り込みは後段の詳細プロパティで整えられます。最初の段階では「切れている形が正しく出ているか」を確認するだけで十分です。
平面図を作る|水平断面ビューポートと切断面の高さ
平面図は、モデルを水平に切って上から見た図で、「水平断面ビューポートを作成」コマンドと切断面の高さの設定でつくります。どの高さで切るかによって、窓や開口の見え方が変わる点がポイントです。
水平断面ビューポートで平面(プラン)を生成する
平面図をつくるには、「水平断面ビューポートを作成」コマンドでモデルを水平に切り、上から見たビューを生成します。切る元は、デザインレイヤ、クリップキューブ、断面でないビューポートから選べます。
平面図もモデルに連動するので、間取りを変更すればビューポートを更新するだけで平面図に反映されます。たとえば住宅案件で「リビングと個室の間仕切りを一枚ずらしたい」という変更が入っても、モデルを直して更新すれば、平面図を引き直す作業は発生しません。
切断面の高さ(Cut Plane Height)で見え方が変わる
平面図の印象を決めるのが切断面の高さです。切断面の高さ(Cut Plane Height)は、どの高さで水平に切るかの設定で、すべてを表示する設定か、指定した高さで切る設定から選びます。基準となる標高は、レイヤ・ストーリ・レベルのいずれかを指定します。
建築の平面図では、窓が切れる高さで切るのが一般的です。切断面を窓より上にすると窓が壁として閉じて見え、下にすると窓が現れません。同じモデルでも切る高さで開口の表現が変わります。だからこそ、平面図では「窓が正しく切れる高さになっているか」を最初に確認しておくと、後戻りが減ります。
上下の表示範囲を絞る
切断面から上下をどこまで見せるかは、「切断面より下/上の範囲」で決めます。切断面の下側と上側について、すべて表示するか、基準からの高さで範囲を限定するかを選びます。
下方向を絞ると、床下の配管や下の階が写り込まなくなり、平面図がすっきり読みやすくなります。逆に絞りすぎると必要な段差が消えることもあるため、まずは下方向だけ軽く限定して様子を見るのがおすすめです。
立面図を切り出す|断面と立面の使い分け
立面図は、外観と室内で作り方が分かれます。外観立面は切らない標準ビューポートで、室内立面は専用機能でつくるのが正解で、ここを取り違えると遠回りになります。
外観立面は「切らない」標準ビューポートで作る
建物を外から見た立面図は、断面ビューポートではつくりません。切らずに見せる外観立面は、断面でない標準ビューポートを前/後/左/右のビューにして作成します。
言いかえると、外観立面は「投影する方向を変えただけのビューポート」であり、切断の設定は不要です。断面ビューポートで外観立面を出そうとすると設定が噛み合わず時間を取られます。外から見た姿を出したいときは、標準ビューポートを選びましょう。
室内立面(インテリア立面)は専用機能で切り出す
内装の展開図(部屋の壁面を正面から見た図)には、室内展開図ビューポート(室内立面、Interior Elevation Viewport)を使います。これは縦の断面の一種で、部屋に置いたマーカー(向きを示す印)を囲む壁で範囲が自動的に決まります。
公式ヘルプによれば、1つの部屋で最大4面を同時に生成でき、マーカーとビューポートが自動で連携します。たとえばキッチンやサニタリーの内装展開を、四方向まとめて一気に出したいときに効率的です。ただし室内展開図ビューポートはArchitectが必要になります(公式、2026年時点)。内装展開を多用する場合は、エディションを確認しておくと安心です。
断面か立面かの判断
どれを使うかは、見せたいものから逆算すると迷いません。内部の構造や高さ関係を見せたいなら、縦の断面ビューポートです。外観の見付け(外から見た姿)を見せたいなら、標準ビューポートの前/後/左/右を使います。内壁面の展開を見せたいなら、室内展開図ビューポートです。
この3つを最初に切り分けておくと、「立面図が思ったように出ない」という詰まりの多くは避けられます。
断面表現を整える|断面の詳細プロパティ
切り出したままの断面は、切れている部分と奥が同じ濃さで、まだ図面として読みにくい状態です。断面ビューポートの詳細プロパティで、切断面を濃く・奥を薄くと整えると、図面らしい断面に仕上がります。
設定はタブに分かれています。全体像を見てから、優先度の高いところだけ触るのが早道です。
| タブ | 主に決めること | 最初に触るとよい設定 |
|---|---|---|
| 属性タブ(Attributes) | 切断面の見せ方、クラス割当、輪郭線 | 切断面の面・線をクラスで一括指定 |
| 範囲タブ(Extents) | 見せる奥行き・高さ・長さの範囲 | 奥行きを限定して手前を引き立てる |
| 表示タブ(Display) | 影・線の太さ・線種スケール・解像度 | 線の太さと白黒表示の調整 |
ソース: Vectorworks公式ヘルプ「断面ビューポートの詳細プロパティ」(2026年7月24日確認)
切断面の表現(属性タブ)
断面が図面らしく見えるかどうかは、切れている面(切断面)の見せ方で決まります。切断面の扱いは3つから選びます。「切断面を統合」「切断面を分離」「元図形の属性を使用」です。
そのうえで、属性クラスや構造体クラスといったクラス割当で、切断面の面や線を一括で制御します。「断面輪郭線を追加」を使うと、切れている輪郭がくっきりします。なお、公式には「マテリアル」「ポシェ」という名称の項目はなく、面とクラス割当で表現する設計です。名称で探すと見つからないので、クラスの割当から入るのが正解です。
切断面より奥・下の表現
切れている手前を引き立てるには、その向こう側を控えめにします。切断面より奥・下にあるオブジェクトは、面(Fill)と線種(Line Style)の見せ方を切り替えられます。元図形の面・線種をそのまま使うか、クラスの面・線種に従わせるかを選ぶ形です。
奥をクラスで薄い線・淡い塗りにすると、切れている手前が濃く残り、断面が読みやすくなります。手前と奥のコントラストがつくだけで、同じ断面でも図面としての伝わり方が変わります。
表示範囲(範囲タブ)で奥行きを絞る
奥の情報が多すぎて断面が煩雑なときは、見える奥行きを制限します。「切断面より奥/手前の範囲」を有限の奥行きに設定すると、切断面から一定の奥行きだけを表示できます。
奥行きを絞ると、遠くの壁や家具が重ならず、断面図が整理されます。もし質感まで作り込んだ断面パース(陰影や素材感のあるリアルな断面表現)にしたい場合は、表現側の作り込みが必要です。ここではRenderworks(Vectorworks標準のレンダリング機能)などを使います。そこは図面化とは別の工程なので、この記事では図面として読める状態までを目標にします。
断面ビューポートについての編集部の見解
公式ドキュメントを読み解くと、断面ビューポートでつまずく原因は操作そのものより「触る順番」にあると言えます。設定項目が多いぶん、全部を一度に整えようとすると手が止まりやすいためです。ここでは調査ベースで、初心者がつまずきにくい進め方についての編集部の所感を整理します。
まず優先すべきは、切断線の向きと切断面の高さです。断面図なら黒い矢印で残す側を、平面図なら窓が切れる高さを確認する。断面が「思った側と逆」「窓が消える」という詰まりは、この2つの初期設定に起因します。ここを最初に押さえるほど、後の表現をどれだけ整えるかにかかわらず、意図した図に近づきます。
次に、切断面の面(塗り)と奥の薄化だけを整えます。詳細プロパティは3タブに分かれていますが、図面として読める状態にするだけなら、属性タブでクラス割当をして、奥をクラスで薄くするところまでで十分です。影や線種スケールといった表示タブの微調整は、図面が成立してからで問題ありません。
最後に、前述のビューポート更新を工程として組み込むことです。更新を「保存の前に一度かける」くらいの習慣にしておくと、古い断面図のまま提出してしまう事故を防げます。
図面として仕上げる|寸法・注記・出力へつなぐ
切り出した断面・平面・立面は、寸法と注記を足し、出力までつなげてはじめて提出図面になります。断面図そのものはできあがっているので、ここからは情報を載せて書き出す工程です。
断面図に寸法と注記を足す
断面図に寸法や文字を入れるには、断面ビューポートの注釈(アノテーション、図面に付随する追記レイヤ)を編集します。注釈はモデルとは分けて管理されるため、寸法や文字を足してもモデルには影響しません。
寸法の入れ方は寸法記入の完全ガイド|寸法ツールと寸法規格、部屋名や仕上げなどの文字・引出線は文字・引出線・注記で図面に情報を入れるで解説しています。
図面を出力する
複数のシートをまとめてPDF・DWG・画像に書き出す方法は、印刷・PDF/DWG書き出し・発行で解説しています。断面・平面・立面をそろえたら、最後にここで一括出力すると、提出用の図面一式が仕上がります。
断面ビューポートを使い始めた先のシナリオ
断面ビューポートを使い始めると、図面が「描いて終わる成果物」から「モデルと連動して育つ資産」に変わります。ここで、使わなかった場合と使った場合の違いを具体的に描いておきます。
断面ビューポートを使わずに2Dで断面図を描いていると、設計変更のたびに断面線を引き直す作業が発生します。天井高を50mm下げる、開口をひとつ増やす、そのたびに関連する断面・平面をすべて手で直すことになり、直し忘れが図面同士の食い違いを生みます。
断面ビューポートを使いこなせるようになると、この関係が逆転します。モデルを一度直して更新をかければ、断面図も平面図も一斉に追従します。たとえば実施設計の途中で階高が変わっても、切り出しの設定はそのままに、更新だけで全図面が最新化されます。修正の多いプロジェクトほど、変更に強い図面のつくり方で作業時間の差が開いていきます。
さらに、切断面のクラス割当を自分の標準として整えておくと、次のプロジェクトでもその設定を流用でき、断面の見た目が案件をまたいで揃います。図面表現の型が手元にたまっていくことが、断面ビューポートを継続して使う先に広がる景色です。
まとめ
Vectorworksの断面ビューポートは、3Dモデルから断面図・平面図を切り出し、モデルの変更に図面を追従させるための機能です。要点を整理します。
切り出し方は対象で決まります。断面図は縦の断面ビューポート、平面図は水平断面ビューポート、外観立面は切らない標準ビューポート、室内立面は室内展開図ビューポート(Architect)を使います。平面図は切断面の高さと上下の表示範囲で見え方が決まり、窓が切れる高さに合わせるのが基本です。
図面として読める断面は、詳細プロパティの切断面の面・クラス割当と、奥を薄くする設定でつくります。そして、モデルを直したらビューポートは「最新でない状態」になるので、更新をかければ断面・平面・立面に反映されます。切断線の向きと切断面の高さを最初に確認し、切断面の面と奥の薄化を整え、保存前に更新をかける。この順番を習慣にすれば、変更に強い図面がつくれます。
建築知識の教科書