Twinmotionの4D施工フェーズ(Phasing)|工程シミュレーションを作る
建物の完成予想パースは作れても、「工事がどう進むか」を1本の映像で見せるのは難しいと感じたことはないでしょうか。Twinmotion(Epic Games製のリアルタイムレンダリングソフト)には、施工の段階を可視化するPhasing(フェージング)という機能があります。これを使うと、静止した3Dモデルに時間の流れを足して、基礎から仕上げまでの工事進行を4D(3次元+時間)で見せられます。無料で始められるのも、工程可視化の入口として心強い点です。
この記事では、Phasingグループの作り方から各フェーズの見せ方、建設車両の演出、動画への書き出しまでを手順で解説します。動画のカメラワークや書き出し設定の作り込みと、車両を実際に走らせる移動アニメは別の記事にまとめているので、ここでは「工程を4Dで組む」ところに集中します。
Twinmotionの4D施工フェーズ(Phasing)とは
Phasingは、3Dモデルに「時間」を足して施工の進行を再現する標準機能です。工事を段階(フェーズ)に分け、start(着工)からfinish(竣工)までの進み方を段階表示で見せられます。
Phasing機能の全体像は、「何のために使うか」と「似た機能との違い」を押さえると迷いません。工程可視化のねらいをつかんでおくと、このあとの設定で手が止まりにくくなります。
Phasingでできること|静的モデルを施工タイムラインへ
Phasingの役割は、完成済みの静的モデルを「工事の進行が見える4D」に変えることです。更地・基礎・躯体・外装・仕上げという実際の工事の流れを、そのままフェーズに置き換えていきます。図面や完成パースだけでは伝わらない「途中経過」を、時間の流れとして見せられます(Working With the Phasing Tool(Epic公式)、2026年7月現在)。
うれしいのは、追加のモデリングがいらない点です。すでにあるBIM(建物情報を3Dで統合管理する仕組み)やCADのモデルに、時間軸だけを後付けできます。Datasmith Direct Link(ホストソフトとTwinmotionをライブ同期させる仕組み)でRevitやArchicad、SketchUpとつないだモデルにも、そのまま適用できます。
でき上がった工程は、タイムラプス(時間を早送りした映像)動画やシーケンスとして書き出せます。書き出しの割り当て方は、この記事の後半で解説します。
PhasingとView Setsの違い(混同しやすいポイント)
PhasingとView Sets(ビューセット)は、どちらもシーンを切り替える機能ですが、見せたいものが違います。Phasingは「時間の進行」を、View Setsは「案のバリエーション」を見せる機能です。
View Setsはシーンのスナップショットで、各セットが独自のライティングやオブジェクトを持ちます。材料違いや家具配置違いなど、同じプロジェクトのA案・B案を比べたいときに使います(Phasing and View Sets(Epic公式)、2026年7月現在)。
つまり、工事の進み方を見せたいならPhasing、案を並べて比べたいならView Sets、と切り分けます。工程シミュレーションを作りたいこの記事では、Phasingを使います。
Phasingグループを作る基本手順
Phasingの作り方はシンプルで、Mediaドックでグループを起動し、フェーズをトラックに並べるだけです。まず用語の関係をつかんでおくと、あとの設定で迷いません。
| 用語 | 役割 |
|---|---|
| Phasing group(フェーズグループ) | フェーズとトラックをまとめた入れ物。1つの工程シミュレーション単位 |
| Phase(フェーズ) | ある時点の見え方を表す帯。既定の長さは40日 |
| Track(トラック) | フェーズを時系列で並べる帯。同時進行を見せたいときは複数用意する |
| Timeline(タイムライン) | 全体の時間軸。既定の長さは6年 |
| Scene graph(シーングラフ) | シーン内の全要素がレイヤーとして並ぶ一覧。ここで表示・非表示を決める |
Mediaドックからフェーズグループを起動する
Phasingグループは、画面下部のFooter(フッター)にある「Media」から起動します。MediaをクリックしてMediaドックを開き、「Phasing group」アイコンを選んで「Add」で追加します(Creating Phasing Groups(Epic公式)、2026年7月現在)。
グループを作ると、最初のフェーズが新しいトラック上に自動で生成され、タイムラインに表示されます。以降のフェーズは「Create Phase」アイコンで足していきます。フェーズは既定で40日の長さを持つので、実際の工期に合わせて後から調整します。
Datasmith Direct Linkでホスト(Revitなど)と同期しているモデルにPhasingを組む場合は、ホスト側でモデルを更新したあと、各フェーズの表示設定が崩れていないかを都度確かめておくと安全です。同期による要素の増減が可視性の設定に影響することがあるためです(Simulating Construction Sequences and Phasing(IMAGINiT)、2026年7月現在)。
フェーズ・トラック・タイムラインの関係を理解する
3つの構成要素は、役割で分かれています。フェーズはある時点の見え方、トラックはフェーズを並べる帯、タイムラインは全体の時間軸です。タイムラインは既定で6年の長さを持ち、表示は日・週・月・年でズームできます。
覚えておきたいのは、同じトラック上ではフェーズを重ねられないことです。複数のフェーズを同時に見せたいときは、トラック名の横にある「…」(三点)メニューから「New Track」を追加します。基礎工事と外構工事を並行して見せたい、といった同時進行の表現に使えます。
工事日程がまだ固まっていない段階では、タイムラインの日付マークを非表示にもできます。日付を伏せたまま「段階の順番」だけを見せられるので、企画初期の説明にも向きます。
開始日・期間を設定する(日程を持たせたいとき)
実際の工程表に合わせたいときは、Propertiesパネル(選択中の要素の設定を表示する欄)で日付を指定します。開始日は同パネルのカレンダーから選び、期間はフェーズの端をドラッグするか、Dateウィジェットで調整します。
工程表の日付をそのまま反映しておくと、施主説明のときに「いつ何が終わるか」を数字付きで見せられます。着工から引き渡しまでの各節目(マイルストーン)を、映像の時間軸と一致させておくと説得力が増します。
各フェーズの見え方をシーングラフで作り込む
Phasingの中身づくりは、「各フェーズで何を見せるか」を決める作業です。Scene graphの目アイコンで、そのフェーズまでに完成している部分だけを表示していきます。
ここが工程シミュレーションの品質を左右する山場。要素の整理と表示の積み上げ方が、そのまま完成度に出ます。
フェーズを選んで要素の表示・非表示を切り替える
見え方の設定は、タイムラインでフェーズを選んでから、Scene graphの目(Eye)アイコンで表示・非表示を切り替えます。Sceneパネルには全要素がレイヤーとして並ぶので、そのフェーズで完成済みの部分だけを表示にします。
大事なのは、設定が「選択中のフェーズ」だけに反映される点です。地形や既存建物のように全フェーズで見せ続けたい要素は、Ctrlキーを押しながら複数フェーズを選ぶと、一括で同じ表示状態にできます(Creating Phasing Groups(Epic公式)、2026年7月現在)。新しいフェーズを足すたびに、その時点で完成した要素を積み上げていくイメージで進めます。
施工工程に沿ったフェーズ設計の例
工程シミュレーションの型としては、更地→基礎→躯体→外装→仕上げの5フェーズに分け、各フェーズで完成済み部分だけを表示する組み方が扱いやすいです。未施工の部分は非表示にしておき、工事が進むごとに表示要素を増やします。
実務では、要素を工区・階・工程で分け、名前を付けてグループ化してから着手すると、フェーズごとの出し分けが安定します。海外の実務Tipsでも、この事前整理を飛ばすと、あとから「どの要素をどのフェーズで出すか」の管理が煩雑になりやすいと指摘されています(Simulating Construction Sequences and Phasing(IMAGINiT)、2026年7月現在)。躯体が階ごとに立ち上がる様子を見せたいときほど、この下ごしらえが効いてきます。
もう一歩リアルにしたいときは、各フェーズに合板・型枠・下地などの「工事中マテリアル」を割り当てます。表示のオンオフだけでは出せない“工事途中の質感”を段階で表現でき、竣工フェーズの仕上がりとの対比がはっきりします。壁がそのまませり上がるような造形アニメはPhasing単体では作れませんが、こうした可視性とマテリアルの組み合わせで工事らしさを近づけられます。
Phasingは「進行」だけでなく「バリエーション」も見せられる仕様なので、応用の幅も広いです。たとえば既存部分を後半フェーズで非表示にすれば、既存→解体→新築という改修・解体の工程も表現できます。新築案件だけでなく、リノベーション提案の説明にも使えます。
建設車両・仮設物を工程に同期させる演出
静止した建物だけでは「工事中」に見えません。では、重機や仮設足場はいつ出せばよいのでしょうか。必要なフェーズだけで表示すると、工事現場らしさがぐっと増します。
工事機材の見せ方には、「その時点で出ているか」を決める可視性の話と、「実際に動かす」移動アニメの話の2種類があります。この記事では前者を扱い、後者は役割分担として別機能にゆだねます。
車両・足場を「その工程のときだけ」出す
クレーン・掘削機・トラック・仮設足場・仮囲いといった工事機材は、必要なフェーズでだけ表示し、竣工フェーズでは非表示にします。こうすると「工事中→竣工」の対比が生まれ、映像に工程感が出ます。
Twinmotionのアセットライブラリ(あらかじめ用意された3D素材集)には車両や什器がそろっているので、それを配置し、フェーズごとの可視性で出し入れします。たとえば躯体フェーズではタワークレーンと仮設足場を出し、仕上げフェーズで足場をばらし、竣工フェーズで重機を片づける、といった流れが組めます。
「動かす」はAnimator/Pathsの領域(役割分担)
Phasingが担うのは、あくまで「その時点で何が見えているか」です。重機や車両をパスに沿って走らせる・動かすといった移動アニメーションは、Phasingの担当ではありません。
車両や人を実際に動かす手順は、TwinmotionのAnimator/Pathsで人・車を動かすで解説しています。Phasingで工程の骨組みを組み、動きはAnimator/Pathsで足す、と併用すると現場感がさらに高まります。役割を分けて考えると、それぞれの設定がすっきりします。
フェーズを動画に書き出して工程を届ける
作った工程は、動画に書き出してはじめて相手に届きます。Phasingグループを動画に割り当てれば、着工前の合意形成を後押しするタイムラプス映像になります。
割り当ての操作自体は数ステップで済みます。書き出しの画質やカメラワークまで作り込む段階は、この記事の範囲の外なので誘導先を示します。
Phasingグループを動画・シーケンスに割り当てる
書き出しは、MediaドックでVideo(動画)またはSequence(複数シーンをつなぐ機能)を選び、Detailsタブの「Phasing group」ドロップダウンで作成したグループを指定します。これでstart→finishの進行が、タイムラプスとして映像に反映されます(Applying Phasing to Videos or Sequences(Epic公式)、2026年7月現在)。
割り当てを解除したいときは、同じドロップダウンで「None」を選びます。1つのグループを複数の動画に使い回すこともできるので、俯瞰カットと歩行者目線カットで同じ工程を見せる、といった構成も組めます。
プレコンの合意形成を後押し|書き出し設定は動画記事へ
工程アニメが最も力を発揮するのは、着工前(プレコン=着工前の合意形成フェーズ)の説明です。「いつ・どの順で・何が建つか」を映像で共有できるため、施主・近隣・現場の関係者と認識をそろえやすくなります。図面や口頭説明では伝わりにくい工程の流れが、映像なら一目で伝わります。
対面での提示なら、Presentation(プレゼン用の書き出し)出力ではPhasingが既定で自動反映されるため、そのまま工程を見せられます(不要なら書き出し設定で無効化できます)。対面でのインタラクティブな提示そのものは、TwinmotionのPresenterでインタラクティブにプレゼンするで解説しています。
解像度・フレームレート・カメラワークなど動画の作り込みは、Twinmotionでウォークスルー動画を作るで解説しています。「Phasingで工程を組む→動画に書き出す→共有する」の順で進めると、手戻りが少なく仕上げられます。
Twinmotionの施工フェーズについての編集部の見解
公式ドキュメントと海外の実務Tipsを読み解くと、Phasingの位置づけは「専用の4D BIMソフトを買わずに、工程可視化の大部分を無料でカバーできる機能」だといえます。工程管理そのものを精密に組むツールではありませんが、合意形成のための“見せる4D”としては十分に実用的です。
コスト面の入りやすさは大きな利点です。Twinmotionは無料で始められるため、工程シミュレーションを試すのに初期投資がいりません。既存のBIM/CADモデルをDatasmithで取り込めば、モデリングをやり直さずに時間軸を足せる点も、実務の負担を抑えます。
一方で、割り切りも必要になります。Phasingの見せ方は「要素の表示・非表示」がベースなので、躯体がなめらかにせり上がるような造形アニメは苦手です。海外レビューの共通見解でも、工事中の質感は合板や型枠などのマテリアル切り替えで補う運用が推奨されています。緻密な施工手順のシミュレーションが目的なら専用ツール、プレゼンや合意形成が目的ならPhasing、という使い分けが現実的だと編集部は見ています。
向いているのは、設計事務所や工務店、BIM担当者で、施主や近隣への工程説明を映像で強化したい人です。すでにTwinmotionでパースを作っている人なら、同じモデルに追加作業で工程アニメを足せるので、導入のハードルは高くありません。
施工フェーズの活用シーンと次の一歩|合意形成はどう変わるか
Phasingを工程プレゼンに取り入れると、着工前の説明の景色が変わります。ここでは、使わなかった場合と使った場合の違いを描いておきます。
Phasingを使わない現場では、工程は工程表(バーチャート)と口頭説明で伝えるのが一般的です。関係者は数字と線表から完成形を想像するしかなく、「足場がいつ外れるのか」「隣地への影響はいつまでか」といった疑問が残りがちです。認識のズレが、後の変更要望や近隣調整の手戻りにつながることもあります。
Phasingで工程を4D化した現場では、同じ説明を映像で共有できます。近隣説明会で「重機が入るのはこの2か月間だけです」と映像で示せれば、言葉だけの説明より不安が和らぎます。施主打ち合わせでも、外装が仕上がるタイミングを映像で見せることで、内装の色決めのスケジュール感が共有しやすくなります。
次の一歩としては、Phasingで組んだ工程を動画に書き出し、関係者に共有する流れが自然です。工程を「作る→動画にする→届ける」まで一続きで回せるようになると、プレゼンのたびに資料を作り直す手間が減り、モデルの更新にも映像が追従します。工程可視化が制作フローに組み込まれた先では、合意形成にかかる時間そのものが変わっていきます。
まとめ
Phasingは、静的な3Dモデルに時間軸を足して、工事の進行を4Dで見せるTwinmotionの標準機能です。時間の進行を見せたいときはPhasing、案のバリエーションを比べたいときはView Sets、と使い分けます。
作り方の骨格は「Mediaドックでグループを起動する→フェーズをトラックに並べる→Scene graphの目アイコンで各フェーズの見え方を作る」の3ステップです。タイムラインは既定6年、フェーズは既定40日を目安に、実際の工期へ合わせて調整します。
建設車両や仮設足場は可視性で工程に同期させ、必要なフェーズだけ表示します。重機を実際に走らせる移動アニメはAnimator/Pathsにまかせ、Phasingは「出現・退場」に専念させると、それぞれの設定がすっきりします。
完成したフェーズは動画やシーケンスに割り当ててタイムラプス化でき、着工前の合意形成を後押しします。工程を組んだら動画に書き出し、関係者へ共有する流れまでつなげてみてください。