Twinmotionの4D施工フェーズ(Phasing)|工程シミュレーションを作る
Twinmotionの4D施工フェーズ(Phasing)|工程シミュレーションを作る
Twinmotion(Epic Games 製のリアルタイムレンダリングソフト)の Phasing(施工フェーズ)は、動かない建物モデルを「時間とともに建っていく工程」に変える機能です。基礎ができて、躯体が立ち上がり、外装が仕上がる。その進み方をタイムライン上で組み立て、着工前から施主や現場に見せられます。
この記事では、Phasingグループの作り方から、要素の表示切り替え、開始日と終了日の設定、そして建設車両や仮設材で現場らしさを出す演出までを、初心者の方が迷わない順序で解説しています。作った工程を動画ファイルに書き出す手順はTwinmotionでウォークスルー動画を作るで解説しているため、この記事では工程を組むところに集中します。
Twinmotionの4D施工フェーズでできること
Phasingは、シーン内の要素の「見える/見えない」を時間の流れに沿って切り替え、施工の進み方を1本のタイムラインで再現する機能です。3Dモデルに時間という軸を足すので、4D(3次元+時間)の工程シミュレーションと呼ばれます。
表示状態を時系列で切り替えるという考え方
Phasingの中身は、意外とシンプルです。各フェーズ(工程の段階)ごとに、どの要素を見せてどの要素を隠すかを記録しているだけです。基礎のフェーズでは基礎だけを表示し、躯体のフェーズで柱と梁を追加表示する、という具合に段階を積み上げていきます。
この仕組みがわかると、応用の幅が見えてきます。設計変更の比較にも同じ機能が使えるからです。案A・案Bを別々のフェーズに入れておけば、タイムラインをずらすだけで見比べられます。工程を見せる以外の使い道も持っている点が、Phasingを覚えておく価値になります。
3Dに時間を足す4D工程シミュレーションでできること
4Dというと難しく聞こえますが、やることは「いつ何が建つか」をモデルに紐づけるだけです。各フェーズに開始日と終了日を持たせると、日付を進めるのに合わせて建物が育っていくアニメーションになります。
これができると、静止画の工程表では伝わりにくかった「順番」と「重なり」が一目で伝わります。たとえば「外構工事と外装足場の解体が同じ週に重なる」といった段取りの問題を、着工前の画面上で先に見つけられます。図面や表よりも、動く3Dのほうが関係者の理解が早い場面は多いはずです。
無料でUnreal Engine基盤という強み
Twinmotion は Epic Games が提供するソフトで、個人利用も商用利用も無料です(Twinmotion公式、2026年7月10日現在)。4D工程シミュレーションのような機能は専用の建設管理ツールに載っていることが多く、そうしたツールは高価になりがちです。無料で始められて工程の可視化まで扱える点は、建築・BIM の現場にとって入りやすさになります。
描画は Unreal Engine(ゲーム開発でも使われる高品質な3D描画基盤)を土台にしているため、工程を見せながらも見た目のリアルさを保てます。料金プランや他ソフトとの費用比較といった金額の詳しい話は、無料のこのソフトでは論点になりにくいため、この記事では扱いません。
Phasingグループを作る基本手順
PhasingグループはMediaドックから作り、フェーズごとに要素の表示を切り替えるだけで工程が組めます。特別な設定ファイルや外部ツールは必要ありません。ここでは公式ドキュメントの手順に沿って、作成の流れを追います(Epic公式ドキュメント、2026年7月10日現在)。
Mediaドックでフェーズグループを追加する
Phasingは動画やパノラマと同じMedia(メディア)の仲間として管理されます。画面下のFooter(フッター)にあるMediaをクリックしてMediaドックを開き、その中のPhasing Group(フェーズグループ)アイコンを選びます。
- Footerの「Media」を開く
- Mediaドック内の「Phasing Group」アイコンをクリック
- 「Add」アイコンでフェーズグループを新規作成
グループを作ると、最初のフェーズが新しいトラックの中に自動で1つ生成されます。2つ目以降のフェーズは「Create Phase(フェーズ作成)」アイコンで足していきます。この最初の1フェーズが工程の起点になります。
フェーズごとに要素の表示・非表示を設定する
フェーズを選んだ状態で、そのフェーズで見せたいものだけを表示に切り替えます。切り替えは Scene(シーン)パネルの要素の左にある目(Eye)アイコンで行い、クリックするたびに表示と非表示が切り替わります。
ここが4Dの肝になる部分です。目アイコンで変えた表示状態は、選択中のフェーズに自動で保存されます。つまり「基礎のフェーズでは基礎だけ表示」「躯体のフェーズで柱を追加表示」と切り替えていくだけで、工程が積み上がっていきます。複数の要素をまとめて選んで一括で切り替えることもできるので、階層の多い建物でも作業がふくらみすぎません。
開始日・終了日とトラックで工程を組む
各フェーズに日付を持たせると、カレンダー上の工程として再生できるようになります。Properties(プロパティ)パネルで開始日をカレンダーから選び、終了日はタイムライン上でフェーズの端をドラッグして決めます。
複数の作業が同時に進む現場では、トラックを増やして並行させます。トラック名の横にある…(省略記号)から「New Track(新規トラック)」を選ぶと、別の工程を重ねて配置できます。組んだ工程を確認したいときは、Date(日付)ウィジェットをタイムライン上で左右に動かすと、その時点の状態がビューポート(作業画面)に表示されます。フルスクリーン表示(F12キー)に切り替えると、スライダーで工程の再生を確認できます。
建設車両と施工中マテリアルで現場を演出する
建物が段階的に現れるだけでは、まだ「工事現場」には見えません。重機の動きと仮設材を足すことで、実際に人と機械が動いている現場らしさが生まれます。ここがTwinmotionの工程シミュレーションを説得力ある映像に変えるポイントです。
重機を配置して動かす
Twinmotion には掘削機・トラック・クレーンといった建設車両のアセット(あらかじめ用意された3D素材)が含まれています。これらを各フェーズに配置し、動きを付けることで、その工程で何の作業をしているかが伝わります(IMAGINiT チュートリアル、2026年7月10日現在)。
たとえば掘削のフェーズには掘削機を、資材搬入のフェーズにはトラックを置くと、静止した敷地が「動いている現場」に変わります。重機や歩行者をパスに沿って歩かせる細かな動きの付け方はTwinmotionのAnimator/Pathsで人・車を動かすで解説しているので、動きを詰めたいときはあわせて読むと組み立てやすくなります。
仮設材・施工中マテリアルで段階を見せる
完成した壁だけを並べると、どこまで進んだ現場なのかが曖昧になります。そこで、施工の途中を表す仮設のマテリアル(表面の質感データ)を使います。合板や足場のような素材を途中段階の面に当てると、「まだ仕上がっていない部分」がひと目でわかります。
完成マテリアルと施工中マテリアルをフェーズごとに切り替えれば、外装が張られる前後の違いもはっきり見せられます。建物の見た目だけで工程の進み具合が伝わるようになり、日付の数字を読まなくても状況が理解できる映像になります。
Twinmotionの施工フェーズを編集部が使ってみました
公式手順と海外チュートリアルの共通見解をもとに、編集部が使ってみました。作り込みの前に、組み立ての流れとつまずきやすい点を共有します。
最も手が止まりやすいのは、フェーズを選ばずに表示を切り替えてしまう場面です。目アイコンの操作は「選択中のフェーズ」に保存される設計のため、狙いと違うフェーズを選んだまま作業すると、意図しない段階に表示状態が記録されてしまいます。フェーズを1つ切り替えるたびに、いま選んでいるフェーズ名を確認してから目アイコンを触るのが安全です。
もう1つは、モデル側の整理です。Revit や Archicad、SketchUp から Datasmith Direct Link(設計ソフトとTwinmotionをライブ同期させる仕組み)で読み込むと、要素が細かく分かれて入ってきます。フェーズ分けを想定して、設計ソフト側でカテゴリやレイヤーを整えておくと、Twinmotion での表示切り替えが一気にやりやすくなります。工程を組む前の下ごしらえが、後半の作業量を左右します。
施工フェーズの活用シーンと次の一歩
Phasingが最も効くのは、着工前のプレコン(着工前の準備・合意形成の段階)です。まだ何も建っていない時点で完成までの道のりを共有できると、関係者の認識をそろえやすくなります。
プレコンでの合意形成に使う
施主や近隣、施工チームに工程を説明するとき、言葉と紙の工程表だけでは伝わりきらないことがあります。動く4D工程シミュレーションがあれば、「この時期はこの部分を工事している」という状況を全員が同じ画面で確認できます。段取りの重なりや無理のある順序を着工前に見つけられるので、現場が始まってからの手戻りを減らすことにもつながります。
動画に書き出して届ける(次の一歩)
工程を組み終えたら、その場のプレビューで終わらせず、動画ファイルにして共有するのが次の一歩です。動画にしておけば、その場にいない関係者にも同じ内容を届けられます。カメラの動きや書き出し設定を含む動画化の手順はTwinmotionでウォークスルー動画を作るで解説しているので、工程が固まったらそのまま映像化に進めます。
Twinmotionの機能全体や基本操作から確認したい方は、Twinmotionとは?Unreal Engineベースの建築レンダラー徹底ガイドから入ると、施工フェーズがどの位置づけの機能かをつかめます。
まとめ
Twinmotionの4D施工フェーズ(Phasing)は、動かない建物モデルを「時間とともに建っていく工程」に変える機能です。要点を3つに絞ると、次のようになります。
- Phasingは各フェーズで要素の表示・非表示を記録する仕組みで、Media→Phasing Group→Addで作り、Sceneパネルの目アイコンで段階を組む
- 開始日・終了日とトラックで工程を並べ、建設車両や施工中マテリアルを足すと「動いている現場」になる
- 最も効くのは着工前の合意形成で、組んだ工程は動画に書き出して届けるのが次の一歩
無料で始められて工程の可視化まで扱えるTwinmotionは、建築・BIMの現場が4D工程シミュレーションを試す入口として実用的です。動く建築プレゼン全体の流れはTwinmotionの動画・アニメ・共有・VRガイドにまとめているので、プレゼン手段を広げたい方はあわせて確認してみてください。
建築知識の教科書