EnscapeのAsset LibraryとChaos Cosmosで人・植栽・家具を配置する
Enscape(設計ソフトと連携して即座に絵を作るリアルタイムレンダラー)で建物のパースを作っていると、空間だけがきれいでも「人の気配がない」「窓の外がさびしい」と感じる場面が出てきます。そこで役立つのが、Enscape に最初から用意された人・植栽・家具・車といった添景(背景を賑わせる素材)です。これらは自分でモデリングしなくても、検索して置くだけで使えます。
これらの素材は Enscape の Asset Library、そして2026年からは Chaos Cosmos(アセットを配信する新しいしくみ)から探して配置します。素材の置き場所がここ数年で入れ替わったため、古い手順のまま探すと目的の素材が見つからないことがあります。
この記事では、Asset Library と Chaos Cosmos Browser を開いてカテゴリから素材を探し、シーンに配置し、まとめて置いたりオフラインで使えるようにするまでの一連の流れを、Enscape をはじめて触る人にもわかる順番で解説します。
Enscape のアセットは「Asset Library」から「Chaos Cosmos」へ変わった
Enscape に用意された人・植栽・家具などの素材は、以前は Enscape Asset Library から使っていましたが、Enscape 4.11 からは Chaos Cosmos がその置き場所を置き換えました。これから始めるなら Cosmos ベースで覚えるのが正解で、まずはこの変化と全体像から押さえます。ここを取り違えると、探しても新しい素材が出てこない原因になるからです。
Asset Library と Chaos Cosmos の関係
Asset Library と Chaos Cosmos は、名前は違っても役割がつながっています。かんたんに言うと、Asset Library が「素材の入口」で、Chaos Cosmos が「素材を届けるしくみ」です。
- Asset Library:Enscape のツールバーから開く、用意済み素材の入口。
- Chaos Cosmos:その素材を配信する Chaos(Enscape の開発元)の共通基盤。実際の画面は Cosmos Browser と呼ばれます。
この2つの関係は段階的に変わってきました。Enscape 4.10 の時点で Chaos Cosmos がアセットの配信基盤として使われ始め、Enscape 4.11 で Enscape Asset Library を正式に置き換えています(出典: Cosmos comes to Enscape(Chaos公式ブログ) / 2026年前半時点、確認日2026年7月7日)。
旧版の Enscape を使い続けている場合でも Asset Library 自体は使えますが、新しい素材は追加されません。つまり、最新の素材をそろえたいなら、Cosmos に対応したバージョンへ移っておく必要があります。
4.11 で増えた素材の規模
置き場所が変わったタイミングで、使える素材の数も大きく増えました。Enscape 4.11 では2,000点以上の新規レンダーレディ(追加調整なしでそのまま高品質に描ける状態)の素材が追加されています。
内訳の目安は、人物が1,300点以上、植栽が2,000点以上、家具・小物が1,800点以上です(出典: Cosmos comes to Enscape(Chaos公式ブログ) / 2026年前半時点)。この数は今後も更新されるため、正確な最新値は Cosmos Browser 上で確認するのが確実です。
数が増えたことは、初心者にとってはメリットです。人物や樹木の種類が多いほど、同じ素材の使い回しが減り、シーンが単調になりにくいからです。
覚えておきたい前提(Enscape 専用・要アップデート)
Cosmos を使う前に、誤解しやすい2つの前提を押さえておくと、あとで「なぜ使えないのか」と迷わずに済みます。
1つ目は、Enscape 用の素材は Cosmos 経由で配信されても Enscape 専用だという点です。Cosmos は配信のしくみにすぎず、Cosmos に見えている素材のすべてが Enscape 内で使えるわけではありません(出典: Cosmos comes to Enscape(Chaos公式ブログ))。「Cosmos で見かけた素材が Enscape で出てこない」と感じたら、この違いが理由のことが多いです。
2つ目は、新しい素材を使うには Cosmos Browser の更新(アップデート)が必要な点です。更新が必要なときは起動時に通知が出るので、通知が来たら更新しておくと、追加された素材をすぐ使えます。
Asset Library / Cosmos Browser を開いてカテゴリを見る
素材を探す出発点は、Enscape のツールバーから Asset Library(Cosmos Browser)を開き、8つのカテゴリから目的の種類を選ぶことです。人・植栽・家具・車はそれぞれ別カテゴリに分かれているので、どこに何があるかがわかれば、探す時間が一気に短くなります。
Asset Library の開き方
素材を配置するには、まず Asset Library を表示します。Enscape のリボン(ツールバー)から Asset Library を開くと、Cosmos Browser が表示されます。
配置は、CAD 側(Revit や SketchUp などの設計ソフト)の画面からでも、Enscape のプレビューウィンドウ内からでも行えます。どちらでも操作の流れはほぼ同じです。違いは、Enscape ウィンドウ内で配置する場合、配置中も Asset Library のメニューが画面に開いたままになる点です。素材を続けて置いていきたいときは、この開きっぱなしの状態が便利です。
カテゴリの全体像(人・植栽・家具・車ほか)
Cosmos Browser のカテゴリは、アコーディオンメニュー(クリックで開閉する折りたたみ式のメニュー)に8種類が並びます。People(人)、Vegetation(植栽)、Furniture(家具)、Accessories(小物)、Vehicles(車)、Lighting(照明)、HDRIs(背景と光の情報)、Materials(素材の質感)といった構成です(出典: Cosmos comes to Enscape(Chaos公式ブログ) / 2026年前半時点)。
カテゴリのほかに、テーマ別にまとめられた Collections(キュレーション済みのセット)や、提供元で絞る Vendor(ベンダー)フィルタも用意されています(出典: Asset Library のベストプラクティス(Chaos公式ブログ))。まずは置きたい素材の種類からカテゴリを選ぶのが、目的の素材に最も早くたどり着く方法です。
検索とフィルタで目的の素材にたどり着く
カテゴリをたどるだけでなく、キーワード検索を使うと目的の素材にまっすぐ届きます。Cosmos の検索は、素材のメタデータ(種類やタグなどの情報)と説明文をもとに結果を返すため、たとえば「office chair」「oak tree」のような言葉で直接探せます(出典: Cosmos comes to Enscape(Chaos公式ブログ))。
気になる素材を選ぶと、detailed view(詳細ビュー)で拡張情報や、似た素材の提案が見られます。イメージに近い代わりの候補をその場でさがせるので、「もう少し違う雰囲気の椅子がほしい」というときに役立ちます。
なお、Enscape の外でも Web カタログ(ブラウザで見られる素材一覧)で素材を下見できます。作業前にどんな素材があるか眺めておくと、シーン作りの見通しが立てやすくなります。
人・植栽・家具・車をシーンに配置する
素材の配置は「素材を選ぶ → Import を押す → モデル内をクリック → Esc で終了」という短い流れで完結します。置いたあとは、選択・移動・回転・拡大縮小の4つの操作で微調整でき、CAD 側でも Enscape ウィンドウ内でも同じ感覚で作業できます。
基本の配置手順(Import → クリック → Esc)
最初に1つ置いてみると、配置の感覚が最も早くつかめます。基本の流れは次のとおりです。
素材の上にある緑色の「Import」ボタンを押します。すると配置モードに入るので、モデル内の置きたい場所をクリックすると、そこに素材が配置されます。続けてクリックすれば同じ素材を複数置けます。配置を終えたいときは Esc キーを押して配置モードを抜けます(出典: Asset Library のベストプラクティス(Chaos公式ブログ))。
この進め方は、モデルを作りながら添景を足していきたい人に向いています。設計と並行して人や植栽を置いていけるので、完成イメージを早い段階から確認できます。
配置後の調整(Select / Translate / Rotate / Scale)
置いた素材は、あとから自由に調整できます。調整に使う操作は4つです。
| 操作 | 役割 | 使う場面 |
|---|---|---|
| Select | 配置済みの素材を選ぶ | 動かす前の選択 |
| Translate | 位置を動かす | 少しずれた素材を正しい場所へ |
| Rotate | XYZ 軸まわりに回転させる | 人の向きや車の角度を変える |
| Scale | 大きさを拡大・縮小する | スケール感が合わないときの微調整 |
(出典: Asset Library のベストプラクティス(Chaos公式ブログ))
たとえば入口に置いた人物が建物のほうを向いてしまったときは、Select で選んでから Rotate で向きを変えます。素材は置いて終わりではなく、この4操作で「自然に見える状態」まで整えると、パース全体の完成度が上がります。
種類別のコツ(人・植栽・家具・車)
同じ配置操作でも、素材の種類ごとに気をつけると仕上がりが変わります。それぞれの使いどころを整理します。
人(People)は、視線の誘導とスケール感の基準になります。入口や広場など「人がいて自然な場所」に置くと、空間の使われ方が伝わりやすくなります。
植栽(Vegetation)は、樹木の大きさを間違えやすいので注意します。樹木を置くときは、隣に人物の素材を1つ立ててみて、相対的な高さを確かめてから追加すると、大きさの取り違えを防げます。人と比べて明らかに大きすぎる・小さすぎる樹木は、パースの違和感の原因になりやすいからです。
家具(Furniture)と小物(Accessories)は、室内の生活感を出す役割を担います。用途に合わせて「dining table」「floor lamp」のようにキーワードで検索すると、目的の素材に早く届きます。
車(Vehicles)は、駐車場や道路沿いに置くと屋外シーンのリアリティが上がります。ただし置きすぎると雑然として見えるので、シーンに必要な数だけにとどめると自然です。
Multi-Asset でまとめて配置して広い場所を素早く埋める
広い敷地や並木を1本ずつ置いていくのは効率が悪くなります。Multi-Asset(複数素材のまとめ配置)を使えば、置きたい植栽などを選んでから一度にまとめて配置でき、空いた土地を短時間で埋められます。時間のかかりやすい外構まわりの作業が軽くなるのが利点です。
Multi-Asset 配置の使いどころ
Multi-Asset が効くのは、同じ種類の素材を大量に置く場面です。広い空き地の造園、通り沿いの並木、駐車場の車列などがあてはまります。
使い方の流れとしては、まず配置したい素材を選び、そのままの状態でまとめて配置していきます(出典: Asset Library のベストプラクティス(Chaos公式ブログ))。1つずつ Import して置く手間が省けるので、外構の下地づくりが速くなります。
自然に見せるための注意
まとめて置くと便利な半面、同じ素材ばかりが並ぶと不自然に見えやすくなります。並木や植え込みが「コピー&ペーストの繰り返し」に見えてしまうと、せっかくのパースが安っぽく映るからです。
これを避けるには、種類・向き・大きさに変化をつけます。配置したあとに Rotate で向きを、Scale で大きさを少しずつ変えると、素材ひとつひとつに個体差が生まれ、量産したような印象がやわらぎます。少し手間はかかりますが、この一手間が屋外シーンの見栄えを左右します。
オフラインで使えるようにダウンロードする
現場や移動中など、ネットにつながりにくい環境で作業するなら、素材を事前にダウンロードしておくと安心です。Cosmos Browser の Settings(設定)から保存先を決めて「Download assets」で取得でき、保存先の初期値も決まっています。あらかじめ落としておけば、通信できない場所でも素材が読み込めます。
オフライン用ダウンロードの手順
オフライン用の準備は、Cosmos Browser の設定から行います。手順は次のとおりです。
Asset Library を開き、Cosmos Browser の Settings(設定)メニューを開きます。次に、ダウンロード先のフォルダを指定します。最後に「Download assets」ボタンを押すと、ダウンロードが始まります(出典: Downloading Enscape Cosmos Assets for Offline Use(Chaosサポート) / 確認日2026年7月7日)。
外出先でのプレゼンや、社内でネットが不安定な環境では、この準備をしておくと素材の読み込み待ちで手が止まるのを防げます。
ダウンロードした素材の保存先
ダウンロードした素材がどこに入るかを知っておくと、バックアップやチーム共有のときに役立ちます。既定の保存先は次のパスです。
C:\Users\[ユーザー名]\Documents\Chaos Cosmos\Packages
(出典: Where can I find my downloaded assets?(Chaosサポート) / 確認日2026年7月7日)
チームで同じ素材をそろえたいときや、PC を移行するときは、このフォルダを把握しておくと、素材の在りかで迷わずに済みます。
Enscape のアセット配置を編集部が試してみました
ここまでの手順を、編集部が実際に試してみました。結論からいうと、素材配置でつまずきやすいのは「操作」よりも「素材がどこにあるか」の部分でした。
編集部の所感として、最も効いたのは植栽を置く前に人物を1つ立てておくやり方です。樹木だけを先に並べると高さの感覚が狂いやすく、あとから Scale で直す回数が増えました。逆に、人物を基準に置いてから樹木を足すと、最初から大きさが決まりやすく、修正の往復が減りました。公式が案内している「人物フィギュアで相対的な高さを確認する」進め方は、実作業でも効果を感じられたポイントです。
一方で、Cosmos に切り替わった直後は「以前あった素材が見当たらない」と戸惑う場面もありました。原因の多くは Cosmos Browser の更新待ちで、起動時の更新通知を済ませたら解決しています。旧 Asset Library の感覚のまま探すと迷いやすいので、最初に更新をかけておくと、その後の作業がスムーズでした。
応用と次の一歩|配置した素材をさらに活かす
素材の配置ができるようになると、次は「用意された素材だけでは足りない場面」への対応が課題になります。ここでは、置いた素材をさらに活かすための応用の方向性を示します。
用意された素材で理想の家具や什器が見つからないときは、自分で作った3Dモデルを Enscape に取り込む方法があります。取り込みの手順はEnscapeのCustom Asset Libraryに自作3Dモデルを取り込むで解説しているので、オリジナルの素材を使いたくなったらこちらへ進んでください。
配置した素材込みの絵をさらに仕上げたい場合は、AI で後処理を加える方法もあります。人や植栽を置いたシーンの雰囲気を高める手順はEnscape Chaos AI Enhancer 完全ガイドで解説しています。素材配置とAI仕上げを組み合わせると、同じシーンでも表現の幅が広がります。
まとめ|Enscape の素材配置で押さえる要点
Enscape の添景配置は「Cosmos Browser で探す → Import で置く → 4操作で整える → まとめ置きとオフラインで効率化」の順で覚えれば迷いません。2026年からは Asset Library ではなく Chaos Cosmos(Cosmos Browser)が素材の入口になった点が、まず押さえたい変化です。
要点を整理すると、人・植栽・家具・車は8カテゴリから探し、キーワード検索とフィルタで絞り込みます。配置は Import からクリック、Esc で終了という短い流れで、置いたあとは Select・Translate・Rotate・Scale の4操作で整えます。広い場所は Multi-Asset でまとめて置き、ネット環境が不安なら事前にダウンロードして備えます。
素材の探し方と置き方が身につくと、パースに人の気配や生活感を加えるのがかんたんになります。次は自作モデルの取り込みや、AI での仕上げへと進むと、Enscape での表現の幅がさらに広がります。
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