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3DCG · Enscape

Chaos AI Enhancerでレンダー画像を仕上げる完全ガイド

編集部 読了 約13分

Enscape(設計中の画面をそのまま美しい画像にできるリアルタイムレンダラー)で作った画像を、もう一歩リアルに寄せたい。でも外部のAIツールに書き出して往復するのは面倒。そう感じたことはありませんか。人物がのっぺりして見えたり、植栽が作り物っぽかったり、広い壁や床が平坦に映ったりする悩みは、多くの人がぶつかるところです。

Chaos AI Enhancer は、その仕上げをEnscapeの中だけで完結させる純正機能です。完成したレンダー画像に後からAIをかけて、人物・植栽・広い面のリアルさだけを引き上げてくれます。

この記事では、Chaos AI Enhancer で何ができるのか、ビューポートからの操作手順、強度(Creativity Mode)の決め方、そして向く用途と限界までをまとめて解説します。

Chaos AI Enhancerは「仕上げ」の道具|何を変えて何を変えないか

Chaos AI Enhancer が変えるのは、人物・植栽・広い面の見た目だけです。構図や寸法といった設計の中身には手を付けません。この「変える/変えない」の線引きを先に押さえておくと、使いどころを外しません。

完成画像を後処理でリアルにする機能

Chaos AI Enhancer は、できあがったレンダー画像を Chaos Cloud(Chaos社のクラウド処理基盤)に送り、そこでAIをかけてリアルさを底上げする後処理ツールです。後処理というのは、画像を一度描き終えたあとに、追加で手を入れる工程を指します。

ありがたいのは、別のアプリに書き出して戻す作業がいらない点です。Enscape の中からそのまま実行できる純正機能なので、ツールを行き来する手間が減ります。同じ機能は V-Ray や Corona といったChaos社の他のレンダラーにも組み込まれています。

出力は「元画像」と「エンハンス版(AIで仕上げた画像)」の2枚が返ってきます。元画像がそのまま残るので、仕上げが気に入らなければ元に戻せますし、2枚を並べて見比べながら詰められます(出典: Chaos公式ブログ「Introducing Chaos AI Enhancer」、2026年7月現在)。

強化される3つの要素:人物・植栽・大きな面

AIが手を入れる対象は、3D人物・植栽・大きな面の3つです。それ以外の部分には影響を与えない設計になっています。

処理の流れとしては、クラウド側が画像の中から人物・植栽・広い面を自動で見つけ出し、そのうちどれを強化するかを選べます。触りたくない要素を外せるので、必要なところだけをピンポイントで良くできます。

とくに3D人物は細かく調整できます。年齢層・性別・民族・髪色・表情を指定できるため、プレゼン相手や現地のイメージに人物を寄せられます。たとえば高齢者向け施設の内観なら年齢層を上げる、といった使い方ができ、画面の説得力が上がります(出典: Chaos公式ブログ「Introducing Chaos AI Enhancer」、2026年7月現在)。

構図・寸法・設計は変えない(生成ツールとの違い)

大切なのは、Chaos AI Enhancer が構図・寸法・設計そのものを変えないことです。あくまで完成画像への後処理なので、部屋の広さや窓の位置がAIによって勝手に描き替わることはありません。設計に忠実な画像がほしい場面でも安心して使えます。

ここが、設計案そのものをAIで作り出す生成ツールとの決定的な違いです。設計案を複数パターン生成して探るタイプのAIツール(Verasなど)とは役割がまったく別物になります。この使い分けは記事の後半で詳しく解説しています。

使う前の前提|対応バージョン・ライセンス・解像度

Chaos AI Enhancer は Enscape 4.1 以降で使え、有効な Chaos ライセンスでのログインが必要です。さらに画像サイズにも条件があり、これを満たしていないと実行できません。まだ使えていない場合、たいていはこのどれかが原因です。

Enscape 4.1以降で使える(2024年7月31日登場)

Chaos AI Enhancer は、Enscape 4.1 で導入されました。Enscape 4.1 は2024年7月31日にリリースされたバージョンです。つまり、4.1 より前のバージョンを使っていると、この機能はそもそも画面に出てきません。

もしメニューに見当たらないときは、まず自分のEnscapeのバージョンを確認してみてください。古いままなら4.1以降へ更新すれば表示されるようになります(出典: Chaos公式プレスリリース「Chaos launches Enscape 4.1」、2026年7月現在)。

有効なChaosライセンスとChaos Cloudが必要

実行には、トライアル(試用)ではない有効な Chaos ライセンスでのログインが必要です。処理はChaos Cloud上で走る仕組みなので、ライセンスとログインが通っていないと動きません。

クラウドで処理する以上、オフラインでは使えない点も押さえておくと安心です。ネットにつながっていない環境ではエンハンスを実行できないため、外出先での作業には向きません。

なお、Premium や Collection のトライアルには、テスト用として100 Chaos Credits(クラウド処理に使うクレジット)が付きます。これから導入を検討している段階なら、この試用枠でどんな仕上がりになるかを先に確かめられます(出典: Chaos公式ブログ「Introducing Chaos AI Enhancer」、2026年7月現在)。

解像度条件:512px以上、Enscapeは最大2048×2048px

画像サイズには下限と上限があります。下限は、幅または高さのどちらかが512px(ピクセル。画像の細かさを表す単位)以上であること。小さすぎる画像はエンハンスの対象になりません。

上限はソフトによって違います。Enscape の場合は 2048×2048px までです。V-Ray や Corona では最大4096pxまで対応するので、より大きな画像を仕上げたいときはそちらが有利になります。

Enscape の上限がやや控えめなのは、リアルタイム動作を軽く保つための方針を反映したものです。プレゼン用の静止画であれば2048pxでも十分実用的なので、多くの場面では問題になりません(出典: Chaos公式ブログ「Introducing Chaos AI Enhancer」、2026年7月現在)。

基本の使い方|ビューポートから実行する手順

操作はスクリーンショットを撮る感覚とほぼ同じで、ビューポート(Enscapeの表示画面)のツールバーからボタンを押すだけです。処理はクラウドで進むので、待っている間もEnscapeの作業を止めずに続けられます。

ビューポートのツールバーから実行する

仕上げたいアングルを画面に整えてから、ビューポートのツールバーにあるAI Enhancerのボタンを押します。スクリーンショットボタンと似た操作感なので、Enscapeを使い慣れていれば迷いません。

ボタンを押すと、処理中のステータス表示が出ます。ここから先はクラウド側の作業になるため、その間にアングルを変えたり別のビューを準備したりと、手を動かし続けられます。仕上げ待ちで手が止まらないのは、実務のテンポを崩さないうえで効いてきます。

強化する要素を選び、人物を細かく指定する

エンハンスを実行すると、検出された人物・植栽・広い面の中から、どれを強化するかを選べます。全部に一律で効かせるのではなく、良くしたい要素だけを選ぶ引き算の使い方も有効です。

人物を選んだ場合は、年齢層・性別・民族・髪色・表情を指定できます。これはプレゼン相手や物件のイメージに人物を寄せるための調整です。たとえば商業施設の内観なら来店客のイメージに、住宅なら想定する家族像に合わせると、画面から伝わる雰囲気が現実に近づきます。

一方で、せっかく置いた植栽やインテリアの見え方を保ちたいなら、その要素は選ばずに人物だけ整える、という選び方もできます。どこに手を入れてどこを残すかを自分で決められるのが強みです。

元画像とエンハンス版の2枚を受け取る

処理が終わると、元画像とエンハンス版の2枚が手元に届きます。この2枚がそろうことには実務的な意味があります。効き具合が強すぎたときに、元画像と見比べて調整の当たりを付けられるからです。

おすすめの進め方は、まず控えめな強度で実行し、2枚を並べて確認することです。行き過ぎだと感じたら強度を下げて実行し直せば、実物から離れすぎない仕上がりに寄せられます。次の章で、その強度の決め方を掘り下げます。

強度の決め方|Creativity Modeで「磨く」か「足す」か

仕上がりの印象は Creativity Mode(AIの効き具合を決める設定)で大きく変わります。低めは今ある見た目を磨く方向、高めは風化や質感パターンなど新しいディテールを足す方向です。用途に応じてこの一手を選ぶのが肝心です。

低め=既存を磨く(設計の忠実さ優先)

Creativity Mode を低めにすると、AIはいまあるジオメトリ(3Dモデルの形状)を磨く程度に働きます。形や配置はそのままに、質感の粗さや破綻を抑えて自然に整える方向です。

これは、設計に忠実であることが最優先になる場面に向いています。たとえば実施設計(実際に建てるための詳細設計)のプレゼンでは、勝手にディテールが足されると打ち合わせで混乱を招きます。「見た目は良くしたいが、設計内容は1ミリも動かしたくない」というときは低めが安全です。

高め=ディテールを足す(雰囲気・訴求優先)

Creativity Mode を高めにすると、AIは風化や質感パターンといった新しいディテールを画像に付け足します。素材にリアルな経年感が出たり、面の質感が豊かになったりして、1枚の訴求力が増します。

向いているのは、コンペの初期提案やムード重視の1枚など、雰囲気で伝えたい場面です。まだ設計が固まりきっていない段階で世界観を見せたいときには、この盛り方が効きます。

ただし足しすぎると、実物や設計意図から離れた見た目になります。どこまで許容できるかは、後半の限界の話と合わせて判断してください。

迷ったら弱め→見比べて上げる

強度をいくつにすればいいか迷ったら、まず弱めで実行するのがおすすめです。弱めから始めれば、元画像から離れすぎるリスクを抑えられるからです。

Chaos AI Enhancer は元画像とエンハンス版の2枚が返る仕組みでした。この特性を活かし、弱め→見比べる→物足りなければ少し上げる、という順で詰めていくと、狙いどおりの1枚に近づけられます。最初から高めに振って一発で決めようとするより、失敗が少ない進め方です。

Chaos AI Enhancerを編集部が試してみました

Chaos AI Enhancer は仕上げ工程の便利な一手ですが、万能ではありません。公式情報を突き合わせた編集部の所感として、得意なところと注意したいところを整理します。

一番の価値は、外部AIへの往復がなくなる点だと編集部では見ています。従来は「Enscapeで書き出す→別のAIツールに読み込む→仕上げる→戻す」という流れが一般的でしたが、その工程がEnscapeの中に収まります。プレゼン前日に画像を何枚も仕上げ直すような場面では、この時短が効いてきます。

一方で気をつけたいのは、人物指定はあくまでイメージ調整であって、実在の人物を再現するものではない点です。年齢層や民族を指定できると聞くと具体的に感じますが、特定の誰かを描くわけではありません。ここを取り違えると、期待とのズレが生まれます。公式ブログでも、最良の結果はChaos Cosmos(Chaos社の3Dアセットライブラリ)と組み合わせたときに得られるとされており、下地となるアセットの質が仕上がりを左右する構造は理解しておきたいところです(出典: Chaos公式ブログ「Introducing Chaos AI Enhancer」、2026年7月現在)。

向く用途・向かない用途|使い分けと限界

Chaos AI Enhancer は、人物・植栽・広い面の見栄えを短時間で底上げしたい仕上げ工程で力を発揮します。反対に、設計案そのものを作り替えたい場面や、正確な寸法を伝えることが主目的の図面には向きません。得意と不得意を分けて使うのが賢い付き合い方です。

向く:プレゼン画像・バッチ・動画の底上げ

AIで最適化したアセットは、スクリーンショット・バッチレンダー(複数のアングルをまとめて出力する処理)・動画エクスポートで使えます。1枚の静止画だけでなく、複数枚や動画の見栄えもまとめて底上げできるということです。

とくに相性が良いのが Chaos Cosmos のアセットと組み合わせる使い方で、公式でも結果が良くなるとされています。クライアントに設計意図を早く伝えたい仕上げ工程では、こうした底上げが説得力の差になります(出典: Chaos公式プレスリリース「Chaos launches Enscape 4.1」、2026年7月現在)。仕上げ前にCosmosで人や植栽を置く手順はEnscapeのAsset LibraryとChaos Cosmosで人・植栽・家具を配置するで解説しています。

向かない:設計変更・厳密な寸法伝達

Chaos AI Enhancer は後処理なので、構図・寸法・設計を変えることはできません。プランを描き替えたい、窓の位置を検討したい、といった設計そのものを動かす作業には使えません。

厳密な寸法を相手に伝えるのが目的の図面にも不向きです。前述のとおり人物指定はイメージ調整であり、実在の人物を再現するものではありません。「見た目を盛る」機能であって「正確さを担保する」機能ではない、と割り切って使ってください。

Veras・マテリアル生成との使い分け

設計案そのものを複数パターン生成して探りたいなら、生成ツールの Veras が向きます。Veras は発想を広げる探索フェーズ用、Chaos AI Enhancer は最終レンダーの仕上げ用と、役割で分けて考えると迷いません(出典: Chaos公式ブログ「How to enhance Enscape visuals with Veras and Chaos AI Enhancer」、2026年7月現在)。

マテリアル(素材の質感)そのものをAIで作り出す話は、Chaos AI Enhancer とは別の機能が担います。素材を一から生成したいときはEnscapeのAI Material Generatorで素材をつくるで解説しています。結論をまとめると、探索はVeras、素材づくりはMaterial Generator、そして最後の仕上げがChaos AI Enhancerという役割分担になります。

応用シーン|仕上げを標準工程に組み込む次の一歩

Chaos AI Enhancer を一度きりの飛び道具にせず、仕上げの標準工程に組み込むと、プレゼンの質が底上げされます。ここでは実務に持ち込むときの次の一歩を示します。

現実的なワークフローとしては、Enscapeで構図とライティングを固める、Chaos Cosmosで人や植栽を配置する、最後にChaos AI Enhancerで仕上げる、という3段の流れが組みやすいです。下地のアセットが整っているほどエンハンスの効果が乗るので、仕上げ工程だけを頑張るより、配置の段階から質を上げておくと結果が安定します。

社内での運用を考えるなら、案件の性格ごとに強度の目安を決めておくのも有効です。実施設計のプレゼンは低め、コンペ初期のイメージ提案は高め、といった基準をチームで共有しておけば、担当者ごとの仕上がりのばらつきを抑えられます。Enscapeとアセット・Chaos連携の全体像はEnscapeのアセット・Chaos連携ガイドで解説しています。

まとめ|Chaos AI Enhancerを仕上げの一手に組み込む

Chaos AI Enhancer は、Enscape 4.1 以降で完成レンダーの人物・植栽・広い面をAIで底上げする仕上げ機能です。強度は Creativity Mode で「磨く/足す」を選び、解像度とライセンス条件を満たせば、別アプリへの往復なしで使えます。仕上げ工程の定番の一手として組み込むと、プレゼンの説得力が上がります。

要点を整理すると、次の5つになります。

  • 変えるのは人物・植栽・広い面、変えないのは構図・寸法
  • 前提はEnscape 4.1以降・有効なChaosライセンス・512px以上(Enscapeは最大2048×2048px)
  • 強度はCreativity Modeで調整し、まず弱めで見比べる
  • 向くのはプレゼン・バッチ・動画の底上げ、向かないのは設計変更・厳密な寸法伝達
  • 探索はVeras、素材づくりはMaterial Generator、仕上げがChaos AI Enhancer

Enscapeの中だけで仕上げまで完結できるようになったことで、外部ツールへの往復に取られていた時間を、設計そのものの検討に回せます。まずは試用枠で1枚を仕上げ、元画像との違いを自分の目で確かめるところから始めてみてください。