AutoCAD Web/モバイル活用ガイド|クラウド持ち出し・共有ビュー・赤入れ取り込み
AutoCAD Web/モバイル活用ガイド|クラウド持ち出し・共有ビュー・赤入れ取り込み
事務所のパソコンでしか図面を開けず、現場で最新の図面をすぐ確認できない。相手にDWGファイルをそのまま渡すのは、改変や流用が心配で気が引ける。戻ってきたPDFの赤入れを、また手作業で図面に写し直すのが手間になっている。図面を持ち歩き、社外とやり取りする場面では、こうした悩みがつきまといます。
この記事では、AutoCAD Web/モバイルとクラウド保存を使い、図面を持ち出す方法を扱います。DWGを渡さず共有ビューでレビューを集め、戻ってきた赤入れを取り込むまでの流れを、建築の現場フローに沿って解説します。
なお、これらの機能が自分の契約プランで使えるかどうかは、料金やエディションの話になります。ライセンス条件はdb.persc.jp のAutoCADページで確認してください。この記事では操作と運用の流れに絞ります。
AutoCAD Web/モバイルで図面はどこまで扱えるか
AutoCAD Web/モバイルは、デスクトップ版の代わりではなく、持ち出し・確認・軽い編集の窓口です。作り込みはデスクトップ、外での確認と共有はWeb/モバイル、と役割で分けると迷いません。
| 環境 | 主な役割 | 向く作業 |
|---|---|---|
| AutoCAD Web(ブラウザ) | 出先・自宅からの閲覧と編集 | 画層・寸法・ブロックの調整、レビュー |
| AutoCAD モバイル(スマホ/タブレット) | 現場での確認・照合 | 表示、計測、注釈、軽微な編集 |
| デスクトップ版 | 本格的な作図・作り込み | 3D、高度なコマンド、重い作業 |
ブラウザ版(AutoCAD Web)でできること
AutoCAD Web はインストール不要で使えるブラウザ版です。ChromeやFirefoxなどのブラウザで動作し、画面はデスクトップ版に似ていて、プロパティパネル・リボン・コマンドラインが用意されています。
編集できる範囲も、単なるビューアより広く取られています。画層の作成・ロック・名称変更・削除、寸法(水平・垂直・平行・半径)の追加と修正、ブロックの作成・挿入・修正やブロックライブラリの利用、シートセットの送受信ができます。DWGを変更せずにフィードバックを追加することもでき、レビュー用途にも使えます。
たとえば自宅のパソコンからブラウザで図面を開き、施主コメントを反映した寸法の修正や、通り芯の画層表示を切り替えての確認まで、事務所に戻らずに進められます。
スマホ・タブレット版(モバイルアプリ)でできること
AutoCAD モバイルアプリは、現場で最新図面を確認し、現物と照合するための環境です。図面の表示・注釈・軽微な編集が中心で、その場で寸法を計測したり、気づいた点を注釈として残したりする使い方に向いています。
一方で画面が小さいため、本格的な作図には不向きです。編集は軽微な範囲にとどめ、細かい修正は事務所のデスクトップで行う、という切り分けが実務的です。たとえば内装工事の現場でタブレットに図面を表示し、実際の建具位置とのずれをその場でメモしておく、といった確認作業がモバイルの得意分野になります。
デスクトップ版との役割分担
作り込みと重い処理はデスクトップ、持ち出しと確認はWeb/モバイル、という分担が基本になります。3Dソリッドの編集や高度なコマンドを使う作業、大規模な図面の重い処理はデスクトップ版が前提です。
この役割分担を成立させる土台が、クラウド保存です。同じDWGを場所を変えて触るには、図面をクラウド上に置いて、事務所も現場も同じファイルを開く仕組みが要ります。その持ち出し運用の作り方を、次に見ていきます。
ソース: AutoCAD Web overview / AutoCAD Web features(いずれも2026年7月時点)
クラウド保存で図面を持ち出す(Autodesk Docs/Drive・OneDrive・Google Drive・Dropbox・Box)
AutoCAD Web/モバイルは主要なクラウドストレージに置いたDWGを直接開けます。図面の置き場所を1か所に決めることが、版が錯綜しない持ち出し運用の要になります。
| 対応クラウド | AutoCAD Web | モバイルアプリ |
|---|---|---|
| Autodesk Drive / Autodesk Docs | ○ | ○ |
| Microsoft OneDrive | ○ | ○ |
| Google Drive | ○ | ○ |
| Dropbox | ○ | ○ |
| Box | ○ | ○ |
対応クラウドストレージと開き方
Autodesk Drive・Autodesk Docs・OneDrive・Box・Dropbox・Google Drive の6サービスに置いたDWGを、ブラウザのAutoCAD Webで直接開いて閲覧・編集・共有・保存できます。モバイルアプリも Dropbox・OneDrive・Google Drive・Autodesk Drive/Docs と接続してDWGを開けます。
実務で最初に迷いやすいのが、サービスごとに開き方の入口が違う点です。Autodesk Docs/Drive や Dropbox は、ファイルを右クリックして「Open with AutoCAD Web App」を選びます。Google Drive・OneDrive は web.autocad.com 側からファイルを開きます。Box はプレビュー画面右上の Open メニューから選ぶ流れです。入口さえ覚えておけば、普段使っているクラウドをそのまま図面の置き場にできます。
版の錯綜を防ぐ「置き場所は1か所」運用
図面の正本はクラウド上の1か所に決め、事務所も現場も同じファイルを開くのが基本です。メール添付でDWGを配ると、手元にコピーが増えて、どれが最新かわからなくなります。持ち出しで最も事故が多いのが、この「最新はどれか問題」です。
Autodesk Docs のような共通の置き場を決めておくと、事務所で保存したものを現場で開けば必ず最新になり、版のずれが起きにくくなります。同じ住宅案件を複数人で進めるなら、平面図と立面図を共通フォルダにまとめ、全員がそこだけを開く運用にすると、古いDWGを手元に持ったまま作業する事故を防げます。
事務所→現場の確認フロー
持ち出しの実像は、事務所と現場を図面が往復する動線です。事務所のデスクトップで編集してクラウドに保存し、現場ではスマホやタブレットで同じDWGを開いて現物と照合します。気づいた点は注釈で残し、事務所に戻ってから反映する、という往復が日々の運用になります。
たとえば木造住宅の上棟後に現場でタブレットを開き、梁の位置と図面を照合して差異を注釈で記録しておけば、事務所に戻ってその注釈を見ながら修正できます。同じ図面を場所を変えて触れることが、この動線の前提です。
ソース: AutoCAD Web features / How to open DWG from Google Drive/OneDrive(Autodesk Support) / Opening DWG Files with the AutoCAD Web App(Box Support)(いずれも2026年7月時点)
DWGを渡さず共有ビューでレビューしてもらう(SHAREVIEW / SHAREDVIEWS)
共有ビューは、DWG本体を渡さずに図面をオンラインで見せ、コメントを集める仕組みです。相手はAutodesk製品を持っていなくても、送られたリンクをブラウザで開くだけで閲覧できます。図面を渡す不安を抱えずにレビューを回せる方法です。
共有ビューのしくみ(相手はソフト不要)
共有ビューは、図面やモデルの視覚的な表現をオンラインに公開し、リンクで共有する機能です。受け取った相手は、Autodesk製品をインストールしていなくても、Webの Autodesk Viewer 上で図面を閲覧してコメントを付けられます。
渡すのはあくまで表示用のデータで、元のDWGそのものを手渡すわけではありません。相手が作図データを改変することもできないため、施主や協力会社に「今の案を見てほしい」と伝えるレビューに向いています。たとえばリフォーム案の平面図を施主に見てもらい、収納の位置についてコメントをもらう、といった使い方ができます。
発行と管理(SHAREVIEW / 共有ビューパレット)
共有ビューは SHAREVIEW コマンドで発行し、共有ビューパレットで管理します。SHAREVIEW を実行すると、現在の空間または図面全体を公開でき、共有用のリンクが作られます。発行した共有ビューは、SHAREDVIEWS コマンドで開く共有ビューパレットで一覧・管理できます。
相手が図面にコメントを付けると、発行者にメールで通知が届きます。発行者はAutoCAD側の共有ビューパレットから、寄せられたコメントを閲覧して返信でき、共有ビュー自体の管理も行えます。図面を開いたまま、外から届いたコメントに対応できる流れです。
有効期限と使いどころ
共有ビューは既定で30日後に失効します。期限を延ばしたいときは、共有ビューパレットから有効期限を延長でき、延長せずに放置すると自動的に削除されます。長期間リンクを生かしておきたい場合は、延長操作を忘れないようにしておくと安心です。
共有ビューが向くのは「今の案を見て、コメントだけ欲しい」という場面です。編集を伴う受け渡しではないため、複数人で1つの図面を分担して進めたい場合は、外部参照を使う方法が別に必要になります。分担の運用は外部参照(xref)で図面を分担・重ね合わせるで解説しています。
ソース: About Shared Views(AutoCAD 2026) / -SHAREVIEW (Command)(いずれも2026年7月時点)
戻ってきた赤入れを取り込む(Markup Import / Markup Assist)
Markup Import は、赤入れされたPDF・JPG・PNGを図面の上にトレース環境として重ねる機能です。重ねたマークアップのうち Markup Assist が検出した指示を、図面へ挿入します。紙やPDFで戻ってきた指示を、手作業で写す負担を減らせます。
Markup Import(赤入れを図面に重ねる)
Markup Import は、マークアップ済みのPDF・JPG・PNGを取り込み、原図の上に重ねる機能です。取り込んだマークアップは Trace(トレース)環境に自動で配置・整列されるため、原図そのものを汚さずに赤入れを重ねて確認できます。重ねる際には機械学習が働き、マークアップをテキスト・リビジョン雲・取り消し線・移動や回転などの指示として自動識別します。
現場での取り込みも用意されています。モバイルアプリはデバイスのカメラから写真を直接取り込めるため、現場で紙の赤入れをその場で撮影し、図面に重ねて確認できます。打ち合わせで手書きされた図面を、事務所に持ち帰る前に取り込めるのが利点です。
Markup Assist(検出した指示を図面へ)
Markup Assist は、識別したマークアップを図面へ挿入する機能です。検出したテキストやリビジョン雲を図面に取り込んだり、既存のテキストや図形の修正に利用したりでき、MLEADER や MTEXT で文字を挿入します。
ただし自動識別は完全ではありません。挿入した内容が指示どおりか、挿入後に必ず確認して修正する前提で使います。「窓の寸法を修正」という赤入れが取り込まれても、実際の数値が意図と合っているかは、図面上で見比べて確定させる必要があります。
使う前提と制約
Markup Import と Markup Assist を使うには、いくつかの前提があります。マークアップはクラウドで処理されるため、インターネット接続が必須です。また AutoCAD LT および AutoCAD LT for Mac では利用できません。自分の契約エディションで使えるかどうかは料金の話になるため、db.persc.jp のAutoCADページで確認してください。
出先と事務所で到達点が違う点も、押さえておきたいところです。Markup Import はAutoCAD Web/モバイルでも使えます。ただし、検出したマークアップを図面へ挿入する Markup Assist はデスクトップ専用で、Web/モバイルでは使えません(2026年時点)。つまり出先では「赤入れを重ねて確認」するところまで、「図面へ反映」する作業は事務所のデスクトップで、という運用になります。渡ってきた実ファイルを扱う場合の互換注意はDWG/DXFの互換と他CADとのデータ受け渡しで解説しています。
ソース: About Markup Import and Markup Assist(AutoCAD 2026)(2026年7月時点)
持ち出し・共有・レビューを通してみた編集部の所感
公式ドキュメントを見ると、クラウド、共有ビュー、Markup の3つは独立した機能ではありません。「持ち出す・見せる・戻す」という一続きの動線として設計されています。個々の機能を単発で覚えるより、この動線でつなげて捉えると使いどころが見えてきます。
価値が大きいのは、DWGを渡さずにレビューを集められる共有ビューだと編集部では見ています。相手にソフト導入を求めず、リンクを開くだけで意見をもらえるため、施主や社外の協力先とのやり取りの手間が減ります。カメラから赤入れを直接取り込めるモバイルの機能も、現場と事務所の往復を1回分減らせる補強です。
運用を組むうえで最初に押さえたいのは、Markup Assist が出先では動かず、事務所のデスクトップが前提になる線引きです。共有ビューの期限やLT非対応といった先述の制約と合わせ、現場でやる範囲と事務所に戻す範囲を先に決めておくと、途中で手が止まりません。
これから使い始めるなら、まず図面の置き場所を1か所に決めるところから整えるのがおすすめです。持ち出し運用の土台がクラウド保存にあるため、ここが固まると共有ビューも赤入れ取り込みも素直につながります。
この運用を取り入れると現場フローはどう変わるか
クラウド保存・共有ビュー・Markup を取り入れる前は、事務所に戻らないと最新図面を開けませんでした。レビューのたびにDWGをメールで送り、戻ってきた赤入れを手作業で写していました。図面をめぐる往復が、そのまま作業の待ち時間になっていた状態です。
整えた後は、現場でその場に最新図面を開いて照合し、施主にはリンクを送るだけで意見をもらえます。集まった指示は図面に重ねて確認でき、確認待ちで作業が止まる時間が減っていきます。たとえば週の後半に集中しがちな施主確認を現場から回せると、修正に着手できるタイミングが前倒しになります。
クラウドを軸にした協働は、持ち出し以外の場面にも広がります。複数人で1つの図面を分担する運用や、PDF・画像を下敷きにして既存図面を活用する方法まで含めて整えると、チーム全体の図面の扱いがそろっていきます。
まとめ|図面を持ち出す・見せる・戻すの最短ルート
AutoCAD Web/モバイルは持ち出し・確認・軽い編集の窓口で、作り込みはデスクトップ版が担います。図面の正本はクラウドの1か所に置き、メールでDWGを配らないことが、版の錯綜を防ぐ第一歩です。
見てもらうだけなら共有ビューが向き、相手はソフト不要で使えます。戻ってきた赤入れは Markup Import で取り込めます。共有ビューの期限やネット接続、AutoCAD LT非対応といった先述の前提だけ意識しておけば、運用でつまずきません。
まずは図面の置き場所を1か所に決めることから始めると、共有もレビューも自然につながります。持ち出しの次に何を整えるかは、自分の運用に合わせて次の記事へ進んでください。
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