Lumionのマテリアル設定完全ガイド|PBRの貼り方と調整
3Dモデルを読み込んだだけの状態では、壁も床も家具ものっぺりと平板で、どこか「作り物っぽさ」が抜けません。Lumionでその印象を大きく変えるのが、マテリアル(面ごとの質感の設定)です。面を選んで質感を割り当て、反射やざらつきを少し整えるだけで、同じモデルが写真のようにリアルに見えてきます。
この記事では、Lumionのマテリアルを面に割り当てる基本操作から、PBR(Physically Based Rendering=物理ベースの質感表現)の各スライダー(ラフネス・反射・ノーマル・凹凸)の意味と調整、色・透明・自発光の設定、テクスチャの大きさ(スケール)合わせ、内蔵ライブラリの使い方までを一通りまとめました。
外部から持ち込む画像テクスチャのインポートや、ガラス・金属の本格的な作り込みは扱う範囲が広いため、それぞれ専用の記事に送ります。ここでは「まずマテリアルを貼って整える」基礎に集中します。
Lumionのマテリアルの基本|面ごとに割り当てる質感設定
マテリアルは、モデルの各面に「これは木」「これはコンクリート」と質感を割り当てる設定です。Lumionでは面をクリックして内蔵ライブラリから質感を選ぶだけで、色・反射・凹凸がまとめて適用されます。この「面に対して質感を設定する」という考え方をつかんでおくと、後の細かい調整がぐっと理解しやすくなります。
マテリアルは「面」に対して設定する
3Dモデルは、いくつもの面(サーフェス)が組み合わさってできています。Lumionのマテリアルは、この面ごとに別々のものを割り当てられる仕組みです。だからこそ「壁だけ塗り替える」「床だけ変える」といった作業ができます。
ここで気をつけたいのが、元の3Dソフト側での面の分け方です。あらかじめマテリアルID(面ごとに材質を区別するための識別情報)を分けておくと、Lumion側でも面が分かれて選びやすくなります。逆に、複数の部位が1つの面に統合されていると、Lumion側で分割して選ぶことはできません。細かく質感を変えたい部分は、元のソフトの段階で面を分けておくと後がラクです。
なお、Lumionでのマテリアル調整は元の3Dモデルを書き換えません。すべてLumionのプロジェクト内で完結する非破壊(元データを壊さない編集方式)の作業なので、いくら試しても元ファイルは無傷です。思い切っていろいろ試せる、と考えて問題ありません。
PBRとは|光の反射を物理的に再現する仕組み
PBR(物理ベースの質感表現)は、現実世界の光の反射ルールに沿って質感を計算する方式です。かんたんに言えば「本物の光が材質に当たったとき、どう跳ね返るか」をコンピューターに再現させる考え方といえます。
もう少し具体的にすると、PBRは「色」「反射の強さ」「表面のざらつき」「凹凸」といった要素を数値で組み合わせて、材質ごとの見え方を作ります。木と金属で光り方がまるで違うのは、これらの数値が違うからです。Lumionもこの方式を採用しているので、各スライダーが何を意味するかがわかると、質感の作り分けが一気に直感的になります。
PBRの考え方そのものは、Lumionに限らず3DCGソフト全般で共通です。質感づくりの土台をもう少し体系的に知りたい場合は、建築パースの質感表現の基本や3DCGの構成要素をやさしく解説もあわせて読むと、調整の理解が深まります。
面に質感を割り当てる基本手順
マテリアル設定の出発点は、質感を変えたい面をクリックして内蔵ライブラリから素材を選ぶことです。この一連の操作を覚えるだけで、読み込んだばかりのモデル全体を短時間で「それらしい」見た目に持っていけます。ここでは割り当ての流れを順に追います。
マテリアル編集モードで面を選ぶ
最初にすることは、Lumionのマテリアル編集モードに入り、質感を変えたい面をクリックして選ぶことです。選んだ面がハイライト表示され、その面にどのマテリアルを当てるかを決められる状態になります。
同じ質感にしたい似た面が複数あるときは、まとめて設定し直すと効率的です。たとえば内装の壁がいくつかの面に分かれていても、順に同じ質感を当てていけば、部屋全体の雰囲気を素早く整えられます。1面ずつ丁寧に選べる一方で、数が多いと手間もかかるので、面の分け方を意識しておくとこの作業が短く済みます。
内蔵ライブラリから質感を選ぶ
面を選んだら、内蔵ライブラリから質感を選びます。Lumionには木・石・金属・ガラス・コンクリート・布・液体など、多数のプリセット素材が最初から用意されています。プリセットの正確な件数は公式に確定値が公表されていないため件数は伏せますが、実務でよく使う材質はひととおり揃っている、と考えて差し支えありません。
プリセットが便利なのは、色・反射・凹凸がすでにセットになった状態で適用される点です。ゼロから数値を組む必要がなく、カテゴリーから近いものを選ぶだけで、それらしい見た目がすぐ手に入ります。まずプリセットで当たりを付けてから微調整する進め方が、失敗が少なくおすすめです。いきなり細かい数値をいじると、どこを触ったか分からなくなりやすいためです。
割り当て後に調整パネルで整える
素材を適用すると、各種スライダー(このあと解説します)が表示され、そこから見た目を追い込めます。プリセットはあくまで出発点なので、シーンの光に合わせて反射やスケールを微調整すると、ぐっとリアルに寄ります。
ここが仕上がりの分かれ目です。プリセットのまま置くと、どの案件でも同じような質感になり、光の当たり方とちぐはぐになることがあります。屋外の強い日差しなのか、室内の柔らかい光なのかで、同じ材質でも見え方は変わります。シーンの光を見ながら反射とスケールだけでも整えると、それだけで説得力が上がります。
PBRの各設定を理解する|ラフネス・反射・ノーマル・凹凸
Lumionの質感を決める中心が、ラフネス・反射・ノーマル・凹凸(レリーフ)といったPBRのスライダーです。どれも「表面がどう光を跳ね返すか」を調整する項目で、意味さえつかめば材質の作り分けは直感的になります。ここでは主要なスライダーを1つずつ見ていきます。
ラフネス(Roughness)|反射のシャープさとボケ
ラフネス(表面のざらつき)は、反射がくっきり映るか、ぼやけるかを決める設定です。値が低いと鏡のようにシャープな反射になり、値が高いとぼんやりした反射になります(設定範囲0〜200%、Lumion公式サポート、2026年7月現在)。
なぜこれが質感を左右するかというと、身のまわりの材質はこの「反射のボケ具合」で見分けているからです。磨いた床は低ラフネスで鏡面寄りになり、ざらついた石は高ラフネスでぼやけた反射になります。素材ごとにラフネスを合わせるだけで、木は木らしく、石は石らしく見えてきます。
なお、Lumion 2023以降は、それまでの艶(グロス)マップに代えてラフネスマップを採用しています。古いプロジェクトに設定されていたグロスは、自動でラフネスへ変換される仕様です(Lumion公式サポート、2026年7月現在)。以前のバージョンで作ったデータを開いても、質感が崩れる心配は基本的にありません。
反射(Reflectiveness)|どこがどれだけ映り込むか
Reflectiveness(反射の強さ)は、面のどこにどれだけ強い映り込みが出るかを調整する設定です。白い部分ほど反射が強くなり、磨かれた見た目に近づきます(Lumion公式サポート、2026年7月現在)。
この設定が効くのは、映り込みで説得力が増す素材です。屋外の水たまり、濡れたタイル、窓ガラスなどは、周囲が映り込むことでぐっとリアルになります。逆に映り込みが欲しくないマットな壁で強くすると、かえって嘘っぽくなります。素材の性格に合わせて上げ下げするのがコツです。
ノーマル/レリーフ(Relief)|面を削らず凹凸を足す
Relief(ノーマルマップ=面に凹凸の陰影を足す情報)は、ポリゴン(3Dモデルを構成する面のこと)を増やさずに、表面へ細かな凹凸の陰影を加える設定です(設定範囲0〜200%、Lumion公式サポート、2026年7月現在)。
平らな面のままでも、レンガの目地、木目、布の織り目といった立体感を表現できるのがこの設定の利点です。実際に面を削って凹凸を作るとデータが重くなりますが、Reliefなら陰影の見え方だけで凹凸を演出するので、動作を軽く保てます。ただし強くしすぎると不自然にボコボコして見えるので、光を当てて陰影を確かめながら少しずつ上げるのが安全です。
メタルネス(Metalness)|金属か非金属かの切り替え
Metalness(金属性)は、その面を金属(導体)として扱うか、非金属(絶縁体)として扱うかを切り替える設定です(Lumion公式サポート、2026年7月現在)。金属と非金属では光の反射の性質が大きく違うため、これは質感を根本から分ける重要なスイッチになります。
たとえば同じ「灰色の面」でも、金属として扱えば周囲を鋭く映し込む金属光沢になり、非金属として扱えばコンクリートのようなマットな見た目になります。まずここで材質の系統を決めてから、ラフネスや反射で細部を追い込むと迷いません。
金属の質感を本格的に追い込みたい場合は、反射や映り込みのクセが強く、専用の解説が向いています。ガラスとあわせてLumionのガラス・金属マテリアルをリアルにするコツで詳しく解説しています。
色・透明・自発光の設定
PBRの反射系に加えて、色そのものや透け具合、光を放つ効果もマテリアルで設定できます。ガラス・水・照明サインといった建築ビジュアルで頻出する表現は、この3つの調整で作れます。ここでは色・透明・自発光の使い方を整理します。
色とテクスチャの混ぜ方
面の色は、カラーパレットで基本色を決めたうえで、テクスチャ(模様の画像)とのブレンド量を調整して作ります。ブレンドを0%にすると単色、100%にすると画像そのものになり、その間で色味と模様の混ざり具合を決められます(Lumion公式サポート、2026年7月現在)。
この仕組みが役立つのは、同じテクスチャを少しだけ色調整したいときです。たとえば木目の板を、シーンの雰囲気に合わせてやや暖色寄りにしたい、といった微調整ができます。あわせて彩度(Texture Saturation)を上げ下げすれば、色の鮮やかさをシーン全体の色調に馴染ませられます。派手すぎる素材のトーンを落として、空間になじませる場面で効きます。
透明(Opacity)|ガラスや水の透け感
Opacity(不透明度)は、面のどこを透かすかを設定する項目です。黒い部分が透明、白い部分が不透明として扱われます(Lumion公式サポート、2026年7月現在)。この設定を使えば、窓ガラス、手すりのアクリル板、水面といった「透ける表現」を作れます。
建築ビジュアルでは、窓を透明にして室内が見えるようにするだけで、外観の説得力が変わります。ただし、透明素材の反射や屈折(光が透明物を通るときに曲がる現象)まで作り込むと、扱う内容が一段深くなります。ガラスをよりリアルに仕上げたい場合は、Lumionのガラス・金属マテリアルをリアルにするコツを参照してください。
自発光(Emissive)|面そのものを光らせる
Emissive Strength(自発光の強さ)は、面自体が光を放つように見せる設定です。明るさはニト(明るさを表す単位)で指定します(Lumion公式サポート、2026年7月現在)。看板、間接照明のライン、ディスプレイの画面など、「モノそのものが光る」表現に使います。
ここで一つ区別しておきたいのが、自発光と照明の違いです。自発光は「その面が光って見える」効果で、空間全体を明るく照らす人工照明とは別ものです。看板の文字を光らせたいなら自発光、部屋そのものを照らしたいなら照明を使い分けます。空間を照らすライティングの作り方は、Lumionのライティング設定完全ガイドで解説しています。
テクスチャの大きさ・向きを合わせる|スケールと配置
質感そのものが正しくても、模様の大きさが実物とずれていると、一気に嘘っぽくなります。Lumionではスケール(大きさ)と向きのスライダーで、テクスチャの見え方を現実の寸法に合わせられます。ここではスケール調整の勘所をまとめます。
スケール(Map Scale)|1メートル基準で合わせる
Map Scale(マップの大きさ)は、世界の実寸に対して模様をどのくらいの大きさで表示するかを決める設定です。値1でおよそ1メートルをカバーする目安になっています(Lumion公式サポート、2026年7月現在)。この基準がわかっていると、フローリングの板幅、タイルの目地、レンガの大きさを実物の寸法に合わせやすくなります。
たとえばレンガが不自然に大きく見えるときは、模様が実寸より拡大されているサインです。Map Scaleを下げて実物のレンガサイズに近づければ、違和感が消えます。なお、値を0にすると、元の3DソフトのUV(テクスチャをどう貼るかを決めた情報)をそのまま使う挙動になります。元ソフトで丁寧にUVを整えてある場合は、0にしてその設定を活かす選択もできます。
位置と向き(オフセット・回転)
模様の位置と向きも、細かく調整できます。X/Y/Zのオフセット(ずらし量)で模様の位置を動かし、Heading/Pitch/Bank(向きと回転を表す3つの軸)で向きや回転を整えます。これらはMap Scaleが0より大きいときに有効です(Lumion公式サポート、2026年7月現在)。
この調整が生きるのは、仕上げの詰めです。タイルの目地を壁の通りにきっちり合わせる、フローリングの木目の方向を部屋の長手方向に揃える、といった作業で使います。目地や木目の向きが揃っているだけで、丁寧に施工された空間に見えてきます。
繰り返しの継ぎ目を目立たせない
テクスチャは同じ模様を繰り返して面を埋めるため、規則的に並ぶと「タイリング(模様の繰り返し)」の継ぎ目が目立つことがあります。芝生や砂利のような広い面ほど、同じパターンの反復が目につきやすくなります。
この不自然さを抑える助けになるのが、Lumion 2024で搭載された、地形向けに継ぎ目を隠すタイリング方式(Landscape Tiling)です(Lumion公式サポート、2026年7月現在)。芝生・砂利といった有機的な素材で、反復のパターンが見えにくくなります。広い外構や地面を扱うときに覚えておくと、仕上がりが自然になります。
内蔵マテリアルライブラリを使いこなす
Lumion最大の時短ポイントは、調整済みの質感が最初から大量に用意されている内蔵ライブラリです。ゼロから作らず、近いプリセットを選んで微調整するのが実務のセオリーになります。ここではライブラリの活用と、自作テクスチャとの使い分けを示します。
プリセットから選んで微調整する流れ
実務でリアルな質感を素早く出すコツは、完成度の高いプリセットを土台にすることです。木・石・金属・布・液体などのカテゴリーから近い質感を選び、スケールと反射だけ整える。この2点を合わせるだけで、少ない手数でぐっとリアルに寄ります。
なぜこの進め方が速いかというと、プリセットにはあらかじめ色・反射・凹凸のバランスが組み込まれているからです。ゼロから全部の数値を決めると時間がかかりますが、近いものを選べば残る調整はわずかです。凝りたい面だけ深く追い込み、それ以外はプリセットのまま置く、というメリハリをつけると作業全体が短くなります。
内蔵素材で足りないとき|外部テクスチャへの入口
内蔵ライブラリは充実していますが、特殊な模様や、実在する特定の建材の見た目までは網羅していません。そういうときは、自分で用意した画像(アルベド=基本色の画像、ノーマル、ラフネスなど)を読み込んで使います。
読み込み手順はやや専門的で、扱う内容がこの記事のスコープを超えます。外部テクスチャの具体的な貼り方は、Lumionで外部テクスチャをインポートして貼る方法で詳しく解説しています。内蔵で当たりを付けてから、足りない部分だけ外部素材で補うと、無駄なく仕上げられます。
マテリアルづくりで押さえたい考え方
最後に、ソフトの操作から一歩離れた考え方を整理します。「質感をリアルにする」ときに効くポイントは、ソフトを問わず共通で、反射・ざらつき・凹凸・スケールの4点に集約できます。Lumionのスライダーも、結局はこの4点を触っています。
この土台を先につかんでおくと、Lumion固有の操作に入ったときの理解が速くなります。どの数値が何のためにあるのかが、迷わず結びつくからです。基礎をもう少し体系的に知りたい場合は、建築パースの質感表現の基本や3DCGの構成要素をやさしく解説が入口になります。
マテリアル設定を編集部が使ってみての所感と次の一歩
編集部では、Lumionのマテリアルは「面を選ぶ→プリセットを当てる→PBRとスケールを微調整」の流れに慣れると、少ない手数でリアルさを大きく引き上げられる設計だと見ています。特にプリセットの完成度が高く、ゼロから数値を組む場面がほとんどない点が、初心者にとっての入りやすさにつながっています。
海外レビューの共通見解でも、Lumionが評価される理由として内蔵アセットの充実がたびたび挙げられます。実務の肌感覚としても、凝りたい面だけ深く追い込み、残りはプリセットのまま置く、というメリハリが作業時間を大きく左右します。まずは1つのシーンで、床と壁と窓の3種類だけでもプリセット+微調整を試すと、この流れの効きが実感しやすいはずです。
これから建築ビジュアルを本格的に扱うなら、マテリアルの次は光と環境の設定に進むのが自然な流れです。質感は光の当たり方で見え方が変わるため、Lumionのライティング設定完全ガイドや、質感・空・光・水・植栽をまとめて把握できるLumionのマテリアル・環境表現ガイドに進むと、一枚のシーンとしての完成度が上がっていきます。
まとめ
Lumionのマテリアルは、「面を選ぶ→プリセットを当てる→PBRとスケールを微調整」という流れで、短時間でも大きくリアルさを上げられます。最後に要点を振り返ります。
- マテリアルは面ごとに割り当てる質感設定で、PBRによって色・反射・ざらつき・凹凸を組み合わせて作ります。
- 基本操作は「面を選ぶ→内蔵ライブラリから選ぶ→調整パネルで整える」の3ステップです。
- 主要スライダーは、ラフネス=反射のシャープさ、Reflectiveness=映り込みの強さ、Relief=凹凸、Metalness=金属か非金属かの切り替えです。
- 色・透明・自発光でガラス・水・光る面を表現し、スケールで模様の大きさを実寸に合わせます。
- まずは内蔵プリセットを活用し、特化表現や外部素材が必要になったら専用記事に進みます。
質感が整ったら、次は光と環境です。マテリアルは光の当たり方で見え方が変わるので、ライティングや空・水の設定へ進むと、シーン全体の完成度がさらに上がります。
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