
Endra Power Studio|建築の電気設備の設計をAIが進め、Revitのモデルと図面を出す
Endra Power Studioは、建物の電気設備を設計するためのAIの製品です。2024年にストックホルムで創業したEndraが、2026年9月16日に発表しました。建物のモデルを読み込み、事務所の標準と法規に沿って、機器の配置とケーブルの計算をAIのエージェント(決まった作業を、自分で順に進めるAI)に進めさせます。出てくるのは、Revitのモデルと、単線結線図(電気の系統を1本の線で表した図)・施工図・盤表(分電盤の回路の一覧)・材料表です。ただし、対応する言語は英語だけで、公式サイトに挙がっている基準に日本のものはありません。
Endra Power Studioは、電気設備の設計をAIのエージェントに任せる製品
Endraは、建築設備(MEP:機械・電気・給排水)の設計のためのAIの会社です。Power Studioは、そのうち電気設備の設計を受け持つ製品として、2026年9月16日に発表されました。発表の場は、Autodesk Universityの前夜にラスベガスで開いた、Endra自身の催し「Epoch」です。
発表は、設備設計の今の進め方を、次のように書いています。
- 設備の技術者は、負荷を計算し、機器の容量を決め、数千の機器を配置し、ケーブルと配管の経路を決め、施工者が使う図面と書類をつくる
- この25年、その作業は互いにつながらない道具に分かれてきた。Revitで作図し、Excelで計算し、Navisworksで干渉を確かめる
- 道具のあいだのデータの受け渡しを、技術者が手で担っている
Power Studioは、この作業を1つの製品にまとめ、電気設備の設計を最初から最後まで受け持つとしています。
発表では、延床面積50万平方フィート(約4.6万m²)の商業用の建物を例に挙げています。法規に合う電気設備の設計に従来およそ2か月かかっていた作業が、1日未満で終わるとしています。この数字は、Endraが発表で示したものです。公式サイトは、物流センターの自動火災報知設備の設計で、300時間の作業が30分になった事例も載せています。
利用している会社としては、AtkinsRéalis・Ramboll・Buro Happold・Hoare Lea・AFRYの名前が挙がっています。
事務所の標準と法規を先に入れ、配置と計算をエージェントに進めさせる
Power Studioでの設計は、次の順に進みます。
- 技術者が、建物のモデルを読み込む
- 設計の条件を決める
- エージェントに設計を進めるよう指示する
- 段ごとに、技術者が確かめて承認する
事務所の設計の標準は、先にPlaybooksへ登録します。登録するのは、機器の配置の決まり、回路の組み方、法規の読み方、計算の方法です。EndraのCEOのNiklas Lindgren氏は、発表でPlaybooksの役割を説明しています。事務所の技術の判断をPlaybooksに標準として持たせ、チーム全員がそれに沿って設計する形です。
設計が物理の法則と建築の法規に合っているかは、Endraの計算の仕組み(physics engine)が確かめます。ケーブルはすべてサイズを選定し、電圧降下もすべて計算します。
病院・集合住宅・ホテルのように同じ型の部屋が並ぶ建物では、Type Roomsを使います。1室を設計すると、モデルの中の同じ型の部屋すべてに、エージェントが同じ設計を当てはめます。
公式サイトの動画に映る編集画面では、中央に建物のモデルが表示されます。左の欄には、Config・Architecture・Versions・Documentationの項目が並びます。

右の欄では、階を選び、建築・ケーブルラック・天井・スプリンクラーの層の表示を切り替えます。その下には、部屋ごとの面積と、感知器・音響装置・フラッシュライト・発信機・I/Oモジュールの数が並びます。

公式サイトは、若手から熟練の技術者まで、チームのあいだで知識と作業の流れをまとめられるとしています。動画では、1つのモデルの上に、顧客・主任技術者・主任の技能者・プロジェクトの技術者のカーソルが並びます。

出てくるのは、Revitのモデルと、単線結線図・施工図・盤表・材料表
発表によると、書類をつくる仕組み(document engine)から、Revitのモデル、単線結線図、施工図、分電盤の盤表、材料表を出せます。書類は設計とつながったまま出てくるとしています。公式サイトのよくある質問は、モデルのファイルを入れれば、必要な書類一式が出てくる流れを目指していると答えています。
公式サイトによると、読み込めるのはIFC(BIMのソフトどうしで受け渡す共通のファイルの形式)と、DXF(DWG)などのCADの形式の3Dモデルです。書き出しは、.rvt・IFC・DXF(DWG)・PDFに対応しています。
EndraはRevitと直接連携していて、.rvtのファイルを作成できます。事務所で作ったRevitのファミリ(ドアや家具などの部品)も、共有のファミリのライブラリも、そのまま使えるとしています。
公式サイトの動画では、Reportsの画面に、施工図・幹線系統図・配線図・蓄電池の計算の書類が並び、それぞれPDFとDXFで取り出せます。

対応する設備は、自動火災報知設備と電気から広げる
Endraの公式サイトは、設備ごとに次のことを挙げています。
| 設備 | 公式サイトの説明 |
|---|---|
| 自動火災報知設備 | 施工図・幹線系統図・電圧降下の計算を1つの仕組みでつくる |
| 電気設備 | 回路を組み、ケーブルのサイズを決め、盤表などを書き出す |
| ケーブルラック・電線管 | 電気と防災の設備を支える部材の3Dモデルをつくる |
| 照明 | 2D・3Dのモデルと計算を合わせて、照明の案をつくる |
| 空調・給排水とスプリンクラー | 項目だけが載っている |
製品の一覧には、自動火災報知設備・電気・通信・防犯・給排水・空調が並んでいます。このうち、通信・防犯・給排水・空調の4つには「Coming soon(準備中)」の印が付いています。
公式サイトの動画では、建物の中に、先に配線の線だけが入り、そのあとに自動火災報知設備の機器が置かれていきます。

同じ動画の次の場面では、感知器・発信機・サイレン・I/Oモジュールが配置され、名前の札が付きます。

自動火災報知設備で対応している基準として、公式サイトはSBF 110:8・NFPA 72・BS 5839・DIN 14675の4つを挙げています。そのうえで、米国・英国・ドイツでは、まだ試験の段階だとしています。
給排水の設計は、2027年に出す予定です。発表では、スイスのPlanlabsを買収したことも伝えています。Planlabsは2024年6月にできた会社で、数学と計算機科学の博士5人のチームです。形状・データ・物理の計算の仕組みで、干渉のない機械設備を自動で設計し、物理の条件で確かめる技術を持っています。Endraは、この技術を取り込んだあと、空調などの機械設備の設計を製品に加えるとしています。
データの扱い:顧客のモデルを学習に使わない
データの扱いについて、発表と公式サイトは次のことを書いています。
- 顧客のモデルを、AIの学習に使わない(発表と、公式サイトのよくある質問の両方)
- データは、送るときも保存するときも暗号化する。AES-256とGCMを使う(公式サイト)
- 情報の安全の管理について、SOC 2 Type IIとISO 27001の認証を受け、Cyber Essentials Plusの審査を受け、GDPRに沿っている。データは地域ごとに置く(発表)
処理が速い理由について、公式サイトは、AI・空間の理解・計算の方法の工夫・クラウドでの処理を挙げています。
建築の仕事では、設備を載せたRevitのモデルが返ってくる。日本の案件にはまだ使えない
建築の仕事でEndraが関わるのは、BIMで意匠と設備を1つのモデルで合わせる場面です。意匠の側がIFCやDXFのモデルを渡すと、電気設備と自動火災報知設備を載せた.rvtのファイルと、PDFやDXFの図面・書類が返ってくる形になります。返ってくるモデルには、事務所で作ったRevitのファミリをそのまま使えると、公式サイトは書いています。
一方で、日本の案件にそのまま使える段階ではありません。
- 対応する言語は英語だけ(公式サイト)
- 自動火災報知設備の基準はスウェーデン・米国・英国・ドイツのもので、日本の消防法の基準は挙がっていない
- 電気の設計でどの国の基準に対応しているかは、公式サイトに書かれていない
- 提供しているのはEU・英国・米国で、早期利用の申し込みを受けている段階。ほかの地域の会社には、問い合わせを受け付けるとしている
AIにRevitのモデルを直接触らせる別の方法は、Revit MCPでAIにモデルをつくらせるで解説しています。
出典
- Endra Unveils Power Studio, the First AI Platform Purpose-Built for Electrical Engineering; Acquires Planlabs to Build Out the Mechanical Discipline(Endra の発表・PR Newswire・2026年9月16日。2026年9月27日確認)
- Endra 公式サイト(2026年9月27日確認)
- Endra launches electrical design platform and buys Planlabs(AEC Magazine・2026年9月17日。2026年9月27日確認)
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