
業種をまたぐ図面・パース・BIMの受け渡し|設計から施工・販売・維持管理まで
- 設計図と施工図って、何が違うの?
- 製作図やプレカット図は、どの図面をもとにつくるの?
- BIM図面審査で、確認申請がどう変わるのかを知りたい
設計者が作図した図面は、確認申請の審査、施工者や工場、建物の管理者、不動産会社やパースの制作会社へと渡ります。渡った先では、施工図や間取り図などの図面や資料に作り直されます。
しかし、図面どうしを重ねたときや、工事中に設計が変わったときに気をつけたいのが、ずれです。図面と図面、図面と建物のあいだで、ずれが出ることがあります。
この記事では、設計の図面と BIM が誰に渡り、何に作り直されるかと、渡すときにずれが出る場面を解説します。
BIM は、建物の3次元の形と、部屋の名前や材料などの情報をあわせて持つモデルを、コンピューターの上につくることです。
設計の図面とBIMが渡っていく流れ

設計の図面と BIM が次の人へ渡る順は、設計、確認申請、工事、引き渡し、維持管理です。販売や賃貸の資料のもとになるのも、設計の図面です。
設計は、基本設計、実施設計の順に進みます。実施設計では、施工者が図面を読み取って工事をし、工事費を見積もれるところまで設計者が決め、確認申請の図書もつくります。
設計の図面を受け取る先は、大きく次の4つです。
- 確認申請を審査する所
- 工事をする施工者と、部材をつくる工場
- 完成した建物を管理する人
- 物件を売る不動産会社と、3DCGパースの制作会社
BIM で設計した建物でも、施工者へ渡すのは BIM のモデルだけとは限りません。CAD で作図した2次元の図面や、表計算でつくった仕様書なども、BIM のモデルと組み合わせて渡します。
確認申請とBIM図面審査

一定の建物は、工事を始める前に、確認申請の図面を出して確認を受けます。申請書に付けるのは、配置図・各階平面図・立面図・断面図などの図面です。
2026年4月に、BIM のデータから書き出した図面で申請し、審査を受ける「BIM図面審査」が始まりました。
決まりに従ってつくった BIM から書き出した図面なら、審査で図面どうしの整合を確かめる手間の一部が省かれます。
BIM図面審査では、IFC という形式のデータも審査の参考にします。IFC は、BIM のデータをソフトの違いを越えて受け渡すための、国際規格のファイルの形式です。
ただし、IFC のデータにだけあって図面に書かれていない情報では、判断しません。審査のもとになるのは、あくまで図面に書かれたことです。
国土交通省は、2029年春に「BIMデータ審査」を導入することを目指しています。BIM図面審査とは別の、新しい仕組みになる見込みです。
施工の段階でつくる施工図・製作図とプレカット図

工事の前に、施工者の側は設計の図面をもとに、工事のための図面をつくります。国の BIM のガイドラインでは、こうした図面を「施工図等」と呼び、躯体図や製作図などを含めています。
この記事で取り上げる図面は、次の3つです。
- 施工図と総合図
- 製作図
- プレカット図
施工図と総合図をつくる
施工者は、設計図をもとに、現場で工事できる細かい寸法と納まりを書き足した施工図をつくります。工事監理者は、施工図が設計図書に合うかを確かめ、その結果を施主に報告します。
施工図の1つである総合図は、建築の図面に、電気・空調・衛生などの設備の情報を重ねた図面です。設備と建築の納まりを確かめるのに使います。
製作図をつくる
鉄骨や外装、建具のように工場でつくる部材は、製作図という図面をもとにつくります。製作図も、施工図と同じく施工者の側がつくる図面の1つです。
国の工事では、施工図や製作図を工事の前につくり、承諾を受けてから使います。
プレカット図を確かめる
木造住宅の柱や梁は、プレカット工場で機械で加工することがほとんどです。プレカット図はプレカットの会社がつくり、工務店や設計者が設計図や構造図と照らし合わせて確かめたうえで、加工に回す流れです。
工務店の中で確かめる担当は会社によって違い、設計の担当のことも、工事の担当のこともあります。
竣工図と維持管理のBIMデータ

工事が終わると、完成したときの建物を表した竣工図を別につくります。工事中の設計の変更で、設計図と違う所ができるためです。
竣工図は、そのあとの維持管理や改修に使います。完成したときの状況を表した図(完成図)は、元請の建設業者などが引き渡しから10年保存する決まりです。
国の BIM のガイドラインは、引き渡しのときに竣工後の BIM のデータを整え、施主が受け取る形を示しています。建物を管理する人がそのデータを維持管理のシステムに取り込み、日常の管理に使うという流れです。
ただ、日本では、建物の一生にわたって BIM を使うことは、まだ十分に進んでいません。今は、設計と施工のそれぞれの中で使うところまでです。
不動産の間取り図と3DCGパース

販売や賃貸の資料にも、図面が使われます。不動産の間取り図は、手持ちの平面図や竣工図などをもとにつくり、物件を紹介する1枚の資料(マイソク、販売図面とも言います)に載せます。
不動産の間取り図で優先するのは、寸法の正確さより見やすさです。広告の間取り図は、設計図書の平面図ではありません。
間取り図と平面図の違いは、「間取り図と平面図の違い|不動産の間取り図」で解説しています。
まだできていない物件は、図面をもとに3DCGパースをつくって見せます。パースは、建物の外や中を、目で見たように立体的に表した絵です。
パースの制作会社は、設計事務所・工務店・不動産会社などから、平面図・立面図・配置図などの図面と仕上げの資料を受け取ります。制作会社は、その図面をもとに3Dのモデルをつくり、パースに仕上げます。
受け渡しでずれが出る場面

図面を受け渡すときにずれが出ることがある場面のうち、ここで取り上げるのは次の2つです。
- 意匠・構造・設備の図面を重ねたとき
- BIM と2次元の図面を一緒に使うとき
意匠・構造・設備の図面を重ねたとき
意匠・構造・設備の図面を重ねると、躯体と仕上げ、設備の配管と梁などのぶつかり(干渉)が見つかることがあります。ぶつかりを工事の前に確かめる方法として、BIM での干渉チェックも使われています。
干渉チェックは、構造と設備などが設計の上でぶつかっていないかを確かめることです。
国の BIM のガイドラインでは、実施設計の段階で、構造と設備の設計者がそれぞれつくるデータを重ねて干渉チェックを繰り返す、としています。
木造住宅で同じように確かめるのは、プレカット図の柱や梁と、設備の配管・ダクトの通り道です。
BIM と2次元の図面を一緒に使うとき
国の BIM のガイドラインは、工事の契約に使う2次元の図面と、設計の BIM の中身が一致していない可能性を、課題に挙げています。
もう1つの課題は、設計の BIM に、施工で要る細かい情報が入っていないことがある点です。
そこでガイドラインは、設計から施工へ渡すときに、受け渡す情報の種類・形式・細かさを関係者のあいだで前もって決めておくことが大事だとしています。
設計の図面がどこで何に作り直されるかを押さえよう

設計の図面と BIM は、確認申請、工事、維持管理、販売へと渡ります。渡った先でつくられるのが、施工図や竣工図、間取り図などの図面や資料です。
渡る先は、次の4つです。
- 確認申請とBIM図面審査
- 施工の段階でつくる施工図・製作図とプレカット図
- 竣工図と維持管理のBIMデータ
- 不動産の間取り図と3DCGパース
自分が受け取った図面や、自分が渡した図面が、この流れのどこにあるのかを確かめてみてください。
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