AutoCADの繰り返し作業を自動化|スクリプトとアクションレコーダーで操作を記録・再生する
AutoCADの繰り返し作業を自動化|スクリプトとアクションレコーダーで操作を記録・再生する
新規図面をつくるたびに同じ画層をそろえ、同じ文字スタイルを設定し、単位を直す。AutoCADで作図をしていると、こうした「毎回まったく同じ手打ち」がじわじわ時間を奪っていきます。この繰り返しは、一度やり方を覚えさせてボタンひとつで再生する、という考え方で大きく減らせるものです。
そのための入口が、AutoCADに標準で用意されたアクションレコーダー(操作をなぞって記録し再生する機能)とスクリプト(決まった手順を書いておくテキストファイル、拡張子は.scr)です。
この記事では、プログラミングを使わずに始められる自動化を扱います。アクションレコーダーとスクリプトによる記録・再生のやり方、記録できない操作やLTでのつまずき、複数図面への一括処理までが対象です。条件分岐や計算が必要になる自動化との境界も示すので、自分の作業にどれが合うかを選べるようになります。
同じ操作の繰り返しは「記録して再生する」で減らせる
AutoCADの繰り返し作業は、手順が毎回固定されているものほど自動化の効果が大きく出ます。まずは自分の作業を「記録して再生する」対象として見直してみましょう。どの機能を使えばよいかが決めやすくなります。
自動化の手段は、下の早見表のように大きく4段階で捉えられます。単発のコマンドを速くするのか、一連の操作をまとめるのか、複数図面へ広げるのか、それとも条件分岐まで必要なのか。目的が変われば、選ぶ道具も変わります。
| 手段 | 向いている場面 | この記事での扱い |
|---|---|---|
| エイリアス・ショートカット | 単発コマンドの手打ちを速くしたい | 環境づくりの解説へ |
| アクションレコーダー | 1図面内の一連の操作を、書かずに記録・再生したい | この記事 |
| スクリプト(.scr) | 決まった手順を複数図面へ一括適用・共有したい | この記事 |
| AutoLISP | 条件分岐・計算・自作関数が必要な自動化をしたい | プログラミングの解説へ |
手打ちの繰り返しがコストになる場面
自動化に向くのは、手順が固定された繰り返し作業です。新規図面のたびに同じ画層セット・単位・文字スタイルを用意する、複数の図面に同じ整理(不要画層の削除や表題欄の差し替え)をかける、といった作業がこれにあたります。
こうした作業は考える余地がなく、毎回同じ動きをくり返すぶん、手作業のままだと時間と集中力をむだに使います。逆に言えば、動きが決まっているからこそ「一度記録して再生する」だけで確実に減らせる部分でもあります。まずは自分が週に何度もくり返している定型作業を、一つ思い浮かべてみてください。この記事の使いどころがはっきりします。
AutoCADの自動化は4段階で捉える
自動化の手段は目的別に4つに分かれ、下から順に手を伸ばすのが迷わない進め方です。単発コマンドの手打ちそのものを速くしたいなら、土台になるのはコマンドエイリアス(LでLINEを呼ぶような短縮名)やショートカットキーの設定です。この環境づくりは作業環境をカスタマイズする|CUI・エイリアス・ショートカットで解説しています。
一連の操作をまとめて自動化する段になると、選択肢が2つに分かれます。書かずに実際の操作をなぞって記録するのがアクションレコーダー、決まった手順をテキストに書いて複数図面へ流すのがスクリプト。どちらもこの記事の中心に据えて説明します。
さらに「面積がこの値なら色を変える」のように条件分岐や計算が必要になると、AutoLISP(AutoCAD用の簡易プログラミング言語)の出番です。その入口はAutoLISPで定型作業を自動化する入門にまとめています。最初の一歩としては、テキストを書かずに始められるアクションレコーダーから試すのが取りかかりやすい方法です。
アクションレコーダーで操作を記録して再生する
アクションレコーダーは、実際に行った操作をそのまま記録し、あとからボタンひとつで同じ操作を再生できる機能です。プログラミングの知識がいらないので、自動化の最初の一歩として最も入りやすい手段になります。
記録から再生までの流れはシンプルですが、先に知っておきたいことが2つあります。「記録できない操作」と「再生を賢くする仕組み」です。ここを押さえてから始めてみませんか。思ったとおりに動かないつまずきを、事前に避けられます。
記録から保存までの流れ
記録はリボンの管理(Manage)タブにあるアクションレコーダー(Action Recorder)パネルから始めます。パネルのRecordボタンを押すと記録が始まり、ボタン表示はStopに変わります。コマンドで直接始めたいときはACTRECORDと入力しても同じです。
記録を始めたら、自動化したい操作を普段どおりに実行しましょう。画層をつくる、文字スタイルを設定する、といった一連の動きがそのまま取り込まれていきます。操作を終えたらStop(またはACTSTOP)で記録を止めましょう。停止すると、アクションマクロ(記録した操作のかたまり)として保存するよう求められます。
保存されるファイルは拡張子.actmのXML形式です。既定の保存先はシステム変数(AutoCADの設定を保持する変数)ACTRECPATHで指定されたフォルダで、通常はユーザーのプロファイル配下に置かれます。保存先はオプションのファイルタブから変更できます。再生するときは、パネルのマクロ一覧から目的のマクロを選んで再生ボタンを押すだけです。
記録できるもの・できないもの
アクションレコーダーには「記録できる操作」と「できない操作」がはっきり分かれています。ここを知らないと、記録したのに動かないという事態になりがちです。記録できるのは、コマンド入力や各種プロパティの変更、ツールパレットやDesignCenterの操作、視点変更など幅広い操作です。
一方で、記録できない操作もまとまってあります。公式ドキュメントに記載されているのは、次のような操作です。
| 記録できるもの | 記録できないもの |
|---|---|
| コマンドプロンプトへの入力 | ダイアログボックス内での変更 |
| プロパティ/クイックプロパティ/画層プロパティ管理 | ファイル操作(OPEN・NEW・QNEW・PARTIALOPEN) |
| ツールパレット/DesignCenter | VBA関連(VBALOAD・VBARUN など一式) |
| ViewCube・ホイール・3Dオービットの視点変更 | PRESSPULL、表のセル編集、XOPEN など |
とくにつまずきやすいのがダイアログボックスの扱いです。ダイアログでの変更は記録されず、再生時にはダイアログが表示されて操作が止まってしまいます。そのため、ダイアログを開くコマンドは、コマンドラインで応答するプロンプト版に置き換えて記録します。多くは先頭にハイフンが付く形で、-HATCHや-LAYERがその例です。
記録できないコマンドの一覧はバージョンによって増減することがあります。正確に確かめたいときは、使っている版の公式ヘルプ「アクションマクロの記録について」を確認してください。また、記録したときと再生するときで図面の設定が違うと、結果が変わることもあります。この点も頭に入れておくと安心です。
再生を賢くする(一時停止・メッセージ・基点)
記録したマクロは、そのまま再生すると毎回まったく同じ動きをします。ここに少し手を加えると、状況に合わせて値を変えたり、作業者に指示を出したりできる「対話つきの再生」に変わります。
毎回ちがう値を入れたい箇所にはACTUSERINPUTを挟みます。再生がその位置でいったん止まり、ユーザーの入力を待つしくみです。文字の内容や挿入位置だけを都度変えたいときに向いています。再生中に画面へ作業指示を出したいならACTUSERMESSAGEでメッセージを表示。図形の配置基準を決めたいならACTBASEPOINTで基点を挿入し、記録した座標を絶対座標にも相対座標にも切り替えられます。こうした仕組みを組み合わせると、固定再生では対応しにくい「少しだけ違う繰り返し」も自動化の対象になります。
アクションレコーダーが見当たらないとき(LT非搭載・パネル非表示)
「アクションレコーダーが見当たらない」というつまずきは、原因が2系統あります。使っている製品の種類と、パネルの表示状態を順に確認すると、原因がはっきりします。
まず製品の種類を確認しましょう。AutoCAD LTにはアクションレコーダーが搭載されておらず、記録も.actmの再生もできません。LTで同じように定型作業を自動化したいなら、次に紹介するスクリプトを使います。スクリプトはLTでも動くため、記録・再生の代わりとしてそのまま活用できます。
一方、フルのAutoCADなのにパネルが見当たらない、またはACTRECORDが反応しない場合はどうでしょうか。多くは、ワークスペースやリボンのカスタマイズでパネルが非表示になっているだけです。標準の作図と注釈ワークスペースに切り替えると復旧できます。あるいはCUI(画面構成をカスタマイズする機能)でACTRECORDとACTSTOPを任意のパネルに戻す方法もあります。
出典: Autodesk公式ヘルプ「アクションマクロの記録について(About Recording Action Macros)」AutoCAD 2026版(確認日 2026年7月20日)。
スクリプト(.scr)でコマンドをまとめて流す
スクリプトは、実行したいコマンドを1行ずつ書いたテキストファイルで、まとめて順番に流せる自動化の手段です。テキストとして残せるぶん再利用や共有がしやすく、決まった手順を複数の図面へ同じように適用したい場面で力を発揮します。
書き方には「空白はEnterと同じ」という独特のルールがあります。まずはここから押さえていきましょう。書式ミスによる失敗をぐっと減らせます。
スクリプトの正体と書き方のルール
スクリプトは1行に1つのコマンド(またはスクリプトの呼び出し)を書いたテキストファイルで、拡張子は.scrです。メモ帳などASCII形式で保存できるエディタがあればつくれます。公式ドキュメントも「1行に1コマンドまたはスクリプト呼び出しを書いたテキストファイル」と説明しており、特別なツールはいりません。
書くときに最も重要なのが、空白の扱いです。公式ドキュメントは「スクリプト内の空白は、EnterキーやSpaceキーを押すのと同じ意味を持つ」と明記しています。空白ひとつが、キーを1回押した確定と同じ、というルールです。だからコマンドを打ったあとにプロンプトがどう進むかを頭のなかでなぞりながら、必要な確定を空白として書いていきます。ここを意識しないと、確定が足りずにコマンドが途中で止まる、という失敗が起きます。
書式には、覚えておきたい基本ルールがあと3つあります。1つ目は、行の先頭にセミコロン(;)を書くと、その行がコメントとして無視されること。手順のメモを残せます。2つ目は、スクリプトがダイアログボックスを操作できないので、ダイアログを開くコマンドはプロンプト版(-INSERTなど先頭にハイフンが付く形)を使うこと。3つ目は、パスに空白を含むファイル名を書くときに、open "my house"のようにダブルクォートで囲むことです。
スクリプトを実行する
つくったスクリプトはSCRIPTコマンドで呼び出し、実行したい.scrファイルを選ぶだけで順番に処理が流れます。リボンから呼び出す方法もあります。管理(Manage)タブのアプリケーション(Applications)パネルにあるスクリプトの実行(Run Script)です。複数のスクリプトを入れ子で呼び出したいときは、SCRIPTCALLでネストした実行にも対応できます。
繰り返しや間合いを制御するコマンドも用意されています。RSCRIPTはスクリプトを先頭からもう一度くり返し、RESUMEは中断したスクリプトを再開します。DELAYは指定したミリ秒だけ待つコマンドで、待ち時間の上限は32767ミリ秒(約33秒)です。
処理を速くしたいときは、実行の前にUNDOコマンドのControlオプションをNoneにしておくと効果があります。公式ドキュメントも、この操作でUndoの記録が止まり、スクリプトの動作が速くなると説明しています。実行が終わったらUNDO Control Allで元の状態に戻しておくと安心です。
建築実務での使いどころ(新規図面の初期設定を揃える)
新規図面のたびに、同じ初期設定を手で組み直していませんか。スクリプトが力を発揮するのは、まさにその手作業をまとめておく使い方です。画層セットの作成、単位の設定、文字スタイルの用意といった一連の準備を1本の.scrに書いておけば、実行一発で毎回同じ状態に図面をそろえられます。
チームで作業する場面では、この効果がさらに広がります。同じ.scrをメンバーで共有しておけば、担当者が変わっても図面の初期設定がぶれず、あとからの手直しが減ります。具体的なコマンド名やシステム変数は環境によって変わるので、自分の版の公式ヘルプでコマンドの動きを確かめながら組み立てましょう。意図どおりに動くスクリプトに仕上がります。
出典: Autodesk公式ヘルプ「コマンドスクリプトについて(About Command Scripts)」AutoCAD 2026版(確認日 2026年7月20日)。
複数図面への一括処理(バッチ)に広げる
一つの図面で完結する自動化に慣れたら、次は複数の図面へまとめて同じ処理をかける一括処理(バッチ)に広げられます。ここで向いているのは、書かずに記録するアクションレコーダーよりも、手順をテキストに固定できるスクリプトです。
一括処理は「対象の図面ぶんだけ同じ流れを並べる」という考え方で組み立てると、理解しやすくなります。
同じ処理を複数図面にかける考え方
複数図面への一括処理は、「開く→処理する→保存する→閉じる」という流れを、対象の図面の数だけ並べれば実現できます。これで、決まった整理を何枚もの図面へまとめて適用できます。
ここでスクリプトが向く理由がはっきりします。アクションレコーダーはファイルを開く操作そのものを記録できないため、複数ファイルにまたがる処理には使いにくいのです。手順をテキストに固定できるスクリプトなら、開くファイルを並べて書くだけで一括処理を組めます。処理する図面が多く、しかも定期的にくり返すほど、テキストで残せるスクリプトの価値が上がります。
さらに大量・定期的な処理になると、発展的なやり方も見えてきます。図面を開くたびにスクリプトを流すのではなく、起動時にスクリプトを自動実行する方法です。画面を出さずにコマンドライン側で処理するやり方もあります。こうした本格的な一括処理は、具体的な実行方法が版によって異なります。使っている版の公式ヘルプで確認しながら進める前提で、まずは「そういう手段がある」とだけ知っておくとよいでしょう。
どれを使うかの判断基準
3つの手段は、目的で選び分けると迷いません。1図面内の操作を書かずに再生したいならアクションレコーダー、決まった手順を複数図面へ広げたいならスクリプトが向きます。条件分岐や計算まで必要なら、記録・再生の範囲を超えるのでAutoLISPで定型作業を自動化する入門へ進みましょう。
3つの自動化手段の使い分けを編集部が読み解く
公式ドキュメントを読み解くと、アクションレコーダー・スクリプト・AutoLISPは競合する機能ではありません。担当する範囲がきれいに分かれた、補完し合う関係にあります。どこから手をつけるかを、編集部の見解としてまとめます。
最初の一歩には、アクションレコーダーが向いています。テキストを書かず、実際の操作をなぞるだけで記録できるので、プログラミングの前提知識がいりません。1図面内で完結する定型作業、たとえば画層と文字スタイルの初期設定をそろえる作業から試すと、効果を実感しやすいはずです。
つまずきポイントも、公式ドキュメントとコミュニティの報告からはっきりしています。ダイアログボックスでの変更やファイルを開く操作は記録されないこと、そしてアクションレコーダー自体がAutoCAD LTには搭載されていないこと。この2つが、実際の失敗の多くを占めます。海外のユーザーフォーラムでも「LTにはアクションレコーダーがなく、記録ファイルをLTで使う方法もない」と指摘されています。LTユーザーは、最初からスクリプトに寄せるのが現実的な選択でしょう。
進み方としては、こう考えるとよいでしょう。LT利用者やチームで手順を共有したいなら、軸になるのはスクリプトです。フルAutoCADで1図面内の操作を手早く自動化したいなら、アクションレコーダーが向きます。そして条件分岐や計算が必要になったら、そこでAutoLISPへ一段進みましょう。この順番なら、むりなく自動化の幅を広げられます。
自動化を取り入れると日々の作図はどう変わるか
繰り返し作業を記録・再生で減らせるようになると、作図の時間の使い方そのものが変わっていきます。手が覚えているだけだった定型作業が「実行一発」になり、空いた時間と集中力を、図面の質を上げる検討そのものに回せるようになります。
たとえば、これまで新規図面のたびに5分かけていた画層と文字スタイルの初期設定。スクリプトなら、数秒で完了します。1日に何枚も図面を立ち上げる現場では、この差が積み重なって効いてきます。さらにチームで同じスクリプトを共有すれば、担当者ごとにばらついていた図面の初期状態がそろい、あとからの手直しや確認のやり取りも減っていくはずです。
自動化を取り入れた人と、手打ちのまま続ける人。この違いは、時間が経つほど広がります。記録・再生に慣れておくと、次に条件分岐が必要な作業に出会ったときも、AutoLISPへ自然に踏み出せます。まずは自分が一番くり返している作業を一つ、アクションレコーダーで記録してみましょう。
まとめ
AutoCADの繰り返し作業は、「記録して再生する」という考え方で確実に減らせます。1図面内の操作を書かずに自動化するならアクションレコーダー、決まった手順を複数図面へ広げたりチームで共有したりするならスクリプトが向きます。条件分岐や計算が必要ならAutoLISPの出番です。目的で選び分けると迷いません。
つまずきを先に押さえておくと、失敗しにくくなります。アクションレコーダーでは、ダイアログでの変更やファイルを開く操作が記録できません。さらにアクションレコーダー自体が、AutoCAD LTには搭載されていません。スクリプトでは、空白がEnterと同じ意味を持ちます。この3点を知っておくだけで、多くの「動かない」を避けられます。まずはアクションレコーダーで一つ記録するところから、自動化を始めてみましょう。
建築知識の教科書