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AutoLISPで定型作業を自動化する入門|読み込み・実行・自作の基本

編集部 読了 約15分

AutoLISPで定型作業を自動化する入門|読み込み・実行・自作の基本

もらった便利な.lspファイルをAutoCADで動かしたい、あるいは毎回くり返す定型作業をコマンドひとつで済ませたい。そう思ってAutoLISPにたどり着いた方は多いはずです。ところが入門記事の多くは文法の解説から始まるため、プログラミング未経験だと最初のページで手が止まってしまいます。

この記事では、AutoLISP(AutoCADに組み込まれたLisp系のプログラミング言語)を「まず動かす」ところから始めます。配布されたLISPを読み込んで使う手順、毎回自動で読み込む設定、読み込めないときのつまずき対処、そして数行の自作コマンドまで、AutoCAD公式ヘルプの仕様に沿ってやさしく解説します。AutoCAD LTでLISPが使えるかどうかも、機能面から整理します。

AutoLISPでできること|「もらって使う」「自分で作る」の2方向

AutoLISPを使うと、他の人が作った便利な機能を取り込むことも、自分専用の短いコマンドを作ることもできます。どちらも追加のソフトを買う必要はなく、AutoCAD本体だけで始められます。

AutoLISPはAutoCADに標準で入っている自動化の言葉

AutoLISPは、AutoCADに組み込まれたLisp系のプログラミング言語で、作図や編集の自動化、自分用コマンドの作成に使います(出典: AutoLISP Introduction、2026-07-19確認)。難しそうに見えますが、正体は.lspという拡張子のただのテキストファイルです。中身はNotepadなどのテキストエディタで開けます(出典: 公式チュートリアル、2026-07-19確認)。

動かすのに追加ソフトの購入はいりません。AutoCAD本体さえあれば、もらった.lspをその日から使い始められます。

この記事のゴールは「配布LISPを動かす→簡単に自作」

多くの人は、ネットや同僚から配布された便利なLISPを動かしたい、というところから始まります。だからこの記事も、その順番に沿って進みます。「読み込んで使う→毎回自動で読み込む→つまずき対処→簡単な自作」の流れです。

なお、コードを書かずに操作そのものを記録・再生して自動化したい場合は、狙いが少し違います。その方法はスクリプトとアクションレコーダーで繰り返し処理を自動化で解説しています。

配布されたLISPを読み込んで使う(APPLOAD)

配布された.lspは、APPLOADというコマンドで読み込めば、その場ですぐ使えるようになります。まずは「1回読み込んで動かす」体験を先に済ませましょう。

APPLOADで.lspファイルを読み込む手順

読み込みの基本は、コマンドライン(画面下部の命令を打ち込む欄)にapploadと入力するところから始まります。実行すると「アプリケーションのロード/アンロード」というダイアログが開きます(出典: APPLOAD (Command)、2026-07-19確認)。

あとは読み込みたい.lspファイルを選んで「ロード」を押すだけです。ファイル一覧から画面へドラッグして読み込むこともできます(出典: 同上)。

ダイアログを開かずに済ませたいなら、コマンドラインに(load "ファイル名")と打つ方法もあります。ファイルがサポートファイル検索パス(AutoCADがファイルを探しにいくフォルダの一覧)の上にあれば名前だけで、外にあるならフルパスで指定します(出典: Auto-Loading and Running AutoLISP Routines、2026-07-19確認)。

読み込んだLISPコマンドの実行方法

読み込んだLISPは、AutoCADの通常コマンドと同じように、コマンドラインに名前を打てば動きます。配布LISPには「読み込むとどのコマンド名で使えるか」の説明が付いていることが多いので、その名前を入力してください。

説明が見当たらないときは、.lspをテキストエディタで開いてみます。(defun C:xxx ...)と書かれたxxxの部分が、実行するコマンド名です(出典: 公式チュートリアル、2026-07-19確認)。

1回の読み込みは、AutoCADを閉じるとリセットされる

ここで1つ注意があります。APPLOADで「ロード」しただけの読み込みは、そのセッション(AutoCADを起動している間)だけ有効です。

AutoCADを再起動すると、また読み込み直しになります。毎日使うLISPを毎回読み込むのは手間なので、次のStartup Suiteで自動読み込みに登録しておくと快適です。

毎回自動で読み込む(Startup Suite)

よく使うLISPは、Startup Suite(スタートアップスイート)に登録しておくと、AutoCADを起動するたびに自動で読み込まれます。一度設定すれば、以後は読み込み操作そのものが不要になります。

スタートアップスイートに登録する

登録場所は、さきほどの「アプリケーションのロード/アンロード」ダイアログの中にある「スタートアップスイート」です。ここに.lspを追加すると、AutoCAD起動のたびに自動で読み込まれます(出典: APPLOAD (Command)、2026-07-19確認)。

よく使うLISPをここに入れておけば、以後は毎回の読み込みが不要になり、コマンド名を打つだけで使えます。不要になったら、同じ場所から解除・削除できます。

自動読み込みで気をつけること

自動読み込みで1つだけ注意したいのは、ファイルの置き場所です。登録後にファイルを別フォルダへ移動したり削除したりすると、読み込めなくなります。だから置き場所は固定しておくのが安全です。

さらに、その置き場所を次のセクションで説明する「信頼できる場所」に合わせておくと、警告なしで安定して読み込めます。

ファイルを置くだけで自動読み込みする(acad.lsp / acaddoc.lsp)

GUIのStartup Suiteとは別に、決まった名前のファイルを置くだけで自動読み込みさせる方法もあります。サポートファイル検索パスの上にacad.lspを置くと、AutoCAD起動時に1回だけ自動で読み込まれます(出典: Auto-Loading and Running AutoLISP Routines、2026-07-19確認)。

図面を開くたびに読み込ませたいときはacaddoc.lspを使います。こちらは図面ごとの初期化時に読み込まれます(出典: 同上)。AutoCAD LTではacadlt.lspacadltdoc.lspが同じ役割を持ちます(出典: 同上)。

どちらを選ぶかは好みで構いません。GUIに登録を残したくない、複数のPCへ同じ設定をまとめて配りたい、という場合はこのファイル方式が向いています。

読み込めない・使えないときの対処

読み込めない・使えないときの原因は、大きく2つに絞れます。「信頼できる場所」からの読み込みかを判定するセキュリティ設定と、ファイルの置き場所(サポートファイル検索パス)です。この2点を確認すれば、たいていは解決します。

なぜ警告が出るのか(SECURELOADの仕組み)

LISPを含む実行コードファイル(.lsp/.fas/.vlxなど、命令を実行するファイル)は、「信頼できる場所」以外から読み込もうとすると警告が出ます。この動きを決めているのが、システム変数(AutoCADの動作設定を保持する値)SECURELOADで、既定値は1です(出典: SECURELOAD、2026-07-19確認)。

これは壊れているのではなく、出所のわからないコードを勝手に走らせないための安全機能です。だから警告が出ても、あわてる必要はありません。

SECURELOADの値は、次の早見表のように挙動が変わります。

挙動使いどころ
0どこからでも警告なしで読み込む非推奨(安全性が下がる)
1信頼できる場所以外は警告を出す既定。通常はこのまま
2信頼できる場所以外は読み込まないより厳しく制限したいとき

(出典: SECURELOAD、2026-07-19確認)

「信頼できる場所」にフォルダを追加する

根本的な解決は、LISPを置いたフォルダを「信頼できる場所」に追加することです。こうすれば、次からは警告なしで読み込めます。

設定は、システム変数TRUSTEDPATHS(信頼できる場所を指定する変数)か、オプション>ファイル>信頼できる場所から行えます(出典: SECURELOAD、2026-07-19確認)。出所が確かなLISPだけをここに置く運用にすれば、安全と手軽さの両立ができます。

コマンドが見つからない・そもそも読み込めないとき

「読み込んだはずのコマンドが見つからない」「ファイル名だけでは読み込めない」ときは、セキュリティではなく置き場所が原因のことが多いです。ファイルがサポートファイル検索パスの上に無いと、名前だけでは見つけられません(出典: How to automatically load LISP routines、2026-07-19確認)。

対処は2つあります。ファイルの置き場所をサポートファイル検索パスに追加するか、(load "フルパス")のようにフルパスで読み込むかです。自動読み込み(acad.lspなど)が効かないときも、まずファイルがこのパスの上にあるかを確認してください。

もう1つ、コマンド名の打ち間違いもよくある原因です。実行するコマンド名は、.lspを開いて(defun C:名前 ...)の名前部分で確認できます。

簡単なLISPを自作してみる(defun C:)

自作といっても、身構える必要はありません。テキストエディタで数行書いて.lspとして保存し、APPLOADで読み込むだけで、自分専用のコマンドができあがります。

LISPは「テキストで書いて読み込む」だけ

自作の全体像は、とてもシンプルです。テキストエディタに短いコードを書いて.lsp拡張子で保存し、これまでと同じようにAPPLOADで読み込むだけです(出典: 公式チュートリアル、2026-07-19確認)。

基本の型は(defun C:名前 () ... )です。defunは「関数を定義する」命令で、先頭にC:を付けると、AutoCADの通常コマンドとして名前を打って呼び出せるようになります(出典: 同上)。最初につまずきやすいのは括弧の対応で、開いた括弧と閉じた括弧の数が合っているか、そこだけ気をつければ大丈夫です。

最初の自作コマンドを作る流れ

実際の流れは3ステップです。まずテキストエディタに短い(defun C:xxx () ...)を書き、.lsp拡張子で保存します。次にAPPLOADで読み込みます。最後にコマンドラインへ定義した名前を打つと、その処理が実行されます。

うまく動いたら、あとはくり返しです。よく使う操作を1コマンドにまとめる発想で、少しずつ育てていけます。たとえば「特定の画層を作って線種と色を設定する」といった毎回の下準備を、1つのコマンドにまとめられます。

本格的に書くならVS Code拡張

もう少し本格的に書きたくなったら、エディタを変えると楽になります。従来のVisual LISP IDE(LISP開発用の専用エディタ)は廃止の方向で将来削除が予定されているため、新規に書くなら「AutoLISP Extension for VS Code」が公式で推奨されています(出典: AutoLISP Introduction、2026-07-19確認)。

VS Code(Microsoftの無料コードエディタ)に入れて使うこの拡張には、入力補完やエラー表示があります。だから未経験者でも、書き間違いに気づきやすくなります。

AutoCAD LTでもLISPは使える?

「LTではLISPは使えない」という情報を見かけますが、それは古い認識です。AutoCAD LTは2024以降、LISPを実行できるようになっています。ただし一部の機能には制限が残ります。

LT 2024以降はLISPが動く(ただし一部制限)

AutoCAD LTは2024以降、LISPアプリ・コマンド・ファイル(.lsp/.fas/.vlx/.dcl)を実行できるようになりました(出典: AutoLISP Introduction、2026-07-19確認)。大半のVL/VLA/VLAX/VLR系の関数も使えます。

一方で制限もあります。サードパーティの自動化ライブラリは非対応で、ActiveXオートメーション(他アプリと連携する仕組み)はWindowsで制限があり、Macでは利用できません(出典: 同上)。さらにLTは.fas/.vlx(コンパイル済みのLISP)を実行することはできます。ただし、それらへの変換(コンパイル)や開発用のVisual LISP IDEは、無印AutoCAD(Windows)だけの機能です(出典: How to Use AutoCAD LT and AutoLISP、2026-07-19確認)。

まとめると、配布LISPの多くはLTでも動きますが、高度なActiveX連携を使うものは無印AutoCADが必要になる場合があります。なお、どのエディションが自分に合うか、費用はいくらかといった選定の話は、この記事では扱いません。ここではLTでLISPが動くかどうかという機能面を押さえておけば十分です。

配布LISPの導入を編集部が読み解いた所感

公式ドキュメントを読み解くと、AutoLISP入門でつまずく箇所は、文法よりも「読み込みの周辺」に集中していると編集部では見ています。APPLOADの操作自体は数クリックで、むしろ難所はセキュリティ警告とファイルの置き場所です。ここを先に押さえるだけで、挫折の多くは避けられます。

あらかじめ伝えておきたい制約もあります。1つは括弧の対応など文法特有のとまどい、もう1つはセキュリティ設定で読み込めないときに「壊れている」と誤解しやすい点です。どちらも仕組みを知っていれば怖くありませんが、知らないと最初の1回で手が止まります。

裏を返せば、この2点さえ乗り越えれば、あとは先に示した「読み込んで使う→自作」の流れをたどるだけです。追加費用ゼロで始められることも合わせると、プログラミング未経験からでも入口の敷居は思うより低い、というのが編集部の結論です。

AutoLISPを取り入れると日々の作図はどう変わるか

配布LISPを1本読み込めるようになると、日々の作図の景色は少しずつ変わっていきます。これまで手作業でくり返していた画層の設定や決まった図形の配置が、コマンド名ひとつで片づくようになります。

たとえば、毎朝の図面準備で「決まった画層を10個作り、線種と色を設定する」作業を手でやっていたとします。この一連をLISPにまとめておけば、同じ準備がコマンド1つで終わり、空いた数分を検討や作図そのものに回せます。ひとつずつの時短はわずかでも、毎日くり返せば積み上がっていきます。

次の一歩は、自分の手で小さな自作コマンドを1つ作ってみることです。動いた瞬間に「自分でも作れる」という感覚がつかめれば、あとは必要に応じて機能を足していけます。もう少し複雑な自動化に進みたくなったら、操作の記録・再生(スクリプトとアクションレコーダーで繰り返し処理を自動化)や、環境そのもののカスタマイズ(作業環境をカスタマイズする|CUI・エイリアス・ショートカット)と組み合わせると、作図はさらに軽くなります。

まとめ

AutoLISPは、もらって使うことも、自分で作ることもできる自動化の言葉です。最後に、入門の要点を整理します。

配布されたLISPは、APPLOAD(または(load "名前"))で読み込み、コマンド名を打てば使えます。毎回使うものは、Startup Suiteかacad.lspacaddoc.lspに登録して、起動時に自動で読み込ませると快適です。読み込めない・使えないときは、SECURELOADの「信頼できる場所」と、サポートファイル検索パスの2点を確認してください。自作は(defun C:名前 () ...)の数行から始められます。AutoCAD LTも2024以降はLISPに対応し、実行はできますが、コンパイル作成やActiveXなど一部に制限があります。

まず動かす体験を1回済ませれば、あとは必要に応じて自作へ広げていけます。次の一手は、自分の環境に合った小さな一歩から選んでください。