PERSC JOURNAL DB Manual Course

運営者・お問い合わせ
CAD · AutoCAD

AutoCADのプロパティを一括編集する3つの技|パレット・MATCHPROP・クイック選択

編集部 読了 約15分

AutoCADのプロパティを一括編集する3つの技|パレット・MATCHPROP・クイック選択

AutoCADで図面を描いていると、あとから「この線をぜんぶ別の画層に移したい」「何十本もある補助線の色をまとめて変えたい」という場面が必ず出てきます。そのたびに図形を1本ずつクリックして直していては、時間がいくらあっても足りません。1本ずつの手作業に、うんざりした経験はありませんか。

図形が持つ色・画層・線種などの情報を「オブジェクトプロパティ(特性)」と呼びます。この特性は、選び方と直し方さえ押さえれば、何十個あってもまとめて変えられます。

この記事で紹介する手は3つあります。プロパティパレット(Ctrl+1)でまとめて直す方法、MATCHPROP(プロパティコピー)で見た目をそろえる方法、クイック選択(QSELECT)や同一オブジェクト選択で対象を絞り込む方法です。この3つを「選ぶ・まとめて直す・コピーする」という1つの流れで解説します。

オブジェクトプロパティとは|図形が持つ「特性」の基本

オブジェクトプロパティとは、図形1つ1つが持っている色・画層・線種・座標などの情報のことです。この特性には全図形に共通するものと、図形の種類ごとに異なるものがあり、この違いを知っておくと一括編集がぐっと速くなります。

一般特性(General)と図形固有の特性(Geometry)

特性は「どの図形も共通で持つもの」と「その図形だけが持つもの」の2種類に大きく分かれます。この区別が、あとで複数選択して一括変更するときの成否を左右します。

一般特性(General:色・画層・線種など全図形に共通する特性)は、色・画層・線種・線種尺度・線の太さ・透過性などです。プロパティパレットの「General(一般)」欄に並び、どの図形を選んでも表示されます。

図形固有の特性(Geometry:円の半径や線の座標など図形の種類ごとに変わる特性)は、円なら中心と半径、線なら始点・終点の座標といった値です。パレットの「Geometry」欄に並び、図形の種類によって中身が変わります。

つまり、まとめて直せるのは主に一般特性のほう。色や画層は種類の違う図形をまとめて選んでも一度に変えられますが、半径のような固有の値は同じ種類の図形を選んだときだけ編集できます。この感覚を持っておくと、次に説明する複数選択の挙動でつまずきません。

特性は原則ByLayer|画層管理との関係

色・線種・線の太さは、図形ごとに個別指定するより、既定のByLayer(バイレイヤー:色や線種を画層の設定に従わせる状態)にしておくのが基本です。ByLayerにしておけば、画層側の色を変えるだけで、その画層のすべての図形の見た目が一度に変わるからです。

この記事で解説するのは、すでに個別の色や線種を持ってしまった図形を、あとからまとめて直したり、そろえたりする手です。画層そのものの作成・表示制御や、色・線種・線の太さをByLayerで一元管理するやり方は画層(レイヤ)管理の完全ガイドで詳しく解説しています。

プロパティパレット(Ctrl+1)で複数オブジェクトを一括変更する

複数の図形をまとめて選び、プロパティパレットで値を1回変えれば、選んだ全図形に一括で反映されます。これが特性を一括変更する、最も基本的なやり方です。

パレットの開き方と画面構成

プロパティパレット(PROPERTIES:選んだ図形の特性を直接編集するパレット)は、次のどの方法でも開けます。よく使う機能なので、自分がやりやすい開き方を1つ覚えておくと作図が止まりません。

開き方操作
ショートカットCtrl+1 で開閉をトグル
コマンドPROPERTIES(別名 PR
リボンView(表示)タブ > パレット パネル > プロパティ
右クリック図形を右クリック > プロパティ

ソース: The Properties Palette(Autodesk公式ヘルプ、2026年7月時点)

パレットの中は「General(一般)」「Geometry」「3D Visualization」「Plot Style(印刷スタイル)」「Misc(その他)」などのセクションに分かれ、選んだ図形の種類によって表示される項目が変わります。何も選んでいないときは、現在の図面の既定値(現在の画層や色など)が表示されます。ここで値を変えると、これから描く図形の初期設定を変えられます。

複数選択したときの挙動(共通特性と *VARIES*

プロパティパレットが一括変更で真価を発揮するのは、複数の図形を選んだとき。ここでの表示ルールを知らないと、「変えたい項目が出てこない」と戸惑うことになります。

種類の違う図形を複数選ぶと、それらに共通する特性だけがパレットに並びます。たとえば円と線を一緒に選ぶと、色や画層は表示されますが、円にしかない半径は表示されません。共通する項目しか一括では変えられない、というのが基本の仕組みです。

選んだ図形どうしで値がバラバラの特性は、*VARIES*(各種)と表示されます。ここに新しい値を入れると、選択したすべての図形へ一括で適用されます。たとえば色がバラバラの図形をまとめて選び、*VARIES*と出ている色欄で「赤」を選べば、選んだ図形の色が全部赤にそろいます。直したい図形をまとめて選び、パレットで画層や色を1回変えるだけで全部そろう、という流れです。

もし「複数を選んだのに1つずつ選び直しになる」ときは、選択の追加挙動を決めるシステム変数 PICKADD を確認してください。既定値は2で、クリックや窓選択のたびに選択セットへ追加されますが、0になっていると直近の選択だけが残り、前の選択が解除されてしまいます(PICKADD(Autodesk公式ヘルプ、2026年7月時点))。Shiftを押しながら選ぶと、選択セットへの追加や除外もできます。

軽く済ませたいときはクイックプロパティ

パレットを常に開いておくと画面を占有します。選択のたびに必要な項目だけ手早く直したいなら、クイックプロパティ(QUICKPROPERTIES:選択時にカーソル付近へ小さな特性一覧を出す機能)が向いています。

クイックプロパティは QUICKPROPERTIES(トグルは Ctrl+Shift+P)でオンにできます。図形を選ぶと、カーソルの近くに小さな特性一覧がポップアップ表示され、その場で色や画層を変えられます。表示する項目は DSETTINGS の「クイックプロパティ」タブで設定できます。自動表示のオン・オフはシステム変数 QPMODE で制御します(QUICKPROPERTIES(Autodesk公式ヘルプ、2026年7月時点))。

画面を占有せず、選ぶたびに必要な項目だけ直せるのが利点です。表示項目を絞る分、細かい特性まで触りたいときはフルのプロパティパレットに切り替えるとよいでしょう。あくまでプロパティパレットを補助する軽量版、と位置づけておくと使い分けに迷いません。

MATCHPROP(プロパティコピー)で見た目をそろえる

MATCHPROP(プロパティコピー)は、手本にする図形1つの見た目を、ほかの図形へ塗るように移すコマンドです。1つずつ設定し直さなくても、そろえたい図形をクリックしていくだけで画層や色をまとめられます。

基本操作(元→先、コマンドMA)

MATCHPROPの公式定義は「選択したオブジェクトの特性を他のオブジェクトに適用する」です(MATCHPROP(Autodesk公式ヘルプ、2026年7月時点))。コマンドは MATCHPROP、別名 MA で呼び出せます。

操作は3ステップです。まずコピー元となる図形を1つ選びます。次にカーソルが刷毛(はけ)のアイコンに変わるので、そろえたいコピー先の図形を次々にクリックします(複数まとめてクリックできます)。最後にEnterを押すと終了します。これだけで、元の図形が持つ色・画層・線種・線の太さなどが、先の図形へまとめて移ります。

たとえば1本だけ正しい画層と線種で描いた寸法補助線を手本にして、あとから描いた同じ役割の線を次々クリックすれば、画層と線種を一気にそろえられます。手本の図形が1つあれば、あとは塗るだけ。この身軽さがMATCHPROPの持ち味です。

設定(Settings)でコピーする特性を絞る

MATCHPROPは初期状態だと、色も画層も線種もまとめて移します。しかし実務では「線種だけそろえたい」「色は移すが画層はそのままにしたい」という場面がよくあります。そこで使うのが設定(Settings)です。

コピー先を選ぶ前にコマンドラインで Settings を選ぶと、[特性設定]ダイアログが開き、コピーする項目をチェックで選べます。移したい特性だけをオンにすれば、狙った特性だけをコピーできます。コピーできる特性は次のとおりです。

区分コピーできる特性
基本特性色/画層/線種/線種尺度/線の太さ/透過性/厚さ/印刷スタイル
特殊特性寸法/文字/ハッチング/ポリライン/ビューポート/表/マテリアル/マルチ引出線/シャドウ表示

ソース: Match Properties Settings(Autodesk公式ヘルプ、2026年7月時点)

たとえば色だけを残してほかのチェックを外せば「色だけそろえる」ことができます。逆に画層のチェックだけ外せば「見た目は手本に合わせるが、画層は元のまま動かさない」といった使い方もできます。全部移すか一部だけ移すかを選べるので、レイヤ構成を崩さずに見た目だけそろえる、といった細かい要求にも応えられます。

うまく移らないとき(図形種別による制限)

MATCHPROPは万能ではなく、元と先の図形の種類が違うと、一部の特性は移らないことがあります。公式ヘルプにも適用の制限が明記されています。

線種と線種尺度は、属性・ハッチング・マルチ文字・点・ビューポートには適用されません。厚さは、円弧・円・線分・点・2Dポリライン・領域・文字などに限られます。また寸法・文字・表・ハッチングといった特殊特性は、コピー先が同じ種類の図形でなければ移りません。寸法スタイルは寸法や引出線・公差へ、文字スタイルは文字オブジェクトへ、というように対象が決まっています。

そのため「文字の見た目が移らない」ときは、コピー元とコピー先がどちらも文字かどうかを確認してみてください。図形の種類がそろっていれば、たいていの特性は問題なく移ります。

条件と類似で図形をまとめて選ぶ|クイック選択(QSELECT)と同一オブジェクト選択(Select Similar)

「この画層のこの色の円だけ」を狙って選びたいときは、クイック選択(QSELECT)と同一オブジェクト選択(SELECTSIMILAR)を使います。この2つで作った選択セット(選ばれた図形のまとまり)を、そのままパレットやMATCHPROPに渡すのが一括編集の起点になります。

クイック選択(QSELECT)ダイアログの構成(条件の組み方)

クイック選択の公式定義は「フィルタ条件に基づいて選択セットを作成する」です(Quick Select Dialog Box(Autodesk公式ヘルプ、2026年7月時点))。コマンドは QSELECT で、プロパティパレット右上の「クイック選択」(じょうご形のアイコン)ボタンからも起動できます。パレットを開いたまま選択に移れるので、往復が減ります。

ダイアログでは、上から順に条件を組み立てます。適用先(図面全体か、現在の選択セットか)を決め、オブジェクトタイプ(円・線・ポリラインなど)を選び、特性(画層・色・半径など)を指定します。続いて演算子で「等しい/等しくない/より大きい/より小さい/すべて選択/ワイルドカード一致」から絞り方を選び、値を入力します。最後に適用方法で「新しい選択セットに含める」か「除外する」かを選びます。

たとえばオブジェクトタイプを「円」、特性を「画層」、演算子を「等しい」、値を「壁」にすれば、壁画層にある円だけをまとめて選べます。この状態でプロパティパレットを開けば、選んだ円の特性を一括で変えられます。

もっと手早く「これと同じ」を選ぶ|同一オブジェクトを選択(SELECTSIMILAR)

条件を細かく組むほどではなく「これと同じものを全部」選びたいときの最短手が、SELECTSIMILAR(同一オブジェクトを選択)です。図形を右クリックして「同一オブジェクトを選択」を選ぶか、コマンド SELECTSIMILAR で実行します。

既定では、同じ種類かつ同じ画層(ブロックなどの参照系は同名)の図形を、図面全体から一括で選びます(SELECTSIMILAR(Autodesk公式ヘルプ、2026年7月時点))。ダイアログを開く手間がなく、ワンクリックで済むのが強みです。一致の条件は、コマンド内の Settings かシステム変数 SELECTSIMILARMODE で変えられます。色・線種・線の太さ・名前などを一致条件に足したり外したりできます(SELECTSIMILARMODE(Autodesk公式ヘルプ、2026年7月時点))。

QSELECTとの使い分けは次のとおりです。

使いたい場面向いている機能
「この図形とそっくり同じもの」を手早く全部選ぶSELECTSIMILAR
「補助線画層かつ半径5未満の円だけ」など条件を細かく組むQSELECT

なお、SELECTSIMILARはAutoCAD LT(機能を絞ったエディション)でも使えます。細かい数値の大小で絞りたいときはQSELECT、同種・同画層でよければSELECTSIMILAR。この2つを状況で切り替えれば、選ぶのに迷いません。

選んだ後の合わせ技と注意点(ネストブロック)

QSELECTやSELECTSIMILARで作った選択セットは、そのまま次の一括処理に渡せます。選択した状態でプロパティパレットを開けば画層や色を一括変更でき、MATCHPROPの適用先にすることもできます。QSELECTの「現在の選択セットに追加」を使えば、別の条件で選んだ結果を足していけるので、複数条件を合成した選び方もできます。条件で選んだブロックを、そのまま属性ブロックで情報を持たせデータ抽出するで解説している建具表・機器表づくりにつなげる、という使い方も実務では役立ちます。

ひとつ注意したいのが、ネストされたブロック(ブロックの中に入れ子になったブロックや、連想配列内のブロック)は、QSELECT・SELECTSIMILARのどちらでも選択・カウントされない点です。入れ子の図形まで拾いたいときは、あらかじめ範囲選択してからQSELECTをかけると、その選択の中の図形タイプだけに絞り込めます。

うまくいかないときの確認ポイント

一括変更やMATCHPROPが効かないときは、原因のほとんどが「選択のしかた」か「画層のロック・表示状態」のどちらかです。いったいどこで詰まっているのでしょうか。まずは症状ごとの原因と対処を、次の表で確認してください。

症状原因対処
プロパティパレットが見当たらないウィンドウを閉じた・隠れているCtrl+1 かコマンド PROPERTIES(別名 PR)で開き直す
複数選んでも半径などが出ない種類の違う図形が混在し、共通特性しか出ない同じ種類の図形だけを選び直す
追加で選ぶと前の選択が消えるシステム変数 PICKADD が0になっているPICKADD を既定の2に戻す
一括変更が反映されない対象がロック画層・非表示(オフ/フリーズ)画層にある画層のロックを解除し、表示に戻す

どれも、前のセクションで触れた仕様の裏返しです。とくに画層のロックや表示・非表示の切り替えは、画層(レイヤ)管理の完全ガイドで詳しく解説しています。ロックされた画層の図形は、選べても編集できない点だけ覚えておきましょう。

選ぶ・そろえる・直すの使い分けについての編集部の見解

公式ヘルプを読み解くと、ここで紹介した機能は「選ぶ・まとめて直す・見た目をそろえる」という役割ではっきり分かれています。プロパティパレットは選んだ図形の特性を直接直す道具、MATCHPROPは手本の見た目を写す道具、QSELECTとSELECTSIMILARはその前段で対象を絞り込む道具、という位置づけです。

海外のAutodesk Communityでも、「同種・同画層でよければSELECTSIMILAR、半径や値など細かい条件で絞るならQSELECT」という使い分けが定番のヒントとして共有されています。編集部の見解としては、この2つを両方知っておくと、選択にかける手数が目に見えて減るのが大きいと考えています。多くの入門書がQSELECTだけを扱いがちですが、日常のちょっとした修正では右クリックのSELECTSIMILARのほうが出番が多いからです。

初心者がつまずきやすいのは、機能そのものより「複数選べない」「選択が置き換わる」といった選択の前提部分。PICKADDの既定値や、種類を混ぜると共通特性しか出ない仕様を先に知っておくと、一括変更がそもそも成立しない、という空回りを避けられます。

制約として、ネストしたブロックはQSELECT・SELECTSIMILARで拾えない点は覚えておきたいところです。ブロックを多用する建築図面では、この制約に当たる場面が出てくるので、範囲選択と組み合わせて対処するとよいでしょう。

活用シーン|次の一歩

これらの機能を使いこなすと、日々の図面修正のスピードが大きく変わります。使い方を知らない人は、色や画層を直すたびに図形を1本ずつクリックし続けますが、選び方と直し方を身につけた人は、数十本の図形を1回の操作でそろえられます。同じ修正指示が来ても、かかる時間が数分と数十秒ほど違ってくる、という差になって表れます。

次の一歩としておすすめなのが、QSELECTで条件選択したブロックから、建具表や機器表といった集計表を自動で作る流れです。条件で選ぶ力が身につくと、選んだ図形の情報を書き出してデータとして活用する段階に進めます。その具体的なやり方は属性ブロックで情報を持たせデータ抽出するで解説しているので、選択に慣れてきたらのぞいてみてください。

まとめ|使い分けと次に読む記事

AutoCADで特性をまとめて編集する3つの手は、役割で覚えると迷いません。複数の図形をまとめて直すときはプロパティパレット(Ctrl+1)を使い、共通特性しか一括では変えられない点と*VARIES*表示の意味を押さえます。手本に見た目をそろえるときはMATCHPROP(MA)を使い、Settingsでコピーする特性を絞り込みます。

対象を絞って選ぶときは、条件を細かく組むQSELECTと、同種・同画層を手早く選ぶSELECTSIMILARを使い分けます。どちらも選択セットを作る前工程で、作ったセットをそのままプロパティパレットやMATCHPROPに渡すと、選ぶところから直すところまでが一続きになります。この選ぶところから直すところまでの一連の流れを覚えれば、修正作業にかかる時間をぐっと縮められます。