AutoCAD修正コマンド10選|移動・複写・オフセット・トリム・フィレットを使いこなす
AutoCAD修正コマンド10選|移動・複写・オフセット・トリム・フィレットを使いこなす
図形は描けるようになったのに、「動かす・複製する・切る・つなぐ・角を整える」の編集がなんとなく我流で、作図に時間がかかっていませんか。AutoCADで図面を仕上げる速さは、線を引く速さよりも、描いたあとの修正コマンドをどれだけ体に入れているかで決まります。
この記事では、AutoCADの修正コマンドを「配置する・増やす・整える」という目的別の地図に並べ直します。代表となる10コマンドとグリップ編集を、手順つきで身につけられるように整理したガイドです。
線や円を新しく描く操作そのものは基本作図コマンド|線・円・円弧・ポリライン・長方形にゆずります。移動距離やオフセット量を寸法どおりに入れる座標入力の基礎は寸法どおりに正確に描く|座標入力・オブジェクトスナップ・トラッキングにまかせ、ここでは「すでに描かれた図形をどう直すか」に絞ります。
修正コマンドは「オブジェクト選択」から始まる
修正コマンドの大半は「コマンドを起動 → 対象を選択 → 実行」という順番で動きます。だから、どの図形を対象にするかを選ぶ速さと正確さが、修正作業全体のスピードを決めます。
| 選び方 | 操作 | 選ばれる図形 |
|---|---|---|
| 個別ピック | 図形を1つずつクリック | クリックした図形だけ |
| 窓選択 | 左から右へドラッグ | 枠に完全に入った図形だけ |
| 交差窓選択 | 右から左へドラッグ | 枠に触れた図形すべて |
| フェンス | 線でなぞる | なぞった線が横切った図形すべて |
4つの基本的な選び方
窓選択と交差窓選択の「ドラッグの向き」の違いは、初心者が最初につまずく定番ポイントです。ここを取り違えると、意図しない図形まで巻き込んで消したり動かしたりする事故が起きます。
個別ピックは図形を1つずつクリックする、もっとも確実な方法です。窓選択は左から右へドラッグして四角い枠を描き、枠に完全に入った図形だけを選びます。壁の一部だけを囲んでも、はみ出した図形は選ばれません。
交差窓選択は逆に、右から左へドラッグします。枠に少しでも触れた図形はすべて選ばれるため、密集した図面から広い範囲をまとめて拾うときに向いています。たとえば平面図の一室ぶんの家具をまとめて別の部屋へ動かしたいとき、交差窓で部屋全体をざっと囲めば、机・椅子・パーティションを一度に選べます。線でなぞって横切った図形を拾うフェンスも、細長い範囲を選ぶときに便利です。
選択の追加・除外とEscの習慣
選んだあとの微調整は、追加と除外の2操作だけ覚えれば十分です。選択セットに図形を足したいときは続けてクリックし、逆にまちがえて選んだ図形を外したいときはShiftを押しながらクリックします。
作業のあいだにEscキーで選択を解除するくせをつけると、誤操作からの立て直しが速くなります。何も選んでいない状態に一度戻すだけで、次のコマンドを安心して打てるからです。正確な範囲指定やスナップ(点を正確につかむ機能)の基礎は寸法どおりに正確に描く|座標入力・オブジェクトスナップ・トラッキングで解説しています。
位置を変える|移動・複写・回転・鏡像
移動・複写・回転・鏡像は、「基点」と「距離または角度」で図形を狙った位置へ運ぶコマンドです。数値を入れれば寸法どおりに動かせるので、目分量に頼らず正確に配置できます。
| コマンド | エイリアス | 役割 | 覚えておく点 |
|---|---|---|---|
| MOVE | M | 図形を移動する | 基点と目的点、または移動距離で指定 |
| COPY | CO / CP | 図形を複製する | 既定で連続複写。1個で止まるならModeが単一 |
| ROTATE | RO | 基点まわりに回す | 反時計回りが正の角度 |
| MIRROR | MI | 対称形を作る | 文字の反転はMIRRTEXTで制御 |
エイリアス(コマンドの短縮入力)は、キーボードから最短で操作するための略称です。表の2文字を打ってEnterするだけで、リボンのボタンを探さずにコマンドを起動できます。
移動(MOVE)と複写(COPY)
移動と複写は、位置を動かす操作と複製する操作という、修正のもっとも基本となる2種類です。
MOVE(エイリアスM)は、まず動かす図形を選び、基点をクリックしてから、目的点をクリックするか移動距離を入力します。基点は「図形のどこをつまむか」を決める点で、通り芯の交点や図形の角を基点にすると、移動先でぴたりと合わせられます。
COPY(エイリアスCO/CP)は、既定で連続複写になっています。1回コマンドを起動すれば、同じ図形を続けて何個でも置けます。「複写したのに1個しかコピーできない」というとき、原因はMode(モード)が単一(Single)に切り替わっていることです。既定は連続複写(Multiple)なので、Modeオプションで戻せば繰り返し置けるようになります(Autodesk公式 COPY、2026年7月18日確認)。移動量や複写の間隔を数値で入れる操作は、動的入力や座標入力が土台になります。
回転(ROTATE)
回転は、選んだ図形を基点のまわりで指定した角度だけ回すコマンドです。建具の開き勝手を変えたり、斜めの通り芯に沿って部材を傾けたりする場面で使います。
ROを起動して図形を選び、回転の中心となる基点をクリックしてから、角度を入力します。角度は反時計回りが正で、時計回りに回したいときはマイナスを付けてください。元の図形を残して回転コピーしたいなら、Copyオプションが便利です。「いまの角度から目標の角度へ」合わせたいときは、Referenceオプションで既存の傾きを基準に回せます。
鏡像(MIRROR)と文字の向き
鏡像は、指定した鏡像線を軸にして図形を左右または上下に反転させるコマンドです。左右対称の建具や階段、対称配置の設備などを、片側だけ描いて反転させれば作図量が半分で済みます。
MIを起動して図形を選び、鏡像線の2点を指定してから、元の図形を残すか消すかを選びます。ここで注意したいのが文字の扱いです。システム変数(AutoCADの動作を切り替える設定値)MIRRTEXTが既定値の0のとき、文字は反転せず読める向きを保ちます。1にすると文字も裏返るため、鏡像したら図面内の文字が読めなくなったというときは、MIRRTEXTが1になっていないかを確認してください(Autodesk公式 MIRRTEXT、2026年7月18日確認)。
図形を増やす・整列させる|オフセット・配列複写
オフセットは「一定距離の平行線」を、配列複写は「規則的な繰り返し」を一発で作るコマンドです。壁の二重線や通り芯、柱や什器の反復配置で、手作業の複製をまとめて肩代わりしてくれます。
| 配列の種類 | コマンド | 向いている形 |
|---|---|---|
| 矩形(行×列) | ARRAYRECT | 格子状の柱・タイル・机の島 |
| 円形(極) | ARRAYPOLAR | 円テーブルの椅子・円形配置 |
| パス沿い | ARRAYPATH | 曲線に沿った植栽・手すり子 |
オフセット(OFFSET)
オフセットは、選んだ図形から指定した距離だけ離れた平行な複製を作るコマンドです。壁の厚みぶんだけ内側に線を引く、といった作業を寸法どおりに量産できます。
Oを起動して距離を入力し、元の図形を選んでから、複製したい側をクリックします。たとえば厚さ150ミリの壁なら、片側の線を描いてオフセット距離を150にすれば、もう一方の壁線が正確な位置に生まれる仕組みです。用意されているオプションは3つ。通過させたい点を指定するThrough、元図形を残すか消すかを決めるErase、複製先の画層を指定するLayerです。これらを使えば、下地の線を残すか消すかをその場で選べます。
配列複写(ARRAY)の3タイプ
配列複写は、同じ図形を規則正しく並べるコマンドで、矩形・円形・パス沿いの3タイプを作れます。ARRAY(エイリアスAR)から呼び出せるのは、格子状に並べるARRAYRECT、中心のまわりに円状に並べるARRAYPOLAR、曲線に沿わせるARRAYPATHの3つ。
既定では「関連付け(associative)」配列になります。関連付け配列は、ブロックのように全体がひとつのオブジェクトとしてまとまっており、行数・列数・間隔をあとからまとめて編集できるのが利点です。たとえば会議室の椅子を6脚並べたあとで8脚に増やしたくなっても、数値を変えるだけで全体が組み替わります。編集はARRAYEDITでおこないます(Autodesk公式 ARRAYEDIT、2026年7月18日確認)。
関連付け配列は一体化しているぶん、1つだけを個別に動かそうとすると戸惑うことがあります。個々の図形をばらばらに調整したいなら、関連付けを解除して独立した図形に戻してから編集してください。
図形を整える|トリム・延長・フィレット・面取り
トリムは切り、延長はつなぎ、フィレットは丸め、面取りは斜めに落とす。交差や角の乱れを整える仕上げの4コマンドです。AutoCAD 2021以降、トリムと延長は「なぞるだけ」で使えるQuickモードが既定になりました(Autodesk公式 What’s New 2021、2026年7月18日確認)。
| コマンド | エイリアス | 整形の内容 | ポイント |
|---|---|---|---|
| TRIM | TR | 境界で切り取る | 2021以降はQuickモードが既定 |
| EXTEND | EX | 境界まで延ばす | Shiftでトリムと一時切替 |
| FILLET | F | 角を円弧でつなぐ | 半径0で角(コーナー)を作れる |
| CHAMFER | CHA | 角を斜めに落とす | 距離0+0で角を作れる |
トリム(TRIM)と延長(EXTEND)=Quickモード
トリムと延長は、AutoCAD 2021のQuickモードで操作が大きく変わりました。以前は「どこを境界にするか」を先に選ぶ必要がありましたが、Quickモードではすべての図形が自動的に境界として働きます。
TRIM(エイリアスTR)を起動したら、切りたい部分をクリック、ドラッグ、または交差フェンスでなぞるだけで整形できます。延長のEXTEND(エイリアスEX)も操作感は同じです。伸ばしたい線の端をクリックすれば、もっとも近い図形まで自動でつながります。コマンドの実行中にShiftを押せば、トリムと延長を一時的に入れ替えられ、切りすぎた線をその場で伸ばし直せます。
「切れない・延ばせない」というときは、対象がほかの図形ときちんと交差しているか、画層がロック(編集できない状態)されていないかをまず確認してください。以前のように境界を先に選ぶ従来の操作に戻したい場合は、システム変数TRIMEXTENDMODEで切り替えられます。
フィレット(FILLET)で角を丸める・角を作る
フィレットは、2つの図形が作る角を、指定した半径の円弧でなめらかにつなぐコマンドです。家具のコーナーや壁の入隅を丸めたいときに使います。
F(エイリアス)を起動し、Radiusオプションで半径を設定してから、つなぎたい2本の図形を選ぶと、その半径の円弧で角が結ばれます。ここで覚えておきたい小技が、半径を0にする使い方です。半径0のフィレットは丸みのない角(シャープなコーナー)を作り、離れていたり行きすぎていたりする2本の線を、交点までぴったり延長・トリムして閉じてくれます。開いてしまった角を一発で閉じる用途で、実務ではとても頻繁に使います。
面取り(CHAMFER)
面取りは、角を斜めに落とすコマンドで、フィレットと同じModifyパネルのドロップダウンに並んでいます。柱や家具の角を斜めにカットしたいときに、丸めるフィレットと使い分けます。
CHA(エイリアス)を起動すると、斜め線の大きさをMethod(方法)で決められます。指定のしかたは2通り。2つの距離で決める距離法と、距離と角度で決める角度法から、図面の指示に合うほうを選びます。そして面取りにも、角を作る小技が隠れています。2つの距離を両方とも0にすると、フィレットの半径0と同じように角(コーナー)ができ、2本の図形を交点まで延長・トリムして閉じられます(Autodesk公式 CHAMFER、2026年7月18日確認)。丸めたいならフィレットの半径0、そのまま閉じたいなら面取りの距離0と、対で覚えておくと角の処理に迷いません。
グリップ編集|コマンドを打たずに直感で直す
グリップは、図形を選んだときに現れる青い四角や三角のハンドル。このハンドルをドラッグしたりキーで切り替えたりするだけで、コマンドを打たずに移動・複製・回転までこなせます。細かな微調整では、コマンドを起動するよりグリップのほうが速い場面も多くあります。
グリップのモードを切り替える
グリップは、1つのハンドルで5種類の編集モードを順ぐりに切り替えられる部品です。グリップをクリックして選んだら、EnterまたはSpacebarを押すたびに、ストレッチ→移動→回転→尺度変更→鏡像へと編集モードが移ります。ひと回りすると先頭のストレッチに戻り、右クリックのメニューからも同じモードを選べます。
どのモードでも、「C」を押してからSpacebarを押せば、図形を動かしながら同時に複製できるのが強みです。たとえば柱を1本つかみ、位置を決めながら等間隔にコピーしていく操作もコマンドなしで進みます。
複数グリップと解除の作法
複数のグリップを選ぶと、選んだ点どうしの区間を保ったまま図形を変形できます。Shiftを押しながら複数のグリップをクリックすれば、その区間の形はそのままに、ほかの部分だけを伸ばせます。壁の一部だけを伸ばして部屋を広げる、といった調整に向いた使い方です。
作業が終わったらEscでグリップの表示を解除してください。つかんだままにしておくと、うっかりドラッグして図形が崩れる事故につながります。選び終えたら一度手を離す。この区切りをつけておくと安全です。
修正コマンドの覚え方についての編集部の見解
修正コマンドは数が多く見えますが、公式ドキュメントを読み解くと、覚える順番には自然な優先度があります。編集部の見解では、初学者はまず選択(窓と交差窓の違い)と、移動・複写・トリム・オフセットの4つを先に固めるのが近道です。この4つだけで、平面図の大半の修正作業はこなせます。
回転・鏡像・フィレット・面取りは、対称形や角の処理が出てきたときに追加で覚えれば十分です。とくにフィレットの半径0と面取りの距離0は、角を閉じる実務の頻出テクニックでありながら、入門段階では見落とされがちなポイントです。開いた角に悩んだら、この2つを思い出すだけで作業が一段速くなります。
配列複写とグリップ編集は、作業に慣れてからの「時短の底上げ」に位置づけられます。配列は反復配置を、グリップはコマンドを打たない微調整を、それぞれ肩代わりする役割です。急いで全部を覚えようとせず、目の前の図面で必要になったコマンドから体に入れていくのが、遠回りに見えて確実な習得ルートといえるでしょう。
なお、ここで紹介した2D修正コマンドは、AutoCAD LT・通常版のどちらでも同じように使えます。エディションごとの違いや導入費用を詳しく比べたいときは、製品情報をまとめたAutoCAD(db.persc.jp)で確認してください。
修正コマンドを使いこなすと図面作業はどう変わるか
修正コマンドを目的別に体で覚えると、図面を仕上げるまでの時間の使い方が大きく変わります。線を1本ずつ引き直していた作業が、選んで・動かして・整えるという流れに置き換わり、手戻りそのものが減っていくからです。
たとえば集合住宅の基準階プランを考えてみましょう。住戸のユニットを1つ作り込んでから、鏡像で左右反転させ、配列複写で上下階ぶんを並べれば、1住戸ぶんの手間で1フロアが組み上がります。あとから間口を50ミリ広げる修正が入っても、関連付け配列なら数値を変えるだけで全住戸に反映されます。修正コマンドを知らない人が1つずつ描き直すあいだに、使いこなす人は配置と反復で先へ進めるわけです。
次の一歩として、修正で整えた図形に画層や寸法を与え、レイアウトから印刷まで通す流れを覚えると、1枚の図面を最後まで自分で仕上げられるようになります。修正の速さは、その全体フローを支える土台です。
まとめ|描く・直す・整えるをワンセットで
AutoCADの修正コマンドは、目的別の地図で覚えると迷いません。要点を整理します。
修正はすべてオブジェクト選択から始まります。窓選択(左から右)は完全に囲んだ図形だけを、交差窓選択(右から左)は触れた図形すべてを選ぶので、この違いを最初に見分けられるようにしておくと安心です。コマンドは目的別に3グループで整理できます。位置を配置する移動・複写・回転・鏡像、数を増やすオフセット・配列複写、形を整えるトリム・延長・フィレット・面取りの3つです。トリムと延長は2021以降Quickモードが既定になり、切りたい所をなぞるだけで整形できます。フィレットの半径0と面取りの距離0で角を閉じる小技も、あわせて覚えておくと役立つでしょう。そして細かな微調整には、グリップ編集を併用するとコマンドより速く片づきます。
図面づくりは「描く・直す・整える」をワンセットで回すと安定します。修正の次は、描く操作と正確な入力、そして全体の流れを合わせて身につけていきましょう。
建築知識の教科書