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AutoCAD基本作図コマンド5種の使い分け|線・円・円弧・ポリライン・長方形

編集部 読了 約13分

AutoCAD基本作図コマンド5種の使い分け|線・円・円弧・ポリライン・長方形

AutoCAD(Autodesk社の2D・3D CADソフト)で図面を描くとき、最初に覚えるのが線・円・円弧・長方形といった「かたちを描くためのコマンド」です。どれも数クリックで使えますが、初心者がつまずくのは操作そのものよりも「どれを、いつ使えばいいのか」という選び分けの部分です。とくにLINE(線)とPLINE(ポリライン)は見た目が似ているのに、後からできることが大きく変わります。

この記事では、AutoCADの基本作図コマンドである線(LINE)・円(CIRCLE)・円弧(ARC)・ポリライン(PLINE)・長方形(RECTANG)の描き方と使い分けを、初心者がつまずきやすいポイントから解説します。あわせて、バラバラに描いた線を1本のポリラインにまとめるJOIN・PEDITの使い方まで、一連の流れで押さえられるようにまとめました。

AutoCADの作図コマンドの全体像と共通操作

作図コマンドは種類こそ多いものの、起動のしかたと実行中の操作は共通しています。そのため個別のコマンドを覚える前に、まず「起動して、点を指定して、確定する」という共通の型を理解しておくと、初めて使うコマンドでも迷いにくくなります。

主要な作図コマンドには、キーボードで素早く呼び出せる短い別名(コマンドエイリアス)が最初から割り当てられています。よく使うものを一覧にすると次のとおりです。

コマンド名機能既定エイリアス
LINE独立した直線を連続で描くL
PLINE直線と円弧が一体化した1本の線を描くPL
CIRCLE円を描くC
ARC円弧を描くA
RECTANG長方形(閉じたポリライン)を描くREC
JOIN複数のオブジェクトを1つに結合するJ
PEDITポリラインを変換・編集するPE

エイリアスは初期設定ファイル(acad.pgp)で定義された既定値で、ユーザー定義ファイルで自由に変更できます(2026年7月現在)。

コマンドの起動方法(リボンとコマンドライン)

作図コマンドは、画面上部の「ホーム」タブにある作成(Draw)パネルのボタンをクリックするか、コマンドラインに名前を入力して起動します。どちらから呼び出しても、実行される処理は同じです。

慣れてくると便利なのがエイリアス入力です。たとえばキーボードで「L」と打ってEnterを押すとLINE、「REC」ならRECTANGが起動します。マウスをリボンまで動かさずに済むため、作図のテンポが上がります。エイリアスは初期設定の値なので、自分の使いやすい文字に割り当て直すこともできます。

コマンド実行中の共通操作(点指定・オプション・確定と中止)

作図コマンドを起動すると、コマンドラインに「次の点を指定」といったメッセージ(プロンプト)が表示され、画面上で点をクリックして図形を組み立てていきます。指定を終えたらEnterまたはスペースキーで確定し、途中でやめたいときはEscキーで中止します。この3つの操作はどのコマンドでも共通です。

プロンプトの中に角括弧で示される項目は、そのコマンドのオプションです。頭文字のキーを打つか、括弧内の文字をクリックすると切り替えられます。なお、点を寸法どおりの位置に正確に置く方法には、座標入力やオブジェクトスナップがあります。くわしくは寸法どおりに正確に描く|座標入力・オブジェクトスナップ・トラッキングで解説しています。この記事では「コマンドを起動してかたちを描く」ことに集中します。

線(LINE)とポリライン(PLINE)の使い分け

線を引くコマンドにはLINEとPLINEの2つがあり、どちらを選ぶかで後からできる作業が変わります。結論から言うと、面積を測ったり、まとめて編集したりしたいならPLINE、その場限りの補助線ならLINEが向いています。見た目は同じ直線でも、内部構造が違うためです。

LINE|独立した線分を連続で描く

LINEは、点を続けて指定すると直線を次々に描いていくコマンドです。一見つながって見えますが、1本1本が別々のオブジェクトになっている点が特徴です。

実行中はオプションとしてClose(閉じる)とUndo(元に戻す)が使えます。Closeを選ぶと最後の点から最初の点へ線を引いて図形を閉じ、Undoを押すと直前に引いた1本だけを取り消せます。単発の補助線や、あとで消す下書きを手早く引きたいときに向いています。

PLINE|線分と円弧が一体化した1オブジェクト

PLINE(ポリライン)は、直線と円弧のセグメントがつながった「1つのオブジェクト」を描くコマンドです。何本つないでも全体が1本の線として扱われるため、選択やコピー、削除がひとまとめで行えます。

実行中のオプションが豊富なのもPLINEの特徴です。Arcを選ぶと直前のセグメントに接する円弧へ切り替わり、直線と曲線を混ぜた一続きの線を描けます。Widthで線の幅、Lengthで直前と同じ方向に指定した長さだけ延長、Closeで図形を閉じられます。幅は最初に指定した値が以降のセグメントにも引き継がれ、変更するまで一定に保たれます。

ソース: PLINE (Command) | Autodesk Help(2026年7月現在)

どちらを使うべきか

線の描き分けで迷ったら、「あとでこの線をどう扱いたいか」で決めるのが確実です。面積や周長を測りたい、まとめてオフセット(等間隔で複製)や編集をしたい、線に幅を持たせたい、というときはPLINEを選びます。壁芯・敷地境界・断面線のように意味のあるひとかたまりの線は、建築の図面ではPLINEで描くのが基本です。

一方、その場限りの補助線や単発の1本ならLINEで十分です。「PLINEにしておけばよかった」と後から思っても、心配はいりません。LINEで描いた線群はJOINやPEDITでポリラインにまとめられるので、必要になった段階で変換すれば大丈夫です。この方法はこの記事の後半で解説します。

円(CIRCLE)と円弧(ARC)を描く

円と円弧は、描き方を複数の方式から選べるコマンドです。柱や穴のように寸法が決まっている円もあれば、既存の図形に接する円もあるため、状況に合った方式を選ぶと作図が速く正確になります。

CIRCLE|6つの描き方と選び分け

CIRCLEには6通りの描き方があり、手元にある情報に合わせて選びます。何を指定するかで方式が分かれるので、代表的な使い場面と一緒に整理します。

方式指定するもの使う場面
中心点+半径中心と半径柱や穴を半径で描く
中心点+直径中心と直径直径寸法が決まっているとき
2P直径の両端2点通過点が2つわかっているとき
3P円周上の3点3つの通過点から円を起こすとき
TTR接線・接線・半径2つの図形に接する円
Tan, Tan, Tan3つの接するオブジェクト3つの図形すべてに接する円

ソース: CIRCLE (Command) | Autodesk Help(2026年7月現在)

もっとも使うのは中心+半径、または中心+直径です。既存の壁や円に接する円を描きたいときはTTRやTan, Tan, Tanが役立ちます。TTRは接線となる図形を2つ選んで半径を入れる方式ですが、条件を満たす円が複数あるときは、クリックした位置に近い接点の円が選ばれます。狙いと違う円ができたら、選ぶ位置を接点の近くに変えてみてください。

ARC|描き方と向きの注意

ARC(円弧)は、既定では3点(始点・通過点・終点)で描きます。このほかに、始点・中心・終点や、角度・弦の長さ・半径・方向を組み合わせた方式があり、リボンのArcドロップダウンから選べます。指定できる情報が決まっているときは、その情報を使う方式を選ぶと一発で描けます。

円弧で初心者がつまずきやすいのが向きです。円弧は既定で反時計回りに描かれ、点を指定する順番で弧の向きが決まります。同じ2点を指定しても、順番が逆だと弧がふくらむ方向が反対になります。意図と逆向きの円弧ができてしまったら、始点と終点の指定順を見直すと直ります。

ソース: ARC (Command) / About Arcs | Autodesk Help(2026年7月現在)

長方形(RECTANG)とその他の作図

長方形はRECTANGコマンドで一発で描けます。対角の2点を指定するだけで、結果は「閉じたポリライン」になるため、そのまま面積を測れるのが便利な点です。部屋や敷地、矩形の要素を寸法どおりに置きたいときに活躍します。

RECTANG|寸法・コーナー・角度の指定

RECTANGは、長方形の対角となる2点をクリックして描くのが基本です。マウスで大きさを決めるほか、オプションを使えば数値で正確に指定できます。

Dimensions(寸法)を選ぶと長さと幅を数値で入力でき、Areaを選ぶと面積を指定して描けます。Rotationを使えば角度をつけて回転した状態で配置できます。さらにChamfer(面取り)とFillet(角丸め)で4隅を加工でき、Widthで線幅も設定できます。ChamferとFilletはいずれも4隅すべてに同じ値が適用される点を覚えておくと、思ったとおりの長方形が描けます。

ソース: RECTANG (Command) | Autodesk Help(2026年7月現在)

なお、すでに描いた別々の図形の角をフィレット(角丸め)や面取りしたい場合は、RECTANGのオプションではなくFILLET・CHAMFERという修正コマンドを使います。修正系の操作は修正コマンドを使いこなす|移動・複写・オフセット・トリム・フィレットで解説しています。

その他の基本作図(POLYGON・ELLIPSE)

作成パネルには、ここまでの5つ以外にも作図コマンドがあります。代表的なのがPOLYGONとELLIPSEです。

POLYGONは正多角形を描くコマンドで、円に内接させるか外接させるかを指定して作成します。結果はポリラインになるので、長方形と同じように面積が測れます。ELLIPSEは楕円や楕円弧を描くコマンドです。どちらも使う場面は限られますが、こうしたコマンドも同じ作成パネルにそろっている、という点だけ知っておくと選択肢が広がります。

ポリラインの結合・編集(JOIN/PEDIT)

バラバラに描いた線や円弧を1本のポリラインにまとめたいときに使うのが、JOINとPEDITです。ポリライン化しておくと面積計算やオフセットに使えるようになるため、LINEで描いてしまった線をあとから活かす場面でよく登場します。2つは似た働きですが、成立する条件が違うので使い分けます。

JOIN|複数のオブジェクトを1つにまとめる

JOINは、線・円弧・ポリライン・楕円弧・スプラインといった複数のオブジェクトを1つにまとめるコマンドです。最初に基準となるソースを選び、続けて結合したい対象を選ぶと、後続のオブジェクトがソースの性質を引き継いで1本になります。

結合できる条件は、オブジェクトの種類によって違います。線どうしは、同一直線上(同じ一直線の上に並んでいる状態)にあれば、間にすき間があってもつなげられます。端点がぴったり接している必要はありません。一方でポリラインどうしは、端点が接している(すき間がない)ことが条件です。

円弧どうしは、中心と半径が同じ(同じ仮想の円の上に乗っている)なら、すき間があっても結合できます。ただし複数の円弧をJOINでつなげても円にはならず、1本の円弧にまとまるだけです。単独の円弧を円にしたいときは、JOINのCloseオプションを使います。JOINがうまくいかないときは、線が同一直線上にない、ポリラインの端点が離れている、別々の平面にある、のいずれかを疑うと原因が見つかります。

ソース: Joining 2D Objects | Autodesk Help(2026年7月現在)

PEDIT|変換・連結・幅・曲線化

PEDITは、線や円弧をポリラインに変換したうえで、連結や幅の変更、曲線化といった編集をまとめて行うコマンドです。バラバラの線をポリラインにまとめる作業の主役になります。

PEDITで線分を選ぶと「ポリラインに変換しますか?」と聞かれます。ここでYを選んで変換したあと、Join(連結)を実行すると、複数の線が1本のポリラインにまとまります。Multipleを使えば複数のオブジェクトを一度に処理できます。線幅を変えるWidth、頂点を保ちつつ角を丸めるFit、曲線化するSpline、直線化するDecurveといった編集も選べます。毎回の変換確認を省きたいときは、システム変数PEDITACCEPTを1にすると確認メッセージが出なくなります。

JOINとの違いは、つなげる条件にあります。PEDITのJoinは端点が接している(すき間のない)セグメントどうしを連結します。すき間のある同一直線上の線をつなぐならJOIN、線と円弧を混ぜて1本のポリラインにするならPEDIT、と覚えておくと選びやすくなります。こうしてポリライン化すると、LINEのままではできなかった面積計算やオフセットに進めます。

ソース: 2D Polyline Selection (PEDIT) | Autodesk Help(2026年7月現在)

作図コマンドの使い分けについての編集部の見解

公式ドキュメントを読み解くと、AutoCADの作図コマンドは「最初にどれで描くか」よりも「あとでどう編集したいか」を起点に選ぶ設計になっている、というのが編集部の見立てです。同じ直線でもLINEとPLINEで後工程が変わり、円もCIRCLEの方式次第で作図の速さが変わります。

とくに初心者にとって効果が大きいのがLINEとPLINEの使い分けです。壁や敷地をLINEで描いてしまい、あとで面積が測れず描き直す、というつまずきは初学者に起こりがちです。意味のあるひとかたまりの線は最初からPLINEで描く習慣をつけておくと、こうしたやり直しを避けられます。

もう一つ、覚えておく価値が高いのがJOINとPEDITです。過去に描いた図面や、人から受け取ったデータでは、線がバラバラのLINEで作られていることが珍しくありません。この2つを知っていれば、既存の線を活かしてポリライン化でき、ゼロから描き直す手間を省けます。作図コマンドは数が多く見えますが、まずはLINE・PLINE・CIRCLE・ARC・RECTANGの5つと、まとめ役のJOIN・PEDITを押さえれば、基本的な図面はひととおり描けるようになります。

基本コマンドを押さえた先の次の一歩

この5コマンドを使えるようになると、図形を「描く」段階は卒業できます。次に効いてくるのは、描いたかたちを寸法どおりの位置・長さに合わせる正確さと、描いた図形を効率よく増やしたり整えたりする編集の力です。

たとえば住宅の平面図で、外壁をPLINEで描いたあと、内壁を等間隔でオフセットして間取りを起こす、といった作業では作図と修正がセットになります。正確に点を置く方法を身につければ、下書きなしでも寸法どおりに壁芯を引けるようになり、修正コマンドを覚えれば、1枚の壁から部屋全体を素早く展開できます。作図コマンドはその土台であり、ここを固めておくほど、次に学ぶ正確な入力や修正の操作がスムーズに身につきます。

作図・修正・正確な入力がひととおりつながると、図面を描くスピードと精度が大きく変わります。手が止まる時間が減り、かたちを考えることに集中できるようになる、というのが基本コマンドを押さえた先に広がる景色です。

まとめ|コマンドの使い分けと次に読む記事

AutoCADの基本作図コマンドは、それぞれの得意分野を押さえて使い分けるのが上達の近道です。要点を整理します。

線は用途で選び分けます。面積・オフセット・一括編集をしたい線はPLINE、その場限りの補助線はLINEで十分です。円と円弧は、手元の情報に合う方式を選ぶと速く正確に描け、既存図形に接する円はTTRやTan, Tan, Tan、円弧は向きに注意します。長方形のRECTANGは閉じたポリラインで面積が取れ、寸法・面積・回転・コーナー加工を指定できます。そして、バラバラに描いた線はJOINやPEDITで1本のポリラインにまとめれば、あとから面積計算やオフセットに使えるようになります。

まずはこの5コマンドで手を動かし、慣れてきたら正確な入力や修正の操作へ進むと、図面づくりの幅が広がります。