PERSC JOURNAL DB Manual Course

運営者・お問い合わせ
CAD · AutoCAD

AutoCADダイナミックブロックの作り方|パラメータ・アクション・可視性で1部品を可変化する

編集部 読了 約16分

AutoCADダイナミックブロックの作り方|パラメータ・アクション・可視性で1部品を可変化する

幅900・1000・1200のドアを、それぞれ別のブロックとして作っていませんか。同じ形でサイズだけ違う部品を何個も定義すると、ブロック名が増えて図面も重くなり、修正のたびに全バリエーションを直すことになります。AutoCADのダイナミックブロックは、この「サイズ違いを作り直す手間」を1つの部品に集約して解決する仕組みです。

この記事では、ダイナミックブロックの作り方を順に解説します。ブロックエディタの開き方から、パラメータとアクションの組み方、可視性・ルックアップ・値セットによるサイズの絞り込みまでを扱います。さらに、建具や什器を実際に可変化する手順や、挿入後にどのグリップで動かすかも取り上げ、「作る」から「使う」までをひと通りたどれる構成にしました。中核となる機能はAutoCADとAutoCAD LTで共通のため、バージョンを問わず使えます(公式ヘルプ help.autodesk.com、2026年7月時点で確認)。

ダイナミックブロックの仕組みと通常ブロックとの違い

ダイナミックブロックとは、挿入したあとに形・サイズ・見た目を変えられるルールを内蔵した1つのブロック定義です。サイズ違いごとに別のブロックを作らず、開口に合わせて伸びる1つのドアブロックで済ませられる点が、通常ブロックとの決定的な違いになります。

通常ブロックの限界

通常ブロックは「一度決めた形をそのまま繰り返し置く」ためのもので、寸法を変えたいときに融通が利きません。幅900・1000・1200のドアを扱うと、それぞれ別名のブロックを3つ作ることになり、図面の中にほとんど同じ部品が名前だけ変えて並びます。

この作り方には後戻りのコストがついてきます。あとから戸先の見付けを変えたくなったとき、3つのブロック定義をすべて開いて直さなければなりません。バリエーションが増えるほど修正漏れも起きやすく、図面ファイルもブロック定義の数だけ重くなっていきます。

ダイナミックブロックが解決すること

ダイナミックブロックは、1つの定義に「動かせる仕組み」を埋め込むことでこの問題を解消します。仕組みは、パラメータ(動かせるプロパティとグリップを決める要素)とアクション(グリップを操作したときにジオメトリがどう変わるかを決める要素)の2段構えです(出典: About Dynamic Blocks(AutoCAD 2026 ヘルプ)、2026年7月時点で確認)。

アクションは、MOVE(移動)・STRETCH(ストレッチ)・ROTATE(回転)といった通常コマンドの代役として働きます。つまり、挿入後にコマンドを打たなくても、グリップをつまんで引っぱるだけで部品が定義どおりに変形します。なお、通常ブロックそのものの作り方は前提知識になります。ブロックの定義や基点の考え方があやしい場合は、ブロックの作成・挿入・編集の基本で先に確認しておくと、この記事の内容がすっと入ってきます。

ブロックエディタ(BEDIT)の開き方と作業の流れ

可変化の作業は、すべてブロックエディタという専用の編集画面の中で行います。作成の流れは「パラメータを置く→アクションを付ける→テストする→保存する」の順で固定しておくと、初めてでも迷いません。

ブロックエディタの起動と画面構成

ブロックエディタは、BEDITコマンド(Homeタブ→ブロックパネル→ブロックエディタ)で対象のブロックを選ぶと開きます(出典: Block Editor(AutoCAD/AutoCAD LT 2026 ヘルプ)、2026年7月時点で確認)。通常の作図画面とは別の、オーサリング(部品を設計する作業)専用の領域に入る点がポイントです。

画面の左側には、ブロックオーサリングパレットが開きます。ここにParameters(パラメータ)・Actions(アクション)・Parameter Sets(パラメータセット)の3つのタブが並びます。Parameter Setsタブは、パラメータとアクションをあらかじめ組み合わせたセットを提供するタブで、定番の組み合わせを一発で置けるため時短になります。「まず何を置けばいいかわからない」という段階では、このセットから入ると全体像がつかみやすいです。

パラメータ→アクションの2段構え

作成の鉄則は、先にパラメータ、次に対応するアクションという順番です。逆にすると、アクションが結びつく相手を見つけられず空振りします。

最初にパラメータを配置し、グリップの位置と、動かせるプロパティ(幅・角度など)を決めます。次に、そのパラメータへアクションを関連づけ、実際に動かす対象のジオメトリを「選択セット」として指定します。ここで動かしたい図形を選び忘れると、一部だけが伸びる、といった不具合につながるので、選択セットは丁寧に含めます。なお、可視性・整列(Alignment)・基点(Base Point)のパラメータはアクションが不要で、パラメータ単体で機能します(詳しくは後述します)。

組んだらテストして保存する(Test Block→BSAVE)

作ったパラメータとアクションは、エディタを閉じる前にその場で試し、問題なければ専用のコマンドで保存します。この締めを省くと、作りっぱなしで定義が保存されず、図面に挿入済みのブロックへ変更が反映されません。

Test Block(テストブロック)は、ブロックエディタを閉じずに、その場でダイナミックブロックの挙動を確かめられる機能です。グリップを動かしたりプロパティを変えたりして、意図どおりに変形するかを保存前に確認できます(出典: About Testing Dynamic Blocks Within the Block Editor(AutoCAD/AutoCAD LT 2026 ヘルプ)、2026年7月時点で確認)。試して問題がなければ、BSAVEでブロック定義を保存し、BCLOSEでブロックエディタを抜けます。

ここで気をつけたいのが、通常のSAVEではブロック定義が保存されないという点です。SAVEはテスト状態を解除するだけで、定義そのものは残りません。定義を確定させて挿入済みブロックへ反映したいときは、必ずBSAVEを使います(出典: 同上、2026年7月時点で確認)。この区別は初心者が最も踏みやすい落とし穴なので、「保存はBSAVE」と覚えておくと安心です。

パラメータとアクションの種類と対応表

パラメータとアクションは、決まった組み合わせでのみ機能します。どのパラメータで何ができ、どのアクションと組めるかを押さえることが、可変化の設計そのものになります。

パラメータ10種の役割

パラメータは全部で10種類あり、それぞれ「何を動かせるか」を決めます。建築部品では、このうちLinear・Visibility・Lookup・Flipの使用頻度が高めです。

パラメータ役割
Point1点の位置を移動できるようにする
Linear2点間の距離(長さ・幅)を軸方向に可変化する
Polar2点間の距離と角度を可変化する
XYX方向・Y方向の移動距離を可変化する
Rotation回転角のプロパティを定義する
Alignment位置と角度を定義し、他オブジェクトへ自動整列する(アクション不要)
Flip反転線を基準にオブジェクトを反転する
Visibility表示するジオメトリを状態ごとに切り替える(アクション不要)
Lookup定義済みのサイズやプロパティの集合を表から選ぶ
Base Pointブロックの基点を定義する(アクション不要)

ソース: Block Editor(AutoCAD/AutoCAD LT 2026 ヘルプ)(2026年7月時点で確認)

表のとおり、Alignment・Visibility・Base Pointの3つはアクションを付けなくても単体で働きます。残りのパラメータは、次に説明するアクションと組み合わせて初めて図形が動きます。

アクションとの対応関係

アクションは、パラメータのグリップを操作したときに図形をどう変形させるかを決めます。パラメータごとに組めるアクションが決まっているため、下の対応を先に頭に入れておくと設計が速くなります。

パラメータ組めるアクション
LinearMove / Stretch / Scale / Array
PolarMove / Stretch / Polar Stretch / Scale / Array
XYMove / Stretch / Scale / Array
RotationRotate
FlipFlip
LookupLookup
Visibility / Alignment / Base Pointアクション不要

ソース: Dynamic Blocks Explained(Autodesk 公式ハンドアウト)(2026年7月時点で確認)

たとえば開口幅を伸縮させたいなら、LinearパラメータにStretchアクションを組みます。1つのパラメータに複数のアクションを付けることもできる(互換な範囲で)ので、伸ばしながら中の図形を配列複写する、といった動きも1つのグリップにまとめられます。

パラメータが決めるグリップの形

どのパラメータを置いたかで、挿入後に表示されるグリップの形が決まります。グリップの形と操作の対応を覚えておくと、部品を受け取った人が「このブロックで何を動かせるか」を一目で判断できます。

グリップ見え方できる操作
Standard正方形平面内を任意方向に移動(Move / Stretch / Scale ほか)
Linear矢印定義した軸方向に前後へ動かす
Rotation軸まわりに回転する
Flip反転用の専用グリップ反転線を基準に鏡像へ切り替える
Alignment整列用の専用グリップ平面内を移動し、他オブジェクトへ自動整列する
Lookup下向きのリスト型クリックでドロップダウンを表示する

ソース: About Grips on Dynamic Blocks(AutoCAD 2024 ヘルプ)(グリップの形は同ヘルプに図で示されます。2026年7月時点で確認)

矢印なら軸方向に伸縮、円なら回転、下向きのリスト型なら選択肢から選ぶ、と形が操作を教えてくれます。反転や整列のグリップも、形と役割をひも付けて覚えておけば、挿入後の操作で迷いません。作る側がこの対応を意識してパラメータを置けば、使う側が説明なしで操作できる部品になります。これが「作る」から「使う」への橋渡しです。

可視性(Visibility)で1ブロックに複数の見た目を持たせる

可視性を使うと、表示する図形を状態ごとに切り替えて、1つのブロックに複数の見た目を内蔵できます。見た目が大きく変わるバリエーション、たとえば「開き戸・引き戸・FIX窓」を1つの建具ブロックにまとめたいときに向いています。

可視性状態の作り方

可視性状態とは、指定した図形だけを表示するカスタムプロパティで、名前を付けた状態を複数作れます(出典: About Controlling the Visibility of Objects in Dynamic Blocks(AutoCAD 2024 ヘルプ)、2026年7月時点で確認)。まずVisibilityパラメータを1つ配置し、そこに状態を追加していきます。

状態の作成・設定・削除は、BVSTATEコマンド、またはブロックエディタの可視性パネルから行います(出典: 同上、2026年7月時点で確認)。たとえば建具ブロックに「開き戸」「引き戸」「FIX窓」という3つの状態を作り、それぞれに対応する図形を割り当てれば、1つのブロックで3種類の建具を表現できます。

表示/非表示の切替と編集モード

各状態では、その状態で見せたい図形の表示と非表示を割り当てます。「開き戸」の状態では開き戸の建具記号だけを表示し、引き戸やFIX窓の図形は隠す、という具合です。

編集中の見え方はVisibility Modeボタンで切り替えられます。このボタンをオンにすると、非表示にした図形が編集中はうっすら表示され、オフにすると完全に隠れます(出典: 同上、2026年7月時点で確認)。作業中は全図形を薄く見ながら位置をそろえ、仕上げ確認では隠して実際の見た目をチェックする、という使い分けができます。挿入後は、グリップのドロップダウンから状態を選ぶだけで見た目が切り替わります。

ルックアップと値セットでサイズを絞り込む

寸法を規格サイズだけに絞りたいときは、値セットとルックアップの2つの方法があります。1つの寸法を軽く縛るなら値セット、複数のプロパティを型番名でまとめて選ばせるならルックアップ、と使い分けます。

値セットで寸法を定型サイズに絞る

値セットは、表を作らずに、伸縮できる寸法を「刻み」または「許可リスト」に制限する軽量な方法です。規格外の寸法をそもそも引けなくするため、打ち間違いや中途半端な数値の混入を防げます。

設定は、LinearやPolarパラメータのプロパティにあるDist Type(距離のタイプ)で行います。Incrementを選ぶと、Dist Increment(刻み)とDist Minimum/Dist Maximum(最小・最大)で決めた刻みの位置だけで止まります。Listを選ぶと、Dist Value Listに列挙した許可値だけを取ります(出典: About Specifying Value Sets for Dynamic Blocks(AutoCAD 2025 ヘルプ)、2026年7月時点で確認)。たとえば開口幅を「900・1000・1200だけ許可」にしておけば、それ以外の寸法にはグリップが止まらなくなります。

ルックアップテーブルの仕組み

ルックアップテーブルは、パラメータ値の組み合わせを、型番やサイズ名などの指定データに対応づける表です(出典: About Lookup Actions(AutoCAD 2022 ヘルプ)、2026年7月時点で確認)。値セットが1つの寸法を縛るだけなのに対し、ルックアップは幅・高さ・奥行きといった複数のプロパティを一度にまとめて扱えます。

挿入後は、表から1回選ぶだけで、対応する複数のプロパティがまとめて決まります。デスクの「W1200×D700」「W1400×D700」のように、寸法の組み合わせをセットで持たせたい部品に向いています。まずは値セットで足りるかを考え、扱う寸法が複数に増えてきたらルックアップに切り替える、という順番がわかりやすいです。

逆引きグリップで名前から選ぶ

ルックアップには、逆引き(reverse lookup)という設定があります。これを有効にすると、ブロックにルックアップグリップが付き、クリックすると列の値のドロップダウンが表示されます(出典: 同上、2026年7月時点で確認)。

逆引きの利点は、寸法の数値ではなく名前で選べることです。たとえば「W900」「W1000」「W1200」という名前を並べておけば、現場では数値を思い出さずに名前だけで部品を確定できます。図面を触る人が増える現場ほど、この名前選択が操作のばらつきを抑えてくれます。

建具・什器を可変部品にする実践ステップ

ここまでの機能を、建築で頻出する建具と什器に落とし込みます。選ぶ基準は「何が変わるか」です。形が変わるなら可視性、1つの寸法を縛るなら値セット、複数寸法を型番でまとめるならルックアップ、と切り分けます。

建具(ドア・窓)を幅可変にする

ドアや窓を1つのブロックで開口幅に追従させるには、Linearパラメータで開口幅を定義し、Stretchアクションで枠と建具本体を伸縮の対象に指定します。開口幅は値セットで「900・1000・1200」のように定型へ絞ると、規格外の開口を防げます。

開き勝手は、FlipパラメータとFlipアクションで左勝手・右勝手を1つのブロックで切り替えます。挿入位置がぶれないよう、基点(Base Point)を建具の芯にそろえておくのがコツです。さらに、連鎖アクション(Chain Actions/対応はPoint・Linear・Polar・XY・Rotation)をYesにすると、枠を伸ばしたときに戸先や引手も一緒に追従します(出典: About Chain Actions(AutoCAD 2025 ヘルプ)、2026年7月時点で確認)。枠と戸先を別々に動かす手間がなくなり、開口幅を変えるだけで建具全体が整います。

什器(デスク・家具)をサイズ選択式にする

デスクや家具は、変わるものに応じて機能を選びます。1人用・2人用・L字のように見た目が大きく変わるなら、Visibility状態で切り替えるのが素直です。図形そのものが入れ替わるバリエーションは、可視性が最も扱いやすいです。

寸法だけが違うケースは、縛りたい寸法の数で決めます。奥行きだけを規格値に絞るなら値セットで十分ですが、幅と奥行きの組み合わせを型番でまとめて選ばせたいならLookupの表で名前選択にします。

つまずきやすいポイント

初心者が最初に引っかかるのは、アクションの選択セット漏れです。動かしたい図形をアクションの対象に含め忘れると、グリップを引いたときに一部だけが伸びて、枠だけ広がって戸が置き去りになる、といった崩れ方をします。作ったらTest Blockで必ず動作を確認しましょう。

もう1つ多いのが、基点のズレです。基点が部品の芯とずれていると、グリップ操作のたびに部品全体が意図しない位置へ飛びます。挿入の基準になる点にBase Pointをそろえておくと安定します。なお、幾何拘束や寸法拘束を使うパラメトリックなブロックや、ブロックプロパティテーブル(BTABLE)はAutoCAD LTでは作成できません。この記事で取り上げたパラメータ・アクション・可視性・ルックアップ・値セットの範囲は、LTでも作成できます(出典: Block Editor(AutoCAD/AutoCAD LT 2026 ヘルプ)、2026年7月時点で確認)。エディション別の対応や価格の比較は、db.persc.jp のAutoCADページで解説しています。

ダイナミックブロックを使いこなした先の制作フローの変化|編集部の所感

公式ドキュメントと現場での使われ方を読み解くと、ダイナミックブロックの価値は「部品点数を減らすこと」よりも「図面全体の直しやすさが変わること」に表れます。編集部の所感として、ここが導入前と後で最も差が出るところだと見ています。

サイズ違いを別ブロックで量産していた図面では、仕様変更のたびに複数の定義を開いて直し、修正漏れがないかを目視で追うことになります。1定義に集約された図面なら、直す場所が1つに絞られ、変更が挿入済みの全部品へ一度に反映されます。W900のドアをW1000へ振り替える、といった変更が、名前の付け替えではなくグリップ1つの操作で済みます。

使わなかった人と使った人の違いは、部品が増えたときに開きます。通常ブロックだけで進めた図面は、バリエーションの数だけ定義と修正対象が積み上がっていきます。可変化を取り入れた図面は、部品が増えても定義は1つのままで、選ぶ・伸ばすという操作に置き換わります。次の一歩としては、まず頻出する建具を1つ可変化し、Test Blockで確認してBSAVEで保存するところから始めると、効果を体感しやすいはずです。

まとめ

ダイナミックブロックは、サイズ違いを何個も作り直す手間を、1つの定義に可変性を集約して解消する仕組みです。作成は、パラメータを置いてアクションを付け、Test Blockで試してBSAVEで保存する、という順番で1サイクルが回ります。挿入後にどう動かせるかは、パラメータの種類が決めるグリップの形を見ればわかります。

サイズや見た目の絞り込みは、変わるもので使い分けます。形が変わるなら可視性、1つの寸法を縛るなら値セット、複数のプロパティを型番でまとめるならルックアップです。建具はLinearとStretchで幅を可変化し、Flipで開き勝手を切り替え、必要なら連鎖アクションで戸先を追従させます。什器はサイズ選択式にすれば、1つの部品でバリエーションをまかなえます。可変化した部品は、次に型番や寸法などの情報を持たせたり、チームで共有したりする段階へ進むと、建具表づくりや図面の直しがぐっと速くなります。