
AIで作る人物と肖像権|実在の人に似た人物
- AI で作った人物を、パースに入れても大丈夫?
- AI の人物が、実在の人に似ていたらどうなるの?
- 肖像権とパブリシティ権の違いを知りたい
画像生成AIでは、実在しない人物の画像も作れます。ただ、作った人物がたまたま実在の人に似ることもあり、そのときに肖像の権利がどう関わるかは、場面によって考え方が分かれる所です。
この記事では、AI で作った人物が実在の人に似たときの、肖像権とパブリシティ権の考え方を解説します。
国の整理、偶然似る人物についての研究者の説、似ている程度と商業の利用についての弁護士の見解、使う前に見ることが分かります。
肖像権とパブリシティ権

肖像権とパブリシティ権は、どちらも法律に明文の規定は無く、判例で認められてきた権利です。
肖像権は、みだりに(勝手に)自分の容ぼう(顔や姿)などを撮影されないことについての、法律上守られる人格的な利益を指します。
パブリシティ権は、人の肖像や氏名が商品の広告などに使われるときの、財産的な利益にかかわる権利です。
判例は、肖像などが持つ顧客を引きつける力(顧客吸引力)を、専ら(もっぱら)利用することを目的とする場合に、違法になるとしています。
その例として判例が挙げるのは、肖像などをそれ自体を鑑賞する商品として使う、商品の差別化のために付ける、商品の広告として使う、の3つです。
生成AIに特有の問題はないとする整理

国の検討会は、2024年5月の整理で、他人の肖像が AI の学習・生成・利用で使われるとき、肖像権とパブリシティ権の判断の基準に、生成AIに特有の問題はないと考えられるとしました。
つまり、他人の肖像を使う場面については、AI を使わない場合と同じ考え方で判断する、という整理です。
この整理は、肖像が含まれる AI の生成物を公開するときの参考として、肖像権についてのガイドラインも挙げています。
偶然似る人物という問題

一方で、**AI で作った人物と実在の人との結びつき(関連性)**を、AI に特有の問題とする研究者の説があります。2021年の学位論文で、AI で自動生成した人物の肖像についての権利侵害を論じたものです。
この説は、学習の元データに対象の人の画像が入っていなくても、偶然、その人と同じような肖像が生成され得る、としています。
この説は、AI で作る肖像は特定の人の肖像だけを使って作るものではないので、これまでの判例の前提そのものが欠けるので、判例の基準をそのまま当てはめられない、という見方です。
そのうえでこの説は、肖像権の侵害かを、次の6つを総合して判断すべきだとしています。
実在の人の容ぼうとの同一性、結びつきの程度、使い方、故意や過失などの主観、元データの撮影の違法性、打消しの表示の有無です。
打消しの表示とは、AI で作った肖像で、実在の人とは結びつきが無いと示す表示を指します。
この説は、学習データにその人が入っていない、偶然似る場合も含めて扱うものです。国の整理が見ているのは他人の肖像を使う場面なので、2つは分けて読みます。
似ている程度と商業の利用

AI で作った人物が実在の人に似た場合について、弁護士の見解を伝える記事には、単に「似ている」という程度では、権利侵害の主張は難しそうだとする見解があります。
一方、同一人物だと一般の人が感じるほど似た人物を作って公開した場合は、肖像をみだりに撮影して公開したのと実質的に同じだと考えることもできるのではないか、とも述べています。
法律事務所の解説の見方は、生成した画像が特定の人の肖像と同定できる(その人だと特定できる)なら、無断の公表は、公表のしかた次第で肖像権の侵害となる可能性がある、というものです。
著名人に似た人物を、その人の顧客を引きつける力を使う形で商業に使うと、パブリシティ権の侵害になり得る、とする見解は2つに共通しています。
AIで作った人物を使う前に

モデルのライセンスには、人にかかわる使い方を禁じるものもあります。
たとえば Stable Diffusion 1.5 などの RAIL-M が禁じるのは、人を害し得る個人を特定できる情報を作ること、人を中傷することなどです。
FLUX [dev] のライセンスも、パブリシティ権などの他人の権利を侵す使い方を禁じています。
ここからは、ここまでの整理と見解をふまえた編集部の勧めです。AI で作った人物をパースなどに使う前に、実在の人、とくに著名人に似ていないかを見ておくことを勧めます。
プロンプトに実在の人の名前を入れて、その人に似せた人物を作ることも、編集部では避けることを勧めます。
使うモデルの使い方の制限も、あわせて読んでおきましょう。
AIで作る人物の肖像権を知って、似た人物に気をつけよう

AI で作った人物が実在の人と同定できるほど似る場合や、著名人に似た人物を商業に使う場合は、権利の侵害になり得る、とする見解があります。この記事で解説したことは、次の5つです。
- 肖像権とパブリシティ権は、明文の規定は無く、判例で認められてきた
- 他人の肖像を使う場面は、生成AIに特有の問題はないとする国の整理がある
- AI で作った人物と実在の人の結びつきを、AI に特有の問題とする研究者の説がある
- 単に似ている程度では侵害の主張は難しそうだが、酷似した人物の公開や商業の利用は問題になり得る、とする見解がある
- 編集部では、実在の人に似ていないかを見てから使うことを勧める
パースに AI で作った人物を入れるときは、実在の人に似ていないかを見てから使ってみてください。
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