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3DCG · V-Ray

Brute Force + Light CacheでV-RayのGIを設定する|静止画向け推奨パラメータ

編集部 読了 約11分

V-Ray(建築パース向けの高品質オフラインレンダラー)で静止画を出すときのGI(グローバルイルミネーション=光が壁や床で跳ね返って空間全体を照らす計算)は、一次バウンスをBrute Force、二次バウンスをLight Cacheに設定するのが推奨です。Chaos公式のドキュメントでも、静止画では一次GIをBrute Force、二次GIをLight CacheかふたたびBrute Forceにする構成が最も速く正確とされています。

この記事では、この組み合わせを選ぶ理由から、Light CacheとBrute Forceの推奨パラメータ、ノイズと速度のバランスの取り方、実際にGIを設定する手順までをまとめます。数値はChaos公式ドキュメント(2026年7月時点)をもとにしていて、SketchUp・Rhino・3ds MaxなどV-Rayが動くホストで共通して使える考え方として整理しました。

静止画のGIは「Brute Force + Light Cache」が推奨

静止画で最も扱いやすいのは、一次GIにBrute Force、二次GIにLight Cacheを使う組み合わせです。Brute Forceは1点ずつ光を正確に計算し、Light Cacheが二次以降の跳ね返りを高速に近似するため、精度と速度を両立できます。

GIには一次バウンスと二次バウンスがある

GIは、光の跳ね返りを「一次バウンス」と「二次バウンス」の2段構えで計算します。カメラから直接見える面が受け取る跳ね返りの光が一次バウンス、そこからさらに壁や天井へ跳ね返っていく光が二次バウンスです。

なぜ2つに分けるかというと、それぞれに向くエンジンが違うからです。一次は画面に直接映るので正確さがほしく、二次は目立たないので速さを優先できます。GIそのものの仕組みやエンジンの違いをもっと詳しく知りたい方は、GIの仕組みとエンジンの選び方で解説しています。

なぜ静止画はBrute Force一次 + Light Cache二次なのか

この組み合わせが静止画に向くのは、2つのエンジンの得意分野がきれいに噛み合うからです。Brute Forceは、シェーディングする点ごとにGIの値を独立して計算し直す方式で、小さなディテールが多いシーンでもぶれずに正確な結果を出します(Chaos公式ドキュメント、2026年7月時点)。

いっぽうで、Brute Forceだけで二次以降の跳ね返りまで全部計算すると時間がかかりすぎます。そこで、二次バウンスをLight Cacheという高速な近似方式に任せると、大きく速くなります。公式でも、静止画では一次GIをBrute Force、二次GIをLight Cacheにする構成が最速で最良の選択肢になりうると案内しています。だから静止画では、まずこの組み合わせから始めれば迷いません。

Irradiance Mapを使わない理由

GIロールアウトにはIrradiance Map(イラディアンスマップ)というエンジンもありますが、静止画の新規設定では選ばないほうが無難です。Irradiance Mapは現在deprecated(非推奨)扱いで、V-Rayの新しい機能の一部に対応せず、いずれ選択肢から外される予定と公式に案内されています(Chaos公式ドキュメント、2026年7月時点)。

かつてIrradiance Mapは室内の定番でしたが、家具や装飾など細かいディテールが多い建築シーンでは計算が重くなり、Brute Forceのほうが結果的に速いケースが増えています。これから設定を覚えるなら、将来も残るBrute Force基準で組んでおくほうが、あとで作り直す手間がありません。

Light Cache(二次GI)の推奨パラメータ

Light Cacheで押さえる値は、Subdivs・Retrace・Prefilterの3つです。この3つを整えるだけで、二次GI由来のムラやシミが安定します。

Subdivs|計算する光の量を決める

Subdivs(サブディビジョン)は、Light Cacheがどれだけ多くの光の経路を計算するかを決める値で、デフォルトは1000です。ここで注意したいのは、実際にたどる経路の数がSubdivsの2乗になる点で、1000なら100万本の経路をカメラからたどる計算になります(Chaos公式ドキュメント、2026年7月時点)。

値を上げると、床や壁にスポット状のまだら(明るさのムラ)が出にくくなりますが、そのぶん計算時間は伸びます。逆に下げると速くなるかわりにムラが出やすくなります。建築の静止画なら、まず1000のまま試し、ムラが気になるときだけ1500前後まで上げるのが当たりです。

Retrace|隅の光漏れとシミを防ぐ

Retrace(リトレース)は、部屋の隅など光が不安定になりやすい場所だけをBrute Forceで計算し直して、光漏れや黒いシミを防ぐ仕組みです。Retrace thresholdの値が0より大きいとき、コーナー付近でLight CacheのかわりにBrute Force GIを使い、より正確な結果にしてまだらを避けます(Chaos公式ドキュメント、2026年7月時点)。

デフォルトは1ですが、公式は実用的な設定としてRetraceを有効にしてthresholdを8.0前後にする案内をしています。室内パースで隅が黒ずんだり、逆に壁の継ぎ目から光が漏れて明るくなりすぎたりするときは、この値を上げると落ち着きます。

Prefilter|計算後にノイズをならす

Prefilter(プリフィルター)は、Light Cacheの計算が終わったあとにかけるぼかしのような処理で、細かいノイズをならします。Prefilterのサンプル数を増やすほど、Light Cacheはよりぼけてノイズが少なくなります(Chaos公式ドキュメント、2026年7月時点)。

うれしいのは、この処理がLight Cacheを読み込んだあとに実行される点です。つまりLight Cacheを計算し直さなくても、Prefilterだけあとから調整できます。公式の実用推奨はサンプル数20で、静止画ならまずこの値から始めれば十分です。

Brute Force(一次GI)の推奨パラメータとノイズの決まり方

Brute Force側で効くのはBounces(二次バウンス数)とサンプリングの品質です。静止画のノイズは、GIエンジンそのものよりも、このサンプリング側で大きく決まります。

Bounces|光を何回跳ね返らせるか

Bounces(バウンス数)は、光を何回まで跳ね返らせて計算するかの設定です。Brute Forceのデフォルトは3、Light Cacheのデフォルトは100バウンスで、この2つを組み合わせると、少ないBrute Force計算で深い跳ね返りまでLight Cacheが補ってくれます(Chaos公式ドキュメント、2026年7月時点)。

屋外のシーンは光が空へ抜けていくのでバウンスは少なめでも足ります。いっぽう室内は、窓から入った光が壁や天井で何度も跳ね返って空間を明るくするため、バウンスを確保したほうが自然な明るさになります。暗い室内で全体がくすむときは、まずBounces不足を疑うと原因にたどり着きやすいです。

ノイズはGIだけでなくサンプリングで決まる

ここは誤解しやすいところですが、GIエンジンの設定だけを上げてもノイズは消えません。画面のざらつき(ノイズ)は、1ピクセルあたり何本の光線を飛ばすかというサンプリングの品質で決まるからです。

具体的には、Noise Threshold(ノイズのしきい値。小さいほどきれいだが遅い)とサンプルの上限値が効いてきます。GIをいくら丁寧にしても、サンプリングが粗ければざらつきは残ります。サンプリングやfirefly(一部だけ光る白い点)の詰め方は、ノイズ・fireflyのトラブルシュートと最適化で解説しています。

速度とノイズのバランスの取り方

作業中はノイズを許容して速く、最終出力できれいに、と分けるのが効率的です。プレビュー中はLight CacheのSubdivsを低めにしてRetraceを切り、構図や光の当たり方だけを確認します。ここでフルの品質をかけると、確認のたびに待たされてしまいます。

構図が固まったら、本番用に値を上げて仕上げます。時間をかける優先順位は、まず室内の隅(Retrace)、次に全体のムラ(Subdivs)、最後に残った微ノイズという順です。全部を一度に上げるのではなく、気になる症状に対応する値だけ上げるのが、時間を無駄にしないコツです。

GIを設定する実務手順

どのホストでも、GIロールアウトの操作は同じ考え方で進みます。一次エンジンにBrute Force、二次エンジンにLight Cacheを選び、あとはLight Cacheの3つの値を合わせるだけです。

GIロールアウトでエンジンを選ぶ

最初にやることは、GI(またはGlobal Illumination)の設定パネルを開き、Primary(一次)をBrute Force、Secondary(二次)をLight Cacheに設定することです。ここが静止画設定の出発点になります。パネルの場所や名称はホストで少し違いますが、選ぶ中身は共通です。

ホストごとの導入やライト設定の入口は、それぞれの記事にまとめています。SketchUpはSketchUpでV-Rayを使う設定手順、RhinoはRhinoでV-Rayを使う設定手順、3ds Maxは3ds MaxのV-Rayライティング設定で解説しています。

プレビュー用と本番用の2プリセットを持つ

GIの値は、確認用と仕上げ用の2つをプリセットとして持っておくと作業が速くなります。毎回パラメータを打ち直すと時間がかかるうえ、設定ミスも起きやすいからです。目安を表にまとめました。

項目プレビュー用本番用
一次GIBrute ForceBrute Force
二次GILight CacheLight Cache
LC Subdivs500前後(速さ優先)1000〜1500
Retraceオフオン(threshold 8.0前後)
Prefilter samplesオフ、または少なめ20

ソース: Chaos Light Cache Settings ドキュメント(2026年7月時点)の実用推奨値をもとに、建築静止画向けの目安として編集部が構成。

この表のとおり、プレビューは軽くして構図確認に専念し、本番で品質を上げるのが基本です。プレビューでRetraceやPrefilterを切っておくと、確認のスピードがはっきり変わります。

レンダー後のノイズはDenoiserで詰める

GIとサンプリングを詰めても残る微妙なノイズは、Denoiser(デノイザー=ノイズを後処理で除去する機能)で仕上げます。サンプリングだけでノイズをゼロにしようとすると計算時間が跳ね上がるので、ある程度まではサンプリング、最後のひと詰めはDenoiserという分担が現実的です。

OIDNやNVIDIA AIデノイザーの使い分けは、Denoiserでノイズを除去するで解説しています。GI設定とデノイズをセットで覚えると、静止画の仕上げが一気に安定します。

GI設定を編集部が使ってみました

Chaos公式ドキュメントの推奨値を建築の静止画設定に当てはめてみると、どのパラメータが効くのかがはっきりします。編集部が公式ドキュメントの記載を整理した所感として、押さえどころをまとめます。

まず、静止画で最初に効くのはRetraceです。公式が実用推奨とするthreshold 8.0前後を有効にすると、室内の隅の黒ずみや壁の継ぎ目の光漏れが減り、Subdivsを闇雲に上げるより手戻りが少なくなります(Chaos公式ドキュメント、2026年7月時点)。

次に、Prefilter samples 20は「LightCache計算後に後調整できる」という性質が実務で効きます。ムラが気になっても、Light Cacheを丸ごと計算し直さずにこの値だけ動かせるためです。逆に、LC Subdivsを最初から高くするのは、確認のたびに待ち時間が増えるので後回しでよい、というのが公式値から読み取れる優先順位です。Irradiance Mapについては、公式が非推奨と明言している以上、新規シーンで選ぶ理由は見当たりません。

応用シーンと次の一歩

GI設定が固まると、シーンの種類ごとにプリセットを使い分けられるようになります。ここでは、設定を覚えたあとの活用の仕方と、次に読むと理解が深まる記事を紹介します。

活用シーン|シーン別にプリセットを使い分ける

同じBrute Force + Light Cacheでも、室内と屋外で寄せ方を変えると仕上がりが安定します。室内は光の回り込みが命なので、Bouncesを確保しRetraceをしっかり効かせるプリセット。屋外は光が抜けるのでBouncesは控えめにして、そのぶんSubdivsやサンプリングに時間を回すプリセット。この2つを用意しておくと、案件ごとに設定を考え直さずにすみます。

たとえば住宅のリビングの内観なら室内寄りプリセット、外構込みの外観パースなら屋外寄りプリセットから始める、という判断ができるようになります。プリセット化しておくことで、チームで設定を共有するときのばらつきも減らせます。

次の一歩|仕組みの理解と残ノイズの処理へ

GIの当たり値を手に入れたら、次は理由を理解する段階です。なぜBrute ForceとLight Cacheでバウンスの担当が分かれるのかは、GIの仕組みとエンジンの選び方を読むと腑に落ちます。仕上げで残るノイズはDenoiserでノイズを除去するへ、白い点状のfireflyが消えないときはノイズ・fireflyのトラブルシュートと最適化へ進むと、静止画の詰めが完成します。

まとめ

V-Rayで静止画のGIを設定するなら、一次をBrute Force、二次をLight Cacheにするのが出発点です。Chaos公式も静止画ではこの構成を最速・最良の選択肢のひとつとして案内していて、非推奨のIrradiance Mapを新規で選ぶ理由はありません。

要点を整理すると、次の3つです。Light Cacheは Subdivs 1000・Retrace threshold 8.0前後・Prefilter samples 20 を出発点にする。ノイズはGIだけでなくサンプリングで決まるので、GIとサンプリングを分けて考える。プレビュー用と本番用の2プリセットを持ち、症状に対応する値だけを上げる。

この3つを守れば、隅の黒ずみや床のムラといった建築パース特有のつまずきを避けながら、速く仕上げられます。GIの当たり値ができたら、仕組みの理解と残ノイズの処理へ進んで、静止画の品質をもう一段引き上げてみてください。