PERSC JOURNAL DB Manual Course

運営者・お問い合わせ
3DCG · V-Ray

V-Rayでウォークスルー動画を書き出す完全手順|fly-through用GI設定とカメラパスでちらつきを消す

編集部 読了 約14分

ウォークスルー動画とは、カメラだけが室内を移動して、家具や建物そのものは動かない映像のことです。施主プレゼンで「玄関から入ってリビングを見渡す」といった歩き回り映像を作るときに使います。ところが、静止画で使っていたGI(間接光の計算)の設定のまま動画を連番で書き出すと、壁や天井がフレームごとにパラパラとちらつく現象(フリッカー)が起きがちです。V-Ray(写真のようにリアルな画像を作るオフライン高品質レンダラー)には、この動画のちらつきを抑えるための専用のGI設定が用意されています。

この記事では、動画でGIがちらつく原因から、Light Cacheの「Fly-through」モードによる対策、カメラパスの作り方、連番書き出しとバッチ・分散レンダリングの運用までを、V-Ray 6/7系の公式ドキュメント(確認日2026年7月8日)をもとに順に解説しています。

なお、LumionやEnscape、D5 Renderのようにその場で描画が返るリアルタイムレンダラーと、V-Rayのようにじっくり計算して高品質な結果を出すオフラインレンダラーは別の軸のツールです。この記事はV-Rayでの高品質なアニメーション書き出しに絞っています。

ウォークスルー動画でGIがちらつく理由

動画のちらつきは、静止画用のGI設定のまま書き出すことが原因です。フレームごとにGI(間接光)を計算し直すと、その結果が毎回わずかにばらつき、輝度の変動としてちらつきに見えてしまいます。

ウォークスルー動画はカメラだけが動く映像

ウォークスルー動画(fly-through)では、カメラだけが動いて、家具・壁・照明といったシーンの中身は動きません。だから理屈のうえでは、部屋の中の間接光の広がり方は最初から最後までほとんど変わらないはずです。

この「中身が動かない」という前提が、あとで出てくる対策の土台になります。中身が固定されているからこそ、GIの計算結果を全フレームで使い回せるからです。

なぜ静止画の設定だとちらつくのか

V-Rayが標準で使う設定は、1枚の静止画をきれいに仕上げることを前提にしています。この設定では、1フレームごとに独立してGIを計算します。

GIの計算には乱数(ランダムなサンプリング)が使われるため、フレームが変わるたびにサンプルの当たり方が微妙に変わります。静止画なら気づかない程度の差でも、動画にして連続再生すると、壁や天井の明るさがフレーム間で細かく揺れて見えます。これがちらつきの正体です。だから、fly-throughを前提にしてGIの計算を全フレームで共有する設定へ切り替える必要があります。

対策の全体像

対策の骨子は2つです。1つはGIエンジンをBrute Force+Light Cacheの組み合わせにすること、もう1つはLight Cacheを「Fly-through」モードで一度だけ計算して全フレームで共有することです。

静止画設定とfly-through設定の違いを整理すると、次のようになります。

項目静止画向けの設定ウォークスルー向けの設定
Light Cache の ModeSingle frame(毎フレーム計算)Fly-through(動画全体で1回計算)
GIの計算タイミングフレームごとに独立カメラパス全体でまとめて
ちらつき出やすい抑えられる
Subdivs(サンプル量)デフォルト(例1000)上げる(例2000)

ソース: Light Cache Settings - V-Ray for 3ds Max(2026年7月8日確認)

fly-through用のGIエンジンを選ぶ

動画に使うGIエンジンは、公式が推奨する組み合わせから選ぶのが安全です。内観のウォークスルーならBrute Force(一次反射)+Light Cache(二次反射)、外観のフライスルーならBrute Force+Brute Forceが基本になります。

一次反射と二次反射の役割

GIには一次反射(Primary Bounces)と二次反射(Secondary Bounces)という2段階があります。一次反射は、カメラから見える面に届く間接光です。二次反射は、そこからさらに跳ね返って広がる光を指します。

Brute Forceは光を総当たりで計算する方式で、正確ですが時間がかかります。Light Cacheは、部屋全体の光の分布をあらかじめ計算してためておく仕組みで、二次反射の計算を高速化します。この2つをどう組み合わせるかで、品質と速度のバランスが決まります。

内観はBrute Force+Light Cache、外観はBrute Force+Brute Force

公式ドキュメントは、内観(インテリア)ではBrute Forceを一次反射、Light Cacheを二次反射に使う組み合わせを推奨しています。外観(エクステリア)ではBrute Force+Brute Forceを勧めています(Light Cache Settings - V-Ray for 3ds Max、2026年7月8日確認)。

理由は光の性質の違いです。室内は窓から入った光が壁や天井で何度も跳ねる間接光が支配的なので、その分布をためておくLight Cacheが効きます。外観は空全体が主な光源になるため、総当たりのBrute Forceのほうが安定した結果になります。だから、作るウォークスルーが室内を歩く映像か、建物の外を回り込む映像かで、組み合わせを選び分けます。

Irradiance Mapは無理に使わない

以前は一次反射にIrradiance Mapを使う構成が定番でしたが、動画では現在Brute Force+Light Cacheが推奨されています。Irradiance Mapにも動画専用のモードがあり、そちらを使いたい場合の手順は「Irradiance Mapで作る場合」で解説しています。まずはBrute Force+Light Cacheから試すのが、初めての方には迷いが少ない選び方です。

Light Cacheを「Fly-through」モードで設定する

ちらつき対策の本命が、Light CacheのModeを「Fly-through」に変えることです。動画全体で1つのLight Cacheを計算して全フレームで共有すれば、フレーム間の一貫性が生まれ、ちらつきが大きく減ります。

ModeをSingle frameからFly-throughへ

Light CacheのModeには、主にSingle frame・Fly-through・From fileがあります。Single frameは1フレームごとに新しいLight Cacheを計算する方式で、これが動画だとちらつきの原因になります。Fly-throughは、カメラパス全体に対して1つのLight Cacheを計算する方式です。

ウォークスルーでは、このModeをFly-throughに切り替えます。公式は、1フレームだけでなくウォークスルー全体のLight Cacheを計算するほうが、とくに長い動画でレンダリング時間を節約できるとしています(Light Cache Settings - V-Ray for 3ds Max、2026年7月8日確認)。

Subdivsを上げる

Fly-throughモードにしたら、Light CacheのSubdivs(サンプルの量を決める値)を上げておきます。fly-throughでは、計算したサンプルを全フレームで分け合う形になるため、そのままだと1フレームあたりの密度が下がってしまうからです。

公式は一例としてデフォルトの1000から2000へ上げる値を挙げています。実際の値は、求める品質と動画の尺しだいで調整します。長い動画やディテールの多い室内ほど、少し高めに設定しておくと安心です。

Scaleを「World」にして密度を一定にする

Light CacheのScaleは、fly-throughではWorldにするのが最適な場合が多い、と公式は説明しています。Worldにすると、空間全体でサンプルの密度が一定になるためです(Light Cache Settings - V-Ray for 3ds Max、2026年7月8日確認)。

密度が一定になると、カメラが遠くを映すときと近くを映すときで間接光のきめ細かさが変わりにくくなります。だから、廊下の奥から手前に歩いてくるような映像でも、明るさのムラが出にくくなります。

計算したLight Cacheを保存して使い回す

一度計算したLight Cacheは、From fileモードでファイルから読み込んで再利用できます。設定を微調整して再レンダーするときに、GIを計算し直さずに済むので、長尺の動画ほど時間の節約になります。

本番前にLight Cacheだけ先に計算・保存しておき、あとの書き出しでは保存済みのファイルを読み込む、という流れが実務では扱いやすい運用です。

Irradiance Mapで作る場合のアニメーション専用モード

Light Cacheを使わない場合でも、Irradiance Map(間接光の明るさを記録したマップ)には動画専用の2段階モードがあります。Animation (prepass)とAnimation (rendering)を組み合わせ、隣り合うフレームのマップを混ぜてちらつきを抑える仕組みです。

Animation (prepass)で全フレームのマップを作る

最初のステップがAnimation (prepass)モードです。このモードで、各フレームぶんのIrradiance Mapを先に計算して保存します。

このとき、Global SwitchesにあるDon’t render final image(最終画像をレンダリングしない)を有効にすると、最終的な絵は描かずにGIマップだけを計算できます。fly-through用のマップを準備するときに便利なオプションだと公式に記載されています(Global Switches - V-Ray for 3ds Max、2026年7月8日確認)。最終画を描かないぶん、準備計算が速く終わります。

Animation (rendering)で隣接フレームをブレンドする

2つ目の工程がAnimation (rendering)モードです。この段階でV-Rayは、隣り合ういくつかのフレームのIrradiance Mapを読み込んで混ぜ合わせ、輝度のばらつきを平らにならします。これがIrradianceMap方式でのちらつき対策です。

混ぜるフレーム数はInterp. frames(補間フレーム数)で指定します。値を大きくすると滑らかになりますが、光の変化に遅れ(ラグ)が出ることがあります。小さくするとレンダリングは速くなりますが、ちらつきが増えやすくなります(Irradiance Map Settings - V-Ray for 3ds Max、2026年7月8日確認)。

プリセット「Medium animation」「High animation」から始める

Irradiance Mapには、動画向けにあらかじめ用意されたプリセットがあります。「Medium animation」と「High animation」がそれで、距離のしきい値を上げることでちらつきを減らす方向に調整されています。

細かい数値の意味がまだつかめない段階なら、これらのプリセットを選んでから微調整するのが、失敗の少ない始め方です。

カメラパスの作り方と「Use camera path」

ウォークスルーは、カメラの移動経路(カメラパス)をアニメーションとして作り、そこにGI設定を組み合わせて書き出します。V-Rayの「Use camera path」オプションを使うと、経路全体ぶんのGIをまとめて計算できます。

カメラパスの基本

カメラパスは、カメラの位置を時間軸上のキーフレームで打つか、あらかじめ引いた線(パス)にカメラを沿わせて作ります。室内を歩く映像なら、目線の高さを床から1.5m前後にそろえると自然に見えます。

移動速度も一定に保つと見やすくなります。速すぎると酔いやすく、遅すぎると間延びするため、実際に再生して確認しながら調整します。

「Use camera path」で経路全体のGIを先読みする

Use camera pathを有効にすると、V-Rayは現在のフレームだけでなくカメラの移動経路全体に対してGIのサンプルを計算します。短いfly-throughのGIを一度にまとめて計算できるオプションで、Nフレームおきに計算する運用よりも計算漏れが起きにくくなります(Irradiance Map Settings - V-Ray for 3ds Max、2026年7月8日確認)。

だから、数秒〜十数秒程度の内観ウォークスルーなら、この方式が扱いやすい選択肢になります。V-Ray for Rhinoでは、カメラパス全体のGIキャッシュを保存する一連の流れが1ステップの操作としてまとまっています(Render Parameters - V-Ray for Rhino、2026年7月8日確認)。

フレームレートと尺の決め方

動画のなめらかさはフレームレート(1秒あたりのコマ数)で決まります。建築のプレゼン映像なら24fpsや30fpsが一般的で、尺(秒数)×フレームレートが総フレーム数になります。

10秒の動画を30fpsで作るなら300フレームです。本番でいきなり全フレームを高解像度で回すと時間がかかるので、まずは低解像度で数フレームだけ書き出し、ちらつきやカメラの動きを確認してから本番に入ると、やり直しを減らせます。

書き出し設定とバッチ・分散レンダリング

本番の書き出しは、動画ファイルではなく連番画像で行うのが基本です。長い動画は、バッチ処理と分散レンダリング(複数のPCで手分けする方式)で時間を圧縮します。

動画ファイルではなく連番画像で書き出す

書き出しはmp4などの動画ファイルを直接作るのではなく、1フレームずつの連番画像(EXRやPNG)で出力します。連番なら途中でレンダリングが止まっても、止まったフレームから再開できるからです。

さらに、EXR(明るさの情報を広い範囲で保持できる画像形式)で書き出しておくと、あとの編集で色調整や被写界深度(ピントのぼけ)を後から足せます。プレビュー用の軽い確認にはPNG、仕上げ前提ならEXR、という使い分けが実務では扱いやすいです。

バッチとフレーム分割の考え方

長尺の動画は、フレーム範囲を分けて複数のバッチやマシンで並行して回すと早く終わります。たとえば300フレームを100フレームずつ3つに分ける、といった分け方です。

このとき注意したいのが、GIのキャッシュは分割する前に計算・保存して共有しておくことです。Light CacheをFrom fileで読み込む形にしてから分割すれば、各バッチが同じGIを使うため、バッチのつなぎ目でちらつきが出るのを防げます。

分散レンダリング・クラウドで時間を短縮する

分散レンダリング(Distributed Rendering)は、1つのレンダリングジョブを複数のPCで分担する仕組みです。手元に複数台のマシンがあれば、これだけで書き出し時間を大きく縮められます。台数を増やせない場合は、クラウドのレンダーファーム(レンダリング専用のPCを時間貸しするサービス)に投げる方法もあります。

長尺のウォークスルーで分散やクラウドを本格的に検討する段階になったら、GPUの実測ベンチマークやレンダーファームの比較・料金は、db.persc.jp のデータベースにまとめている情報が判断材料になります。分散レンダリングそのものの設定は /vray-distributed-cloud/ で解説しています。

V-Rayのウォークスルー設定についての編集部の所感

編集部がV-Ray公式ドキュメントの手順を確認したところ、ウォークスルー動画のちらつきは設定の切り替えだけで大きく変わることがわかりました。ここでの内容は実機での計測ではなく、公式ドキュメント(documentation.chaos.com、2026年7月8日確認)を読み解いた整理である点をお断りしておきます。

つまずきやすいのは、静止画と同じLight CacheのSingle frameモードのまま連番を書き出してしまうケースです。この状態だと、フレームごとにGIが計算し直され、壁や天井がちらついて見えます。

公式の記述をたどると、押さえるべきは3点に集約できます。Light CacheのModeをFly-throughへ切り替えること、Subdivsを上げること、ScaleをWorldにすることです。この3点を先に決めてからカメラパスを詰めていくと、あとから設定を大きく直す必要が少なくなります。

活用シーンと次の一歩

ウォークスルー動画は、施主プレゼンや不動産の内見前確認、SNS向けの短い紹介映像で力を発揮します。次の一歩は、動画の各フレームの土台になる静止画の品質を上げることです。

活用シーン

たとえば工務店の打ち合わせで、「玄関→リビング→和室」と歩いて見せる映像があれば、図面だけでは伝わりにくい空間のつながりや広さを施主が体感できます。分譲マンションのモデルルーム紹介や、竣工前の内見代わりの映像としても使えます。

静止画のパースを何枚も見せるより、1本の歩き回り映像のほうが動線や視界の変化が伝わりやすく、その場での意思決定が進みやすくなります。

次の一歩は静止画品質の底上げ

動画の各フレームの美しさは、結局のところマテリアル(素材の質感)や採光の設計しだいです。ウォークスルーの1コマ1コマは静止画そのものなので、内観・外観の仕上げ手順をおさえておくと、動画の見栄えも底上げされます。

室内映像の品質を高めるならV-Rayで内観パースを仕上げる総合手順、外を回り込む映像ならV-Rayで外観・鳥瞰パースを作る総合手順が土台になります。GIそのもののしくみをもう少し理解したいときはV-RayのGI設定で、Brute Force・Light Cache・Irradiance Mapの違いを解説しています。

まとめ

V-Rayのウォークスルー動画でちらつきが出るのは、静止画用の設定のままフレームごとに独立してGIを計算してしまうことが原因です。要点を整理すると、次の4つになります。

  1. ちらつきの原因は、フレームごとに独立したGI計算による輝度のばらつき
  2. 内観はBrute Force+Light Cacheの「Fly-through」モード、Subdivs増、Scale=Worldの3点が基本
  3. Irradiance Mapを使うならAnimation (prepass)でマップを作り、Animation (rendering)とInterp. framesで隣接フレームをブレンドする
  4. 本番は連番画像で書き出し、GIキャッシュを事前計算・共有してからバッチや分散で時間を短縮する

まずは内観のウォークスルーで、Light CacheをFly-throughに切り替えるところから試してみてください。設定を先に固めてからカメラパスを詰めると、書き出しのやり直しを減らせます。