TwinmotionからUnreal Engineへ書き出す|ゲームエンジン品質への発展
TwinmotionからUnreal Engineへ書き出す|ゲームエンジン品質への発展
Twinmotion(Epic Games製の建築向けリアルタイムレンダラー)で作ったシーンは、そのままUnreal Engineへ持ち込めます。TwinmotionとUnreal EngineはどちらもEpic Games製で無料のため、費用をかけずに「手早く作るTwinmotion」から「作り込むUnreal Engine」へと橋渡しできるのが強みです。Twinmotionで整えた建物・素材・光をベースに、ゲームエンジンならではの表現や配布方法へ発展させられます。
この記事では、書き出しに使うFile > Export to Datasmith fileの操作、StandardとOptimizedの選び方、Unreal Engine側での読み込み手順、そして引き継がれる要素と読み込み後に手直しが必要な箇所までを解説しています。内容は2026年7月現在の公式ドキュメントに沿っています。
なぜTwinmotionからUnreal Engineへ書き出すのか
Twinmotionだけで仕事が完結する場面は多いのですが、Unreal Engineへ渡すと表現と配布の幅が一段広がります。静止画やウォークスルー動画で足りるならTwinmotionのままで十分で、実行ファイルの配布や高度なライティングの作り込みが必要になったときにUnreal Engineが選択肢に入る、という順番で考えると迷いません。
Twinmotionで完結する仕事、Unreal Engineへ渡す仕事
静止画のパース、建物内を歩くウォークスルー動画、360度パノラマ、その場のプレゼンといった用途は、Twinmotion単体で完成します。ここでUnreal Engineを持ち出すと、かえって手間が増えるだけです。
Unreal Engineへ渡すのは、Twinmotionの機能だけでは届かない要求が出てきたときです。相手が自由に歩き回れる実行ファイルを配りたい、映画のようなカット割りで映像を作り込みたい、光の反射やガラスの表現をさらに追い込みたい、といった場面が該当します。Twinmotionで土台を作り、仕上げの一部だけUnreal Engineに委ねる、という使い分けが現実的です。
Unreal Engineで広がる表現
Unreal Engineに持ち込むと、ゲームエンジンならではの描画機能が使えるようになります。これがTwinmotionから発展させる最大の理由です。
代表的なのがLumen(リアルタイムで光の回り込みを計算する大域照明システム)とNanite(膨大なポリゴン数のモデルを軽く扱える仕組み)です。Lumenは間接光や反射をリアルタイムで表現するため、室内の柔らかな明るさや窓からの照り返しが自然に出ます。さらに静止画や動画を最高品質で仕上げたいときは、Path Tracer(1枚ずつ時間をかけて物理的に正確な光を計算する高品質モード)へ切り替える方法もあります。リアルタイムのLumenとPath Tracerを使い分けることで、確認は速く、最終出力は高品質にという両立ができます。
インタラクティブ配布とVRへの展開
Unreal Engineのもうひとつの強みは、体験そのものを相手に渡せることです。完成したシーンをスタンドアロンの実行ファイルとして書き出せば、Unreal Engineを持っていない施主でも、自分のパソコンで建物内を自由に歩けます。動画は決まった順路しか見せられませんが、実行ファイルなら見たいところを相手が選べます。
このほか、Pixel Streaming(サーバー側で描画した映像をブラウザへ配信する仕組み)を使えばURLを開くだけで体験してもらえますし、VRゴーグル向けの本格的なウォークスルーも作れます。Twinmotionにも共有やVRの機能はありますが、体験の作り込みや配布の自由度を最大化したいときにUnreal Engineが効いてきます。
書き出しの前に確認すること
書き出し自体は数クリックで終わりますが、Unreal Engine側の下ごしらえを先にすませておくと、読み込みの段階で詰まりません。確認するのはバージョンとプラグインの2点です。
Unreal Engine 5.4以降を用意する
最初にバージョンを確認します。Twinmotionから書き出したDatasmithファイルを読み込むには、Unreal Engine 5.4以降が必要です。これより古いバージョンでは正しく読み込めないため、Epic Games Launcherから5.4以上を入れておきます。
なぜバージョンが決まっているかというと、書き出し形式であるDatasmith(Epic製のシーン受け渡しフォーマット)の仕様が、対応するUnreal Engine側とそろっている必要があるためです。バージョンがずれると、せっかく書き出しても読み込みで止まってしまいます。手を動かす前に、使うUnreal Engineが5.4以降かをまず見ておきましょう。
Datasmith Importerプラグインを有効化する
Unreal Engineは、標準のままではDatasmithファイルを読み込めません。読み込みには、Datasmith Importer(DatasmithファイルをUnreal Engineに取り込むためのプラグイン)を有効にしておく必要があります。
有効化は、Unreal Engineのメニューから「Edit(編集)→ Plugins(プラグイン)」を開き、検索欄に「Datasmith」と入力して、Datasmith Importerにチェックを入れるだけです。有効化したあとはUnreal Engineの再起動を求められることがあります。これを先にやっておかないと、ファイルを書き出したあとに「読み込むボタンが見当たらない」と手が止まるので、書き出し前に確認しておくと安心です。
TwinmotionからDatasmith形式で書き出す
Twinmotion側の操作はシンプルで、File > Export to Datasmith fileを選ぶと、Unreal Engineが読み込めるファイル一式が書き出されます。ここではメニューの位置と、書き出し時に選ぶモードの意味を押さえます。
File > Export to Datasmith file の操作
書き出しは、Twinmotionのメニューから「File(ファイル)→ Export to Datasmith file」を選ぶところから始めます。保存先とファイル名を決めて実行すると、書き出しが始まります。
このとき作られるのは、拡張子が「.udatasmith」のファイルと、同じ場所に置かれる素材フォルダです。フォルダの中には、シーンで使っているテクスチャ(模様や質感の画像)と、「.udsmesh」という形状データがまとめて入ります。この2つは必ずセットで保管してください。片方だけを移動させると、読み込み時にテクスチャや形状データが見つからず、見た目が欠けてしまいます。フォルダごとまとめて置いておけば、あとでUnreal Engineへ読み込むときに迷いません。
StandardとOptimizedを使い分ける
書き出しのときに、StandardとOptimizedのどちらかを選びます。ここは仕上がりではなく、Unreal Engineに読み込んだあとの「重さ」に関わる設定です。
Standardは素直な書き出し方で、同じ形状を複製したオブジェクトも、それぞれ別の形状・素材データとして書き出されます。Optimizedは重複を賢くまとめる方式で、複製したオブジェクトは元の形状・素材を共有するため、Unreal Engine上での動作が軽くなります。ただしOptimizedはエクスポートに時間がかかります。共有された素材を1つ編集すると、それを使うオブジェクトが一斉に変わってしまう性質もあります。
| モード | 仕組み | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| Standard | 複製ごとに別アセットを作る | 素直に読み込みたい、アセットを個別に編集したい | Optimizedよりアセット数が増える |
| Optimized | 複製は元アセットを共有 | UE上の動作を軽くしたい、大規模シーン | 書き出しが遅く、共有素材の編集は全体に波及 |
大規模なシーンでUnreal Engine上の動作を軽くしたいならOptimized、あとから素材を個別に調整したいならStandard、という選び方になります。最初のうちは挙動がわかりやすいStandardから試すと、どちらが自分の作り方に合うか判断しやすくなります。
Unreal Engineに読み込む
書き出した.udatasmithをUnreal Engineへ読み込むと、シーンの形状や素材がUnreal Engineのアセットに変換されて取り込まれます。読み込み後にContent(コンテンツ)内へTwinmotionという名前のフォルダが作られるのが目印です。
インポート手順とContentのTwinmotionフォルダ
読み込みは、Unreal EngineのツールバーからDatasmithのインポートを選び、先ほどの.udatasmithファイルを指定します。取り込みが終わると、3DモデルはStatic Mesh Asset(動かない形状データ)に、素材はMaterial Asset(見た目を決めるデータ)に変換され、Content Browser(素材を並べて管理する画面)に並びます。
取り込まれたアセットは、Content内に自動でできるTwinmotionフォルダにまとめられます。どこに何が入ったかがフォルダで整理されるため、あとから特定の素材を差し替えたいときも探しやすくなります。取り込み直後は配置がそろっていることを確認し、必要ならライトや床の位置を調整していきます。
モデルを直したら再インポートで反映する
建築の仕事では、読み込んだあとにTwinmotion側で間取りや素材を直すことがよくあります。そのたびに一からやり直す必要はありません。Datasmithには再インポートのしくみがあり、Twinmotionで書き出し直したファイルを読み込ませると、変更点だけをUnreal Engine側へ反映できます。
これがあると、設計変更が入っても作業が無駄になりません。Unreal Engineで手を加えたライティングや配置を保ったまま、モデルの更新だけを取り込めるためです。Twinmotionで直す、書き出す、Unreal Engineで再インポートする、という往復で設計変更に追従できます。
何が引き継がれ、何が引き継がれないか
書き出しで引き継がれるのは、おもに「動かない見た目」です。形状・素材・光・カメラといった静的な要素はよく移りますが、人や車の動きなど時間で変化する要素は引き継がれません。ここを先に理解しておくと、Unreal Engine側で何を作り直すかの計画が立てられます。
引き継がれるもの
静的な要素は、かなり広く引き継がれます。3DモデルはStatic Meshへ、素材はMaterial Assetへ変換され、車の塗装・布・植生・ガラス・標準・サブサーフェス(肌や葉のように光が内部で散る素材)・水といったマテリアルの種類に対応します。
光も引き継がれ、名前・位置・形状・IES(照明メーカーが配る光の広がりデータ)・強度・色が保持されます。カメラは、Twinmotionのメディアに置いた構図がCine Camera Actor(映画向けのカメラ)として取り込まれ、位置と焦点距離が残ります。PaintやScatterで撒いた植栽はHierarchical Static Mesh(大量の同じ形状をまとめて軽く描く仕組み)として入り、静止した車両やキャラクター、Quixel Megascans(Epicが提供する高精細アセット)、デカール(表面に貼る模様)なども引き継がれます。各要素にはTwinmotionの識別情報がタグとして残るため、あとで対応関係をたどれます。
引き継がれないもの
一方で、時間とともに変化する要素は引き継がれません。歩く人物やそのパス、走る車や建設機械、ボート、自転車のパス、Twinmotionのアニメーター(Translator/Rotatorで物を動かす機能)による動きは、書き出しでは移りません。
素材や効果の一部も対象外です。ビデオマテリアル(動画を貼り付けた素材)、両面マテリアル、パーティクル(火や煙などの粒子効果)、サウンド、Quixel Megascansのノーマルマップ(凹凸を表す情報)は引き継がれません。これらが必要な場合は、Unreal Engine側であらためて設定する前提で計画を組みます。動きの演出はTwinmotionで完成させておくか、Unreal Engineで作り直すか、どちらかを最初に決めておくと手戻りが減ります。
読み込み後に手直しが必要なところ
引き継がれても、そのままでは完璧に表示されない箇所があります。これは書き出しの不具合ではなく、Datasmithの仕様上の制限です。読み込み後に確認して整える前提で進めると、慌てずにすみます。
| 手直しが要る箇所 | 症状 | 対応の考え方 |
|---|---|---|
| 開始地面 | 高さがずれて表示される | 位置を確認して調整する |
| ランドスケープ | 取り込まれるが正しく表示されない | 高さマップと素材から作り直す |
| エミッシブ(自己発光)素材 | 明るさが元と違って見える | UE側の露出設定に合わせて調整 |
| ライトマップUV | 焼き込み用の座標が未設定 | Unreal Engine側で手動設定 |
これらは一度把握しておけば、読み込み直後のチェック項目として順に潰せます。特にライティングをきれいに焼き込みたい場合は、ライトマップUVの設定が仕上がりに効いてくるため、最初に確認しておきたいポイントです。
書き出しワークフローについての編集部の見解
公式ドキュメントの仕様と、一般的な建築ビジュアライゼーションの進め方をふまえた、書き出しワークフローについての編集部の見解をまとめます。ここは実測値ではなく、公式情報からの整理として読んでください。
編集部の所感としては、TwinmotionからUnreal Engineへ渡す作業は「乗り換え」ではなく「土台の受け渡し」と捉えるのが実態に合っています。形状・素材・光・カメラといった静的な土台はよく引き継がれる設計になっている一方、動きの演出は引き継がれないため、Twinmotionで作り込むほど恩恵が大きく、動きはUnreal Engineで作り直す前提になるためです。
順序としては、Twinmotion側でモデルとマテリアルを固めてから書き出し、Unreal EngineではLumenやPath Tracerでの描画と、実行ファイル化などTwinmotionにできないことに集中する流れが、公式の非対応リストとも整合します。書き出しのモードは、まずStandardで挙動を確認し、シーンが重くなってきたらOptimizedを試すのが無理のない進め方といえます。最初からUnreal Engineの全機能を使おうとせず、Twinmotionで足りる仕事はTwinmotionで終わらせる線引きが、遠回りを避ける近道です。
活用シーンと次の一歩
TwinmotionからUnreal Engineへの書き出しは、Twinmotion単体では届かない届け方をしたいときに価値が出ます。どんな場面で使い、次に何へ進むかを整理します。
活用シーンとしてわかりやすいのは、施主へ実行ファイルを渡して自由に歩いてもらうプレゼンや、コンペ向けにPath Tracerで仕上げた高品質な静止画・動画、そしてVRゴーグルでの空間体験です。いずれもTwinmotionで作った資産をそのまま活かせるため、ゼロから作り直すより早く到達できます。まずはTwinmotionで通常のプレゼンを完成させ、より高い要求が出たときにUnreal Engineへ発展させる、という段階的な進め方が現実的です。
次の一歩として、Unreal Engine側の建築ビジュアライゼーションをもっと知りたい方はUnreal Engine完全ガイド|建築プレゼンを変えるリアルタイムプラットフォームが入口になります。Twinmotionの全体像や基本操作から確認したい場合はTwinmotion完全ガイド|Unreal Engineベースの建築レンダラーを、動画や共有・VRまで一望したいならTwinmotionの動画・アニメ・共有・VRガイド|動く建築プレゼンとオンライン共有を続けて読むと、書き出しの位置づけがつかめます。
まとめ
TwinmotionからUnreal Engineへの書き出しの要点を、3つに絞って振り返ります。
1つ目は、書き出しはTwinmotionのFile > Export to Datasmith fileで行い、.udatasmithファイルと素材フォルダがセットで出力されることです。StandardとOptimizedは、読み込んだあとの動作の軽さで選び分けます。2つ目は、読み込みにはUnreal Engine 5.4以降と、有効化したDatasmith Importerプラグインが必要なことです。この下ごしらえを先にすませておくと、読み込みで止まりません。3つ目は、形状・素材・光・カメラといった静的な要素はよく引き継がれる一方、人や車の動き・パーティクル・サウンドは引き継がれず、地面やランドスケープは手直しが要ることです。
TwinmotionとUnreal Engineはどちらも無料で使えます。Twinmotionの手軽さで土台を作り、Unreal EngineのLumenやPath Tracer、実行ファイル配布で仕上げるという役割分担ができれば、静止画やウォークスルーだけでは届かない体験まで、無理なく相手に届けられます。
建築知識の教科書