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3DCG · SketchUp

SketchUpで建築素材をリアルに見せる質感づくり|木・金属・ガラス・コンクリート

編集部 読了 約13分

SketchUp Desktop 2025.0では、標準マテリアルライブラリの全素材がフォトリアルマテリアル(PBR)化され、レンダラーを入れなくても木や金属の質感をビューポート上で確かめやすくなりました(2025年2月25日リリース)。それでも「なんだかおもちゃっぽい」「面がのっぺりして安っぽい」と感じる場面は残ります。原因は色ではなく、光の返り方の情報が足りていないことにあります。

この記事では、建築でよく使う木・金属・ガラス・コンクリートの4素材を「反射・透明・凹凸」という3つの見方で捉え直し、素材別の質感設計の考え方と数値の目安をまとめました。マテリアルパネルの基本操作やテクスチャの位置合わせには踏み込まず、実物らしく見せるための設計判断に絞って解説します。

SketchUpの素材が「おもちゃっぽく」見える理由

実物らしさは色ではなく「光の返り方」で決まります。木も金属もガラスも、表面がどう光を反射し、透過し、凹凸で影を作るかという情報がそろって初めて、脳が「本物だ」と認識します。SketchUpの素材が安っぽく見えるのは、この光の情報が単色ベタ塗りに近い状態のまま置かれているからです。

質感は「色」ではなく「光の返り方」で決まる

単色でベタ塗りした面は、どこを見ても光が一様に返るため、平面的で作り物のように見えます。たとえば木のフローリングを1色の茶色で塗っただけだと、板の繊維も塗装の艶も表現されず、ただの茶色い床にしかなりません。

現実の素材は、表面の粗さ・反射の強さ・微細な凹凸によって、場所ごとに光の返り方が変わります。窓際は明るく反射し、家具の脚元は暗く沈む、といった差が生まれることで立体感が出ます。この光の返り方の差を素材に与える作業が、質感づくりの本質です。

この記事では、木・金属・ガラス・コンクリートを「反射(どれだけ光を返すか)」「透明(どれだけ光を通すか)」「凹凸(表面の細かい起伏)」の3軸で捉えます。素材ごとにこの3軸のバランスが違うため、同じやり方では実物らしくなりません。

SketchUp単体でできること/レンダラーに任せること

SketchUpのビューポート表示は簡易的で、正確な反射・屈折・間接光(周囲の物体で跳ね返った光)はレンダラーが担います。SketchUp単体では素材の「当たり」を作り、写実の詰めはレンダラーの光と反射で仕上げる、という役割分担が実務の前提です。

ここでいう当たりとは、柄の大きさ・色味・透明の度合い・PBRパラメータのおおよその値のことです。たとえば住宅のリビングを作るとき、フローリングの板幅やタイルの目地の大きさをSketchUp側で現実に合わせておき、最終的な艶や映り込みはレンダラーで調整します。

レンダラーの導入手順そのものは、SketchUp × V-Ray 建築パースの始め方で解説しています。この記事では、レンダラーに渡す前の素材設計に集中します。

SketchUp 2025のPBRマテリアルで質感の土台を作る

SketchUp Desktop 2025.0から、標準ライブラリの全素材がフォトリアルマテリアル(PBR)になり、メタルネス・ラフネス・ノーマル・アンビエントオクルージョンの4要素で質感を細かく設計できるようになりました(2025年2月25日リリース、出典: SketchUp Desktop 2025.0 リリースノート)。以前はレンダラーがないと扱えなかったPBRを、SketchUp内で直接いじれるのが大きな変化です。

PBR要素役割値を上げると建築での使いどころ
メタルネス金属らしさ・反射の強さ反射が強まり金属的になるステンレス・アルミサッシ・金物
ラフネス表面の粗さつや消しになる(下げると光沢)塗装・木・コンクリの艶の調整
ノーマル凹凸の陰影を疑似再現形状を変えず表面の起伏が出る打ちっぱなし・石・タイル目地
アンビエントオクルージョン角や隙間の柔らかい影隅や溝が暗く沈む目地・段差・入り隅の立体感

ソース: SketchUp Desktop 2025.0 リリースノート / Editing Materials(SketchUp Help)(2026年7月現在)

メタルネス・ラフネス・ノーマル・AOの4つで質感が決まる

PBRの4要素は、それぞれが見た目の別々の側面を担当します。メタルネスは金属らしさと反射の強さを決め、値が低いとつや消し、高いと金属的な反射になります。ラフネスは表面の粗さを表し、低いと鏡のような光沢、高いとつや消しになります(Invert Roughnessで数値の意味を反転できます)。

ノーマルは、形状そのものは変えずに凹凸の陰影だけを疑似的に再現する要素です。コンクリートの砂骨や石の表面のざらつきを、ポリゴンを増やさずに表現できます。アンビエントオクルージョン(AO)は、角や隙間に柔らかい影を落として立体感を出す要素で、タイルの目地や段差の入り隅を自然に沈ませます。

この4要素を素材ごとに調整することで、同じテクスチャ画像からでも艶のあるフローリングとつや消しの床材を描き分けられます。実務では、まずメタルネスとラフネスで大きな質感(金属か、非金属か、艶があるか)を決め、ノーマルとAOで細部の立体感を足す順番が進めやすいです。

「Display Photoreal Materials」スタイルとGenerate Textures(AI)

PBRの質感は、face styleが「Display Photoreal Materials」に対応したスタイルでのみ画面に反映されます。対応しないスタイルでは色だけが表示されるため、「PBRを設定したのに変化がない」ときは、まず表示スタイルを確認してください(出典: Editing Materials(SketchUp Help))。

既存のマテリアルにPBRマップがない場合は、Generate Texturesが役立ちます。これは、メタルネス・ラフネス・ノーマル・AOの推奨設定をAIが提案し、自動で適用する機能です。過去の案件で使った独自テクスチャや、自分で撮影した素材写真をPBR化したいときに便利で、利用にはインターネット接続が必要です。

2025以降は、こうしたPBRマップをレンダラーなしでSketchUp内から扱えます。従来はレンダラーを導入して初めて質感の当たりが取れましたが、今はSketchUp単体でもかなりの部分まで見た目を追い込めるようになりました。

素材別の質感づくり①:木材・コンクリート(マット系)

木材とコンクリートは、光をほとんど反射しないマット系の素材です。質感の鍵は、柄の実寸を現実に合わせることと、ラフネス高め・凹凸の作り込みで表面の粗さを出すことにあります。反射で見せる素材ではないため、メタルネスは基本的に0のまま設計します。

木材:木目の向き・柄の実寸・ラフネスで木らしさを出す

木材が安っぽく見える最大の原因は、木目の向きと柄の大きさが現実からずれていることです。木目テクスチャの向きが板の長手方向と揃っていないと、木としての違和感がすぐ出ます(向きを揃える具体的な操作はSketchUpのテクスチャ位置合わせと写真投影で解説しています)。

次に効くのが柄の実寸です。テクスチャタイルのサイズを実際の板幅や柄に合わせないと、縮尺感が壊れて模型のように見えます。たとえば幅90mmのフローリングなのにテクスチャの木目が異様に太いと、床全体が巨大な板に見えてしまいます。Editタブの画像サイズ指定で、テクスチャの実寸を現実の板幅に合わせてください。

艶の設定は、木はやや粗い前提でラフネス高め・メタルネス0が基本です。無塗装や粗い仕上げならラフネスを高く保ち、ウレタン塗装のフローリングなど艶のある仕上げなら、ラフネスを少し下げて光沢を足すと質感が変わります。住宅のリビングで無垢材と塗装材を並べるような場面では、この艶の差だけで素材の違いが伝わります。

コンクリート:ラフネス高め+ノーマル/AOで打ちっぱなしの質感

コンクリートは反射がほぼなく、ラフネス高め・メタルネス0で設計するマット系の代表です。ただしのっぺりしやすい素材でもあるため、ノーマルマップで微細な凹凸を、AOで目地や隅の陰りを加えることで、重さと粗さが出ます。

打ちっぱなしコンクリートでは、Pコン(型枠を固定した跡の丸い窪み)や型枠目地の柄の実寸を実物に合わせると、一気に本物らしくなります。壁一面を単色のグレーで塗るのではなく、Pコン跡が規則的に並ぶテクスチャを実寸で配置するだけで、コンクリート特有の表情が生まれます。

均一なベタ塗りを避けることも大切です。現実のコンクリートは色ムラ・汚れ・エフロ(白い析出物)があるため、多少の汚れやムラが入ったテクスチャを使うと、真っさらな単色より現実的に見えます。編集部の見立てでは、マット系素材の写実度は「柄の実寸」と「凹凸・汚れの情報量」でほぼ決まり、この2点を外すとPBRを設定しても安っぽさが抜けません。

素材別の質感づくり②:金属・ガラス(反射・透明系)

金属とガラスは、光を強く返す・透過するという性質を持つ素材です。質感の鍵は、メタルネスや不透明度そのものよりも、映り込む「周囲の環境」をどう作るかにあります。反射する対象や透けて見える背景がなければ、パラメータをいくら調整しても素材らしくなりません。

金属:メタルネス高め+ラフネスで「磨き〜つや消し」を描き分ける

金属は、メタルネスを上げて反射を強め、ラフネスで艶の段階を描き分けます。ラフネスを低くすれば磨きステンレスのような鏡面に、高くすればヘアライン仕上げや黒皮鉄のようなつや消しになります。同じメタルネスでも、ラフネスの差だけでまったく別の金属に見えます。

金属で決定的に重要なのは「何を映すか」です。金属の見え方は表面の色よりも映り込みで決まるため、映り込む周囲環境(HDRIや背景)の作り込みがそのまま質感になります。たとえばアルミサッシのフレームは、空や周囲の建物が映り込むことで初めて金属らしくなり、映るものが何もないと灰色の帯にしか見えません。この点はライティング設計と一体で考える必要があり、光の当て方はSketchUpレンダリングのライティング設計で解説しています。

SketchUp単体の表示では反射は近似のため、金属の最終的な詰めはレンダラーでの確認が前提になります。SketchUp側ではメタルネスとラフネスの当たりを決め、正確な映り込みはレンダラーで仕上げる流れが現実的です。

ガラス:不透明度(Opacity)を基点に、反射・屈折はレンダラーで仕上げる

ガラスの透明感は、マテリアルの不透明度(Opacity)が基点になります。SketchUpのマテリアルはOpacityを0(完全透明)から100(完全不透明)まで設定でき、板ガラスなら高めの不透明度にわずかな色味を足すと自然に見えます(出典: Editing Materials(SketchUp Help))。完全な透明にするとガラスの存在感が消えるため、少し不透明度を残すのがコツです。

ただし、SketchUp単体の透明表示は近似で、リアルなガラスに欠かせない反射・屈折(映り込みや、厚みによる背景の歪み)はレンダラーが担います。単体では「そこにガラスがある」という当たりまでを作り、透明感の写実はレンダラーで仕上げる前提で進めてください。

全面ガラスのファサードでは、周囲の環境の設計が印象を大きく左右します。同じガラスでも、内部が透けて見えるか、空が映り込むかで見え方が激変するためです。オフィスビルの外観パースなら、昼間の反射で空を映すか、夕景で内部の照明を透かすかによって、まったく違う印象の絵になります。ガラスは単体では設計できず、周囲環境とセットで考える素材です。

リアルさの詰めはライティングとレンダラーで決まる

質感は素材単体では決まらず、最終的には光と反射で決定されます。同じPBRマテリアルでも、光の当て方ひとつで実物らしくもおもちゃっぽくもなるため、素材設計とライティングは切り離せません。

同じ素材でも光の向き・強さで見え方が変わる

同じマテリアルを設定していても、自然光・HDRI・人工照明のどれをどう当てるかで、艶や陰影は大きく変わります。朝の斜光と正午の直上光では、フローリングの艶の出方も、コンクリート壁の陰影も別物になります。

特に金属とガラスは、映り込む対象があって初めて素材らしくなります。鏡面のステンレスも、映すものがなければただの灰色の面です。素材のパラメータをいくら正確に設定しても、光と映り込みの設計が伴わなければ写実には届きません。光の設計については、SketchUpレンダリングのライティング設計で解説しています。

SketchUp単体で当たりを作り、レンダラーで写実を完成させる

実務の作業順は、SketchUpで素材の当たりを作り、レンダラーで写実を完成させる流れが効率的です。具体的には、SketchUp側で柄の実寸・色味・透明の度合い・PBRパラメータのおおよその値を決め、そのうえでレンダラーに渡して反射・屈折・間接光を詰めます。

この順番で進めると、モデリング中に素材の見当がついた状態でレンダラーに移れるため、レンダラー側での試行錯誤が減ります。レンダラー導入の具体的な手順はSketchUp × V-Ray 建築パースの始め方で解説しています。

SketchUpの質感づくりを編集部が読み解いた所感

公式ドキュメントとリリースノートを読み解くと、2025のPBR対応はSketchUpの質感づくりの入口を大きく下げた変化だと編集部は見ています。以前はレンダラーを入れて初めて質感の当たりが取れたのが、標準ライブラリの底上げとGenerate Texturesによって、SketchUp単体でも見た目をかなり追い込めるようになりました。

一方で、SketchUpのビューポート表示は簡易的なままで、正確な反射・屈折・間接光はレンダラー依存という構造は変わっていません。金属の映り込みやガラスの透明感といった、周囲環境に依存する質感は単体では完結せず、レンダラーでの確認が前提になります。ここを理解せずにSketchUp内だけで写実を追うと、時間をかけた割に安っぽさが抜けないという状況に陥りやすいです。

編集部の見立てでは、SketchUpの質感づくりでもっとも費用対効果が高いのは、素材別に3軸(反射・透明・凹凸)を意識して当たりを作る段階です。マット系は柄の実寸と凹凸、反射・透明系は周囲環境という要点さえ外さなければ、レンダラーに渡した後の仕上がりが安定します。逆にこの土台が雑だと、レンダラーでいくら光を作り込んでも素材の違和感が残ります。

質感づくりを整えた先に広がる制作フロー

素材別に質感設計の考え方を身につけると、SketchUpで作るモデルの完成イメージがモデリング段階で見えるようになります。当たりを作らずにレンダラー任せで進める人と、SketchUp側で素材の見当をつけてから渡す人とでは、レンダラーでの調整時間に大きな差が出ます。

たとえば住宅の内観パースで、フローリング・アルミサッシ・窓ガラス・打ちっぱなしの腰壁が同じ画面に並ぶ場面を考えます。3軸で素材を捉えていれば、木はラフネスと柄実寸、金属はメタルネスと映り込み、ガラスは不透明度、コンクリはノーマルとAO、と素材ごとに何を調整すべきかが即座に判断できます。この判断力がつくと、コンペ用のプレゼンボードを短時間で仕上げる場面でも、質感の詰めで迷う時間が減ります。

質感の当たりを作れるようになったら、次はレンダラーで光と反射を詰める段階へ進みます。V-Rayなどのレンダラーを導入すれば、SketchUp単体では近似だった反射・屈折・間接光が正確に計算され、これまで作ってきた素材の当たりが写実へと仕上がります。

まとめ|素材を「反射・透明・凹凸」で捉えれば質感は作れる

SketchUpの素材を実物らしく見せる質感づくりは、色ではなく光の返り方を設計する作業です。素材を「反射・透明・凹凸」の3軸で捉え直すことで、木・金属・ガラス・コンクリートのそれぞれに何を与えればよいかが見えてきます。

要点は次の4つです。第一に、リアルさは色ではなく光の返り方(反射・透明・凹凸)で決まります。第二に、2025のPBRマテリアル(メタルネス・ラフネス・ノーマル・AO)で質感の土台を作れるようになりました。第三に、木・コンクリートはマット系で、ラフネス高め・メタルネス0に柄の実寸と凹凸の情報を足し、金属・ガラスは反射・透明系で、メタルネスや不透明度に加えて映り込む周囲環境を作り込みます。第四に、SketchUp単体でできるのは素材の当たりまでで、写実の最終決定は光とレンダラーが担います。

この4点を押さえたら、まずは手持ちのモデルで木とコンクリートの柄実寸を現実に合わせるところから始めてみてください。マット系で質感の手応えをつかんだあと、金属・ガラスの映り込みへ進むと、素材ごとの違いが実感として身につきます。