Enscapeの平面図・断面図出力(Orthographic View)の使い方
Enscapeできれいなパースは出せても、「図面のようにまっすぐな平面図・断面図・立面を、レンダーの見た目のまま出したい」という声はよく聞きます。これまでは、その2D図面をAutoCADなど別のソフトで描き直す手間がかかっていました。
そこで使えるのが、Enscape Orthographic View(平行投影=遠近感をなくしたまっすぐな表示モード)です。遠近のゆがみを消した図面ビューに切り替えるだけで、素材や光の入った平面図・断面図・立面をそのまま書き出せます。
この記事では、Orthographic Viewへの切り替えから、平面図・断面図・立面の作り方、実務での使いどころまでを順に解説します。通常の1枚の静止画(パース)を書き出す一般手順はこの記事では深追いせず、後半で専用の記事に案内します。
Orthographic View(平行投影)でできること
Orthographic Viewは、遠近感(近くのものが大きく、遠くのものが小さく見える効果)を消した表示モードです。建物のプロポーションがゆがまないので、平面図・断面図・立面といった図面らしい絵を、レンダー品質のまま出せます。まずは、この見え方が普段のパースと何が違うのかを押さえましょう。
遠近投影(Perspective)との違い
遠近投影(Perspective)は、人の目に近い自然な見え方です。手前が大きく奥が小さく写るので、外観や内観の「完成イメージ」を見せるパース向きといえます。いっぽう平行投影は、手前も奥も寸法の比率が一定に保たれます。だから図面や検討用の絵に向いています。
Enscapeの投影モードは3種類です。通常のPerspective、消失点を2つに絞ったTwo-point perspective、そしてOrthographic(平行投影)があります(出典: Chaos公式ブログ「Orthographic Views」、確認日 2026年7月7日)。
つまり「図面のような正面・真上からの絵が欲しい」ときはOrthographicを選ぶ、という切り分けになります。パースを見せたいのか、図面を見せたいのかで選ぶと迷いません。
Orthographicモードで一部の機能が無効になる点
Orthographicに切り替えると、パース演出に使う設定の一部が無効になります。無効になるのは、被写界深度(Depth of Field=ピントを合わせた部分以外をぼかす効果)、焦点(Focal Point)、そして画角(Field of View)です(出典: Chaos公式ブログ「Orthographic Views」、確認日 2026年7月7日)。
あわせて、ビューポート上のVideo Editor(動画書き出し)・Panorama(360度パノラマ)・Minimap(俯瞰マップ)・Navigation Mode(移動モード切り替え)といったボタンも、平行投影中は使えなくなります。
これらは「機能が減って不便になる」わけではありません。ボケや広角といった演出は図面ビューには不要なので、Orthographicは図面出力に集中するためのモードだと考えると腑に落ちます。演出が必要な場面ではPerspectiveに戻せば済みます。
Orthographic Viewへの切り替え手順
切り替えはワンクリックで、書き出しやレンダリングのやり直しはいりません。Enscape側のボタンで投影を変えるだけで、その場で平行投影のビューに変わります。切り替える場所と、視点をまっすぐ合わせるコツをあわせて押さえておくと、図面ビューが一気に作りやすくなります。
Enscapeウィンドウで投影を切り替える
Enscapeのプレビューウィンドウで、投影の切り替えから「Orthographic」を選びます。ボタンの位置が見当たらないときは、Enscapeウィンドウ上で H キーを押すとヘルプ(操作ガイド)が表示され、各ボタンの位置を確認できます(出典: Chaos公式ブログ「Orthographic Views」、確認日 2026年7月7日)。
PerspectiveとOrthographicはいつでも往復できます。書き出す前に両方の見え方を見比べられるので、「この絵はパースで見せるか、図面ビューで見せるか」をその場で決められます。
モデリングソフト側の平行投影と同期させる
Enscapeにはカメラ同期(camera synchronization=モデリングソフトの視点とEnscapeの視点を連動させるしくみ)があります。これを使うと、設計に使っているソフトのビューとEnscapeのビューがそろって動きます。
たとえばSketchUpの場合、SketchUpのCameraメニューで「Parallel Projection(平行投影)」を選ぶと、両方のウィンドウが平行投影でそろって同期します(出典: Chaos公式ブログ「Orthographic Views」、確認日 2026年7月7日)。SketchUp側を平行投影にしておけば、Enscape側の絵もまっすぐな図面ビューに寄せられます。
RevitやArchicad、Rhinoなど他のソフトでも、投影タイプを選んで平行投影にそろえる考え方は共通です。ソフトごとの具体的な連携作業は、Enscape×SketchUp実践ワークフロー|マテリアル・アセット・出力で解説しています。
NumPadで正面・真上・側面へ一発で合わせる
図面ビューは、視点をきっちり正面から見た向きにそろえることが肝心です。少しでも斜めだと図面らしさが崩れます。Enscapeでは、キーボードのNumPad(テンキー)ショートカットで主要な視点へ一発で移動できます。
割り当ては次のとおりです(出典: Chaos公式ブログ「Orthographic Views」、確認日 2026年7月7日)。
| NumPadキー | 視点 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 5 | 真上(Top) | 平面図の起点 |
| 2 | 正面(Front) | 立面・正面断面の起点 |
| 8 | 背面(Back) | 反対側の立面 |
| 4 | 左側面(Left) | 側面の立面・断面 |
| 6 | 右側面(Right) | 反対側の側面 |
真上が平面図の起点、正面や側面が立面・断面の起点になります。視点合わせや視点保存の基礎を固めておくと、この正対がさらに速くなります。基本の視点操作はEnscapeの画面操作とナビゲーションの基本|歩き回り・視点保存で解説しています。
平面図・断面図・立面を作って書き出す
平行投影に切り替えたら、視点の向きとセクション(断面のカット面)の組み合わせで、平面図・断面図・立面を作り分けます。どれもレンダーの質感・陰影を残したまま、2Dの図面ビューとして書き出せます。ここがこの記事の中心です。
平面図(フロアプラン)を作る
平面図は、真上から建物を見下ろし、天井より下で水平にカットした絵です。作る手順は次の流れになります。まず平行投影で真上ビュー(NumPad 5)へ移動します。次にセクション(断面のカット面)で床から一定の高さの位置を水平に切り、室内が見えるようにします。すると、レンダー品質のまま真上から見た平面図ビューになります(出典: Chaos公式ブログ「Orthographic Views」、確認日 2026年7月7日)。
カットする高さは、窓や建具が見える高さにそろえると図面らしくなります。こうして作った平面図は、家具や素材の入った「見せる間取り図」として使えます。線画の図面よりも、施主向けのプレゼン資料で完成後のイメージが伝わりやすくなります。
断面図・立面を作る
断面図と立面は、どちらも横から建物を見た絵ですが、建物を切るか切らないかで役割が変わります。手順としては、まず平行投影で側面ビュー(NumPad 4/6)や正面ビュー(NumPad 2)へ移動します。ここで建物を垂直に切るセクションを入れれば断面図になり、切らずに外側から見れば立面になります(出典: Chaos公式ブログ「Orthographic Views」、確認日 2026年7月7日)。
内部の空間を見せたいなら断面、外形やファサード(建物の正面デザイン)を見せたいなら立面、と使い分けます。断面図は天井高やスキップフロアなど、高さ方向の関係を伝えるのに向いています。立面はファサードの見え方を検討する場面で役立ちます。
2Dビューとして書き出す
作った図面ビューは、Enscapeの書き出し操作でそのまま画像として保存できます。3Dのプロジェクトからワンクリックで2Dのフラットなビューを起こせるので、複数のフラットビューを切り替えながら、平面図・断面図・立面を順に出していけます(出典: Chaos公式ブログ「Orthographic Views」、確認日 2026年7月7日)。
書き出しの操作そのものは、通常の1枚の静止画(パース)を書き出すときと同じ流れに乗ります。解像度の指定など静止画側の細かい書き出し設定は、Enscapeの静止画レンダリングとバッチ出力|解像度・アルファで解説しています。
Orthographic Viewを編集部が使ってみました
Orthographic Viewの一番の価値は、図面を別のソフトで描き直さずに、レンダーの見た目のまま図面ビューを出せることにあります。以前はAutoCADなどで2D化していた工程を、モデリング環境の中で完結できます。編集部が実際に触ってみた所感として、どんな場面で効くのかを整理します。
プレゼン用の「見える図面」を素早く出す
素材・家具・光の入った平面図や断面図は、線画だけの図面より施主に伝わりやすい絵になります。とくに設計の検討段階で「この間取りで進めていいか」を合意する場面で効きます。相手が図面を読み慣れていなくても、完成後の雰囲気がそのまま伝わるからです。
Enscapeはリアルタイムで表示が更新されるので、視点やセクションの高さを変えながら、その場で複数の案を見せられます。編集部が触ってみた範囲でも、打ち合わせの場で案を切り替えながら見せられる点は、合意形成のスピードにつながる実務的な利点だと感じました。
描き直しの手間を減らす一方で、正確な作図はCADに任せる
3Dモデルから直接2Dの図面ビューを起こせるため、別のソフトで2D化する往復を減らせます。モデルを直せば図面ビューも追随するので、検討フェーズでのスピード感を保ちやすくなります。
ただし、寸法線や注記をきっちり入れた正確な成果物が必要なときは、CAD側が本筋です。Orthographic Viewが得意なのは「見せる・検討するための図面ビュー」で、確認申請図のような正式図面を置き換えるものではありません。ここを割り切って、CADと役割分担させると効果的です。
まとめ
Orthographic View(平行投影)を使うと、遠近のゆがみのない図面ビューを、Enscapeのレンダー品質のまま出せます。要点を整理します。
- Orthographic Viewは平行投影のモードで、平面図・断面図・立面をレンダー品質で書き出せる
- 切り替えはEnscapeのボタンでワンクリック。NumPadで真上・正面・側面へ正対させるのがコツ
- 真上+セクションで平面図、側面や正面+セクションで断面・立面。ワンクリックで2Dビュー化できる
- 平行投影中は被写界深度・焦点・画角が無効になる(図面出力に集中するモード)
- 「見せる・検討する図面」に強い。寸法入りの正確な作図はCADが本筋
次の一歩|まず試したい活用シーン
Enscapeの基本操作に慣れているなら、Perspectiveで作った1シーンを、そのままOrthographicに切り替えて真上から見るところから試してみると、図面ビューの感覚がつかめます。慣れてきたら、平面図・断面図・立面をワンセットで書き出して、プレゼン資料に組み込んでみてください。素材と光の入った図面ビューが1枚あるだけで、打ち合わせでの伝わり方が変わってきます。
建築知識の教科書