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Blenderガラスが破綻する5つの原因と設定の直し方|建築パース実務向け

編集部 読了 約23分

Blenderで建築の窓ガラスを設定したのに、レンダリングしたら「真っ黒な四角」「不透明な板」「屈折のない透明セロハン」になってしまった、という失敗は、建築archvizでガラスを扱い始めた段階で必ずぶつかる症状ではないでしょうか。原因は Metallic / Solidify / エンジン側設定 / マテリアルスロット分割 の5点に集約されます。3パラメータ(Transmission Weight・IOR・Roughness)の値を変える前に、破綻の出どころを切り分けるのが直し方の近道です。

この記事では、Blender LTS 4.5 と 5.1 の最新環境を前提に、建築ガラスが破綻する5つの原因、ガラス8タイプ別の設定値、Cycles と Eevee Next の使い分け、サッシ・複層ガラスの実務までをまとめます。PBRの3パラメータの基礎を先に押さえたい場合はBlenderマテリアル設定入門|建築4素材のPBRパラメータと設定値を整理から確認できます。

ガラスマテリアルが「破綻する」のはなぜか

ガラスが破綻するのは、ガラスという素材が「反射・透過・屈折」という3つの光の現象を同時に起こすからです。1つでも壊れると見た目が崩れ、設定だけでなくモデリングとレンダリングエンジンの仕様まで関係してきます。だからこそ、症状から原因を素早く切り分ける視点が建築archvizでは役立ちます。

ガラスは「反射・透過・屈折の3現象が同時に起きる」素材

ガラスの見え方は、表面で起きる反射、光が向こう側に抜ける透過、光が屈曲する屈折、そしてその屈折のぼけ方の4つで決まります。Principled BSDF(プリンシプルド・ビーエスディーエフ、Blenderの標準シェーダ)の役割でいえば、反射が表面ハイライト、透過が Transmission Weight、屈折が IOR(屈折率)、ぼけ方が Roughness の担当です。

このどれかが壊れると、不透明な板(透過が無効)、屈折しない透明セロハン(IOR と屈折計算が成立していない)、一面が曇りガラス化したような映像(Roughness が高すぎ)が出ます。3パラメータの値が正しくても、Metallic や Solidify が間違っていれば同じ症状になるため、「数値の前にモデル側・エンジン側を確認する」が直し方の出発点です。

Blender 5.0で Principled BSDF が OpenPBR Surface(Pixar・Autodesk・Adobe等が策定した業界共通のシェーダ仕様)に準拠する設計に再定義され、Maya・3ds Max・Houdini といった他DCCツール(3DCG・CAD系ソフト)との建築素材互換性が向上しました(Blender 5.0: Rendering Shader Nodes 公式リリースノート)。完全互換に向けたロードマップ(Issue #145127)も2026年内に進行中で、ガラスシェーダの数値の意味が外部レンダラーに渡しても通じやすい環境が整いつつあります。

「透明にならない」「黒くなる」「屈折がおかしい」5つの原因

建築ガラスでぶつかる破綻症状は、原因をたどると次の5つに集約できます。

#原因主な症状直す場所
1Metallic が 0 になっていない透過が無効化されて金属面に見えるPrincipled BSDF の Metallic を 0 に固定
2Solidify モディファイアが当たっていない屈折が成立せず真っ黒・板状の歪みモデル側に Solidify 追加(Thickness 8〜12mm)
3Eevee Next の Render Method が Opaque のまま透過しない不透明な板Material Properties → Settings → Render Method を Raytraced Transmission に
4Cycles の Transmission Bounces 不足多重ガラスや内側が真っ黒に潰れるRender Properties → Light Paths → Transmission を16〜32に
5マテリアルスロット未分割サッシまでガラス扱いになり歪むエディットモードでガラス面のみ別スロットに Assign

ひとつ目の Metallic が 0 でない問題は、初期値や別マテリアルからの複製で混入しやすいので、「ガラスを作ったらまず Metallic 0 を確認」がルーチンになります。ふたつ目の Solidify 忘れは、Plane(厚みゼロの面)に屈折計算が成立しないことが原因で、薄面ガラスは内側と外側の境界が定義できないため破綻します。

3つ目から5つ目はそれぞれエンジン側・モデル側の設定で、3パラメータ(Transmission Weight・IOR・Roughness)をいくら触っても解決しません。5つの原因は、素材タイプ別設定値・エンジン仕様・サッシ実務の3つの切り口で順に直していく構造になっています。

建築パースでよく使うガラスタイプ別の設定値

建築のガラスは1種類ではありません。クリアガラス・Low-E・フロスト・すりガラス・型板・色付き・ステインドグラス・ガラスブロックの8タイプで、Transmission Weight・IOR・Roughness・Solidify の組み合わせを少しずつ動かして仕分けます。設定の組み合わせは無限に思えるかもしれません。実際は、軸が決まればパターンは限られます。

ガラス8タイプの設定値早見表は次のとおりです(公式マニュアル + 建築実務レンジ整理ベース、2026年5月時点)。

ガラスタイプTransmission WeightIORRoughnessSolidify 厚み補足
クリアガラス(カーテンウォール)1.01.50.08〜12mmフロートガラス標準
Low-Eガラス(複層)1.01.50.02〜0.056〜12mm×2層わずかな粗さで複層感
フロストガラス(軽め)1.01.450.05〜0.128〜10mmうっすら透けるレベル
すりガラス(サンドブラスト)1.01.450.15〜0.258〜10mmNoise で粗さを揺らす
型板ガラス(凹凸あり)1.01.50.1〜0.26〜8mmBump で凹凸を追加
色付きガラス(薄い着色)1.01.50.08〜12mmBase Color で着色
ステインドグラス1.01.50〜0.054〜6mmVolume Absorption 併用
ガラスブロック1.01.50.2〜0.3580〜100mmRoughness 高めで光拡散

クリアガラス(カーテンウォール・窓ガラス)の基本設定

クリアガラスの出発点は、Metallic 0 / Transmission Weight 1.0 / IOR 1.5 / Roughness 0 / Solidify 8〜12mm の組み合わせです。住宅用は 3〜6mm、店舗・大規模ビル用は 8〜12mm、強化ガラスは 5〜19mm が建築実物の標準で、納まりに合わせて Solidify の Thickness を変えるとリアリティが上がります。

カーテンウォールや曲面ガラスのような複雑な形状では、Solidify の Even Thickness と High Quality Normals の2つを ON にしてください(Solidify Modifier|Blender 5.1 Manual)。Even Thickness は厚みのムラを防ぎ、High Quality Normals は法線の補間精度を上げて、曲面の反射が変な縞模様にならないように整えてくれます。

注意したいのは、Metallic を 1 に近づけると Transmission Weight が無効化されることです。Principled BSDF の内部処理では、Metallic 1.0 のとき「拡散も透過もない完全鏡面」として扱われるため、いくら Transmission Weight を上げても透過しません。「ガラスのつもりが金属の鏡面板になっていた」という失敗は、ほぼこのパターンです。

すりガラス・サンドブラストガラスの設定

すりガラスは、Transmission Weight 1.0 / IOR 1.45 / Roughness 0.15〜0.25 が基本値です。Roughness を一律値で当てると「のっぺりした曇りガラス」になりやすいので、Roughness ソケットに Noise Texture を Color Ramp 経由でつないで、0.1〜0.25 の範囲で揺らぎを作ると本物のすりガラスに近づきます。Noise Texture の Scale は 50〜200 が建築スケールでの出発点です。

サンドブラスト仕上げは 0.2〜0.3、軽めのフロストガラスは 0.05〜0.12 と、仕上げ加工の粗さに合わせて値を調整します。住宅の浴室の目隠しやトイレの間仕切りはサンドブラスト寄り、リビングと書斎を仕切るデザインガラスはフロスト寄り、というイメージで使い分けます。

ここで押さえておきたいのが、Blender 4.0 で Transmission Roughness パラメータが廃止されたことです(Blender Projects #114956)。3.x までは透過時の散乱を別パラメータで指定していましたが、4.0 以降は本体の Roughness が透過時の散乱も兼ねます。3.x のチュートリアルを見ながら同じパラメータが見つからない場合は、この仕様変更が原因です。

すりガラスや色付きガラスでもう一歩踏み込んだノード組みをしたい場合は、Blenderノードエディターで建築マテリアルを作る方法|実務で使う6パターンで実務6パターンに分けて解説しています。

色付きガラス・ステインドグラスの設定

色付きガラスは、薄い着色なら Base Color に薄い色を入れるだけで成立します。スクリーンガラスや薄ブルー・薄グリーンの建材なら、Base Color に RGB 0.9, 0.95, 1.0 程度の薄い色を入れて、Transmission Weight 1.0 / IOR 1.5 / Roughness 0 で透過させると自然な見え方になります。

濃いボトルガラスやステインドグラスのように「光が通過する距離で色が深まる」素材は、Volume Absorption ノードを Material Output の Volume ソケットにつなぎます。Beer-Lambert 法則(光が物質を通過する距離に応じて減衰する法則)に従うため、Solidify の厚みを2倍にすると見かけの色も明確に濃くなる挙動になります。Volume Absorption の Density は 0.5〜2.5 が建築スケールの出発点です。

ここで国内チュートリアルでも混同が起きやすいのが、Blender 5.0 で正式統合された Thin Film Iridescence(薄膜干渉)の扱いです。Thin Film は Coat 層(クリアコート)とは別の独立したパラメータ群です。Principled BSDF に Thin Film 専用のソケットが追加されています(Principled BSDF|Blender 5.1 Manual / #118477 Cycles: Add thin film iridescence to Principled BSDF)。Coat IOR と Coat Thickness で薄膜干渉を制御するという書き方は誤りです。

Thin Film パラメータ内容
Thin Film Thicknessナノメートル単位の膜厚。100〜1000nm が可視光波長帯で干渉色がもっとも強く現れるレンジ
Thin Film IOR薄膜自体の屈折率。1.0(真空・空気)〜 4.0(germanium)、デフォルト 1.5(glass)。soap bubble の例では base IOR 1.0(air)/ film IOR 1.33(water)/ thickness 10〜1000nm

建築ガラスでの応用は、Low-E ガラス・遮熱コーティングガラス・反射防止膜の色味再現が中心です。Volume Absorption が「ガラス内部を通過する光の減衰」を扱うのに対し、Thin Film は「表面の極薄膜での干渉」を扱う別レイヤーで、両方を組み合わせると微妙なコーティング感が出せます。

Glass BSDF(ガラス専用シェーダ)にも Blender 5.x 系列で Thin Film 対応が進行中で、PR #140832 で順次統合されています(#140832 Cycles: Support Thin Film iridescence in the Glass BSDF)。Principled BSDF 一本でガラスを書く流派でも、Glass BSDF 経由のワークフローでも、薄膜干渉が選択肢に入る状況になりつつあります。

薄膜干渉の金属応用(銅板屋根の経年青緑色、チタンサッシの虹色、酸化被膜ブロンズ装飾金物など)はBlender建築パース マテリアル6テクニック|タイル・壁紙・ファブリック・植栽・夜景の質感設定で具体手順をまとめています。

ガラスブロックの設定

ガラスブロックは、Transmission Weight 1.0 / IOR 1.5 / Roughness 0.2〜0.35 / Solidify 80〜100mm が出発点です。Roughness を高めにすることで内部で光が拡散し、ブロックの中身がぼんやり光る独特の見え方になります。

建築定型サイズは 190×190×95mm が標準で、Array モディファイアを縦横に当てて格子状に並べると目地と陰影が一気にリアル化します。住宅の浴室の腰壁、カフェの間仕切り、エントランスの装飾壁などで頻出する素材です。

気泡入りのガラスブロックを表現したい場合は、Voronoi Texture を Bump ノードの Height にスケール小さめで通すと、内部の気泡感が出せます。Voronoi の Scale は 30〜80 程度から試して、案件のスケール感に合わせて調整してください。

CyclesとEevee Nextでガラスの見え方はどう違うか

ガラスは、Cycles と Eevee Next(イーヴィーネクスト、Blender 4.2 で正式統合されたリアルタイムレンダラー)でレンダリング結果が変わる代表例です。同じマテリアル設定でも、エンジンごとに必要な追加設定が違うので、検討と最終で使い分けるのが建築archvizの定番運用になっています。

Cyclesのガラス挙動(正確だが設定が必要)

Cycles はパストレーシング(光線を物理ベースで追跡するレンダリング手法)で動くため、Transmission Weight 1.0 / IOR 1.5 を設定するだけで物理的に正確な屈折・反射・透過が成立します。ただし、ガラスが多層になると光線が反射と屈折を繰り返すため、デフォルトの Transmission Bounces 12 では足りなくなります。

Render Properties → Light Paths → Transmission の値は、単層ガラスなら 16 以上、複層ガラス(複数枚重なる場面)は 24 以上、内観で多重ガラスが続くシーンは 32 が推奨レンジです(SuperRenders Blender Render Settings Guide)。Transmission Bounces が足りないと、内側のガラス面以降が真っ黒に潰れる症状が出ます。

Caustics(コースティクス、光が屈折・反射で集まって作る光斑)は、Render Properties → Light Paths → Caustics で Reflective と Refractive を個別に ON できます(Light Paths|Blender 5.1 Manual)。プールサイドの水面に映る揺らぎや、吹き抜けの大窓から差し込む光斑など、印象的な光の表現に役立ちます。

実務では Caustics を「常時 ON」にしないほうが計算コストの観点で現実的です。薄いフロート板ガラスは光がほとんど屈折しないため、外観の大量の窓を含むシーンでは Caustics が実質発生しません。外観の量産パースは OFF を標準にして、プールサイド・吹き抜けの大窓・厚みのあるガラスブロックなど「光斑が画になる場面」だけ ON にする運用が、建築archvizでの定石です(How to create a glass shader in Eevee and Cycles|Artisticrender)。

Eevee Nextのガラス挙動(速いが追加設定が必要)

Eevee Next は Blender 4.2 LTS で正式統合されたリアルタイムレンダラーです。それまでの「Screen Space Refraction」が廃止され、マテリアル単位の「Raytraced Transmission」設定に置き換わりました(Blender 4.2 EEVEE Release Notes)。

設定場所は、各ガラスマテリアルの Material Properties → Settings → Render Method を Raytraced Transmission に切り替えるだけです。Render Properties 側ではなく Material Properties 側にあるのがポイントで、Eevee で透けない最頻原因はこの切り替え漏れになります。LTS 4.5 / 5.1 でも同じ場所に置かれています。

Eevee Next 4.2 以降は光源そのものがガラス越しに見えるようになり、屋外シーンでも室内シーンでも以前より見え方が物理的に近くなりました(Steve Haiman Art: Blender 4.2 Ray Tracing Test)。Thickness Output ノードを使うと、薄い1枚面でも擬似的に厚みを与えられるため、外観量産パースの軽量化テクニックとして使えます。

Render Method は Dithered(ディザード、デフォルト)のままで建築ガラス用途は十分です(Katsbits: Dithered Transparency)。Blended に変えるとパーティクル的な半透明が混じる素材で有利ですが、建築ガラスでは Dithered のほうがアーティファクトが少なく安全です。

建築パースでの使い分けの決め手

検討段階・プレゼン下書きは Eevee Next(Raytraced Transmission ON)で1枚あたり数秒から数十秒で確認できます。プランの修正回数が多いコンペや初期検討フェーズでは、Eevee Next の速さが活きてきます。

最終レンダリングは Cycles(Transmission Bounces 24〜32)で、多重ガラス内観やカーテンウォール越しの遠景を物理的に正確に描き切ります。納品先のクライアントによっては「Cyclesでの最終出力」が事実上の信頼指標になっているケースもあり、内観の最終フレームだけ Cycles に切り替える運用が現実的です。

外観でガラス面が少ないシーンや、コンペプレゼン用の大量カットでは、5.1 で改善された Eevee Next を最終出力に使う選択肢も実用化しています。エンジン選びは「正確さ × 時間 × 用途」の3軸で決めるイメージです。

建築サッシ・建具周りのガラス配置で起きる実務課題

建築のガラスは、サッシ(窓枠)や建具と組み合わさって初めて窓として成立します。マテリアルの設定だけでなく、モデル側の構造や寸法の取り方、ライティングとの関係まで含めて整えないと、ガラス単体では正しくても窓全体が不自然になる落とし穴があります。

サッシ(窓枠)とガラスの素材分け

サッシとガラスは別の素材として扱う必要があります。Material Properties で「+」ボタンを押してマテリアルスロットを追加し、エディットモードでガラス面のみを選択して、該当スロットに Assign する流れです。同じメッシュ内に2つのマテリアルを共存させる基本テクニックで、ここを怠るとサッシまでガラス扱いになり、Solidify が当たって枠が膨らんだり屈折してねじれたりします。

Solidify モディファイアはガラス面のみに当てるのが原則です。サッシは別途モデリングで実物の厚みを再現します。同じメッシュ全体に Solidify を当てると、サッシまで余計な厚みが付くため、サッシだけ別オブジェクトに分けるか、頂点グループで Solidify の作用範囲を限定する方法が現実解です。

寸法の取り方も実物に合わせます。ガラスは内法(うちのり、サッシの内側の開口寸法)、サッシは外法(そとのり、外周寸法)で取ると、実際の建具の構造と整合します。CADから書き出した DXF を取り込んでモデリングを進める場合、図面の寸法が内法か外法かを最初に確認しておくと、後段の調整が楽になります。

二重ガラス・複層ガラスの表現

物理的に正確な複層ガラスは、2枚のガラスを 6〜12mm の空気層を挟んで配置します。1つの窓につきガラス面が4面になるため、Cycles の Transmission Bounces を最低 24、複層内観なら 32 まで上げないと、奥側が真っ黒に潰れます。Eevee Next は4枚以上の重なりでズレが出やすいので、最終納品は Cycles に切り替えるのが安全です。

すべての窓を複層化すると計算コストが膨らむため、実務トレードオフとして外側ガラスのみ Transmission Weight 1.0 / IOR 1.5 で物理的に作り込み、内側は Roughness 0.02〜0.05 で「存在感だけ」出す簡略化もよく使われます。確認用パースは単層、最終納品時のみ複層化、というのが建築事務所の典型的な運用パターンです。

Low-E ガラスや遮熱コーティングガラスは、複層構成にすると見た目の説得力が増します。先ほどの Thin Film Iridescence を外側のガラス面に薄く効かせると、コーティング感が出やすくなります。すべての窓に Thin Film を当てる必要はなく、メインカットの中心となる窓だけに使うのが計算コストとリアリティのバランスとして現実的です。

ガラスとライティングの責任分界点(+ Interior Mapping)

「ガラス越しに室内が見えない」「反射が暗い」と感じたとき、原因はマテリアル側ではなくライティング側にあることが多いです。マテリアル設定をいくら触っても改善しない場合は、World Properties の HDRI(環境マップ)の Strength、Sun Light の Power、Area Light の Watt を順に確認してください。光源が弱いとガラスはただの黒い板になります。

ライティング側の詳細設計はBlender ライティング&カメラガイド|HDRI・室内・焦点距離を3ステップで整理でHDRI・室内3光源設計をまとめて解説しています。マテリアルとライティングを切り分けて考えるだけで、無駄な試行錯誤が大きく減ります。

外観の大規模ビルで窓が大量に並ぶシーンでは、Interior Mapping(インテリアマッピング、実際に室内をモデリングせず疑似的に内観を見せる擬似手法)が役立ちます。ノードベースでは Mapping ノードと Math ノードを組み合わせて実装でき、Blender Artists のコミュニティで実装例が共有されています(Blender Artists: Interior Mapping through Nodes)。

Interior Mapping を使うと、ビル外観でカット中に映る数百個の窓をモデリングするコストを 1/10 以下に抑えられます。FakeInterior 系のアドオンでも実装できるので、コンペ用の外観量産で時間が取れない場面に向いた選択肢です。

Blender LTS 4.5 / 5.1 のガラス設定を編集部が読み解いた所感

建築archvizでBlenderのガラスを設定してみると、3パラメータの値そのものより、バージョンごとに変わった挙動と切り替えポイントの把握で苦戦するケースが多くなっています。公式リリースノートと国内外の検証記事を踏まえ、入門〜実務の橋渡しで押さえておきたい3点をまとめました。

バージョン固有挙動を押さえないと過去チュートリアル通りに動かない

クリアガラスの基本値が Transmission Weight 1.0 / IOR 1.5 / Roughness 0 / Solidify 8〜12mm という出発点は、4.x 系列でも5.x 系列でも変わっていません。にもかかわらず「過去チュートリアル通りに作ったのに動かない」が頻発するのは、UIラベルとエンジン仕様が4.0から5.0にかけて連続的に変わっているからです。

押さえておきたい変化は3つあります。第1に、Blender 4.0 で Transmission Roughness が削除され本体 Roughness に一元化されたこと。第2に、Blender 4.2 で Eevee Next が正式統合され Raytraced Transmission がマテリアル単位設定に移ったこと。第3に、Blender 5.0 で OpenPBR Surface 準拠と Thin Film Iridescence の正式統合が同時に進んだこと。この3点を押さえれば、3.x 時代の教材と5.x の画面とのギャップに振り回されなくなります。

中でも 5.0 の Thin Film Iridescence は注意点が一つあります。Coat 層(クリアコート)と混同して書かれている記事が国内には散見されるので、Principled BSDF の Thin Film 専用ソケット(Thickness と IOR)を直接触る、という運用を覚えてしまうのが確実です。

Blender LTS 4.5 と 5.1 の使い分け

2026年5月時点で現実的な運用は、LTS 4.5(2025年7月リリース、サポート〜2027年7月)を主軸にして、新機能の検証用に5.1(2026年3月17日リリース)を別途置く二系統運用です。商用建築パースの納品は LTS 4.5 で十分通用しますし、アセットの互換性とチュートリアルの読み替えコストの面でも LTS 主軸が安心できます。

5.1 を起動するのは、Thin Film Iridescence で Low-E ガラスや遮熱コーティングを試したいとき、OpenPBR Surface 準拠で外部レンダラーへ素材を持ち出したいとき、5.1 の Eevee Next 改善を確認したいときが中心です。次期 LTS の5.2 LTS は2026年内のリリースが予告されているので、本格的な乗り換えはそのリリース後に検討すると、安定運用と新機能の両取りができます。

GPU レンダリング(CUDA / OptiX / HIP)を使う場合は、コア数と VRAM 容量の見通しを立てておくと制作時間が読みやすくなります。検討段階は Eevee Next、最終納品は Cycles の二段構えで、時間配分とエンジン特性をかみ合わせるのが建築archvizでの定石です。

ガラスを整えた先に広がる建築パース表現

ガラスの破綻5原因と8タイプの設定値を体に入れると、案件のフェーズごとに使える表現の幅が広がります。

コンペ案件では、Cycles の Transmission Bounces 24 と複層ガラスを組み合わせた精密なカーテンウォール表現で、ガラスの透き通り方や内部の見え方で他社案との差を作りやすくなります。住宅プレゼンでは、すりガラスの間仕切り、色付きガラスのアクセント、ガラスブロックの腰壁といった作り分けで、生活シーンの提案幅が増えます。外観量産では、Interior Mapping で窓モデリングの負荷を数日から半日に短縮できます。

そしてもっとも大きいのは、症状から原因を素早く切り分ける「切り分け力」が他素材にも転用できることです。透明にならない・黒くなる・屈折がおかしい、というガラス特有の3パターンを症状ベースで切り分けられるようになると、コンクリやマテリアル全般のトラブルでも「数値の前にモデル側とエンジン側を確認する」という思考の型が身につきます。

ガラス表現を破綻させないためのチェックリスト

ガラスマテリアルを新しいシーンに置く前に、上から順に確認しておくと破綻を未然に防げる10項目を整理しました。最初の3項目(Metallic / Solidify / Even Thickness HQN)が、破綻したらまず疑う基本3点です。

#チェック項目確認場所
1Metallic = 0 になっているかPrincipled BSDF の Metallic
2Solidify モディファイアが当たっているかモディファイアスタック
3Solidify の Even Thickness + High Quality Normals が ON かSolidify モディファイア設定
4Eevee Next の Render Method が Raytraced Transmission かMaterial Properties → Settings
5Cycles の Transmission Bounces が 16 以上か(複層は24〜32)Render Properties → Light Paths
6Caustics の ON/OFF が用途に合っているかRender Properties → Light Paths
7サッシとガラスがマテリアルスロットで分割されているかMaterial Properties
8複層ガラスの空気層が 6〜12mm 確保されているかモデルの寸法
9Volume Absorption の Density(色付きガラス)が 0.5〜2.5 かノードエディター
10Roughness にすりガラス向け Noise Texture が必要かPrincipled BSDF の Roughness

特に上3項目はモデリング段階で固まる項目なので、シーンを組み始める前に確認するクセを付けると、破綻して数時間悩むパターンが減ります。

まとめ

Blenderの建築ガラスを破綻させないための要点を5つに集約します。

  • ガラス破綻は、反射・透過・屈折の3現象のどれかが壊れたときに起きます。Metallic 0 / Solidify / マテリアルスロット分割の3点を最初に確認すれば、原因の大半が切り分けられます
  • クリアガラスは Transmission Weight 1.0 / IOR 1.5 / Roughness 0 / Solidify 8〜12mm が出発点です。すり・色付き・ガラスブロックはここから素材タイプ別に Roughness と Volume Absorption を足し引きします
  • Cycles と Eevee Next で見え方が変わります。検討段階は Eevee Next(Raytraced Transmission ON)、最終納品は Cycles(Transmission Bounces 16〜32)の二段構えが建築archvizの定石です
  • Blender 5.0 で OpenPBR Surface 準拠と Thin Film Iridescence が同時に進みました。Thin Film は Coat 層とは別の専用ソケットで、Thickness(nm単位)と IOR(デフォルト1.5)で制御します
  • サッシはマテリアルスロットで分割し、複層ガラスは2枚配置と Bounces 増設、外観量産は Interior Mapping の活用が要点です。建築特有の運用パターンを使い分けると、品質と作業時間の両方が安定します